とある策士の外史旅(仮)   作:カツヲ武士

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弟子視点

普段、隠しているわけではないです。
自ら名乗らないのは
師弟揃って自分から
李儒だ!とか司馬懿だ!とかの
自己主張に意味を見いだしていないからです。

漢(漢女)なら背中で語れ。

そんな範馬勇●郎スタイル。


憧れは理解から最も遠い感情だよ

 狐の勧誘に成功した・・・か。

 

 確かにこの狐、阿呆で淫乱でこの上ない醜態を晒したが、決して無能では無い。

 

少なくとも今まで築いてきた人脈は、我等師弟より上。

 

 これから来る時代に、どのように生きて行くのかはわからんが、人材はいくら居ても足りんのだろう事はわかる。

 

 それを踏まえれば、今回の熊退治。

狐を見つけたのは偶然か?と今さらながらに思う。

 

 聞けば、師の事だから「世に偶然なんて無いんだぜ」

などと無駄に良い声で嘯くに決まっているが。

 

全く、いつまで経ってもその背中に追い付けん。

 

 小娘に追い付かれてたまるか?

半人前脱却してからにしろ?

 

 いえ、これからは弟子としてだけではなく

淑女としての扱いも要求します!

 

なっ、鼻で笑いやがった!

 

 良く見て下さい!

少なくともこの貧相な狐よりは

女として上でしょうが!

 

 何?飛び火?

関係あるか。今は先達のための礎となるのです。

 

 それはそれとして、ほら見て下さい

この平らな胸。

10歳の頃の私にも劣りますよ。

 

何?叔母よりある?

 

 下を見るな下を

せめて平均を見なさい。 

 

 ブーメラン?何ですかソレ?

 

 ともかく、続けます。

そう、その弛みきった腹っ。

見苦しいプニプニの贅肉。

大将軍に売りに行ったらどうですか?

 

 さらに足。

・・・普段歩いたり、馬に乗ったりせずに

牛車や輿に頼りきってるんでしょうね。

 

 なんと言えば良いか・・・もはや憐れみすら感じますね。

なんかごめんなさい。

 

 あと、いつまでその無様な下半身晒してるんですか?

娼婦だってもう少し、こう、有りますよ?

羞恥心的な?

 

 

 あぁ着替えでしたか。

・・・そんな無駄な荷物持ってるわけ無いでしょう。

 

 まったく、山を舐めてるんですか?

 

 まぁ少し離れた街に宿を取っていて、そこに置いてますから、それまではこの布をまいて下さい。

あぁソコソコ良いものですが、もちろん返さなくてもいいですよ。

 

 え?・・・そのまま街に入れるわけ無いでしょう。

アナタはこの周辺だと有名過ぎますからね。

 

 街の近くに行ったら師と私が宿に入りますので、アナタは野宿の支度を・・・泣くな、喚くな、騒ぐな、触れるな、いっそ関わるな。

 

 まったく、山を舐めてるんですか?

 

 後半山関係ない?

気のせいでしょう。

 

あぁ、もしかして大声出して餌になって食材を集める気でした?

 

 良い心がけですが、子熊の肉がありますからこれ以上要りませんよ?

 

不要な殺生は師に禁止されてますからね。

 

 不思議そうな顔してますが、わかります。

師が殺生禁止するとか意味わかりませんよね。

 

 まぁ確かにアレは、目の前に立たなくとも人を殺せる腐れ目ですが、意外と命には敬意を持ってるみたいですよ。

 

武器を向けた人間には一切の容赦はありませんがね。

 

我も人、彼も人。故に平等。だとか。

 

 正直・・・人?と思わなくも無いですが

師曰く、人としての極致にはまだ到達してないそうですよ。

 

まったく、一体あの方はドコを目指しているのやら。

 

 あぁ?そういえば名前。

決まって良かったですね。

 

 言葉は悪いですが、李なんて姓はこの国に溢れてますし、

師が分家の分家と言って認めたなら、周囲も疑いは持たないでしょうしね。

 

 しばらくは師の実家のある弘農で、政と基礎鍛練を行ってもらう形になるでしょう。

 

そこまでは私たちと野宿です。

 

 えぇ、どこで命を狙われるかわからない以上、街に入るのは危険ですし。

アナタの鍛練は今日から始まるのですよ?

 

 師曰く、今から鍛えても歳を取りすぎてるので、私の域には到達出来ないそうですが

 

 

 

  ふっ。

 

 

 

 あぁ失礼しました。

 

 とにかく、最低限その辺の賊に勝てないまでも、戦えるくらいにはなってもらわないと。

 

自分の身も護れずして戦場には行けないでしょう?

 

ですので、とりあえずハイ。

 

 え、この生臭くて温くて白濁した液体ですか?

あぁ、妄想の世界へ旅立つ前に種明かししますが、

牛の乳ですよ。

 

 効果的に体を鍛えるには、飲食物、否、呼吸にまで気を使わなくてはなりませんからね。

 

 ふふふ、これからはそんな駄肉が出来るような、生温い生活はできませんよ?

 

お得意の妄想をする余裕すらないでしょう。  

 

 師の教育方針は、生かさず殺さずが基本ですからね。

えぇ基本です。

時に殺しますから。

 

 ふふふ、日常的に死を間近に感じていれば、とっさの時に硬直しないようになりますし、実戦においての限界も自ずとわかるようになるそうですよ。

 

 

 おかげで、私も鍛練の時以外では、冷静に周囲を観察出来るようになったと自負しております。

 

 己の限界は、そうですね。

師に片腕を使わせることが出来る程度、

と言って置きましょう。

 

 いや、普通って、見たでしょう?

あの人触れずに人殺せるんですよ?

 

 え、見てない?あっちに死体があるから見てきなさい。

多分まだ綺麗でしょうから。

 

納得したなら、アナタの狐耳頭巾を脱いでください。

 

・・・何驚いてるんですか。目立つでしょうソレ。

 

 個性?醜態晒した淫乱狐が、これ以上ナニを主張するつもりですか。

 

 そもそも半人前以下のアナタが気にすることじゃありませんよ。  

 

 と言うか、この場にアナタの死体が無い以上、血まみれの狐耳頭巾が必要なのは分かってるでしょうに。

 

 どうでも良い会話から私たちの人間性を推察しようとしてるのはわかりますが、程々にしておくのをお薦めします。

 

 師曰く、自分が人を見てるとき、自分もまた人に見られている。

 

底が知られたら軍師としてはおしまいですよ?

 

もちろん、女としても・・・ね。

 

 今後私達がどのような関係になるかはわかりませんが、器を見限られて捨てられないよう、精進して下さい。

 

 あぁ、それと。

知っているかも知れませんが、師が付けた名に対して敬意を払い、今日は私から敢えて名乗りましょう。

 

姓は司馬

名は懿

字は仲達

 

親しみを込めて、筆頭と呼んでも良いですよ。

 

モチロン真名では無いのでご安心下さい。

 

 

李恢 徳昂殿?

 

 

 

 

コンゴトモヨロシク

 

 

 

 




狐っ子はこれにて一旦退場

頭が良くて、武力がなくて、李で、恋姫に居ない、出てこないだろう人を思い浮かべたら、李恢が頭に浮かびました。

袁術四天王の李豊も捨てがたかったけど、頭良くなさそうだし
李の付く英雄で有名な【李厳】の子供と同じ
名前だと転生者に気付かれる(確信)

だもんで李恢に決定しました。

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