シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
箒の新しいルームメイトにジャンヌがなってたらの話を、短い説明文の練習作品として書いてみたお話です。
ジャー。
IS学園寮にある自室で篠ノ之箒がシャワーを浴びていると、扉のある方からノックをする音が聞こえてきた。
そう言えば今日から、一夏の代わりとなる次のルームメイトが来ることになっていたことを思い出した彼女は、軽く身体を拭いてバスタオルを巻き付けると浴室を出て扉の方へと向かっていった。
ガチャ。
「どーも」
「む。ジャンヌか・・・お前が新しいルームメイトとは意外だな」
「あっそ。私だって不本意ではあるんだから我慢して」
性別を偽り男として学園に入学した兄役のシャルロットは、シャルルとして織斑一夏のルームメイトの座を幸運にも得られることになった。
が、その代わりとして余ったジャンヌの落ち着き場所が必要となり一夏が抜けて再び二人部屋で一人になっていた箒の元へとやってこさせられた。そう言う話だった。
「そういう訳なんで、一年間よろしくー」
「ああ、これから一年よろしく頼む」
おざなりな態度ながらも手順だけはキチンと守って挨拶するジャンヌを、外国人という基準で見れば及第点かと判断した箒が受け入れ二人の共同生活が始まったわけだけど。
そんな二人の間に、爆弾はいきなり落とされた。
「そう言えばさー」
「ん? なんだ? 何かわからないことでもあったのか?」
「アンタって、何でそんなにオリムラのことが好きなの?」
「ぶばぁっ!?」
突然の不意打ちに飲んでいたフルーツ牛乳を、鼻からも口からも吹き出しまくる篠ノ之箒。
風呂上がりの一杯を強制中断させられて色んな意味でもがき苦しむルームメイトの醜態を落ち着いて眺めながら発言者のジャンヌ・デュノアは「シラーッ」とした目で観察してるだけ。
なぜなら厨二の趣味は人間観察。基本です。
「な、な、な!?」
「いや、そんなに驚かなくても・・・。わかるでしょ? 見てりゃ誰だって。あれだけ解りやすくベタベタしようとして解らない方が頭か目か脳がおかしいだけなんだし・・・」
「い、何時から気がついていた!? 私の・・・私の決して知られてはいけない秘密にぃ!?」
「最初から。それに多分、皆もうすでに気づいてると思うわよ? 会って間もない私に分かるくらいだもの。それでも気づかないフリして見守ってあげてんのよ。優しいじゃないの、この学校の偽善者たちみーんな、ね・・・ウフフフ・・・」
厨二らしく『俺ガイル』の愛読者であり比企谷八幡の大ファンである彼女なりに捩った表現で名台詞を再現して悦に浸る厨二病で高二病な彼女。
「・・・なんてことだ・・・・・・」
対して、ラノベ読まずに典型的なラノベのツンデレヒロイン役を熱演しちゃってた篠ノ之箒はガックリと膝を突き、身に纏っていたバスタオルを「バサリ」と床に落とす。
「ちょっ・・・!? なにやってんのよアンタは!?」
スタイル抜群の全裸を予想外に晒させてしまったことにより、根が善人なひねくれ少女ジャンヌは狼狽えざまを丸出しにしながら箒を引き摺るようにベッドまで連れて行って話を聞いてやることにした。
なんだかんだ言いながら優しいジャンヌちゃんである。
「実は・・・・・・」
そうして箒は語り出す。
自分が一夏に惚れた小学校四年生の時の出来事を。
それ以来、どれだけ一夏のことを想ってきたかを。
一秒たりとも忘れたことなどない熱き思い出の記憶の数々を―――。
「箒・・・アンタそれって・・・・・・」
話を聞き終えたジャンヌが複雑そうな顔でつぶやこうとするのを、箒は悟ったような笑みを浮かべてゆっくりと拒絶する。
「言わなくてもいいさ、ジャンヌ・・・。自分でも分かっているのだ。こんなものは子供の頃の自分が抱いた勝手な幻想。相手に共有して欲しいと願うのは身勝手な願いなのだと言うことぐらい、私だって本当は分かっている。分かっているのだ」
そう、わかっていた。一夏が覚えていなかったとしても仕方がないのだと理解していた。
――ただ、それでも諦めきれなかった。覚えていて欲しい、想っていて欲しいと願ってしまった女の浅ましき願望・・・。
それが自分の思いの正体であることなど、箒にだってとっくの昔に気づけていたのだから・・・。
「ただ、これだけは分かってくれジャンヌ。私は自分の想いを声に出すのに虚言は一切用いなかった。今のは私の本心から出た言霊だ」
ハッキリと宣言する箒。
それならばと、ジャンヌも覚悟を決めて自分の抱いた感想をハッキリと声に出して断言する。
「そう。じゃあ言うわね。――スッゴく粘着質で気持ち悪い女ねアンタって・・・」
「うおぉぉぉぉっい!?」
ハッキリ言われた! 言われちゃった!! 薄々は感じていなくもなかったんだけど、それでもここまでハッキリと声に出して表現されるだなんて思ったなかったですわよ私は!?
「小学生のころ好きになった相手を高校生になるまで想い続けてたって所がヤンデレ臭い。
ガキンチョの時の記憶を相手の男がらみの部分だけ鮮明に思い出せてるところが気持ち悪い。
自分が好きになった小学生のときのままを高校生の相手にも求めているところがショタコン臭い。
・・・え、もしかしてアンタってそう言う趣味の人でしたか? すみません、私そう言うの理解できないんで近寄らないでください。最低限3メートルは離れて話しかけてくれないと身の危険感じさせられちゃいそうなんですけど・・・・・・」
「お前少しぐらいは言葉選んで気を遣えよ!? 仕舞いには泣き出すぞ私は盛大に!?」
箒は、言葉でもISでも白兵戦でも勝てない相手と直感した瞬間、泣き落としに掛かってきた! これでも負の実績は結構あるから説得力は抜群のはずだ!
「言っておくが脅しではないぞ!? 前科はいっぱいあるのが私だからな!? 高校生にもなって全裸の女子高生を泣かせたフランス代表候補生などという不名誉な名を背負いたくなかったら今すぐそのおしゃべりな口を閉じるのだ! いいな!? 分かったか!?」
「わ、わかったわよ。分かったから落ち着いて・・・ね? さすがに私も言い過ぎたと思ってたところだし、これ以上は私も言う気がなかったから・・・ね?」
「うん・・・」
慰められて途端にしおらしくなる篠ノ之箒。基本的には傷ついてるときに優しくしてもらった相手には無条件で素直になれる女の子である。
都合がいいチョロい女つーっか、安い女という方が正しいような気がしてくる篠ノ之箒、十六歳、高一。
「あと、コレ・・・父が経営している会社の関連施設でIS操縦者も掛かりつけに使ってる総合医療病院のパンフレットなんだけど良かったら・・・。専用機って脳と直接つながるからソッチ系の病気には事欠かなくて・・・」
「お前の慰め方最低だなーっ!?」
あまりにもヒドい対応を真顔でされてしまって、却って傷つくしかない箒。
そりゃまぁ、自分の想いが世間一般から見たら色々と普通とは違うことぐらい自覚していましたけども!
それでも、離れてから長年想い続けた幼馴染みの熱い想いとか! 愛情とか! 支えようとする良妻賢母精神を讃える言葉とか! 色々あって然るべきだろ! 色々と!!
「あとコレ、日本人はこう言うのも気にするって聞いてたから、いざという時のために墓石のパンフレットなんかも・・・・・・」
「いくらなんでも最低過ぎる!?」
恋愛相談して墓石業者のパンフレットを差し出されてしまった日本初のIS操縦者篠ノ之箒。
これはこれで幼馴染みと二人で一緒に世界初のペアルックと、言えなくもないですね。こじつけにも程がありますけども。
「それからコレ、各種保険会社の資料も参考までに取り寄せといてあげたけど、もし良かったら・・・・・・」
「もうええわい!!」
IS学園寮で今夜も響く、妙な感じのガールズトーク。
世界第三位のシェアを誇るジャンヌの実家デュノア社は、現在経営難で絶賛会社が傾き中の、金になるならどんな小金も無駄に出来ない「お客様は救いの神様です!」状態にあるIS企業です。