シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
「私はお前だ、織斑一夏」
「な、なに・・・・・・?」
「今日は世話になったな」
「!? お前、もしかしてサイレント・ゼフィルスとか言う敵のIS操縦者――」
「そう。そして私の名前は――――“織斑マドカ”だ」
・・・キャノンボール・ファストがテロリストに襲撃されて中止となった夜。織斑一夏は敵の夜襲を受けた。昼間に戦った敵の織斑マドカによるものである。
彼女としては端っから一夏以外には興味ない介入だったのに、余計な横やり(敵の事情など知らんイノシシたち)が入ったことで邪魔されてムシャクシャしてたから鬱憤晴らしのための単独行動に過ぎなかった訳だけれども。
ギリギリのところでトレーニング中だったラウラに助けられた一夏は手当を受けて寮へと戻り、ISガールズメンバー(-2名)から手厚すぎる看護を受けさせられて部屋へと戻ってベッドに横になっていると楯無会長が襲来。妹の力になってくれるよう頼まれたのだった。
「それじゃあ、お願いね? でも、無理はしなくていいから・・・・・・」
「らしくないですよ、楯無さん。いつもならご褒美で背中流してあげるとかなんとか言うくせに」
「そ、そう? あはは・・・ま、まあ、そういうのも、してほしいならするけど・・・・・・」
普段、人前では決して見せないテレテレの表情になって照れる更識楯無さん、とても可愛らしい。可愛らしいのであるが。
――可愛らしいからこそ特定の相手以外には見せてはいけない顔ってモノもある訳で・・・・・・。
「・・・ねぇ、アンタってさぁ・・・いつも思うんだけど、好意に鈍い朴念仁のフリして難聴系よそおってる羽瀬川小鷹さんタイプだったりしないわよね・・・?」
「だから何でお前はいつも最悪のタイミングでだけ俺の部屋に来る!?」
背後から忍び寄る黒い影、ジャンヌ・デュノアちゃんにしっかり目撃されてるのはヤバすぎました。
会長さん、部屋に忍び込むときに普段と調子が違ってプライベートの頼み事しに来てたこともあり緊張していて凡ミスしちゃってました。端的に言うと鍵を開けて扉を開けて中に侵入してから、開けたまま放置しちゃってました。
それじゃあ、たまたま通りかかって心配になったジャンヌが中を覗くぐらいしてもさほどは不思議じゃありませんよね? あ、一応声はかけましたよ? ヒソヒソ話中だったせいか今いち聞こえてなかったっぽいですけどねー。
「あくまで私見だけど、小鷹さんは女視点で見た場合には割と最低な人だと私は思う」
「だから何の話だよ!?」
ラブコメ読まない男らしい物好きな一夏に、日本のサブカルチャー全般が大好きなオタク少女の言ってる内容は意味不明だが、なんとなく本能的に否定しとかないとヤバい内容のこと言われてる気がして割と必死になってる一夏君。
逆に楯無さんは弱味を人に見られること慣れてないので、こういう時だけ年頃乙女らしく慌てふためいて役立たず状態。弁明に付き合ってくれません。むしろ悪化させてきやがります。
「ち、違うのよジャンヌちゃん!? これは、アレでソレで、つまりはそう言うことになって要するに、妹のことお願いしに来ただけなんだから!? 勘違いしちゃわないでよね!?」
「楯無さんズレてる! 誤魔化したい話の内容の誤魔化したい部分が微妙にズレてますから! 誤魔化せるけど別の誤解受けちゃうタイプの典型的な誤魔化し方ですからソレって!
ちょっ・・・割と本気でジャンヌが誤解し始めてる目になって来ちゃってるーっ!?」
「・・・・・・・・・」
ズォ~ンと、真っ黒い影を背景に背負って引き攣ったような顔をして見せながら微妙に上半身を後ろに引いてるジャンヌ・デュノアちゃん。完全に誤解しまくって来ちゃってますね。
実のところジャンヌは、一夏のラッキースケベイベントの被害者になったことがほとんどなくて、むしろ誰かとラッキースケベイベント起きたところへ出くわす場合が多い女の子だったりします。
その度に一夏を恐怖のズンドコへと叩き込んでは気を遣って去って行く思いやりに溢れた女の子でもあるのですが・・・・・・当然のように一夏に対する評価はダダ下がりしまくってます。急転直下の大暴落振りです。リーマンショックも真っ青ですよ、本当に。
なので周囲にとっての一夏が『朴念仁・オブ・ザ・朴念仁』なのに対してジャンヌの中では『実は気づいているのに難聴系のフリして居心地の良い今の時間を長続きさせようとしている策士・小鷹さんの後継』みたいな扱いになってきてしまっており立場的にかなりヤバい状況にある。
理屈ではなく本能によって危機を感じている、実は人類を超えた超人類織斑一夏は、この時も絶好のごまかし要素を見いだして起死回生を図ることに成功した!
「そう! 実は昨日の襲撃事件みたいなのが次あったときに備えて専用機持ちのレベルアップを図りたいんだけど、会長の妹さんの機体が未完成で出られるかどうか分からないから手伝ってあげて欲しいって頼みに来たんだよ!」
ほら、会長って体面とか面子とか色々あって人に頭を下げるとこ見せづらい役職だろ? だから夜分にお忍びでコッソリ来たらお前が入ってきて驚かされたっていう流れなんだよ。分かるだろお!?」
「はぁ。まぁそうね、分かるわね」
――なんかまた面倒くさい他人事に巻き込まれて引き受けちゃったんだろうなーって、事がね? ・・・とは正直に言わない、ひねくれ者のジャンヌちゃん。
他人の厄介事なんて巻き込まれたら嫌だと思うものトップ10に入ること間違いなしな代物なのだから、藪をつついて巻き込まれたりしたら堪らなかった故の行動である。
気づいているけど気づいてない振りをして、相手を安心させてやりながらイベントシーンより離脱する。やってることは小鷹さんなジャンヌちゃんも立派に難聴系主人公の一人。
やっぱり人類皆ぐみ(だから、もう言いっちゅうに!)
「む? なんだジャンヌ、織斑の部屋に規則破りでもしに来ていたのか? 何なら手伝うが?」
「うおわぁっ!? ら、ラウラ! アンタなんで私の後ろにいきなり立ってるのよ!?」
「なんでも何もない。日本ではライバルと認めた相手の背後には、黙って回り込んでから伝えなければならない習慣があるらしいと聞いたのでな。私はそれを実践しているに過ぎん」
「『残像だ』かよ!? だったら私は『黙って俺の後ろに立つんじゃねぇ!と問答無用で殴り飛ばす』を実行するわよ!? それでもいいの!?」
日本のサブカル的お約束文化を習慣と言い張り、言い合う二人。
それを聞かされながら「そんな文化は日本にねぇ」とツッコみたくなる、意外と愛国心旺盛で郷土愛が強すぎるあまりイギリスの代表候補貴族と文化の違いから国際問題起こしかけた経験がある織斑一夏だったけど、話が逸れてくれたこと自体は嬉しいので素直にツッコめなくなってる織斑一夏でもあった。
あっちを立てれば、こっちが立たず。人間関係はやはり難しい。
「学園特別規則第一条『男子の部屋に女子を泊めてはならない』だ。この前規定されたばかりだろう? 忘れていたのか?」
「・・・え。何その規則、私知らないんだけど・・・・・・」
唖然とするジャンヌ。それほどに衝撃的な内容だったのだ。
あまりにも衝撃が強すぎるあまり「それってルールないとやっちゃう奴がいると思われてる時点でダメすぎるんじゃない?」と言うような、普段の常識ツッコミすら入れられない程の圧倒的すぎる衝撃力だったのである。
・・・なんで、私が知らない寮のルールをコイツが知ってるの・・・?
・・・なんで私に知らせて来る奴がいなくて、コイツに教えに行った奴がいるわけ・・・?
・・・・・・コイツは、私以上のボッチだったはずなのに一体どうして!?
――そんな感じの衝撃の受け方。比べる対象が友達よりも強さを求める修行系ボッチという時点でダメすぎるのだが、そこまでは考えが至ってないひねくれ系ボッチ少女のジャンヌ・デュノア。やはり人は自分のことほどよく見えない。
「この前、寮生の間で規定されたのだが・・・なんだ? お前知らなかったのか? 今や泊まる気など欠片もない、私でさえ知っている寮生にとっての常識だぞ?」
「なん・・・で・・・? どう・・・して・・・? だってアンタ、ボッチだったじゃないの!? いつの間に他人とコミュニケーション取るようになったのよ!?」
「ふっ・・・」
ライバルの醜態を勝ち誇った視線で見下ろし、せせら笑うラウラ・ボーデヴィッヒ。
かつては同じ視線をISアリーナで織斑一夏に浴びせたものだが、それが今となっては一夏の部屋で腕組みしながら素手のまま、語って聞かせるのみ・・・つくづく人は成長するものである。大きくなったなぁ-、ラウラ・・・・・・。
「今の私を以前までと同じに思ってもらっては困る。人は変わっていくものであり、進化し続ける生き物なのだからな。私も常にお前を倒すため努力し続けている以上日々変わっていっているのだよ!
そう! なにしろ今の私は他の寮生に対して『ホウ・レン・ソウ』を徹底できるだけのコミュニケーション能力を獲得しているのだから!!!!」
「な、な、な・・・・・・なんですってぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!?」
ガー――――――――――――――――――――ン!!!
ジャンヌ驚愕! まさかそんな、あり得ない!?
ボッチにとっての明鏡止水とも呼ぶべき『ホウ・レ・ソウ』に、ラウラが自分よりも先に到達して習得していただなんて!!!
「そん・・・な・・・・・・バカ、な・・・・・・」
ガックシと両手を床についてうなだれるジャンヌ・デュノア。
自分が人と触れあうために被っていた、お嬢様の仮面を居心地がいいから脱ぎ去ったままにしている間に、ライバルはこうまで差を付けていただなんて・・・っ!!!
「いや、出来て当たり前のレベルだと思うぞ? その程度なら・・・」
「むしろ、出来るようになったと誇っている今を恥じるべき低レベルな争いよね? それって・・・」
・・・コミュ力高い外野からヤジが飛んで来てるけど、衝撃のあまり一時的に自閉しちゃってるジャンヌの耳には届かない。
他人な上に男子部屋で精神的に自閉する少女、ジャンヌ・デュノア。ある意味もの凄ーく高いコミュ力の持ち主な気がするが、こう言うのが自己評価と自己満足が重要となる問題なので他者からの客観的評価はあまり意味を成さないので効果なかった。やはり人は自分は見えない。
(ま、まさか今となっては私よりもラウラの方がコミュ力が高くて、友達が多かったりするんじゃ・・・? ――い、いいえ! あり得ないわ! だって私にだって友達いっぱいいるんだから!
たとえば・・・そう! お姉ちゃんとか!!!)
姉を友達にカウントしている時点でダメなことに気づいていないダメすぎるボッチ少女のジャンヌ・デュノア。
なんかもう、最初の頃に話してた試合のこととか会長の妹の件とかどうでもよくなったまま幽鬼のように「ユラ~リ・・・」と立ち上がり。
「じ、ジャンヌ・・・? えっとぉ・・・大丈夫か・・・?」
心配そうに気遣って声をかけてきた一夏に『嫋やかな笑顔』を向けて、
「あら、お気遣い頂きありがとうございます一夏さん。嬉しいですよ」
優しい口調と態度で礼を述べて、周囲を凍り付かせる。
「それでは皆さん、わたくし少々急ぎの用事を思い出しましたので、これで失礼させて頂きますね? お詫びの埋め合わせは後日しっかりさせて頂きます。それでは」
スカートの端を両手でつまみ上げ、お嬢様らしい笑顔を浮かべてお嬢様らしく丁寧に頭を下げて一礼し、ゆったりとした歩調で部屋を出て戸を閉める。
そして―――――
どどどどどどどどどどどどどどどどどどどどッッ!!!!
―――もの凄い勢いで走り去っていった。
向かったのはおそらく・・・・・・
「友達を作りに行ったのだろうな。方向から見て、おそらくは先ほど生徒会の奴らが張り出していった『専用機持ち限定のタッグマッチ』に関するポスターを目にすることになるはず・・・これは明日から荒れるやもしれん」
「「・・・・・・・・・」」
対テロリスト対策の自衛能力向上を目的としたイベントだったはずのタッグマッチに、滅茶苦茶不純で、趣旨とは関係ない理由での仲間集めに走り出したフランスの代表候補が熱意を燃やし、一夏と楯無を唖然呆然とさせてしまったジャンヌ・デュノアによる暴走。
近くおこなわれるIS学園タッグマッチは、波乱に包まれそうな気配が漂い始めてしまったが一体どうなる!?
待て! 次回!!
・・・つづく
おまけ『次回使うネタの予告』
ジャンヌ「正直、殺すつもりで実弾撃ってくるテロリスト戦想定して、殺すどころか重傷もNGな実践形式の試合を一日やるだけのことに何の意味があるのか甚だ疑問なんだけど・・・」
ラウラ「まぁ、やらんよりはやった方が少しはマシと言う奴ではないのか? たぶん。少なくとも『やっておけば良かった』等の後悔だけはしなくて済むようになるのだし」
ジャンヌ「その割には責任者の会長さん自らが姉妹仲修復のために私的利用する気満々のイベントなんだけどね・・・」
ラウラ「今更だな。そもそも本気で危機感を抱いての防衛訓練なら、学校行事として衆目に公開したりはせんよ」
楯無「二人とも、妹に嫌われてるお姉ちゃんを少しは慰めてよ~・・・(ToT)」
書き忘れてたから補足で説明:
ラウラが「一夏の部屋に止まるの手伝う」と言った件について。
門番破りや無断外泊の手段に無い知恵を絞る士官学校生のノリ。
ラウラ「あの頃が懐かしいぜ・・・は、日本の伝統なのだろう?」