シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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仕事始めですね。みなさんガンバりまっしょい!
・・・まぁ、私の方は初めなせいで仕事が無くて帰されてる途中なのですが・・・(悲)

注:読みにくいと思っていた一部を修正させて頂きました。
  変えたのは、一夏が会長にパンツ見せられてるシーンの表記方法です。


第21話「史実の豆知識。キャノンボールは如何なるルートを用いてもゴールに着けばいい非合法ラリーでした」

「そう言えば、一夏の誕生日の日ってキャノンボール・ファスト当日でもあったよね。みんな準備は進んでる?」

 

 学生寮での夕食中、血の繋がりのない赤の他人同士で同じ食卓を囲んで食べる毎日恒例の疑似家族風景を展開している最中にシャルロット・デュノアがいきなり話題を切り出し、みんなを構成するうち二人の少女を「うっ!?」と唸らせ、飯を喉に詰まらせかける。

 

 朝した話題で一夏の誕生日を知っていた彼女たちとしては特に驚くには値しない情報だったが、幼馴染みのアドバンテージを盲信したがっていた二人のファーストとセカンドは、未だに自分たちだけが一夏の個人情報を独占していると信じ切っていたが故の反応だった。

 

 ・・・普通、これだけ世間に騒がれている世界初の男性IS操縦者がいつ生まれて誕生日はいつか?などと言う情報は複数の雑誌で取り沙汰されまくった後だと思うのだが、なぜこの二人はそこまでして自分の優位を信じ続けたがるのだろう?

 そこまでして過去を独占したいと望むなら、引きこもって今も未来も見なくなった方が楽だと思うのは私だけか・・・?

 

「キャノンボール・ファスト・・・? ――ああ、思い出した。以前に日本のIS紹介番組で放送してたの見たから覚えているわ。

 確かアレよね? スタート直後に隣にいた強敵を不意打ちして脱落させて、最終的にマウンドの上で生き残ってた奴が歩いてゴールしても優勝になるトンデモレースの事でしょ?

 大昔にファミコンでプレイした『ダウンタウンの大運動会』見てるみたいで面白かったわー」

「最低すぎるわねアンタ!? そんなだから誕生日を素直に祝ってくれる友達出来なかったんでしょうが! 少しぐらいスポーツマンシップを持ちなさい!!」

「なんでよ!? 最終的には潰し合いになって生き残ってた奴が勝つところなんて一緒じゃないの! ルール違反はしてないでしょう!?

 あと、レースに銃とか剣とか持ち込んでる時点でスポーツマンシップもヘチマも無いっての!」

 

 ジャンヌが騒ぎ、鈴が反論するいつもの風景。見慣れているので回りの代表候補生たちも左程は驚き慌てません。いつもの面々でこなすいつもの恒例行事の一環ですから♪

 

 

 ――キャノンボール・ファスト。

 それは本来、国が主催するISを用いた高速バトルレース大会のことであり、日本だととある事情から市が主催する年に一度のお祭りイベントとして定着している。

 内容は読んで字のごとく、ISでレースして一位を競い合うというもの。

 ただし、レーシングカーを使わずISを代わりに走らせて競い合わせるという都合上、ただ速く走ればいいだけのイベントには成っていない。

 銃で撃つのも有りだし、剣で切りつけるのも大砲で吹き飛ばすのも有りな、バトルレースと言うのがこの大会の趣旨である。

 

 そうした理由はたぶん参加者たちが、IS操縦者であってレーサーでも何でもないから。

 走らせて競い合うことに特化した専門家たちがおこなうレースと違って、一年に一回この日のために一ヶ月ほど前から即席で練習する付け焼き刃技術しかもたない学生たちのレースを普通にやっても見ている側は大して楽しめないだろう、普通に考えて。

 

 見目麗しい少女たちがメカニカルなロボットに乗って競い合うのを見て楽しむというのも悪くはないが、それぐらいだったらレースクィーンでもやらせてた方が経済的にナンボかマシな様な気がする。

 

 所詮はアマチュアの大会でしかないのだから、いっそ『何でもありな』お祭りイベントにしちゃえ!という、市の思惑が伝わってきそうでイヤな感じになるジャンヌだったが、彼女的に見て『何でもあり』は嫌いじゃない。

 コース上に落ちてるもん拾って投げつけるとかしてみたいし、ゴール直前で待ち構えて追いついてくる選手全員KO勝ちした後でゴールするのもやってみたい。

 

 DQN厨二にとって『熱血硬派くにおくん』はブラッディバイブル。これはジャンヌ的価値基準から見て譲れない。

 

 

「これはレースよ! 銃で撃とうと剣で切ろうとも、後ろからブチ抜いて一位を掻っ攫って優勝してやるのが一番気持ちいい類のレースイベント! それを走らずに戦い合って潰し合うんだったらやる意味なんて最初からないでしょう!?」

「なんでそう中国人は昔ながらの形にこだわろうとするのよ!?

 勝ちたいんだったらスタート地点で待ち構えて、他の奴らが一周走り終えてきたところに逆走して突撃して脱落させて、落として落として落としまくって、最後の一機になるまで生き残ってた奴がチャンピオン! それでいいじゃないの!? どのみちバトルなんだから!」

「そりゃ、バトルじゃなくて『バトルロイヤル』って言うのよ! この脳筋突撃脳フランス猪ーっ!!」

 

 鈴ちゃん絶叫。そして、ハイ。まさにその通り。

 それはレースじゃなくて、バトルレースでもなくて、ただのバトルロイヤルですね間違いなく。ルール的に可能だし、途中経過で似たような状況は毎度の様に勃発しちゃうけど最初からそれやるつもりで参加はマズい。意図の有る無しは法律的に重要です。

 んなもん犯行おこなった後にいくら調べて証拠見つけても『絶対に有る』も『無い』もないものだけど、人間の記憶なんて後からいくらでも改竄できちゃう程度のものでしかないけれど。

 それでも形式というのは重要です。弁えなさい、ジャンヌちゃん。

 

 

(ちくしょう・・・これじゃあ、せっかく立てた私の必勝計画が台無しになるわ・・・どうすれば!?)

 

 みんながワイワイと『真っ当な』レースの為の会話(一夏の白式がエネルギー問題的に不利だとかの話題)で盛り上がり始める中、ジャンヌは一人心の中で懊悩する。

 

 ――余談だが、彼女が当初立てていた作戦は、こう言う内容だった。

 

 全員に先にスタートさせる。最後尾を走ってる奴を背中から撃つ不意打ちで倒す。スタート地点でゴールしてくるのを待つ。来た順から順繰りに一機一機待ち伏せして倒していき、終わらせない戦いの連鎖で自分以外はすべて倒して最後に生き残っていた自分が勝利者でウィナー。

 

 ――こんな感じ。

 どっからどう見てもレースの勝ち方ではなかったが、一応彼女なりに主張というか、この作戦を計画した根拠は存在してたりはする。

 それは、機体がもつ特性故の長所と欠点によるものだった。

 

 ジャンヌの愛機シュバリエ・ノワールは強襲型であり、突撃力に特化している。

 突撃が得意と言うことは、必然的に横腹および背後からの攻撃には極端に弱いと言うことをも意味しており、先に行けば先に行くほど不利になってしまうレース用としては致命的な構造的欠陥を抱えているノワールで勝つには、こうするより他なかったのだ。

 

 だが、そんな彼女のやむを得ない事情による正当性など、真っ当にやって勝てる連中には通用しない。人は自分が不利になる正義を認めることは決してしない生き物だから。自分たちの正義から見て、許容範囲内にある正しさ以外は如何なる事情があろうとも同類だとは認めようとしない醜い生き物なのだから、致し方のないことなんだから。

 

(くっ・・・なんとかしないと私が勝利する可能性がぁぁぁぁ・・・・・・っ!!!)

 

 だが、人は一度手に入りそうだと感じた勝利の果実を簡単には諦めきれない生き物でもある。その手に掴みかけた栄光を、手からすり抜けたと言うだけで諦めきれなくなる生き物なのである。

 

 だから頼る。優れた賢人に。

 経験豊富な先駆者たちに教えを請うことで、手に入るはずだった栄光をその手に取り戻すために。

 

 勝つためなら頭を下げて、勝った後に恩を仇で返す!

 

 それが日本に限らず世界中で人類全てがおこない続けてきた歴史の伝統だ。人類史の極みなのだ。

 救国の英雄にして、裏切られて捨てられた人を見る目のない聖女様のジャンヌ・ダルクと同じ名を持つ者として、ジャンヌ・デュノアは決して同じ轍を踏もうとはしない。

 

 必ずや勝利の杯をこの手に・・・・・・っ!!!

 

 

 

 その結果。

 

 

「あ」

 ↑部屋に帰ってきたばかりでベッド上の同居人を見ていた一夏。

 

「あは♡」

 ↑寝転がって雑誌を読みながらパンチラしていた生徒会長。

 

 

「・・・・・・・・・・・・」

 

 

 ―――この前知り合って「困ったことがあったら頼っていい」と言われた学園最強を利用しようと、宛もなく寮内を彷徨ってたら一夏の部屋から聞き覚えのある声が聞こえた気がしてノックして声かけてから入ってみたら、ベッドの上で男に背中とお尻を向けながら雑誌を見るフリして笑顔でパンツ見せてた超絶美少女を前にして棒立ちし続けて固まってる一夏を目にしたジャンヌ・デュノアは、やがてゆっくりと背を向けてその場を去って行く。

 

 最期にいたわりの言葉を残してあげながら・・・・・・・・・。

 

 

「ごめん、次からはノックして声かけても返事されるまで入らない様にするから・・・」

「待て! ジャンヌ! おまえは誤解している! て言うかお前はどうしてこうも嫌なタイミングの時だけ俺の部屋に来るんだ!? 普段は来ないだろう!? 他の奴らと違ってさぁっ!!」

「・・・でも、出来たらアンタたちもそういうことは鍵締めてやって欲しいわね・・・。ここって一応は実質女子校で、男が一人のハーレム状態だからって本当のハーレムにしちゃうとヤバすぎる国立校なんだし・・・」

「だ・か・ら! 人の話というか、言い訳くらいは聞いてくれよ頼むから――――っ!?」

「あっは~ん♡ 一夏君のえっちぃ~♡」

「アンタもこういう時に限って悪乗りしまくる癖やめてくださいよ会長――――っ!?」

 

 

 九月の初秋。今日もIS学園は平和で平和で、どうしようもなく平和すぎて。

 人の心と頭と脳みそが腐り始めている気がしてならなくなる日常に満ちあふれている場所でもあるのであった・・・・・・。

 

 

つづく

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