シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。 作:ひきがやもとまち
前回までのあらすじ。
IS学園臨海学校宿泊先の旅館から海へと続く丘の上において。
天災ウサミミMAD篠ノ之束(二十代後半、三十路前)は、フランスから来た巨乳女子高生ジャンヌ・デュノアから生涯初の『オバサン』呼ばわりされて刻を止めておりました・・・。
「あ、あの~・・・ジャンヌさん? この人って一応、篠ノ之束さんなんですけども・・・?」
雰囲気的に(主に束の雰囲気最優先な理由により)思わず敬語をつかった疑問形で確認を取ってしまう織斑一夏。世界最強にして最恐でもある姉を持つ身として、その人の親友が如何に規格外でエキセントリックな行動に出るかを知るが故の臆病さからくる言動だったのだが。
――残念ながら、ゲームとキャラクターに興味をもっても脚本家と声優にはあんまし興味ないライトゲーマー・ジャンヌちゃんに思いの丈はチリほども届いてはもらえなかった。
「・・・・・・??? それはさっき聞かされたばかりだけど・・・え、なに? この人ってIS学園生なら知っとかないとヤバいIS関係者か何かだったりするの?」
「い、いやー・・・。関係者と言えば一番の関係者で、当事者レベルの人でもあるんだけども・・・」
ぶっちゃけ、開発者ご本人様です。
そう断言してしまえば済む話なんだけど、一夏にとっては当たり前すぎて説明したことも無い常識だったため即座に頭が働いて反応してはもらえなかった。
当然だ。彼にとって幼少期から少年時代における一番親しく過ごした人たちの内の一人でもある篠ノ之束が世界を変える大発明をしたことは女尊男卑云々は別として素直にスゲーと感心している事柄だったし、何よりも家族が少なく身内寄りの価値基準を持つ彼にとって身内の一人で箒の実姉でもある彼女は大切な人の一人でもあるのだから。
あと、付け加えるなら彼の既知世界は意外と狭く、バイト経験ある割にはテレビやネットも大して見てきてない情報オンチでもあったから世間一般の常識については疎いのである。
『ISを作った篠ノ之束は天才であり天災。それは誰もが知ってて当たり前の常識』
――そう言う基準が彼にはあって、そこから斜め上にはみ出し過ぎたジャンヌのオタク的価値基準は彼から見て文字通り『言葉が通じない外国人のもの』でしかなかったのである・・・・・・。
「・・・学校で習った教科書とかで見たこと無いか? ISを開発した天才科学者の篠ノ之束さんが、この人本人なんだが?」
「あ。・・・あ~、あ~・・・言われてみたら居たわね確か、そんな感じの人が。――子供の頃に習ったっきりで忘れてたけど(ボソリ)」
「今、なにか物スゲー不穏当なつぶやき発しませんでしたかねジャンヌさん!?」
またしても普段タメ口が基本の一夏による、敬語ツッコミが炸裂した!
背後から感じられるプレッシャーが勢いを強めていく一方な彼は必死だ!!
・・・だが、オタク少女ジャンヌ・デュノアには効果が薄かった!
「ち、違うわよ! 覚えてるわよしっかりとね! 教科書に載ってるような超有名人だし、IS学園の授業でも名前だけならしょっちゅう聞かされてる人なんだから覚えていて当然じゃない!!
そんな奴を私が知らないとでも思ってたわけぇ!? バカじゃないの!? バカなんじゃないのアンタって!?
・・・ただ、知ってて当たり前な状況がずっと続いてきたせいで顔と本名がちょっとだけ記憶から飛んでたってだけで忘れてた訳じゃ無いんだから、そんな恐い顔して怒らなくたっていいじゃないのよぅ・・・(せっかく見せるための水着選びガンバッタのに・・・ブツブツ)」
注:人はそれを忘れていたと表現します。
あと、何故このタイミングでデレることが出来るのか理解不能です。
「なぜ、このタイミングで顔を赤く染めている・・・? ――まぁいいか。それよりもだ。
束さんのこと思い出したってのは本当だな? ちゃんと教科書に載ってた束さんのこと覚えているんだな? 写真だって本人見た後の今なら間違えたりしないよな?」
「あ、当たり前じゃ無い! むしろアンタ、この私がそれぐらいのこと出来ないとでも思ってたの!?
ふん! とんだ名誉棄損のワタシ侮辱罪ね! バカすぎる暴言を吐いた罰として燃やされて裁かれたいのかしら!?」
「・・・何故そこで俺がキレられるんだよ・・・。そこはひとまず置いとくとして、まずはテストが先だ。
ジャンヌ、お前が束さんについて知ってる情報を全て話せ。そうしたらきっと束さんも怒らずに許してくれるさ、きっと。たぶん。おそらくは・・・(無理だろうけど、ボソッと)」
「う」
最後の部分は都合良く聞こえない窮地に追い込まれるジャンヌ・デュノア。
ぶっちゃけ彼女、愛機の《ノワール》にベタ惚れする一方で他のISには興味ゼロだったからほとんど学んできてません。テストで答えられりゃそれでOKな典型的ダメっ子な学生です。
「ISバトルは敵機種がなんであろうと、戦って戦って勝ちさえすればそれでいい!
ひたすら前進して敵を槍でブッ刺してくるだけ考えるのが、IS操縦者ってもんでしょうが!?」
ジャンヌ・デュノアのジャンヌ・デュノアたる所以が、この発言に凝縮されている。
清々しいまでに割り切りすぎたイノシシ少女がここにいた。
「え、えーと確かえっと、私の記憶が確かならば、あの人の顔の形は確かえっと・・・」
必死に幼い頃からの記憶をたぐり出すため奮闘するジャンヌ。
普段から当たり前に見ていて、見ようと思えばいつでも見れるから明確に記憶しておらず、いざ「思い出していってみろ」と言われたときに思い出せなくてテンパる少女の典型例がここにある。
・・・思い出すも何も目の前に本人がいるのだから、そのまま表現すれば良いことなのだけど、根が良い子な上に不意打ちされると上手く捻くれられずに混乱してしまう予想外の事態に弱い少女ジャンヌ・デュノアは、律儀にも言われたとおりに自分の知ってる『今まで学んできた授業内容』を思い出そうと頑張り続ける。
――まぁ、頑張らないと思い出せない時点で『忘れていた事実』を大声で自白しているに等しいのだけども。
それでもジャンヌは頑張ります。人にバカを見る目で見られた以上は、覆してバカに仕返してやるのが世の非情さってもんなんだからね!
「残り時間、三十秒」
「ちょっ、ま・・・っ!?」
慌てるジャンヌ。
あらかじめ指定していた訳でもない制限時間をいきなり言われて慌て出すジャンヌを白い視線で見つめる一夏。
色々と混沌化してきている状況の中、正直いって「そう言えば顔があったわね・・・」程度にしか覚えていないジャンヌが正解に至れる可能性はない。
教科書の偉人写真にラクガキして過ごしたジャンヌの子供時代の記憶に、彼女が求める答えなどどこを探しても見つかる余地は最初から無かったからである。
いつでもかどうかは知らないが、少なくとも今の彼女が求める答えは過去には無くて、目の前の今にある。――具体的には目前で固まったままなウサミミ科学者が其れである。
「そうだわ! 思い出した!」
ジャンヌは満面の笑顔を浮かべて叫ぶように答えを出す。・・・忘れていた事実を声高に叫んでいることなど一切自覚しないままに・・・・・・。
*:上遠野浩平著『ブギーポップ・クエスチョン 沈黙ピラミッド』より一部を抜粋
Question8『記憶ってなんですか?』
ヒント:思ったよりアテになりません。
「顔の両側に耳があって、鼻の下に口があったわ!!!!」
・・・・・・日本の海で、フランスから来たIS操縦者がバカを晒して世界初の男性IS操縦者の刻をも止め、世界を揺るがした天災は誰にも流した涙を見られないために走り去る。
今日もIS学園と日本国の平和は維持されたまま始まったばかりであった・・・・・・。
Question9『世界ってなんですか?』
ヒント:実はかなりいい加減ですが、許してくれません。
つづく
おまけ「ジャンヌ・デュノアの『水着イベント』」
「・・・行っちまった・・・束さん立ち直れると良いんだけどなぁ・・・ああ見えて意外と打たれ弱い所ある人だし・・・」
「どうでもいいじゃない、あんなの。どうせ学園と無関係な不審者なんだし。
それよりオリムラ、アンタ何か言うことないの? あるでしょ? ほら」
「??? 何をだよ? お前が思ってたよりずっとアホだったってことか?」
「ちっがうわよ! 本当にバカなんじゃないのアンタって!? 私ぐらいにいい女が水着姿で男の前に立ってやっているんだから、ごく自然に言うべき言葉があるのが当然でしょ?」
「・・・・・・」
「まぁ、私が着てきてやってるんだから絶賛されて当然なのは分かりきってる常識ではあるんだけど、朴念仁のアンタには気の利いた言葉が思いつけるほどの甲斐性なんてこれっぽっちも求める気は無いし、それでも男の義務として言うべきことぐらいは言ってもらわないと女として困るのよねー」
「(ムカ。女尊男卑イラつく・・・。ちょっと意地悪してからかってやるか)・・・ジャンヌちゃん、超せくしー(超棒読み)」
「え(ボッと不意打ちで超絶赤面)」
「え?(不意打ちで赤面されて超気まずい)」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・(///////)」
「・・・・・・・・・(///////)」
『一夏(さん・織斑君)は、まだか――――――――っ!?』
(海で待ちくたびれてる、代表候補生含むIS学園水着女子一同、心からの雄叫び)