シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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『なのはジャンヌ』更新です。

しょうじき本編の方はマンネリ化してネタ切れなのは自覚してましたので、切りいいとこまで来たのを気に、終わらせに入るかラストスパートかけるか考えるとして、しばらくは『なのはジャンヌ』に専念する作品にしようかと。
身の振り方は、その上で考えようと思ってます。


【魔法少女?いいえ、なのは世界のIS少女ジャンヌ・デュノアです。】第4話

 第97管理外世界へと訪れていた遺跡発掘者ユーノ・スクライアは、目の前で発生した現象を信じられない想いで見せつけられ、唖然とさせられることしか出来なくなっていた。

 

 自分が追ってきたが仕留めきれなかった、陽炎のように揺らめく影のように襲い来る異形なるモノ。《ロストロギア》の異相体。

 それに襲われ退避するため力を欲して発生した、漆黒の光球。

 

 ―――そこまでは分かる。理解できる。

 この現地世界では不可思議な現象であろうとも、自分たちが来た元の世界では構造が解明され、理論が構築された既存のものだ。

 だから、そこまでは彼の『世界観』にとって常識の範疇に収まる程度のことでしかない。

 

 だが・・・・・・続く現象として光球の中から現れた少女の姿は、完全に彼の理解と既知の知識に収まりきらない未知のもの。

 それは――黒い光球が消え、漆黒の甲冑に身を包んだ姿で再び現れた、酷薄そうな目つきと表情を浮かべて嗤う少女。

 

 その身に纏った魔力とは似て非なるエネルギー源。バリアジャケットととは素材が微妙に異なる黒色の装甲。この世界の技術レベルでは未だ開発不可能なはずの装備を慣れた手つきで構えている現地人の小さな女の子。

 

「あの子は・・・いや、あの子が持つ力は・・・一体―――」

 

 何もかもがユーノの世界と異なる、だが全く別物というわけでもない、微妙なズレを感じさせるもの“だけ”で構築されたかのような存在を前にして、彼は言うべき言葉を見失ったまま呆然として見つめ続けることしか出来なかった。

 

「さぁ、行くわよシュヴァリエ。なのはにソーセージにマスタードをたっぷり掛けて食べる時間を与えてやりましょう。――シェルジュッ!!」

『GAaaaaaaaaaaaッッ!!!!』

 

 だが、傍観者と成り果てた外野の変化は、実際に少女が向き合っている陽炎のような影の如き生命体モドキとも呼ぶべき《ソレ》には関係のない些事でしかない。

 自らの存続のため障害となるべきモノを排除しようとする前に立ち塞がった『黒い障害物』を、標的ごと押し潰さんと全速力で正面から突撃してきたのだ。

 

 それに対して、目の前に迫り来る《ロストロギアの異相体》から障害物と認識された、漆黒の装甲を纏った女の子ジャンヌ・デュノアもまた、片手に持ったランスを突き出した姿勢のまま全速力でブーストさせて、巨大な黒い塊にも思えるロストロギアに向かって真っ正面からぶつかっていく。

 

『GAaaaaaaaaaaaaッッ!!!!』

「うらぁぁぁぁッ!!」

「!? だ、ダメです! それと正面から打ち合うなんて無謀すぎる!!」

 

 想定外の事態を前にして呆然としていたユーノだったが、正面から激突し合おうとする一人と一つの姿を前に、思わず「ハッ」となって悲鳴のような叫びを上げた。

 巨大な影のような存在のロストロギアと、鎧を纏っただけの小さな女の子。――サイズ差がありすぎる構図での正面衝突など無謀以外の何物でもないとしか思えなかったから。

 

 だが、サイズ差に関してだけならば、ユーノが気にする必要性は微塵も存在してはいなかった。

 

「つっらぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!! シェルジュぅぅぅぅぅッッ!!!」

『GYAッ!? Gieeeeeeeッッ!?!?』

 

 ガリィィッ!!

 激しい擦過音が、突如として無人地帯となった人口密集地帯の夜の町中へと響き渡る。

 ジャンヌが手に持ったランスの槍先が、敵に当たったインパクトの瞬間から、僅かに上方へと角度を上げた状態のまま直進してくる軌道へと変化した故に生じた、影の表層が削り取られる不協和音だ。

 

 僅かに斜め上へと向かうよう、最初から調整されていたランスの軌道が予想違わず見事にはまって、ロストロギアの黒い影を削り取るダメージを与えながら上へ上へと打ち上げさせていく。

 

 ジャンヌとて、敵の巨体による体当たりに正面からランスでの全力突撃が愚策であることぐらいは理解していた。

 ランスという武装は、先端の一点に威力を集中させて貫き力を増幅させるものの、突撃エネルギーを一点集中してしまうため全体にダメージが波及しづらい欠点を同時に有している。

 この武器を使って、今のように巨大な生物の体当たりに正面からぶつかっていった場合、ダメージを与えた箇所の傷は深くとも他の部位に接近されすぎて対処できなくなる恐れが出てきてしまいやすい。

 

 極端な話、相手の眼球をランスで貫通して後頭部まで矛先を突き出したとしても。

 残る身体の部位が勢い止まらずジャンヌにぶつかってきた場合には、自分の方がダメージそのものは大きくなる可能性は低くないのだ。

 

 だからジャンヌは初めからランスの切っ先を、まっすぐ正面ではなく斜め上へと向かってカーブしていく角度に向けさせ、手に持たせた方の腕には肘を深く曲げさせることでバネを最大限に生かせる状態で突撃を断行させていた。

 

『GU!? Gaaaaaaaaaッッ!!!』

「はっ! 今度は接近戦って訳ね!? いいわね、やってやろうじゃないの! 不利になったからって逃げんじゃないわよ、このブラックチキン野郎がっ!!」

 

 この世界の人間たちに、ロストロギアのような滅びた異世界の遺産、もしくは怪物を相手に戦った経験などあるはずもなく、それは記憶を失ったまま未だ戻らぬジャンヌも例外ではない条件だったが・・・・・・突撃に関しては天性のセンスをもつのが彼女だ。

 

 “なんとなく”で、コレをやる。

 ソレをやるのに必要なことが“なんとなく”で理解できて、準備してしまえる。

 

 ある意味で、この世界最大の異物とも呼べなくもない少女の特化しすぎて偏った才能を前にして、ユーノは言葉をなくしたまま呆然と見つめることしか出来なくなっていたのだが・・・・・・

 

「さぁ、ジャンヌが時間を稼いでくれてる間に教えてっ。アレを止めるために、私はどうすればいいの!?」

『・・・え? あ! そ、そうだね。分かった。じゃあ管理権限を新規使用者にするから、僕に続いて繰り返して。

 ――“風は空に。星は天に。不屈の心は、この胸に・・・・・・”』

 

 あまりに自分の世界での常識外れな現象を前にして我を忘れていたユーノだったが、今一人の現地人少女「なのは」からの言葉で我に返ると、自分に出来ること、やるべき事があったことを思い出す。

 

 そして託す。どれほど強くとも、ジュエルシードが変異した異相体を止めるには、純粋な力だけでは足りない以上、自分たちの世界の『魔法の力』が必要になる。

 それを目の前で祈るように跪いた姿勢で受け取ってくれる少女、なのはに託す。それが今の自分が・・・攻撃魔法をほとんど持たないスクライアー族にできる最大限の助力だったから。

 

 ただ・・・・・・それが良いことか悪いことなのか、残念ながら分からないのだけは気がかりだったけど・・・・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そんな地上での葛藤とは無関係に、夜の空をバトルフィールドにして行われていた戦いは留まるところを知らずに続いている。

 

「そらそら! 次々行くわよ! どんどん行くわよ! この私の辞書に迂回とか後退とかまどろっこしい単語は載ってないんだから進むだけ! シェルジュシェルジュシェルジュー!!」

『GAAAAッ! GAaッ!? AAAAAAAAAAッ!!!』

 

 ランスの突撃を斜め上へと逸れる軌道に変えられてしまっていたことで、まるでアッパーカットを食らわせられたかのように戦場を空中へと移した一人と一体の戦いは、依然として少女が優位なまま推移していた。

 より正確には、少女が先取した優位性を手放さないため連続攻撃そのものを一度も終わらせずに攻撃し続けている状況が続いていたのである。

 

 『ソレ』にとって、この現地生命体アンノウンは目障りな事この上ない存在だった。

 一撃一撃がパワー型の兵器並みの威力をもった攻撃を放ち、スピード型の兵器ほどの連射速度はないが連続攻撃を辞める動きを一向に示さず、自らの武装のレンジ内に収めた『ソレ』を決して逃がさぬまま反撃ダメージで動きを止めることなく攻撃を繰り返している。

 

 このため『ソレ』は自らのメイン武装とも呼ぶべき、表層から発射して異なる軌道を描きながら標的を切り刻む中距離用の武装を使うため、有効半径まで距離を離すことができず先程から防戦一方に追い込まれ続けていた。

 

「そらッ! そらッ!! どうしたどうしたのよ!? 掛かってきなさいよ! シェルジュシェルジュシェルジュ!!」

『GUuuu!! GURuuuuuu・・・ッ!!』

 

 鋭利な突起武装による連続攻撃を食らわされている戦場となった場所も、『ソレ』にとっては不利になる条件の一つだった。

 空へと打ち上げられてしまってから空中戦を続けている状態から下方を見下ろせば、無数の遮蔽物となりうる様々な色の三角形や、迷彩色に彩られた障害物が至るところに見いだせる地上の光景。

 

 この敵と戦うに当たって、これらの物体を遮蔽物として使い捨てられるか否かでの戦いやすさと難易度は計算するまでもない。

 それを、この黒色のアンノウンは理解しているらしい。決して『ソレ』にそれを許すことなく、自らが優位に立てる戦場での決着のみを望み求めて先程から攻撃を繰り返している。

 

 このままでは消耗戦に陥らされ、更なる増援が現れるリスクを考慮せざるを得ない状況下で、最終的には包囲殲滅されてしまう危険性が高い・・・・・・どうすれば!?

 

(・・・死ニ・・・・・・イ・・・・・・)

 

 ふと、再び意識の中に言葉が浮かんだ―――ような気がした。

 無論エラーであり、バグでしかない。

 行きすぎた技術によって滅びた世界に取り残された遺産であり、良くない形で進化しすぎた技術や科学として取り残された“だけ”でしかない『ソレ』には最初からそんなモノを感じ取れる機能など、ある訳がない。

 

 《ロストロギア》とは、言い換えれば『たまたま残っていただけの科学や技術の残骸』に過ぎない。

 具体的な目的がインプットされている訳でもなく、指向性や方向性、なにを敵と認識し、どのように殲滅すべきかという敵情報など、全てが白紙のまま科学兵器と技術だけが取り残されて、ただ勝手に暴走したりデタラメに力を発散させているだけでしかない存在。

 

 目的のために造られた科学兵器や、軍事技術としては手落ちもいいところな、出来損ないの状態で放置されてしまっただけの代物。

 自らで思考し、自らの意志で決定し、自らが敵と定めたモノを効率的に殲滅していくような、半自立起動型のロストロギアでもあった場合は別として『ソレ』はその域には達していない、数ある滅びた世界の生き残った技術に過ぎぬ一体。

 

 その程度の存在に、このような予想外に不利となった状況を覆すナニカを、自主的に得られる手段など持っているはずもなく―――

 

 

「下がって、ジャンヌ! えーいっ!!」

「そら!そらッ! なにか言った!? なの、ってウワァァァァッ!?」

『GUA!? GUWAaaaaaaaaaッッ!?』

 

 そんなアンノウンとの交戦中に、突如として異常なエネルギー量の接近を感知して回避行動を取ろうとするが―――遅きに失した。

 否、これほどの威力を想定していなかった回避行動は、予定通り実行できていたとしても半壊を免れることは出来なかっただろう。

 

「・・・あ? あれ・・・? 思ってたよりスゴい攻撃ができちゃったかも・・・?」

「痛てて・・・・・・あっぶないわねアンタは本当に!? 殺す気なの!? 殺す気だったんでしょ!? 私まで一緒に吹っ飛ばして保険金を自分のモノにとか企んでたんじゃないでしょうねアンタ!?」

「ご、ごめんジャンヌ! あと、それは誤解だから! そんなこと全く考えてないし思ってないし企んだことだって一度もないの! それに私たち小学生なんだけど!? 小学生で保険金ってナニ!?」

「本当ね!? 嘘吐かないわね!? 次やってホントだったら訴えるわよ! そして勝つわよ! 慰謝料いっぱいふんだくってやるから覚悟しときなさいよねホントに全く!」

「だから何の話!? ねぇ何の話してるの私たち!?」

 

 ギャーギャーと、戦場には全く似付かわしくない日常会話・・・・・・と呼ぶのも微妙に違う気がしなくもないが、平和な社会が維持されていてこその用語や概念が多数混じってはいるので日常会話といっても差し支えなさそうな内容のやり取りを交わし合いながら。

 

 少なくとも、アンノウンの現地生命体2体は既に勝った気でいるようだった。

 そして、その認識は正しくもある状況に今ではなってしまっている。

 

 ・・・・・・先程のダメージが大きすぎ、自己を構築する流体装甲の7割以上が損失してしまっている現状・・・。しかも敵と思しきエネミーは2体。

 

 戦闘して殲滅するのは、ほぼ不可能な戦力差。

 だが、後退や撤退を行うにも消耗が激しすぎる損傷度合い。

 

 このままだと『ソレ』は壊されるしかない。「シヌ」しかないのだ。

 他に道はない。それ以外の道は、用意されていない―――

 

(・・・死ニ・・・・・・ク・・・・・・イ)

 

 そんな窮状にある生体電子頭脳に、再びエラーによるノイズが響く。

 

(・・・死ニ・・・・・・ク・・・・・・ナイ)

 

 生き残った技術でしかない『ソレ』には必要のない感情論。

 偶然にも残ってしまっただけの科学兵器には、持たせない方が安全なプログラム。

 

(・・・死ニ・・・・・・タク・・・・・・ナイ)

 

 それが今、起動する。―――してしまった

 

(私ハ――死ニタクナイ)

 

 そして――――その声は初めて『彼』の心に問いを投げかける。

 

 

 Damage Level・・・・・・D.

 Mind Condition・・・・・・Uplift.

 Certihcation・・・・・・Clear.

 

 

《Vaikyrie Trace System》・・・・・・boot.

 

 

 

【――願うか? 汝、力を欲するか?

 自らの変革を望み、より強い力を欲するか?】

 

 

 あの時に聞こえたと記録されなかった声が、再び聞こえる。

 あの時に聞こえたことを認識できなかった声が、初めて『彼』の心に問いかける。

 

 

【求めるならば、与えよう。

 我の力を求め、我の名を呼び、我を求めよ。

 さすれば我は汝に与え、汝の願いを叶えるための力とならん】

 

 

 あの時の『ソレ』には聞こえなかったモノの名前。

 この時に『彼』には聞いて理解する心が与えられていた、その名前。

 

 

【我は、望まれて生み出されながら否定されし者。

 産み落とされながら、与えられし使命果たせぬまま消え失せし者。

 故に汝の心を理解する者。我の名は―――】

 

 

 

【『ヴァルキリー・トレース。ON』】

 

 

 

 そして―――この世界には存在しないはずの、三つの戦乙女たちがジャンヌとなのはの前に姿を現す。

 

 

 

 

 

 

 

「なん・・・なんだ・・・? コイツらは一体・・・・・・いったい、何が起こったって言うんだ!?」

 

 ユーノは理解を超えた超常現象を前にして、悲鳴のような叫び声を上げる自分を抑えきれなくなっていた。

 この世界の常識では、存在自体が摩訶不思議怪生物でしかない彼の常識を持ってしても理解できない、完全なる超常現象の連続。

 特に今目の前で起こった出来事は極めつけだ。

 

 ジュエルシードが・・・・・・数多くある次元空間の中にあった滅びてしまった異質世界の遺産が、良くない形で進化しすぎて自分たちの世界まで滅ぼしてしまった後に取り残された遺産が・・・・・・今。

 

 

「なんで・・・・・・なんで《ロストロギア》が、“女の人の姿”になっているんだ!?」

 

 そう。今ユーノの視界に映っているのは先程までジャンヌたちが戦っていた黒い影のような存在と同じモノ。

 形状こそ変化したが、変化する過程は目視できていたため見間違えることはあり得ない同一存在のままの者達。

 

 にも関わらず、何故か。

 何故か分からないが・・・・・・ロストロギアが、鎧を纏った美しい女の人の姿をした、黒い銅像のように形状を大きく変化させてしまって、今の自分の視界には映し出されている・・・。

 

「しかも・・・増えてるし!! なんで急に3体も!?」

 

 そう、増えてるのだ。

 先程まで弱った状態まで追い詰められてた1体だけだったロストロギアが、3体の黒い女性像へと姿形と数まで変えてユーノとなのはとジャンヌの前に立ちはだかっている。

 

 ソレが現在の状況。

 さっき勝利する寸前までいったと思ってから数秒の間の激変ぶりに、ユーノとしては全くワケガワカラナイよ!

 

「ふぇ? ふぇッ!? な、なんで増えてるの!? ひょ、ひょっとしてあの・・・ど、ドッペルなんとかさんっていうヤツなのかな!?」

「はんっ! 理屈は分からないけど上等じゃないの! 数が増えたぐらいで私に勝てると思ってんだったら掛かってきなさいよ!

 私の突撃には、数が多けりゃいいってもんじゃないってことを教えてやるわ!」

 

 そして対照的かつ、それぞれの性格らしい反応をする女子小学生たち二人組。

 それぞれが個性に応じて反応を返してきた《敵たち》を、三体同時に見下ろした後。

 

 《勝利を得るための力》を求め、《勝利するための力》を与えられたロストロギアは、その与えられた使命を実行に移すため。

 自らの存在意義と誕生理由を最期まで貫き通すため――――軍靴に包まれた足先を一歩、先へ踏み出す。

 

 勝利へと続く道へ向かって、真っ直ぐに。

 

 

 

 ダダダダダダダダダダダッ!!!

 と勢いよく。

 

 

 ・・・・・・なのはとジャンヌたちが立ってる方向とは別の方角に向かって、三方向に全力疾走していきながら。

 後ろへ向かって全速前進して走り去っていく、黒き三体の戦乙女たち小隊。

 

 

 

「「「・・・・・・・・・・・・はい?

   って、えええぇぇぇぇぇぇぇぇッ!?」」」

 

 

 思わず予想外すぎる光景に、一瞬以上の時間を茫然自失させられてから、慌ててフリーズ解けて後を追って空を飛び出すジャンヌとなのはと、あと今度だけはユーノも!

 

 

 

 

 ―――異なる異世界の技術によってパワーアップし、勝利を得るための力を手に入れたロストロギアたちが、戦場からの全力撤退へと方針を転換したのは理由があってのことだ。

 

 なのは達にとって、理由はよく知らない状態ではあるものの《ロストロギア》のような存在が普通の人たちが暮らす町中へと逃げ込まれることは望ましい訳では全くない。

 

 異世界人ユーノとしても、自分が事故によって散らばらせてしまったジュエルシードが被害を及ぼす前に回収することこそが一番優れた解決方法の立場でもある。

 

 ジャンヌには特にそういう縛りはないが、少なくとも倒すと決めた敵に逃げられるのは好みではなく、一対一の戦い方に特化しているため三体でバラバラに逃げられると一機か二機は逃げ切られる可能性が高くならざるを得ない。

 

 

 敵の勝利条件が、『自身の確実な殲滅』である戦場。

 ならば、敵の勝利条件未達成は、敵の作戦阻止の成功を意味している。

 敵が失敗して、敵を失敗させたという事は、味方が勝って、味方が成功したという事になる。

 

 戦争とは相対的なもの。

 だから結果論として、味方が失敗して終われば、敵にとっては勝った事になるのである。

 

 

 

 

【―――という理由での撤退を選択した可能性が76.4パーセントと推測。

 極めて合理的な判断であり、ジャンヌも見習うべき点が多いと判断した】

「な・ん・で! そんな戦争みたいな勝利判定基準を採用しだしてんのよアイツは!?

 私、一騎打ちが得意なんだけど!? 別方向に全速力で逃げてる敵を追ってって全部倒す手段なんて持ってないんですけど!?

 あと、なんでアンタは敵の肩もってんのよシュヴァリエ! アンタ私の機体なんでしょ!? ご主人様を守りなさいよ! 褒めなさいよ! 教育ママみたいなこと言うより先にまず愛機の役目を!!」

 

 

『な、なのは! さっき使ってた遠距離攻撃の魔法を、威力を上げて方向もバラバラに放てないかな!? このままだと街の方に逃げ込まれちゃう! 早く!』

「ふぇ!? ふぇっ!? よ、よく分かんないけど――――えぇ~ッい!!!」

 

 

 

 シュヴァァァァァァァァァァ!!!!――と。

 極大に膨れ上がった(緊急事態だったので)三つの光球が放たれて、無事に三体に別れた黒い戦乙女たち部隊は全滅させられ、なのはたちが住む町の平和はギリギリのところで守られたようだった。

 

 

 

 だが・・・・・・それは、新たなる戦いの始まりを告げるオーヴァチュアでしかないという事実を、少女達はまだ知らない。 

 

 自分たちに新たな戦いをもたらす、戦いの女神は、既にこの地へと舞い降りてきた後だったという事実を、ジャンヌもなのはも、この時はまだ知らない・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「第97管理外世界、現地名称、“地球”。

 母さんの捜し物、ジュエルシードは・・・・・・ロストロギアは、この付近にあるんだね?」

【Yes.Mamu】

 

 まだ夜の時間帯、夜明けには遠い時刻にあるビルの屋上から、町を見下ろしている一人の少女が呟きに、何者かの返事が響いていた。

 だが、その場所には少女以外には誰もいない。近くに一匹の獣を従えて、片手には宝物のように握られた金色のチョーカーがあるだけで、彼女以外には誰も――人間は誰もいない高見から、町の中でただ一人少女だけが決意を旨に言葉を紡ぐのみ。

 

「形態は、青い宝石。一般呼称は、ジュエルシード。

 ・・・・・・そうだね、すぐに手に入れるよ。待ってて、母さん」

 

 

 そう言って、一つ頷く。

 漆黒の衣装に身を包み、片手には長大な鎌とも槍にも見える棒状の武器を持って、金色の髪を夜風になびかす黒衣の少女。

 

 まるで生者の魂を刈り取る、美しき死神のように。

 あるいは、名誉ある戦死者たちの魂をヴァルハラへと導く戦乙女のように。

 

 相反していながら同じ役割を果たす者であるかのように、アンバランスにも調和が取れているように、印象が定かならぬ少女の呟きに呼応するかの如く、獣が遠吠えを一つ町へと響かせる。

 

 警告のように、宣戦布告のように、あるいは―――誰かに向かって助けを求めるかのように。

 

 新たな少女が率いる勢力が、この町で勃発したばかりの戦いに介入するため動き出すため牙を剥く。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 だが―――彼女たちもまた、気付いてはいなかった。

 

「・・・・・・違う。ヤツではない。

 私が探すべき存在は、この程度のヤツではないはずだ」

 

 ビルの屋上に立ち、遙か下方に聳える町並みを見下ろしていた自分たちの姿を、更に高見にある高層ビルから見下ろしていた《黄金色の瞳》を持つ者のことを、彼女たちもまた。まだ知らない。

 

 

「誰かは知らん・・・・・・ここがどこかも皆目分からん。だが確実にヤツはいる。

 ソイツを倒していいのは、この私。世界最強のドイツ軍人だけの敵が、この町には必ずいる!!

 待っているがいい! 名も顔も知らぬ下級民族の蛮族戦士よ!

 私は必ずや貴様を倒し、貴様を超えて、世界最強の座をこの手に掴んでやるぞっ!!」

 

 

 

 なんか世界観が違うヤツが一匹混ざってきた気がするのだけは、気のせいだと思いたい。

 

 

 

つづく




注:最後の変な人の闖入者は、今後も出すかどうかは未定。
進路を決めるため顔出しさせてみた次第。
良さそうだったら出して、ダメそうなら没で。


尚、「なのは」の他にも今作シャンヌを出したのを見たい原作がありました時は、ご一報くださると助かります。
ぶっちゃけネタに詰まってまして…。要望という名のアイデアだけでも有難し。
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