シャルロット・デュノアの妹、ジャンヌ・デュノアです。   作:ひきがやもとまち

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第9話「夏の夜の女子会という猥談」

 IS学園臨海学校初日。

 その昼には・・・・・・本当に色々なことがあった。

 

 十代乙女な中国代表候補がM字開脚しながら幼馴染みの後頭部に自分の股間を押し当てて誘惑してから溺れ死にかけたり。(死んでたらライバル減って少し楽かも。専用機持ちは国家の国益代表候補生)

 元世界最強の国立学校美人教師が実弟の前にビキニ着て現れて、堂々とデカいオッパイで圧倒するという、お色気悪女教師キャラとしか思えない犯罪スレスレ行為を披露したり。

 

 ・・・本当にここは国立の超エリート校なのだろうか?

 

 ジャンヌは本気で本国に問い合わせる必要性を感じていたが周りは気にしてないみたいだし、治外法権の学園だし、なにより日本人のHENTAIぶりは国の一部でも有名だったし等の理由が重なって流してしまった。

 

 

 んで、今に至る。

 

「ね、ねえアンタ達。ちょ~っとアタシについてきてもらえない?」

「「え?(は?)」」

 

 夜分遅く――と言うほどでは無くとも就寝時間が迫っているぐらいの時間帯に鈴が、シャルロットとジャンヌの部屋を青い顔色しながら尋ねてきて有無を言わせずついてくるよう促されたので仕方なしに随伴してやったところ。

 

 

 

「お前ら、あいつのどこがいいんだ?」

 

 

 

 ・・・いきなりそう言われた。担任の織斑先生に。

 しかもその直前には実弟の一夏がセシリアの尻揉んでる所をドア開けた直後に見せられたばかりだったし、思わずジャンヌが

 

「はあ?」

 

 と、物凄く柄の悪い口調と表情で「コイツついにブラコンをこじらせて頭おかしくなったか?」的なニュアンスを込めた反応をしてしまっても仕方のないことだった。そのはずだ。

 

 ・・・それなのにどうして自分だけ頭にタンコブこさえられねばならないのだろうか・・・?

 

 やっぱり世界は不条理な差別と階級制に満ちている。いつか絶対に焼き払おうと、決意を新たに無言でしながら周囲の反応を聞いてみる。

 

「わ、私は別に・・・・・・以前より腕が落ちているのが腹立たしいだけですので」

 

 と、奢ってもらったラムネを傾けながら箒。

 

 

 ――ちなみにジャンヌは奢ってもらったジュースについて、たぶん教え子の前で晒してる恥態を黙らせとくための賄賂なんだろうと意訳している。

 外国人にとって意訳は難しい――

 

 

「あ、あたしは、腐れ縁なだけだし・・・・・・」

 

 スポーツドリンクのフチをなぞりながら、もごもごと鈴。

 

「わ、わたくしはクラス代表としてしっかりしてほしいだけです」

 

 さっき見られたエロ行動の反発故なのか、ツンとした態度で答えるセシリア。

 

「ふむ、そうか。ではそう一夏に伝えておこう」

 

 しれっとそんなことを言う千冬に、三人はギョッとしてから一斉に詰め寄って

 

「「「言わなくていいです!!」」」

 

 ハモる。なんとなく昔ネットで見たドリフの漫才映像を彷彿させる光景に千冬は「はっはっはっ」と笑い、ジャンヌは笑う千冬の姿を見ながら「オッサンかよ・・・」とつぶやいてしまって、また殴られた。やっぱり世界は不条理だ。焼き滅ぼしたい。

 

「僕はその――あの、私は・・・・・・やさしいところ、です・・・・・・」

 

 ぽつりとそう言ったのはジャンヌの姉で腹違いの姉妹、シャルロット。

 声の小ささとは裏腹にそこには真摯な響きが込められていて、思わずジャンヌは

 

(いや、アンタの方が遙かに優しいでしょ絶対に。比べ物にならないぐらいには)

 

 と、シスコン補正が入りまくってるけど正しい見方で姉のことを正確に再評価していた。ちなみに声には出していない。ツンデレシスターは素直になれないからこそのツンデレです。

 

「ほう。しかしなぁ、アイツは誰にでもやさしいぞ」

「そ、そうですね・・・・・・。そこがちょっと、悔しいかなぁ」

 

 あははと照れ笑いしながら熱くなった頬を仰ぐシャルロット。その様子をうらやましさ半分、悔しさ半分の負け犬じみた視線で見つめている前述した三人。

 

 その様子を少し離れた位置で眺めながらラウラ・ボーデヴィッヒは内心で首をかしげていた。

 

(―――??? 私は「殴ってやる」とかなんとか言われた記憶ぐらいしか無いのだが・・・優しかったのか? アイツ?

 ・・・ひょっとしなくても、誰にでも優しくする奴でさえ「殴ってやる」と断言したくなるほどの嫌な奴になっていたということなのか、つい最近までの私って・・・)

 

 VTシステムのせいで記憶に一部混乱が見られる改心後のラウラが地味にヘコんでいると、命じられた内容には絶対服従な恩師の口から「で、お前は?」と聞かれ、さっきから自分の思考に浸ってたせいで一言も発しないまま黙り込んでいた彼女は脊髄反射の要領で即応する。

 

 

「ジャンヌ倒す」

 

 

 ぶっ! と、それを聞いたジャンヌが飲んでる途中だったジュースを吹き出し旅館の布団を汚してしまったけど、流石にこれは彼女だけを怒る訳にはいかない状況なので眉をキリキリ急角度に上げるだけで振り上げかけた拳を納める千冬。

 元世界最強だろうと、所詮は生の感情を制御仕切れていない愚民の一人でしかない人でした。人類皆愚民です。

 

 ・・・ていうか、なんでコイツを連れてこさせた? 専用機持ちという以外に関連性ほぼねぇぞ、この世界線だと。

 

 

「いや、一夏について聞いたのだが・・・」

「こ、これは失礼しました。――小官が思いますに弟御はザコだと思います。特に心が」

「・・・そう思う理由は?」

「言うまでもありません。以前までの私と似たものを感じるからです。

 数ヶ月前までズブの素人だった学生が、ちょっと成果を上げたら付け上がり、自分は前より強くなったと自惚れる・・・優秀さを認められた軍人であれば誰もがよくする経験です。

 少なくとも今の時点では、特筆するほどの状態でもないのでは?」

「・・・・・・」

 

 間違ってはいなかったが、話の趣旨とは百八十度以上違いすぎてたので今日の所はスルーさせてもらうことにした。

 

「まあ、強い弱いは別としてだ。あいつは役に立つぞ。家事も料理もなかなかだし、マッサージだってうまい。そうだろ、オルコット?」

 

 後日改めて問いただそうと心に決めたブラコン姉ちゃんは、気分を切り替えるためか、それとも単に酔っ払ってきただけなのか蕩々と弟自慢を語り出し、酔っ払いに絡まれたセシリアを赤面してうつむかせながら、頷かせまでしてしまう。

 

 ・・・日本の法律だとセクハラの罪って、同性にも適用してもらえるのかしら? あ、ここ治外法権のIS学園だったわ。

 ――やっぱ便利ね治外法権って。支配者階級にとってはだけど。スッゲェ焼き滅ぼしたい。

 

「というわけで、付き合える女は得だな。どうだ、欲しいか?」

 

 身近の教え子が危険思想に染まり始めている中で、平然と弟を競りに出すかのような発言をする女教師と、瞳を輝かせながら「え!?」と声を上げる少女達。

 

 ・・・買う気かよ、コイツらは・・・。この旅館は何か? 奴隷売買の非合法オークション会場かなにかだったのか?

 ――だとしたらメチャクチャに焼き尽くされても文句言う資格はないわよねぇ・・・。

 

「く、くれるんですか?」

 

 オズオズと尋ねて確認を取ってくる箒。

 

「やるか、バカ。女ならな、奪うくらいの気持ちで行かなくてどうする。自分を磨けよ、ガキども」

 

 三本目のビールを口にして楽しそうに笑いながら答える千冬。

 もう本当に目の前にいる反逆者みたいな少女の気持ちに気づいてくれ、千冬先生。アンタのせいで旅館がピンチなんですから。

 

 

「・・・ああ、そう言えばお前にも聞いてなかったなデュノア妹。お前は一夏のどこが好きなんだ?」

 

 ず~っと黙りっぱなしで話だけ聞き流してやっていたジャンヌにも、ようやく声をかけて顔を向ける千冬先生。

 目がトロ~ンとしてるし、頬も赤い。呂律も怪しくなりかけている。――やっぱ酔ってるだけでしょ、このオバサン。この短時間にビール三本も飲めば当たり前の結果なんだし、酒量ぐらい弁えなさいよね。いい年なんだから。

 

 大変失礼な言い様を心の中だけで言うことで気を遣ってやるジャンヌ。酔っ払いになに言っても無駄だし、無意味だという常識くらいは弁えている少女である。

 

 だからこそ、今この時に何を言っても相手はどうせ覚えちゃいないからという油断を生んだ訳でもあるのだけれども。

 

 

 

「どうでもいいんじゃない? そんなもの」

 

 

 

「・・・なに?」

 

 

 予想外だったらしいジャンヌの返答に、織斑千冬は瞬時にして往事の判断力と観察眼を取り戻したが、酔っ払いだと断定してしまっているジャンヌは気がつかない。

 

 

「他人に説明する理由なんて、どうせ後から考えたコジツケでしょ? そんなもん考える暇があるなら行動した方が手っ取り早いし、第一楽じゃないの。面倒くさくなくて済むし」

「・・・・・・」

「うちの母方の家の家訓はね、『お前を好きだと叫ぶ時には大きな声で。お前が嫌いだと罵るときにはもっともっと大きな声で』って教えられながら育ってるのよ私は。だから理由とか理屈とかどうでもいいの。

 倒したきゃ倒す、戦いたければ戦う、闇討ちしたかったら相手が誰だろうと闇討ちするし、告白したい相手には好きな相手がいようといまいと関係なく告白して力尽くでも自分のことを好きにさせる。基本でしょ?」

「・・・それはリスクが高すぎる。ダメだった場合は元の関係にさえ戻れなくなるかもしれんのだぞ? そうなって諦めきれる自信がお前にあるというのか?」

「恋愛は戦争なんでしょ? だったら何とかしなさいよ、それぐらい。

 振られるのが恐くて告白できないチキンは黙って遠くから眺めるだけの少女漫画ヒロインやってりゃいいし、何度振られても一から再スタートすればいいな甘粕的恋愛感だって有りだと思うけど?

 土台、これは人の心を奪い合う戦争の話でしかないんだから好きに戦って、やめたくなったら何時でもどこでもやめればいいんじゃないの? 誰も強制なんかしないわよ、赤の他人の気持ちなんてものにはね」

 

 

 割り切りまくった断言をする、立てた片膝に頬杖ついて半分胡座かいてるフランス娘のイノシシ少女を、周囲の少女達は驚愕と共に見つめ直し、担任の織斑千冬は見直したような瞳で、どこか敗北感を漂わせながら教え子を見つめ、最後に残ったドイツから来たちびっ子少女はこうつぶやいていた。

 

 

 

「それでこそ、私のライバル(宿敵)だ。次の死合いで今度こそ決着を付けてやる」

「・・・ねぇ、私あんまり日本語詳しくないんだけど、今物スッゴく不穏当な当て字を使ってなかった?」

 

つづく




今話で千冬先生がジャンヌと箒に真逆のことを言っている理由についての説明です。

箒たちは普段は勢いあるくせして肝心なところでヘタレる悪癖を持ってます。
「欲しいか?」と言われて「くれるんですか?」と答えてしまう他力本願な姿勢でいる箒たちには「怖いからって姉から与えてもらおうとするのは筋違いだぞ?」的なニュアンスを込めた返しをしていたと言う解釈で書いたのが今話の彼女です。

逆にジャンヌに対しては、「リスクを考慮しないでおこなう突撃は勇気ではなく蛮行だぞ?」と言う意味を込めて失敗した時のリスクについて語らせてます。

彼女自身の恋愛思想については原作通りに語っていません。あくまで年長者としての立ち位置で語らせてみた回ですので誤解なさいませんようお願いします。
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