シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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更新です。今回もまたドタバタになっちゃいました。
やはり自分には福音戦辺りまでが最盛期なのかなーと黄昏交えはじめた今日この頃(原作で一番好きなのが三巻なのと、昔好きだったIS二次作が福音戦までで完結するのが多かったから)


第22話「ハートブレイカー共」

「一、二! 一、二!」

「たああああ――――!!」

「目標補足! 撃ちます!」

 

 IS学園第三アリーナ。凰鈴音と織斑一夏の試合にも使われたこの場所は、休日にもかかわらず上昇志向の強い生徒達がIS訓練に明け暮れている。

 当面の短期目標は近く迫ったキャノンボール・ファストで上位入賞すること。

 

 ・・・まぁ、そもそもにおいてIS学園は国外から来ている訳あり転校生兼代表候補生たちを除くほぼ全員が『プロのIS操縦者を目指している』事前提であるが故の学費全額税金払いな国立機関なのだけれども。

 

 

『今年は例年にないほど代表候補と専用機持ちが多すぎるうえに、一年のニューフェイスは話題性に溢れまくった個性的すぎるファンキー集団で形成されてるし、頑張ったって良いところは全部持って行かれるさ』

 

 

 ・・・とかの斜に構えた視点で(だけど多分正しい物の見方)事象を見ている生徒も多いわけで、専用機持ちだから量産機の順番待ちしなくていい訓練時間多くとれすぎの代表候補生たちでさえ普通にスペースの一部を使わせてもらえてる。つくづく篠ノ之束の造ったISに平等性は欠片もない。

 

 

「あれ? セシリアじゃん。何、特訓? あたしは今から新型装備の展開練習するんだけど、一緒にやる?」

「鈴さん・・・。新型装備というと、やはり高機動パッケージですの? でしたら、ええ喜んで。望むところですわ」

 

 そんな風にして恵まれた境遇にある代表候補生の一人セシリア・オルコットは、同じ新型装備の高機動パッケージ同士である凰鈴音と訓練して、恵まれない量産機乗りどもと一緒にやるより闘争心を燃え上がらせて切磋琢磨し合い、一夏とシャルロットは訓練の合間の息抜きに休日デートを楽しんだりしていた。

 

 特権階級とは、得てして自分の恵まれすぎている境遇が当たり前になりすぎていて冷静で客観的な自己評価が出来なくなっているものである。

 

 

 さて、この時ジャンヌはどうしていたかと言いますと。

 

 

「オルコットも凰もせいぜい頑張んなさーい、応援していてあげるからさ~」

 

 どうせまともにやったら勝てないレースだからと、観覧席から見学コース一直線をにやけ笑いで愉しんでいた。

 

 体育祭の練習を体操服着て真面目にやってる同級生が頑張ってるところを普段着(この場合は制服。水着みたいなISスーツと比べりゃ制服でも普段着カテゴリーです)で見学という名目のもと見物してやるのは意味も無く楽しくて優越感に浸れるものである。

 

「「・・・・・・(イラッ!)」」

 

 そして見学されて応援までされてる側は、見世物にされてるみたいで妙にムカつくものである。

 

 もともとジャンヌとシャルロットのデュノア兄妹ならぬ姉妹は、二人で一人の代表候補生である。

 スピード重視でバランスタイプのリヴァイブカスタムと、パワー重視で突撃特化のノワール。互いの長所で欠点を補い合う形で戦うことができるタッグマッチでこそ最高の力を発揮できるよう機体も調整が成されてる。

 

 とは言え普通の試合形式では一対一が基本であり、各国勢力から一機ずつが参加して生き残った者勝ちの(スポーツなので勝ち残った者勝ちと言った方が正しいが)バトルロイヤル形式が一般的。

 

 二機が互いをカバーし合えるタッグマッチは、ただでさえ数が少ない適正持ち同士が相性抜群で国籍も同じであることが求められてしまう。学生時代は多国籍コンビが可能になるけど、卒業して国家代表になると却って足枷になりかねない。

 だから参加資格持ち自体がそれ程多くないのがタッグ戦の実情なので、デュノア姉妹のラファール二機も単独で戦うときのために対第三世代戦を想定してオールラウンドに戦えるよう特化型と汎用型とに別けられている。

 

 ――とは言え、向き不向きは当然ながら存在しているし、向いてない試合形式に参加しても碌な結果を出せないが一芸特化型。

 ノワールにレースなんて出られても勝てないどころか、最悪シャルロットが入賞してもジャンヌの成績で泥がつけられかねない。それぐらいだったら適当な理由をでっち上げて不参加にしてもらった方がいいし、片割れが出場さえすれば体裁も整えられる。

 

 周りから低評価で見られがちな第二世代機の強みと言えなくもない部分だ。

 第三世代一機分で二機というのは無理だったが、遅れている技術分野で競合するよりかは遙かに安い値段でリヴァイブの攻撃特化タイプの機体ノワールを造り出すことに成功している。お陰で今回のような場合にはフランスは恥をかくことなく、選手達にも楽をさせてやれるというわけだ。まさに一石二鳥! 貧乏暇無しによる手間暇が暇人をつくったよ!

 

「そーれ、ガンバーレガンバレ、ガ~ンバ~レ~。・・・ふぁ~あ」

「「・・・・・・(イライライライライラっっ!!!)」」

 

 同じ新装備の展開練習中コンビに加えて、うるさい外野がさらに闘争心をヒートアップさせまくり結果的に練習はメチャクチャ捗りまくった。・・・どちらからも感謝されることは未来永劫ないだろうけれども。

 

 

 そしてキャノンボール・ファスト当日。

 

 

『それではみなさん。これよりキャノンボール・ファスト一年生の専用機持ち組レースを開催いたします! 選手の方はスタート地点に移動してください』

 

 大きな声でアナウンスが響き渡り、超満員の観客が見守る中、シグナルランプが点灯する。

 

 3・・・・・・2・・・・・・1・・・・・・ゴーッ!!!

 

 

「行くぜ!」

 

 レースが始まり、各機が一斉にスタートする!

 広大な宇宙空間で活動することが前提にある高機動ロボットらしく、あっという間に一週目を回り終わって二週目に突入。一番争いでトップ集団が混雑しているところに一夏と箒も加わって集団戦をおこなおうとした次の瞬間。―――異変は起きた。

 

 

「・・・!? なにっ!? うわっ!!」

「きゃあっ!?」

 

 突如として空から降り注いだビームにより、トップを競い合っていたシャルロットたちが撃ち抜かれてコースアウトさせられていく。

 

「なんだ・・・あの機体は!?」

 

 上空から飛来してきた黒いISを目にした一夏が、驚きのあまり目をむく。

 この世界線だと初見の敵機、蝶の羽のようなブースターを背にした漆黒のビット兵器搭載機。その名も《サイレント・ゼフィルス》。操縦者は《エム》こと織斑マドカ。

 

 

 彼女は、まだ動ける程度にはエネルギーが残っていたセシリアや鈴を蹂躙してニヤリと笑う。

 

「茶番だな」

「何!?」

「死―――」

 

 ね、と台詞を最後まで言おうとして―――――吹っ飛んでった。

 

「へ?」

 

 一夏が突然走り抜けていった黒い旋風に掻っ攫われていった敵機の姿を探して・・・見つけた。コースの外周を覆っている壁に叩きつけられながら、両手で掴んで『顔面狙いで突き込まれているランス』に貫かれないよう全力で踏ん張りまくっていた。

 

「・・・あれ?」

 

 漆黒のIS同士のぶつかり合い。

 片方は襲撃者サイレント・ゼフィルス。もう片方は―――DQN厨二機体シャヴァリエ・ノワール。

 

 

「あーっはっはっ! 来たわね来たわね! 私のノワールの矛先に軍用ベレーをブッ刺されて持って帰られるために、わざわざ敵が来てくれたわねぇ!!

 奇襲を気付かせないために掛け声上げなかった分だけイラついてるから、その分も込みでアンタは念入りにぶっ潰してあげるわよぉぉぉっ!!!!!」

「貴様ぁぁ・・・・・・私の邪魔をする気かぁ!?」

「あったり前じゃないの! こう言うのを期待してたんだからね私は! レースみたいに『曲がる』だとか『止まる』だとか間怠っこしい単語を使わなくていい突撃できる相手こそ私が求める相手よ! 倒すべき敵よ!

 こちらに気付いてない敵がいたら、とりあえず奇襲かけてぶっ倒す! ゲームの常識よ! 当たり前のことじゃないのさ!

 現実は小説より奇なりなんだから、ゲームの手法も通じて当たり前! 一次元上なんだから気合い入れてはじき返して見せなさいよコラァァァァッ!!!」

「ぐ、お、お・・・おおおおぉぉぉぉぉぉっ!!!!!」

 

 

 エムちゃん必死。ビットを背後に回らせて背中から撃たせるとかの手も取れないぐらいに集中力が大事な状態になっちゃってます。

 何しろこのイノシシ少女、敵がテロリストと聞かされてるから問答無用で顔面狙いに切り替えてきちまっている。

 いくらエムが姉に固執して色々なもの捨ててきたとは言え一応は可愛らしい女の子。いきなり顔をブッ刺しに来る相手がいるなんて想定していません。つか、普通はやりません。

 ISバトルはこれでも立派なスポーツなんですからね。顔面攻撃有りなスポーツなんて、格闘技でもあんまり多くない攻撃箇所を何のためらいもなく狙ってくる辺り、ジャンヌちゃんマジ猪。

 

 とは言え所詮、第二世代は第二世代。出力が違えば、パワーも違う。不意打ちによる奇襲で狼狽えたけれど、落ち着きを取り戻し始めたエムによるビットコントロールに必要な計算力と空間把握能力が戻ってきたのを宙に浮かぶビットの動きから察したジャンヌは、『ここが攻撃の限界点』であることまでもを同時に認識した。

 

 

 ―――が。だからと言って置き土産を残していかない理由にはならないので、キッチリ置いていく。

 

「フッ・・・」

 

 エムが両手でランスの矛先を掴んだまま嗤い、ジャンヌを背後から狙い撃てるようビットを移動させた直後。

 

「ずおらぁぁぁっ!!!」

「!!!」

 

 ジャンヌは、捕まれていたショットランサーを発射。反動も利用して後方へ飛び、小威力ながらも突き刺さった後に爆発させることが出来るランスの矛先に仕込まれていた爆薬を爆発させて目眩ましとして一夏を回収。一機に後ろへと距離を取る。

 

 そこでようやく一夏覚醒。あまりにもヒドすぎる戦い方に唖然とさせられておりました。

 

「お、おいジャンヌ! 鈴達を置いて逃げるのかよ!?」

「だったらアンタも自分で歩きなさいよ!? 重力制御があるからって他人には恩恵得られないんだから、結構重いのよISって!」

 

 言われてみりゃその通りだったので、すぐさま自分の足で立ち上がる一夏。

 追撃が来ると思ってたら、何故だか爆発地点から動いていない敵の姿にいぶかしみつつ、次弾を装填し直したショットランサー片手に待ちわびているジャンヌ。速く煙が晴れてくれて突撃したくて仕方の無い女の子です。

 前にしか進めないイノシシは、行く先に障害物があると突破する以外のことは考えられなくなる生き物なのです。

 

 

「貴様ら・・・・・・この程度の小細工しか出来ぬ身でありながら、この私を虚仮にする―――」

 

 か、と最後の一言はまたしても言わせてもらえなかった。

 横合いから突撃してきた、黒くてゴツいISに顔面をブン殴られて壁へとリターンさせられていたからである。

 

「ジャンヌを倒すのは私だぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

「「ラウラ!? アンタ(お前)いたんだ!?」」

「居たぞ!? 最初っからずっとレースに参加していたぞ私は!? ただ、ジャンヌが出場しないと聞かされて意気消沈し、やる気を失ってどうでも良くなり適当に後ろの方をグダグダ走っていたから到着が遅れて、敵の不意を突ける瞬間を待っていただけだからな!?

 思わぬ時に思わぬ所を攻撃されるからこそ奇襲というのは成立するのだからな!」

 

 ラウラ、正論。最近だとジャンヌが絡んでないことにはとことんダメになる彼女ですが、これでも立派なドイツ正規軍の軍人。やる時にはやりますし、知ってることは知ってます。

 

 ただし、知ってる知識の中には知ってるからこそ素人のように喜べないものも含まれており、その中の一つに『奇襲』に関する事柄があった。

 

 言うまでも無く奇襲とはだまし討ちであり、相手の意表を突いて驚かせるところにこそ神髄があり目的がある。

 要するに、本命を隠すための陽動でしか役立たないのが本当の奇襲作戦というものだった。地力で劣る側が戦力の差を覆すのではなく誤魔化すため、局所的に一時的に有利な情勢を形成する、ただそれだけの効果しか望めない時間稼ぎこそが奇襲の神髄なのだから彼女としては正直やっていられない。

 

 これが対人戦だったら顔面・・・つまり軍で言うところの頭(指揮官)を潰せば敵軍全てに勝つことが出来る斬首作戦になり得るのだが、生憎とISにはバリアがあり斬首戦術は通用しづらい。顔面をブチ抜こうとしてもエネルギーを普段よりも大きく削れるだけで一撃勝利にはなり得ないのだ。

 

 だからと言って真っ正面から戦うには、悔しいが実力差がありすぎている。ジャンヌもそれを承知していたからこそ、深追いせずにザッと一発当てたらサッと退くヒット&アウェイの基本を遵守したわけだから、現時点でジャンヌよりも弱い自分が不意打ちしたぐらいで勝てるとはみじんも思っていないラウラだった。

 

 なにしろ敵へのダメージ量は見た感じより遙かに少ないのだ。初撃のランス爆破と今の拳による一撃しかない。

 どうせ満タン近いエネルギーの敵に砲を当てるのも全速力でぶつかっていくパンチを当てるのも大差なかろうと、より精神的にインパクトのある方を選んでみたのだが、果たしてこれが吉と出るか凶と出るか・・・・・・。

 

 相手は「フン・・・」とつぶやき、切れた唇から流れた血を唾と一緒にペッと吐き出すと露悪的な笑顔を浮かべてラウラを眺めながら揶揄するように言ってきた。

 

「この程度か、ドイツのアドヴァンスト。期待外れでガッカリさせられる性能だな」

「・・・・・・む?」

 

 言われた言葉を頭の中で反芻しながらラウラは、『なんのことだったかな?』と自分の記憶を古い順から捲っていき『忘れてしまってた』ことを思い出す作業に当てる。

 それから数秒して、彼女の生まれながらに優れた頭脳は『最優先記憶事項はジャンヌ』にしてしまってたせいで忘れかけていた記憶の残滓を探し当ててリカバリィしてくれる。

 

「ああ・・・そういえば私は作られた存在だったから、人間とは別種族の名前があるんだったな。そしてその名前は確か『アドヴァンスト』とかなんとか。・・・正直どうでもよいことだったから今の今まで忘れ果てていた名前だが・・・・・・」

「いいのか!? 自分の作られた目的と繋がりのある名前だぞ!? それを忘れるとは即ち自分自身の生みだされた理由を亡くしてしまうことに他ならならんのだぞ!?」

「そうなのか?」

「そうだ! そしてそれは自分が、世界との繋がりを断ち切られたことを意味している! 世界から愛されず、憎しみしかない闇の中で過ごす苦しみを貴様も覚えているのだろうが!?」

「知らんし、覚えておらん。とゆーか、愛情なんて強くなるのに邪魔なだけだろう? 

 より強い力を! パワーを追求し続けることこそ強さを求める者の基本だ。その程度のことも知らんのか貴様は?」

 

 

 ガ――――――――――――――ッッン!!!

 

 

「そ、そん・・・な・・・・・・」

 

 エムちゃん大ショック。

 ・・・一夏に負けず、一夏に惚れず、「強さはパワー」の信念持ったまま「ジャンヌ倒す!」に生き甲斐が変わっただけのラウラとエムの信念は相性が悪かった。と言うか、一方的にエムの方が傷つきまくってしまっている。

 

「強くなりたいのなら、憎むことだ。こいつに勝ちたい倒したい。コイツを殺すまでは自分は死ねないと思い続けさえすれば生き延びられるし、生きてさえいれば勝機を見いだせる時がいつか来るだろう。その時のために牙を研ぎ澄まし、必殺必中の技を編み出しておくのだ。

 長年練りに練り続けた呪いと怨嗟と勝利を渇望する気持ちを全部込めた攻撃を、相手の心臓に叩き込んで存在ごと終わらせてやるために!!」

 

 なんかモノスッゴく黒いことになっちゃってるラウラだったが、今の意見を聞いてジャンヌが表していった言葉を彼女は知らない。

 

 

「いや、そんなもん私にぶつけようとしてるんだったら止めてよね。恨み辛みとか怨嗟とか、なんかキモそうでヤだし」

「・・・ジャンヌ・・・俺は何故だか今一瞬だけ言いたい理由の分からない言葉を言いたくなっちまったよ。『お前が言うな』ってさ・・・」

 

 

 閑話休題。

 

 

「まぁ、そんなことはどうでもいいだろう。さぁ、来るがいい名も知らぬ敵兵よ! 私と戦え! 勝てぬとしても私は全身全霊でお前と戦うぞ。なぜなら私はお前の敵だからだ!」

「あ、う、ぐ、あ・・・・・・」

「私がどこの誰だろうと、そんなことは関係ない。戦場においては些末事だ。ここでは皆平等、皆同じ存在、戦場に集う者皆敵と味方! それ以外に区別など必要ない!」

「うあ、う、ひ、が・・・・・・(ガタガタガタ)」

「さぁ、来いよ。能書き垂れてないで、とっとと掛かってきて腕の一本や二本ぐらい食い千切ってから勝ち誇れよ。ハリー! ハリー!! ハァァァリィィィィィィッッ!!!!」

「ひ、ヒィィィィィィッ!?」

「いや、だからアンタはどこの戦闘狂な牧師さんになっちゃってんのよ、気持ち悪いから止めなさいって」

 

 冷静にツッコむジャンヌだったが、敵はもうそれどころではない。完全に世界観の違う次元の存在が舞い降りてきたかのような恐怖心に襲われてしまって、周囲のことが目に入っていない。

 

 そう、たとえば“彼女たち”のことなんかも見えてはいなかったのだった―――――。

 

 

「な、なんなんだお前はブワハァッ!?(ズゴォォッン)

 ――今度はなんだ!?」

 

 恐れおののきながら一歩二歩と退いている最中に後ろから奇襲攻撃。

 今日は奇襲されてばっかだけど、そもそも一番最初に奇襲してきたのは彼女自身であって、彼女たちの組織がやりたがってる戦争では、わざわざブザー鳴らしてから奇襲してくるバカなどいるはずないので、合わせてもらっていると解釈できなくもない。かなり強引な解釈変更だけれども、戦争中に条約違反の攻撃する時にはよくあることだ。気にするな。

 

 

『私たち(わたくしたち・僕たち・あたしたち)ISヒロインガールズ!!!

 紅椿の《絢爛舞踏》でエネルギーを回復させて今復活!!!!!!』

 

「数の上でも圧倒的な不利になぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

「「隙あり! テロリストにIS条約もISバトルのルール適用も関係ないから急所攻撃全然OKだよな!?(よね!?)」」

「ぐへはぁぁぁっ!?

 く、クソうっ! 今日のところはこれぐらいで勘弁しておいてやる! 次までにせいぜい腕を磨いておけ! てやっ!」

「うっ!? 煙幕か!!」

 

 ボシュッ! と音を立てて周囲を包む白い煙に視界を遮られ、ISの機能で短時間のうちに視界が回復した時には逃げられてしまっていた。

 さすがはIS不正規戦闘のプロ、退き際は鮮やかだった。

 

 こうして、IS国際レース日本版キャノンボール・ファストはテロリストに襲撃されたから中止という形で幕を閉じた。

 

 余談だが、今年卒業組で国際レースの成績がそのまま進路に影響する三年生達によるエキシビジョンマッチと、売り出し始めたばかりで熱心に練習していた一年生の量産機乗りたちのレースは、専用機乗り組みの後に予定されていたため延期とされてしまった。

 

 ただでさえ、使う宛てがキャノンボール・ファストしかない会場を修理するかどうかで市議会が揉めに揉めて、再開の目処は数ヶ月が経過した後でも立てられていないとか何とか。

 

 つくづく篠ノ之束の造り出したISは、スポーツマン精神の平等性とは無縁な特権階級のためのマシーンである。

 

 

つづく

 

 

おまけ「戦い終わった、その後で・・・」

 

ジャンヌ「しっかし、いつも思うんだけどさ。強さを誇示したがる敵キャラって、負けたことないって言ってる割には毎回逃げるの上手いわよね何故か。なんでだと思う?」

 

ラウラ「宣伝文句だからだろう。あるいは、『今までの自分は負けまくっていたが、今の自分になってからは一度も負けたことない』とか」

 

ジャンヌ「・・・商標詐欺って言わないかしら? それって・・・」

 

ラウラ「名を売り物にするとはそう言うことだろう? 実績ではなく名前に付加価値をつけようとするのが二つ名であり、異名なんだからな」

 

ジャンヌ「厨二の夢をブッ壊すのやめてよ~・・・(ToT)」


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