シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
「や。一夏、ボクたちの試合、見ててくれた?」
「おう。もちろんだぜシャルル。準決勝進出おめでとう」
ぱーん!と、やや身長差がある二人の男性IS操縦者(シャルロットの方は大部分から疑われてるけど一夏は気づいてない。鈍感すぎるから)はアリーナの通路にあるモニター前でハイタッチを交わし合う。
「次はいよいよ俺たちとの対戦だな。言うまでもないけど手加減しないぜ? 恩師に対して教えてくれたことを成果として見せつけてやるのが日本流の恩返しだからな」
「もちろんだよ。むしろ手加減なんてしたときには殴ってたところだったよ? こうボコッて感じにね。「恩知らずで不肖者の弟子めーっ!」って」
あはははと、朗らかに楽しく笑い会う二人。次の試合で戦いあう仲なのに、既にして親友同士みたいな好感度の高さです。
実はこの二人、互いのパートナーが原因で協力し合わざるをえない状況に追い込まれた者同士だったりする。
シャルルのパートナー、ジャンヌは言うまでもなく空気読まない暴走火の玉娘だし。一夏のパートナーは寄りにもよって、“あの”ラウラ・ボーデヴィッヒだ。そりゃ協力し合わないとやってけないし胃が持たない。
犬猿の仲のラウラと一夏が組まざるを得なくなった理由は至ってシンプル。
千冬姉さんから「組め。異論反論はいっさい認めない。どちらかが問題起こした時には同罪だ」と宣告されてしまったから。
ラウラとしても一夏はともかく、甘さを捨てて一時的に教官時代に戻った千冬を相手に逆らうことが出来るほどの胆力など持ち合わせていない。嫌々で渋々ではあったものの承諾して、一夏の存在ごと無視しながら試合も練習も行い続けてきていた。
そういう事情から一夏には、教師役が必要となったわけなのだが。どう言うわけだか鈴もセシリアも箒にさえも師事させてもらえなかった上に罵倒までされてスゴスゴと引き下がり、廊下で暇そうにしてたシャルルに相談したら「もし、ボクでもいいのなら」と地獄に仏な聖女様降臨の末に今へと至る。
「・・・しかし、ジャンヌの戦い方はスゲーよなぁ。ーーーある意味でだけど」
「うん、まぁ・・・・・・そう・・・だね・・・」
そっとつぶやく一夏と、そっと目を逸らすシャルル。
基本的には突進バカの気がある一夏でさえ(あくまで傾向があると言うだけ。考えれないわけではない)「アレは真似できない」と感じさせられるほど一度火のついたジャンヌは止められなかった。止まってくれなくなってしまうのだった。
「charge‼(シャルジュ/突撃)」
試合開始直後に叫んで飛び出し、突撃を開始したジャンヌは当然のように敵の弾幕で迎撃されたのだが、怯むことなくそのまま弾雨の中を突進し続けて勝利してしまうパターンを一回戦からずっと繰り返してきてるのである。
「シャルジュ! シャルジュ! シャルジュ!(突撃! 突撃! 突撃!)」
ひたすら同じ言葉を連呼しながら突っ込んでくるフランス社長令嬢の突撃は、思わず対戦相手の量産機乗りが顔を引き攣らせ恐怖とともに叫び声を上げてしまうほど勢いと猛々しさと荒々しさに満ちたものだった。
「な、なんで止まらないのよ!? 撃たれたら避けるか退るかするでしょ普通なら!!
そんなにダメージ食らいながら突撃したんじゃ、私たちを倒す前にエネルギー切れで自滅するかもしれないのよ! アンタ、自滅で負けるのが怖くないの!?」
「バカじゃないの!? アンタ達を倒すまで保てばいいのよ! 試合が終わった後に弾残ってたって意味ないじゃないの! やられる前に倒した方が勝ちだ!!」
「む、無茶苦茶だわ! そんなのISバトル理論に反してる!!」
「んなもん知らないわよ! どこの言葉よ!? ドイツ語!? ドイツ語なの!? だったら燃やし尽くしてやるわ! 焚書よ! 私の前でドイツ語しゃべった奴はみんな火刑!」
「「本当に無茶苦茶で理不尽だコイツーーーっ!?」」
「うるさーい! 喧嘩は勝てばそれでいいっ!!!」
「・・・あの啖呵を聞かされたときにしてた千冬姉の表情を見せてやるために録画しとこうか本気で迷ったよ・・・」
「あ、あは、あははははは・・・・・・はぁー・・・」
家庭の事情で親からいろいろ命じられてて、自分だけでなくジャンヌも一夏にもらってもらうつもりになってるフランス代表候補生の悩みとため息は深い。
――余談だが、ISファンの間で語り草となるジャンヌが初めて参加した公式のチーム戦。その一部始終を目撃していた観客の一人がポツリと、こうつぶやいていた。
「・・・あの子は突撃以外のフランス語を知らないのかな…?」
この一言が、トーナメント後に結成されるジャンヌ・デュノア非公式ファンクラブ会員たちにとってジャンヌを現す言葉になってしまう未来を、今の彼女はまだ知らない・・・。
「ーーまぁ、いいや。過ぎたことだし今更どうすることも出来ないし・・・。次で挽回目指すことにする」
「?? おう、そうか。しっかり頑張れ。俺を失望させてくれるなよ? 御師匠様?」
「そっちこそ。先生を失望させたりしちゃダメなんだからね? ーーあと、それから試合が終わった後の約束を忘れないよーに」
「おう! トーナメントが終わった後で俺に相談したいことがあるってことだったよな? それも姉妹そろっての悩み事なんだろ? だったら任しといてくれ! これでも姉弟の問題で苦労してきた時間は長いんだ。大抵のことは請け負ってやるよ」
「ふふふ、頼もしいね。さすがは一夏、男の子だねぇ☆」
天使のように無垢な笑顔を浮かべるシャルちゃん、マジ堕天使! 一夏は知らない間に外堀を自分で埋めてしまっていることに気づいていない! 夏の大阪城がごときピンチです! 侍の時代は侍の手で終わらされてしまうのか!?
「それじゃ、また後で一夏。ーー勝たせてもらうからね」
「おう。負けないぜシャルル。俺はお前達を・・・全力で倒してみせる!」
こつん、とぶつけ合う拳と拳。ここに男同士の男らしい友情は確固として成立された。
しかし、片方の性別は女である! 女には男同士の約束を守る義務は全くない! 危うし一夏! 危うし一夏の貞操!
思春期男子でチェリーな純朴少年一夏に性的な危険を迫らせながらも準決勝第一試合、織斑一夏&ラウラ・ボーデヴィッヒVSシャルロット・デュノア&ジャンヌ・デュノアの戦いが今、幕を開ける!!
『ーーーレディ・・・・・・GO!!』
ビーーーーーーーッ!!!
試合開始のブザーが鳴り響き、今回のトーナメント中一番の見所となるであろう好カードの試合が始まった。
「うおりゃぁぁぁぁっ!!!」
そして、毎度のように毎度のごとく試合開始直後の突撃を開始するジャンヌ。敵の動きを止められるラウラとしては呆れるしかない。
「開幕直後の先制攻撃か・・・。只でさえわかりやすい上に、そう何度も見せつけられては返し技の一つや二つ、阿呆でも思いつくだろうに・・・」
ため息とともに右手を翳し、AICで縛ろうとしたその瞬間。
ジャンヌが、吠える。
「バカじゃないのアンタ!? 罠が待っているなら食い破り、引き千切ってやるだけよ!」
「なに!?」
叫ぶと同時に発射される中距離射撃用武装ショット・ランサー。それは確かに中距離で接触する寸前だったこの距離で使うのが正しい武器ではあったが、試合全体を通してみたら不適切きわまりない使い方でもあった。
なにしろこの武器、一応は射撃機能を持ってる割に弾数が二発しかないのだ。粒子化できるIS武装の中では特に数が少なすぎる特殊射撃武装。実体のままでは持ち歩く以外に補充はあり得ず、特殊であるが故にデータ量を食い粒子化機能であるが故に弾数が少なくさせられてしまう矛盾を抱えた使いにくいことこの上ない武装。
この場合、開幕直後にいきなり一発ぶっ放してしまうのは余りにも不味い。なぜならキャバルリィ・ノワールの射撃兵装はショット・ランサーを除けば、低火力な中距離射撃兵装のヘビィ・マシンガンしか存在しないからだ。
にも関わらず開幕直後から二発しかない貴重な一発を使ってくることを、正規の軍事教練を受けたラウラは予測していなかった。
(こんな戦い方は戦術理論に反している!)
士官になる際に受けさせられた士官学校の戦術理論講義。その中で満点の回答を出して褒め称えられた実績もある優秀な士官学校の生徒にして“実戦経験のないプロの軍人”ラウラ・ボーデヴィッヒは、今このとき確かに喧嘩屋によって機先を制された。
「うらぁぁっ!」
「くぅっ!?」
体勢を立て直そうと退こうとしたラウラに、全速力で追撃を仕掛けてくるジャンヌ。
「追い打ちをかける」でも「追いすがる」でもなく『全速力で追撃してくる』辺りにジャンヌ・デュノアという少女のらしさと言うか、真骨頂があったのかもしれない。
「ば、バカか貴様は!? バカなのか貴様は!? こんな戦い方では戦場で生き延びることなどできはしない!」
「バカで悪いか!? バカと言った奴がバカなんだ! ばーかばーか!!」
「子供か貴様は!? もう少し大人になれ! ISがどんなに危険で、国防の要となる存在か本当にわかって・・・・・・」
「うるさーーいっ!! そんなメンドクサいもん知らない! 大人達が勝手にやれ! 私は私で勝手にやるだけだ!
とにかく今は、目の前の気にくわないアンタをブッ倒せればそれでいい!!!」
「くぅぅ・・・っっ!! このイノシシ女めがぁぁぁぁぁっっ!!!」
・・・激しく罵りまくりながら傷つきながらも前へ前へと突き進んでゆくジャンヌの戦い方を横目で観戦しながらも、シャルルと一夏は苦笑しあわざるを得ない。
「・・・ね? あの戦い方を練習されるとボクの居場所なんかないってことが分かるでしょ?」
「確かに。アレじゃあ連携もなにもあったもんじゃねぇや。むしろ邪魔になるだけだな。俺の練習につきあってくれてたのも納得だ」
苦笑を交わし合いながら、二人も戦いを継続し続けている。
切りつけるために懐内へと飛び込もうとする一夏に対して、牽制射撃で動きを制しつつも戦場全体の外苑部を円軌道でグルグル回り続けているシャルル。
これがラウラに安全策を意識せざるを得なくさせている最大の理由だった。
一夏は鍛えられたとは言え、まだまだ初心者の域を出たばかり。経験値の差でシャルルには及んでいないし、何より武装と戦術と試合方式の相性が悪すぎている。
一夏の白式は武装が刀一本しかない近接戦闘型であり、敵に近づかなければ何も出来ない関係から機動力に秀でた機体である。敵がスピード型のラファールであっても逃げながら戦って倒しにくる以上は勝機を見いだすことが十分可能な性能を有している。
だが、今回のトーナメント戦は予定外のペア戦が基本である。二人の内どちらかが生き残りさえすれば勝ちであり、二人とも生き残ったまま一機だけ残った敵機を袋叩きにするのだって戦術として認められている。
極端な話、片方が接近しながら撃ちまくり敵が迎撃するため前に出たら後ろに退き、残った一機が接近しながら背後から撃ち、振り返って倒しにきたら逃げ、背後からもう一機が撃つを繰り返してもルール上は問題ない試合方式なのである。
もちろん、こんな戦術は戦争のやり口であり平和の祭典スポーツ大会で使っていい戦術ではない。勝つには勝てるが非難を浴びるし、国家の代表候補が公式試合でやったりするのは適切ではない戦い方である。
イタリアのアリーシャ・ジョセスターフも「一対一の試合に一機で参加した選手が技として分身してる」から許されているだけであって、彼女もまたヒールではあってもスポーツ選手の域を脱しているわけでは全くない。そういう機能のワンオフ・アビリティを最大限活用しているだけのこと。ISに乗らず戦わない周りがとやかく言う筋合いは本来ならないのだ。
それでも言えるのがスポーツという見せ物の興業がもつ欠点と言えるかも知れないし、民間との融和と強調と表現した綺麗な方が正しいのかも知れない。
平和な時代においては微妙なところであるが、どちらにしても今のジャンヌ達には一切まったく関係しないどうでも良いことこの上ない余談に過ぎない。
とにかくはまず勝つことだ。
「悪いけど一夏、君の機体を相手にボクのリヴァイブだと正面決戦には応じられない。ジャンヌが到着するまで時間稼ぎに徹しさせてもらうよ?」
「構わないぜ。元からそういう形になることをふまえた練習を受けさせてもらった身だ。何とか掻い潜って襲いかかるのが男の戦い方ってもんだぜ!」
切りつけようとすれば足下を撃ち、僅かに下がった分だけ二歩前へ出る。三歩目を踏みだそうとした瞬間には牽制に慣れた頭に直撃弾が来る。
一瞬でも決意が鈍れば逃げる側としては十分すぎる間だ。ひたすら逃げて縮められた距離を元に戻すことだけに集中する。さっきからその繰り返し。
二人とも、自分自身が攻撃に使った分以外にはほとんどエネルギーを消耗していない。
一夏はシャルルから連携に関しての座学は受けたが、練習はほとんどやっていなかった。互いのペアを組んでる相手の性格と戦い方を考えれば「意味がない」と言わざるを得なかったから。
だからシャルルは、自分の得意分野であるテクニックの内いくつかを伝授した。余り多くの小技を教えたところで、実際の戦場で使うのは相性の良かった得意技が五種類ぐらいだと言うことを同レベルの練習相手ジャンヌと模擬戦闘を繰り返す間に悟っていたからだ。
いくつか教えてやらせてみて、「気に入った」と言われた技とテクニックだけを集中して教え、後は自分との戦いの中で実際に使わせながら有効な戦術を一夏自身に組立させた。
これもまた妹を見ていて気づいたことなのだが、ジャンヌの戦い方は相手選手の言うとおり「ISバトル理論に反しており」マニュアルには載っていない。だが、それでも勝てている。
勢いだけで勝てるほどISバトルは甘くないことを知るシャルロットは自分なりに分析してみて気づくことができた事実として、ジャンヌはあれで意外にも計算しているらしいと言うこと。
自分の性格から撤退や安全策を逆に危険と考えて、「自分は前に出るのが一番安全」という常人には理解できないし真似できそうもない自分なりの戦闘理論を組み立てた結果として今のジャンヌがある。
そこまで解れば後は早かった。シャルロットもまた、ジャンヌの姉であり兄でもある自分の戦い方を組み立てるだけであり、子供好きで教えるのが好きな母性愛溢れる彼女にとっては人に既存のやり方を押しつけるよりも自己学習しやすい環境を形成する方がずっと楽だし気持ちいい。
だから一夏の成長速度は予想より速く習熟し、ラウラが戦力に数えるに足る物を既に備えていたのだが、千冬の件でわだかまりが抜けない今の彼女に協力と連携は無理な相談であり、ジャンヌは無理に連携しようとすれば巻き込まれて終わるだけ。
これらの事情により今のシャルルがとっている戦術は、『一夏との距離を一定以上に保ちながらフィールド外周を飛び回り、ラウラに対して色気を出し続ける』という物として完成する。
「そっちの手の内は解ってるんだ。なら負けたときの言い訳には使えねぇ。相手の裏をかくのが戦術で、相手の戦術を逆用して勝つのもまた戦術・・・だったよな? 先生」
「さすがだね、男の子・・・っ!!」
今までの段階で既にして一夏の男らしさに惚れかかっていたシャルロットだったが、自分の育て上げた成長分を加算してさらに好感度が上昇してしまっている。ハートマーク状態だ。
そしてだからこそ、戦いには手を抜かない。徹底的に時間稼ぎに徹し続ける。それが『ジャンヌ・デュノアのパートナー、ジャルル・デュノア』が妹との連携を考慮して確率した戦術だ。姉と妹の二人で一人なIS操縦者姉妹にとって必勝の戦略だ。
だから続ける。手加減もしないし油断もしない。・・・これは自分一人の戦いでもなければ、一夏と自分二人だけの戦いでもない。忘れてはならない大事な一人が必須の戦力として組み込まれた戦い方なのだからーーーー。
乙女なシャルロットに対して、ドイツの氷水ラウラ・ボーデヴィッヒは激しく憤っていた。
(クソっ! あのアンティークめ・・・逃げ足ばかり早い骨董品と侮っていたが、この戦況ではいつどこから撃ってくるかまるで解らん! 単純な円軌道の動きは予測し易いが、目の前のバカ妹のせいで姉の動きに合わせていられる余裕が作れん! 挙げ句、私の位置からでも撃とうと思えば撃てなくもない距離を保ち続けるだと・・・?
性悪なアバズレめ! 女狐め! あの役立たずなポン侍に任せて置くわけには行かないこちらの窮状を把握してもてあそぶつもりか!?)
ラウラは心の中でフランスの代表候補生シャルロット・デュノアを激しく罵り、罵倒する。それ以外に小憎らしい姉の方へ攻撃する手段の持ち合わせが今の彼女にはなかったから。
「そらそらどうしたの!? いつもの勢いが無くなってるわよドイツの狂犬! いや、駄犬! 吠えるぐらいしか脳のないアンタの割には大人しくてしおらしい戦い方じゃないの!? ハッキリ言って萌えるわよ!
なに!? キャラ設定でも変えた!? 萌えポイントをロリサド貧乳からギャップ萌えにでも変換したの!? 候補から代表になってフィギュア化されたら購入して部屋に飾って上げましょうか!?」
「訳の分からん戯れ言を!!」
「はっ! 言ってもらわなきゃわかんなかった? だったら言ってやるわよ! “可愛いわよね”今のアンタって!! マジ萌えて来そうなくらいだわ!」
「・・・・・・はっ!?」
かわいい・・・? カワイイ、可愛い、kawaii・・・・・・可愛い!? 私が!? ドイツ軍で冷徹非常と言われ続けて部下からも敬遠されてる、この私がか!?
「い、いったい何を言いだすのだ貴様は! 戦闘中だぞ! 恥を知れ!」
「知らねーわよそんなもん! 気色悪いわね! IS使って殴り合うバトルにいらねーでしょうが恥なんて高尚な代物は!! 殴って倒して勝った奴が強くてスゴい! それだけで十分でしょ!? 他に何を要求するつもりだったのよアンタは!?」
「・・・・・・(ぼーぜん)」
ラウラは思わず迎撃の手を止め、相手の言葉に聞き入ってしまっていた。
あまりにも乱暴で野蛮で野卑て下品で品性のかけらもない、生の感情丸出しの戦闘理論。いや、理論にもなっていない子供の言い分。
「勝った奴は負けた奴より強くてスゴい!」なんて、今時高校生が言うか普通? バカバカしい、ガキ臭いし青臭い。卵の殻もとれない新兵の方がまだマシな理屈を言えるのは間違いない。
だが、しかし。
「ーーー悪くない。いや、・・・・・・むしろ“いい”!!」
「ああ? アンタなに言って・・・・・・ぶべっ!?」
撃たれっぱなしだったラウラが突然叫び声を上げ、訝しがったジャンヌが前に出たところを顔面グーパンチ。IS使ってやられるとマジ痛い。
「ちょ、アンタ! いきなりグーはないんじゃないの!? 女の顔に向かってグーはさすがに反則だと思うんだけど!?」
「知らん。男も女も関係ないのが喧嘩なのだろう? 新兵どもからそう聞かされたことがあるが、違うのか?」
「ーーーテメェ・・・・・・・・・」
メラッと。ジャンヌの背後から黒い炎が吹き上がり、《ラファール・キャバルリィ・ノワール》のワンオフ・アビリティ、その真の能力が解き放たれる条件がすべて成立した。“してしまった”。
「いいわよ、やってやろうじゃない。アンタがそう言うつもりならこっちだって容赦しないわ。全力全快で・・・・・・ぶっ潰す!!!」
「やれるものならやってみろ! フランスの片田舎からきたオタク娘! ドイツのISは世界一ぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!」
叫びあう女と女。少女と少女。ガキとガキ。
二人は今、いっさいの自己矛盾を捨て本能のままに相手を求め合い、只願った。
『『私はコイツを・・・・・・ぶちのめしたい!!!!』』
純粋な心で只願う。自分は勝つ! 敵を倒す! 後は知ったこっちゃねぇ!ーーと。
・・・そして二人の想いに応えて、一つのシステムが起動する。
Danage Level・・・・・・D.
Mind Condition・・・・・・Uplift.
Certihcation・・・・・・Clear.
《Valkyrie Trace System》・・・・・・・・・boot.
『ーー願うか? 汝、自らの変革を望むか? より強い力を欲するkーー』
「「うるさぁぁぁぁぁぁぁぁっっい!!!!」」
『(ビクッッ!?)』
「「力が欲しいのか、変革を望むのか? そんなもんしてる余裕があるなら早く出せ! 出し惜しみしている暇などあるか! 急げ! 早くしろ! お前から先にぶち壊すぞこの野郎!!」」
『りょ、了解。・・・こんなものでどうだろうか?』
「「足りーーーーんっ!! もっと寄越せ! もっと寄越しなさい! コイツをぶちのめしてやるために、もっと私の機体を輝かせる力を引き出させろぉぉぉぉぉぉぉっ!!!」」
『い、イエス・アイマム!!
ヴァ、ヴァ、ヴァァァァァルキリイィィィィィィッッ!!!!』
・・・聞いてる分には馬鹿話にしか聞こえないけど、聞こえないで見ているだけの人たちにとっては笑えない光景。
二機のISと二人のIS操縦者が黒いナニカに包まれながら形を変えていき、黒いナニカが黒い炎に包まれて再び姿形を整え直してゆく。
最終的に彼女らを包み込んでいた黒いナニカがブクブクと膨れ上がったと見えた、その次の瞬間。
ずぱぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっん!!!!!!!!
「「私は勝ぁぁぁぁっつ!!! 私が倒ぉぉぉぉぉぉっっす!!!!!
私がお前を倒して勝ってやるぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっっ!!!!!」」
二人と二機を包んでいた黒いナニカが細切れになって吹き飛ばされて飛び散らされて、なんか聞き違いかも知れないけど『ギャーっ!? ヴァールキリーっ!?』とか、悪の組織のザコ改造人間がやられる時っぽい末期の悲鳴が聞こえたような聞こえなかったような・・・まぁいいか。別にどうでも。
「クソちびラウラぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!」
「シスコンおっぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃっっ!!!!!!!!」
「私はぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!」
「お前をぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっっ!!!!!!!!」
『絶対に倒して勝ってやる!!!!
お前より私の方が強いんだぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっ!!!!!!!!』
VTシステムを吸収して強化した愛機を駆る二人の美少女が、黒い獣と化して互いを食い合う! 果たして勝つのはドイツのヤンデレか? フランスのシスコンおっぱいか?
決着の時は近い!!!!
「・・・・・・・・・なんでやねん・・・」
「あは、あははははは・・・・・・・・・はぁ」
つづく?