シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
時期的に遅れてしまって申し訳ありません。本気で思い出したの今日だったもので…。
今の時代・・・・・・大晦日の年越しに、人々は何をして過ごすのだろうか?
古くは家族とともに年末を迎え、年越しソバを食べながら赤白チームに別れた歌合戦を見る風習は廃れ、来る年を祝い、過ぎる年の出来事に思いを馳せながら、子供たちは明日にはもらえるお年玉に夢を抱く・・・・・・。
そんな時代が終わりを迎え、テレビの中で伝わる伝承としてのみ残された、神秘が薄れた現代に生まれ変わった神秘の担い手たち《IS操縦者》
呪文を唱えれば、手からロボットが飛び出してくるアニメの魔法使いそのものな現代の魔術師たちである彼ら彼女らにとって、運命の夜を迎えることになる当日を如何にして過ごしていたかと言うと―――
「なぁ、ジャンヌ。なんで俺は年末の朝っぱらから満員電車に乗って、東京まで遠出してきて、こんな人の大渋滞に巻き込まれて、寒い中を何時間も立ったまま耐え続ける苦行をおこなわなくちゃいけなくなってるんだろうな・・・・・・」
「・・・・・・うっさいわね。これ見よがしに皮肉ってんじゃないわよ、アンタが言ったんでしょうが。
“年末年明けは他のヤツと違って特別にやること決まってないからヒマだ”って。
だから荷物持ちに連れてきて、暇潰しさせてやってんだから感謝しなさい」
世界で唯一の男性IS操縦者・織斑一夏の姿はジャンヌと共に、東京のお台場ビッグサイトへと続く道に何キロ先まで並んでいる人の波の中間辺りに存在していたのだった。
例年恒例にして、日本の伝統的行事に参加する権利と資格と義務を、クラスメイトのフランス人少女から強制的に与えられてしまったからである。
彼女は外国から来た転校生にして、日本の専用機を密かに盗み出そうとした企業スパイの片割れという事情から、『高校生の間の3年間だけ』という契約で日本のIS学園に召喚されているが如き存在。
一つの地方の同じ場所で年に2回、数ヶ月に一度のスパンで開催され、その日のためにエネルギーを溜め続けて行われる大儀式にして、選ばれし者たちが己の願いを叶えるブツを手に入れるため集められ、激しい奪い合いを実行し合う命がけの争奪戦が行われる場所に参加することが出来るのは『3回だけ』しかない特殊な少女戦士。
まぁ正確には、夏冬1回ずつ行われるため合計すると6回になり、小規模だけど春や秋にも一応はやってるから全部合わせれば16回と結構余裕あるんだけれども。
目当ての宝が手に入るのは、一年に1回だけかもしれず、終わった後にショップで出回るブツの中には、来てくれた人限定でもらえる無料配布用のまでは含まれてないことが多いので、日本はあんま好きじゃないけど日本のゲームは大好きで、日本のサブカルチャー全般のオタク気味でもあるフランス代表候補生ジャンヌ・デュノアちゃんとしては、積載可能量限界まで買い込んで持って帰りたい願望が器に入りきらないほどデカかったので、一夏を巻き込んで来ちゃってました。
悪いとは思っているし、反省もしているけれど、今後も行動を変える気まではない。
それがジャンヌちゃんメンタリティー。貫き意思の強すぎるイノシシ少女は正月でも健在です。
「いや、確かに言ったけどもそういう意味じゃねぇよ!?
“特別な行儀に参加する予定はない”って意味で言っただけだったんだよ! 日本人の気遣い! おもてなしの精神を理解しろ転校生!!」
「・・・・・・Surprise! ワタ~シ、フランスのド田舎どんれみ村で生マレ育っタ世間知ラズノ小娘ダッタカラ分カリマセンデ~シタ、ってちょっと辞め!?
こんな所で怒って襲わないでよちょっと!? 人が見てんでしょうが! 人が! 人の目がっ!!
今のは私が悪かったから謝るから辞めてーッ!?」
とはいえ、ジャンヌの生き方貫き意思や方針がどうだろうと、巻き込まれただけと分かった一夏の側が怒らないでいてやる理由には特になりようもないので、普通にお仕置き。
恥を嫌うジャンヌにとって、抵抗しようのない場所での折檻には降伏する以外に選択肢がなく、あえなく撃沈。
国内事情によって一時期、何年間も開催できない日々が続いてたこともあったという情報をネットで知った時間制限ある彼女は危機感を抱かされ、買えるときに買えるだけ買っておこうと衝動的に頭数を求めてしまって、機体整備とか里帰りとかで母国に戻る者が多い専用機持ちの中で、実家に家族いなくて掃除ぐらいしかすることない一夏を騙くらかして無理やり拉致ってきちゃってたため―――普通に自業自得なヒドい目に合わされただけの結末だった。
「く・・・っ、この私が男なんかに、こんな屈辱を味あわされるなんて・・・・・・! 今に見てなさいオリムラ、この恨みは決して忘れない・・・・・・復讐の魔女に私はなって戻ってきてやるんだから!
じ、自分が勝ったとか思い込んで勘違いしないでよね!? 友達に噂とかされると私が恥ずかしいから!!」
「・・・・・・お前はなんで、今の流れでテレることが出来る上に、怒ることまで出来てるんだ・・・? そういう所は一年近く付き合っても、未だによく分からん・・・」
そして変な部分でツンデレるジャンヌちゃんは、年末でも平常運転なツンデレぶりを発揮して一夏を困惑させて溜息吐かせて諦めと共に受け入れさせる。
日常通りのパターンを、年末の学園外でも繰り返させている自分たち自身に気づくことなく、男子高校生と女子高生が年越しを男女二人だけで過ごしている状況に自覚もなく。
普通に行列並びながら、キャイキャイと雑談して、進まない列のヒマを潰していたのであった。
(・・・・・・しっかし、それにしても・・・)
一夏としては相変わらず過ぎる相手の言動に溜息を吐きつつも、“普段と違う相手の部分”には思わず多少は意識がもっていかれざるを得ないことは否定しきれない。
というのも今日のジャンヌは、服装だけでなく髪型も含めて普段と色々変わっていたのが、その理由だった。
キツ目の瞳には眼鏡をかけて、長めの髪はお下げの三つ編みにして左右に垂らし、ダッフルコートを着てマフラーを巻き、足下にはウールのブーツ。
女の子らしくお洒落と言えたかもしれないし、文学系の地味なファッションと言えるのかもしてない服装に、そういう事には疎い一夏は判断と評価に困り、視線を少し彷徨わせていたところ・・・・・・
「なによ? 私の格好になにか文句でもあるの?」
と、相手の方からジロリと睨み付けられながら詰問されてしまい、観念して両手を挙げる。
――もっとも、その判断は速すぎたことが即座に判明する結果になるのだが。
「・・・いや、普段は制服姿とISスーツ着たお前しか見ないから、その・・・新鮮だと思ってさ」
「ハン、成る程ね。そういう事か。しょうがないでしょう?
“変装ぐらいしないと私だってバレちゃうかもしれない”んだから。
こんな所の三日目に来てるとこを、誰かと出くわして見られちゃったりしたら、恥ずかしいじゃないの。だから正体隠してるのよ、それぐらい察して合わせないよ、この朴念仁」
「そういう理由で、その服装してたのかお前は!?」
驚きの真実カミングアウトに驚愕の一夏!
ジャンヌとしては不本意だろうが、相手からすれば正当な理由あっての驚愕という判決であり、双方から見た評価の食い違いは致命的なまでに隔たりがあったと言っても良いほどの物だったろう。
具体的には、祖国を救うため暴走しまくったファイヤーボールガール聖女の主観から見た国王様と、現実の政敵と手を結んで外敵追い払った国王様との違いぐらいに。
一夏からすれば、今まで散々に醜態さらしまくって恥の多い転校生生活送ってきてた記憶以外はほとんどないクラスメイト少女が気にしたところで、今更過ぎる懸念としか思えなかった訳だが・・・・・・。
って言うか、こんな所まで連れてこられた後の状態を見せつけられてる異性男子が自分自身なんだけど、それは?
「って言うか、今更お前にんな変な趣味あったぐらいで気にするヤツいねぇだろうが!
むしろ、お前が見られて恥ずかしいと思える友達なんて、簪とラウラ以外には一人もいないボッチじゃねぇか!」
「なっ!? なッ! ななななんてこと言うのよアンタは!? いるわよ! 友達ぐらいチョーいるわよ! 幾らでもいまくってるに決まってんじゃないのバカじゃないの!?」
「だったら言ってみろよ! 簪とラウラ以外でお前と仲いい友達の名前を幾らだっているんだったら言ってみろーっ!」
「いいわよ!言ってやるわよ! たとえば!
・・・・・・か、カンザシとか! 更識簪とか! カンザシ・サラシキとか! あ、あとシャルロットお姉ちゃんとか!!」
「いや、同じヤツだろそれ全員!? 同一人物だよな!? 言い方変えただけで同じ人間のこと何度も呼んでるだけだったよな今のって! あと、最後のだけは外しておいてやれ。
妹が姉を友達に数えてると分かったら、たぶん泣くぞ。お前と仲いい姉ちゃんが・・・」
「って言うか、ラウラなんか友達なんかじゃないんだから! 勘違いしないでよね人として恥ずかしい!」
「そっちはキチンと否定するのか!?」
もはや聞いてる方が恥ずかしくなる内容しか話せていない恥態っぷりを披露しまくる、日本のアニメ漫画オタクでボッチ少女のジャンヌちゃん。
それにいちいち付き合ってツッコんでやってる一夏と、二人だけの特殊空間展開してしまうところも相変わらずであり、年末になっても何一つ変われず進化も進歩もできていないダメ人間っぷりを盛大に学園外の有明でも披露しまくっていた。
・・・・・・ちなみにだが、そんなやり取りを交わす2人の姿を、客観的視点で冷静に評価する者が、もしこの場にいたとするならば。
『――チッ! チィッ!! イケメンが! リア充が! 美少女とイチャついて見せつけやがって場所選べよバカップル共が!!
ここはテメェらみたいのが来る場所じゃねぇんだよ! 一人で寂しく正月を過ごさないためのアイテムを求めてやってくるヤツらの来るべき場所なんだよ!
テメェらみてぇなのが蔓延ってるから世の中腐るんだ! 爆ぜろ! 消えろ! テメェらのいるべき世界へ帰りやがれリア充バカップル共が―――ッ!!!』
・・・・・・という風な感想を、外国人ボッチ美少女と素人イケメン日本人美少年という2人組でやって来て痴話喧嘩してるようにしか見えない自分たちを、周囲にいる大勢の赤の他人な独り身の男性たちから(+多少の女性たち)リアルタイムでリアル悪評を被りまくっていたのだが。
心の中だけの叫びだったため、当人たちには聞こえる事なく、気づく事すらもないままに、仲良いカップル同士のイチャつきとしか客観的には見えようのないやり取りを続けながら・・・・・・開幕時刻まで、あと2時間半。
そんな風にして、周囲の人たちの精神面に自覚なき大ダメージと大被害をもたらしまくりながら、開幕時間までは進みようのない列に並んでいた一夏とジャンヌの2人であったが。
少しずつ進んでいく時計の針が始まりの刻に近づいてきた辺りで、ジャンヌは戦いのための準備を始める必要を感じて、今この時だけ戦列を共にする戦友となった一夏に対して、戦場で生き抜くための術と武器とを手渡すことを遂に決断する。
「オリムラ、もうすぐ戦いが始まるわ・・・・・・その時に備えて今のうちに、コレを渡しておく」
「やっとかよ・・・・・・もう足が棒になったぜ――って、なんだよコレは? 水筒とサイフと・・・なんかの地図か?」
「いいえ、違うわ。これは勝利を約束するための聖なる武器――聖剣エクスカリバーよ」
「・・・・・・」
相手から覚悟の籠もった言葉を聞かされて、一夏は思わず真剣な瞳でジャンヌの瞳を見つめ返していた。
―――正気か? ・・・・・・という意味を込めて。
そんな視線を向けられたジャンヌもまた、大真面目な表情と瞳で一夏の顔を見つめ返す。
たとえ周囲に理解されずとも信じた道を貫いて、戦場で生き続ける人生を送ろうとも後悔はない、騎士の女王が如き澄み切った心で真っ直ぐに。
そして、
「・・・って、あれ? 地図だけじゃなく、もう一枚あったのか。なんかの名前が書いてあるみたいだが・・・えーと。
『どこでも英雄様と一緒♪ ポケット・キャメロットハウちゅ~♡』
『先輩、ここまで来たなら最後までイッちゃいましょう♡グランドオーバーの彼方まで☆』
『悪と正義が逆転した月面シンジュク領域!性反転した英雄たちも世紀末世界なら何でもアリ♡』
・・・・・・って、なんだこの変な名前の羅列は?」
「――え? あ! 違ッ!? そっちじゃなくてコッチ! コッチだから!! 勘違いしちゃダメー!?」
一瞬にして真面目な表情崩れて、真っ赤な顔してバババッ!!と音立てながら物凄いスピードで手渡したばかりの地図と自分が持ってた地図とを無理やり交換して、元いた場所へと戻ってきて「ふ~!ふ~!!」と威嚇する猫みたいな声あげながら距離おいて睨み付けてきて、
「・・・・・・・・・」
「コホン。コホン! ゴォッホンホン!!」
そして白い目付きで見下されたように見返されちゃったので、誤魔化すように誤魔化すための咳払いを連発使用。
「あ、アンタの担当は東館の一般向けだけだから! 18禁なんてアンタにはまったく関係ないんだからね!? か、かか勘違いしないでよ私が恥ずかしいだけだから絶対にダメ!!」
「・・・・・・まぁ、いいんだけどさ。俺もそんなもん担当させられたときには問答無用で帰ってたから別にいいんだけどさ・・・。お前、実は今日あんま寝てないだろ絶対に。
さっきから勘違いしないでが多すぎるし・・・大丈夫か? 本当に・・・」
本当に恥ずかしいセリフを言われて行動を見せつけられて、三日目の今日まで二日連続で参加した後だったことまで曝かれまくって、それでも進むと決意した火の玉聖女と同じ名前のイノシシ少女ジャンヌちゃんは立ち止まろうとは思わない。
「と、とにかく! とーにーかーく!!
・・・あそこが入り口、あそこからが戦場。戦いの火蓋が、あと少しで切って落とされる。
出陣よ。シェルジュ!!」
こうして、真面目な顔に戻って前だけ向いて、白い目を向けてきてるクラスメイト男子の方は見ようとせず。
自称変装モードのジャンヌ・デュノアは、彼女にとっての聖戦が行われる戦場へと一年ぶりに帰ってくる・・・!!
「これより開場です。部数は十分に確保してますので、走らないでくださーい!!」
そんな声がメガホン使ってアチラコチラから聞こえてくる中を、ジャンヌ・デュノアは走ることなく駆け足で進んで、小刻みなステップを踏みながら前の人を追い越すことなく、自然とすっぽ抜いて前へ前へと進んでいき、ターゲット・ロックオンした目標を外すことなく狙い撃つため、一直線に向かっていく。
本心を言えば、大手の本命を手にしたいと思ってはいるものの、サークル参加して最初から入っているか禁止されてる徹夜の行列しないと難しい。
時間ロスして終わる危険性が高い一般参加では、次点を本命として確実に確保することこそ現実的か・・・・・・そう考えたジャンヌは、狙った獲物を逃さないため先を急ぐ。
国民の血税使って国家が鍛えさせた、IS専用機持ちとしての身体能力を遺憾なく発揮し、見た目からは想像できないスピードと軽やかな動きで目標地点へと素早く到着。
・・・・・・凄まじい税金の無駄遣いを、誰にも気づかれないままドブに捨てまくってから列に並んで、人に可能な限りの最速順位で最前列まで進み出ると、新刊か既刊かだけ確認してから手を伸ばし、余計な動作など一切ない挙動でケバケバしい配色と構図の絵柄の本へと手を伸ばす。
限界まで無駄を省いた動きを、こんな所でこんな事やるために発揮しまくる、無駄だらけとしか言いようのない使い方で、目当てのサークルの本を購入するため売り子さんへと五百円玉と千円札と薄い本とを同時に差し出し。
『『新刊ください! 3冊ずつッ!!』』
“ハモった声”で注文を叫んでいた。
完全に同じタイミングで、完全に同じ本を掴み取り、一冊につき二山ずつ並んで陳列されていた同じ新刊3冊ずつへと手を伸ばし。
“一人の少女”と“一人の美女”は、全く同じ標的を同じ戦場で奪い合うライバルとして、はじめて―――出会った。
「・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
二人は同時に互いに互いの顔を見つめ合い、互いに瞳を僅かに見開き相手を見て。
二人同時に、
「ありがとうございました! 新刊3冊ずつで三千円になります!!」
売り子さんから言われた値段通りの代金を支払うため、互いに相手の顔を見つめ合いながら懐からサイフを取り出して、千円札を3枚ずつ見もしないで正確に取り出して売り子さんに渡して、受け取った本をキャリーバックとキャリーケースに入れあって、その間ずっと相手の顔から視線を離すことは一瞬もなく。
(コイツはただ者じゃない・・・・・・いったい何者!?)
と、互いに互いのことを声には出さずに思い合っていた。
お前が言うなよ思うなよ、と他人が聞いてたら言いたくなること請け合いな感想を、全く同じように相手に対して同じように。
(・・・この女、一般人じゃないわね。動きに訓練を受けたヤツ特有の仕草がいくつも見られるし、見た感じだけでも結構強そうだし・・・・・・しかも、この年齢でってことはIS操縦者かもしれない)
そう思いながらジャンヌが見つめる先にいる相手は、鋭利な美女だった。
短めの髪を綺麗に切りそろえて、赤い瞳は感情の薄い冷静そうな、あるいは酷薄とも言えるほどの冷たい光を放っている。
妙に軍人めいた雰囲気を感じさせる外国人女性で、今は私服をまとって着こなしているが、軍服を着たとしても違和感がまったくないのではないかと思われるほど。
片目にアイパッチをつけて隠しているところも、そういった印象を強めさせる理由になっていた。
・・・・・・ただ一カ所だけ、おかしな部分があるにはあった。
目につけている眼帯に、何故か『黒いウサギのキャラクター』を描いているのである・・・。
その点から見て、コスプレイヤーなのは間違いないが、見覚えのないキャラクターであり、ただのコスプレイヤーとは思えぬ強者の気配がジャンヌを緊張させる相手だった。
(にしても、この眼帯のマーク・・・・・・どこかで見た覚えがあるような気が・・・はッ!?
まさかコイツひょっとして・・・・・・ファンヌ・キャスクとかいうテロ集団の一員じゃ!?)
注:違います。あと、「ファントム・タスク」です。
『fan(扇)』『Caque(兜)』ってなんじゃい。
・・・・・・一方で、眼帯の美女の側もジャンヌに対して、似たような印象を抱かされていた。
(・・・・・・この少女、一般人ではないな。だが我々と同じ軍人でもない。訓練による条件反射での動きに僅かながら差異が見られる。
そうなると、軍事教練を受けながら一般生活を送る民間人ということになるが、そのような者が今の日本にそう多くいるのだろうか?)
眼帯に隠れていない右目を細めて相手を見ながら、彼女は減ったサイフに弾薬を補充し治しながら警戒は怠らず、相手の少女から目を離そうとは思わなかった。
彼女の名前はクラリッサ・ハルファーフ大尉。
ドイツ軍IS配備特殊部隊《シュワルツ・ハーゼ》の副隊長であり、通称を《黒ウサギ隊》とも呼ばれている精鋭部隊を預かる女性士官。
そして同時に、日本のアニメや漫画やラノベを愛好して日本を勘違いしている、どっかの国のイノシシ少女と微妙に似通った特徴を持った美女さんだった。
どうしても自分が外れることの出来ない任務を遂行して、完遂し終えた後であったが『未だ遂行中』ということにして、早く終わった任務の余剰時間を使って参加できなくなってしまったイベントにやっぱり参加するため、正体隠してやって来ている真っ最中だったのである。
(・・・あるいは噂に聞く、ファントム・タスクの一味なのかもしれん。とすれば捕縛して情報を得るべきところだが、ここでは被害者が何人出るか分かったものではない。
正体がなんであれ、今は泳がせるしかないだろうな・・・・・・そう、今はまだ慌てるような時間ではないのだから大丈夫だ。問題はあるまい)
という思考をしあった末、二人は無言のまま別れて別々の方向へと歩き出した―――はずだったのだが。
『『これ下さい。新刊と既刊を3冊ずつ』』
「はい、どちらも3千円になりまーす♪」
『『無料配布本は、まだ残ってますか? それから新刊も3冊ずつ』』
「はい! 新刊を、見る用、保存用、布教用の3冊ずつですね!
《神聖なる円卓の領域で受け止めて♪私のセクスカリ》ぶほわぁッ!?」
・・・・・・そんなこんなで色々な場所で、色々なスペースの前でかち合いまくり、女の敵を討伐クエストを一緒にクリアしたことすらあり。
その結果として。
ガシィッ!!
「・・・・・・何故かは分かりませんが、あなたとは他人という気がしません。会ったばかりだというのに・・・不思議ですね」
「ふ、同感ね。私もアンタとは以前どこかで会って、深い絆でも結んでたような錯覚すら覚えさせられたぐらいだわ。何かの縁で結ばれてたのかしら? 私たち二人共に」
「フフ、そうかもしれません。である以上、私は何かの絆で繋がりがあった仲間の素性を、深く知ろうとは思うべきではない・・・・・・仲間なのですから。そうでしょう? フロイライン」
「ふふん、なかなか口が上手いみたいね。気に入ったわ。それじゃあ私もアンタに合わせて、仲間の正体はジューダス様とでも呼んでおくことにしておくわ」
「・・・・・・なんか、よく分からんけど・・・・・・実の姉以外にも新しい友達ができたみたいで良かったな、ジャンヌ」
人でゴッタ返した会場の中で、さらに人の波に浚われそうになっちまって揉みくちゃにされながらも何とか脱出してきた俺が目にしている光景は、夕日が沈もうとしている海をバックにしてジャンヌと見たことない美人のお姉さんが握手し合いながら「ニヤリ」と笑顔を浮かべ合っている変な景色だった。
疲れた! オマケに虚しい!
ジャンヌにとってはどうか知らないが、俺にとっては何の得もない一日を無駄にしただけで終わった年越し昼間の過ごし方だった・・・・・・。
ああー・・・・・・もう、疲れすぎたから篠ノ之神社に初詣とか、初日の出見に行くとかしないで、帰ったらサッサと寝ちまって寝正月送りたい誘惑に駆られるけど、そうすると箒が怒りそうだしな・・・。
しょうがない。今年最後の締めくくりとして、箒や他の仲間たちも誘って盛大に新年の始まりを祝いに行くとしよう。そう思っていた俺だったのだが――
「フッ・・・なるほど。あなたは彼女と違って、なにも分かってはいないようですね」
「なん・・・・だと?」
「ええ、全く彼女の言う通りよオリムラ。あんたは何一つとして分かっちゃいない。その程じゃ新しい年の祈りなんて夢のまた夢でしかないわ」
一人の少女と、一人の美女からそう言われて俺は思わず頭にきて、彼女たちに詰め寄っていた。
気にくわない表現だったし、気にくわない言い方だった。
彼女たち女性がISが使えるってのは確かに凄いかもしれないが、だからって力を持ってるから人を見下して、碌に正しい答えを教えようともせずにダメだダメだと言ってるだけの奴らの言うことが正しいはずなんてないのだから!!
そう言うつもりで、相手が女性であることを一瞬だけ忘れて掴み掛かりたい衝動に駆られてしまった俺だったが―――その直後。
別の願望を、希望を。心の底から願うことになる。
『『帰りも並ぶのよ(ですよ)
あの懐かしき朝来たときに使った行列を、駅までね』』
誰か―――タステケ――――と
今話だけ、完
*出来ることなら、こういう年末・年明けを迎えたかった……という作者の願望を祈りに込めてたら思いついた今話の内容。
そのため思い付いたのが年明け以降になり、本来のジャンヌIS最新話として書き途中だった話は別にあります。
アニメ版2の【シャルロットのパンツ粒子化事件】を時間軸変えてやるつもりで書いてたのですが――。
こういう時世だと、マヌケなバカ話は出していいのか悩みやすいのが難点です…。