シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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第3話「ドイツの冷氷とフランスの猪の噛みつき合い」

 その日、IS学園は朝っぱらから賑やかだった。

 賑やかと言うよりかは、ヒソヒソ、ヒソヒソと小声でささやきを交わしあう静かな喧噪と表現した方が正しいのかもしれないが、とにもかくにもIS学園校門前には人だかりができていて賑わいを見せていたのは確かだ。

 

 人だかりを形成している中心には二人の少女が存在し、一つの看板を二人並んで仲良く持ち合っている。

 

 その看板には大きく太字でこう記されていた。

 

 

 

『私たちは夜中に暴れて校舎を破壊しまくった大馬鹿者です』

 

 

 

 ーーーそう書かれた看板を持たされている、頭に大きなタンコブをこさえた二人組の少女たち。

 ドイツの猪ラウラ・ボーデヴィッヒと、フランスの火の玉娘ジャンヌ・デュノアである。

 それぞれ祖国である生まれ故郷では『ドイツの冷氷』『世界三位のシェアを持つ大手IS企業のお嬢様』と呼ばれていて、恐れられたり愛でられたりしているはずなのだが、今のこの姿はどう贔屓目に見ても『悪いことして担任の先生から罰を与えられた子供』としか映らない。

 

 それでも彼女たちは国家を代表する超エリート。

 国防を担うIS操縦者にして、専用機を与えられてる国家代表候補生。十六歳。

 

 

 ・・・・・・まるでIS社会の矛盾が形となったようなヒドすぎる画面がここにある・・・。

 

 注:『冷氷』とは氷のように冷たくて冷厳なイメージを与える人を指して使う場合が多い表現方法で、『お嬢様』は以下略。

 

 

 

「・・・・・・恩師の七光り」

 

 ジャンヌが言った。ボソッとした声でつぶやき捨てていた。

 もはや隠しても隠しきれないことをしてしまった(晒してしまった)後なので、本性そのままのハスッパな口調で吐き捨てるみたいに小声でつぶやいていた。

 見た目とネコの皮にだまされて先週発売されたばかりの「IS学園美少女操縦者ランキング最新号」を購入した日本のロボット少女オタク達は泣いていい。

 

「・・・・・・シスコンレズ妹」

 

 ラウラも言った。ボソッとした声でつぶやき返してた。

 元から性格が負けず嫌いな少女である。おまけに無礼な態度をとられても、相手が興味のある相手かそうでないかで反応が百八十度変わってしまうオール・オア・ナッシングなところもある好き嫌いが激しすぎる性格の持ち主でもある。

 『ドイツの冷氷』という異名と、ナチス・ドイツの士官服風に改造された制服姿から冷戦沈着で冷厳な女軍人を想像して「IS学園美少女操縦者ランキング最新号」を購入した日本のドイツ第三帝国オタ・・・以下略。

 

 

「・・・・・・雨の日に捨てられた野犬」

「・・・・・・姉離れできない女子高生」

「・・・・・・捨てられても未練たらたらヤンデレ弟子女」

「・・・・・・いい歳して不良を格好いいと思ってるガキ」

「・・・・・・自分を捨てた女を想って枕と布団を濡らす夜。手洗いで下着を洗う休日」

「・・・・・・姉と仲良く過ごした妄想日記。姉妹で遊ぶ禁断の脳内シミュレーション」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

 

 一拍置いて。

 

 

 

 

『・・・・・・なぜその事実を知っているーーーーーーーーーーーーーっっっ!?』

 

 

 

 ーーー二人同時に大爆発!!! どうやら類友だったせいで互いの急所ポイントを無自覚に無意識に意図すらせずに抉ってしまってたらしい!! 効果は抜群だ! お互いに!

 

 

「こ、殺す! 絶対に殺す! それを知ってる人間を生かしておいたら私が死ぬ! 死ななくちゃいけなくなるから先に殺すわ確実に!

 もし、失敗して出来なかったときには死んでやる! 地獄の業火で焼き尽くされて処刑されてやるんだからぁぁぁぁぁぁっ!!!!」

 

「それはこちらの台詞だ絶対殺す! 殺してやる! ドイツの恥部を知ってしまったお前を生かしておくことはドイツにとっての巨大な損失! 消さねばならない殺さなくてはならない! 祖国のために! 祖国の名誉のために! ジーク・ハイル!!」

 

 大声で叫び合う「殺す」コール。

 ちなみに今の時間帯は朝の午前中であり、IS学園は登校時間の最盛期である。話してる間に(罵り合ってる間に?)生徒達でごった返す時間帯に差し掛かっており、学生寮から学園へと続く道のりも入り口だけは同じ門を通るので(そうでなければ晒し刑の意味がない)大半の生徒達からは丸見え&丸聞こえなのだが、互いに互いのことしか見てない二人は気づいていないし気づけない。

 

 基本的には猪突猛進の一本気娘であり、単純明快シンプル・イズ・ザ・ベズトを好む二人。「気にくわなかったら、とりあえず殺す!」を地で行く彼女たちは以外と似た者同士で単純バカなのである。

 

 従って、自分たちの周囲に集まってきている生徒達の存在には気づいていても気にしていない。その中に誰が何人混ざっていようと些細な些事だ。端数として切り捨ててしまって構わない。

 たとえその中に、鬼のオーラを背後に顕現させて歩んでくる世界最強の旧師がいようとも。にこやかな笑顔を湛えながら拳を握りしめている優しい優しいヤンデレ姉が混ざっていようとも関係ない。今の自分たちにとって大事なのは、目の前にいる小憎らしいあんにゃろうをブチ殺すことのみ!!

 

 

「来い! 『シュヴァルツェア・レーゲン』! 全面に立ちはだかる敵を蹂躙する!」

「来なさい『キャヴァルリィ・ノワール』! 今度こそドイツの国旗に旗をブチ立てるのよ!」

 

 シュピィィィィィィィッッン!!!!

 

 ・・・・・・ツカツカツカーーー

 

『死ね!(死になさい!)全力全快! 《イグニッション・ブース・・・・・・》』

 

 

「「バカは一度死ななきゃ直らない(よね!)!!」」

 

 

 ガン! ゴン! ドゴゴゴゴンッ!!!

 

 

「ぐふぅっ!?」

「どむぅっ!?」

 

 

 一夏でおなじみの後頭部ではなく、鳩尾への直撃を狙って放たれた容赦ない一撃×2。

 気絶するには至らない、絶妙な力加減で放たれたソレらは、二人を地獄の苦痛に突き落とし、地獄ののたうち周りをゴロゴロゴロ学園前の校門前で繰り広げまくらせまくっていた。

 

 

「まったくお前達は・・・昨日の晩にISの無許可使用を禁じられたのを忘れたのか? それとも三歩歩いた時点で忘れてたのか?

 貴様等の記憶力は鶏以下か? 鳥以下なのか? 1M頭のドイツ代表候補とフランス代表候補ども」

「ジャンヌ~? ダメだよ専用機持ちの国家代表候補がプライベートを赤裸々に無許可で語ったりしたら、メッ! なんだよ~?」

 

 いつも通りに怖い怒り顔の織斑先生。ラウラは蛇ならぬ竜に睨まれた蛙のごとく怯えきってフルフル首を左右に振りながら命乞い。

 

 対するジャンヌは別の危機。

 家庭の事情を(痴情を?)耳目のあるところで晒しやがった妹に、お姉ちゃんが激怒状態です。

 

「まさか、言っちゃいけないって知らなかった訳じゃないよね~? わかってて言ったに決まってるもんね~?

 当然、お仕置きされる覚悟で言ったことなんだよね? 悪い子になるつもりで、悪いことしてたんだよね? 悪い事して懲らしめられたかったから悪いこと言ってたんだよね~? ボクにはわかってるんだよジャンヌ? お姉ちゃんって言うのが誰のことなのかはよくわからないけどさ~」

「ち、ちが・・・そうじゃなく・・・・・・てぇ・・・・・・っ!?」

 

 痛みの中、必死に声を振り絞って言い訳を口にしようとするジャンヌ。

 だが、肝心のいい言い訳が思い浮かばなくて「あうあう」としか言うことが出来ない。

 

 彼女とて、わかっているのだ。過去の経験からこういう状態になった姉を相手になに言ったって逆効果にしかならないことぐらい。

 

 言い訳したら罪が重くなる。罰が辛くなる。厳しい厳しいお仕置きレベルが上がりすぎてしまう!

 ・・・だけど、言い訳しないで黙っていると罪状を全面肯定したことにされてしまう。相手の言ってることが全面的に正しいと認めたことにされてしまう!

 

 言い訳しなけりゃ有罪確定。言い訳しても有罪は確定。ただ罰が重くなるだけという、形式ばかりの裁判ゴッコ。これではまるで魔女裁判!

 

「私・・・は、ジャンヌ・ダルクになりたくな・・・い・・・・・・」

「はいはい。痛みで意識が朦朧としているのは分かったから少しだけ黙っていようね? すぐに保健室まで連れて行ってあげるから・・・ね?」

 

 お姫様抱っこで深手を負った妹を運んでいってあげる王子様系のイケメンお兄様。普段だったら乙女な生徒と腐ってる生徒たちがキャーキャー騒ぐシーンなのに、みんな黙り込んで見送るだけ。静かに静かに二人の背中を見送っていく。

 

「・・・アーメン」

 

 誰かがつぶやいて十字を切る。

 

 

 ・・・・・・「これ以上校内でISつかった喧嘩をされても敵わないから」と言う名目で月末におこなわれる予定だった対抗戦のルールがペア戦に変更されて、「条約違反は連帯責任」と言い渡され、試合当日までは静かにおとなしく平和になったIS学園が戻ってくるのは、ジャンヌ・デュノアの終わらぬ悲鳴が学園中に響きわたってから数時間後のことである・・・・・・。

 

 

つづく

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