とある策士の外史旅(仮)   作:カツヲ武士

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昭和の思想家にして哲学家
ヨースーイノウーエの言葉です。

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原作は既に無いっ!
嫌いな人は読み飛ばし!


昼寝をすれば夜中に寝れない

「お母様・・・」

 

大丈夫、大丈夫よ喜雨。

 

「けど、うぐぅぅぅ!!」

 

もう、本当にバカな子ね!

コレは私の罪なんだから、

こんな思いをするのは

私だけで良かったのに。

 

「あ、う、ち、違うよ」

 

違うって?

「教頭様にも言われたじゃないですか。

お母様だけにこんな痛みを背負わせて、

私はのうのうと生きて汚名返上なんか

できないよ!」

 

喜雨・・・

 

「こうしてお母様と同じ生き地獄を

味わうのは、ただの自己満足」

 

・・・

 

「だからお母様が責任を感じたり

しなくて良いの!

道連れが出来たって喜べば良いの!」

 

本当にバカな子。

 

「うぐぅ!」

 

娘を地獄の道連れにして

喜ぶ母親が居るわけ

ないでしょう?

 

「バカなのはお母様!」

 

えっ?

 

「は、母親を見殺しにして、

喜ぶ娘なんか居ないんだから!」

 

あぁ、そう、そうだったのね。

確かに私はバカだった・・・

 

「お母様?」

 

もっと貴女と向き合うべきだったわね。

 

「そんなこと・・・」

 

元々貴女は謀略家気取りの

私と違って、生粋の内政官。

 

策謀飛び交う場になんて連れていかずに、

得意な農政に専念させるべきだった。

 

「・・・」

 

そうすれば戦の勝ち負けに関係なく、

陳家は生き残れたし、名も穢れる

ことはなかった。

 

「・・・そうかもね」

 

私はどのみち死んでただろうけど、

貴女はもっと違う形で李儒様と

出会えたはずよ。

 

「それは、凄く損したね!」

 

ふふっ。いつまでも私が守らなきゃいけない、

内気な娘って思ってたら、

しっかり成長してるじゃない?

 

「バカだって死んだら治るんだよ!

雑草だって踏まれたら強くなるの!

弱気なんか吹き飛ばさなきゃ!」

 

えぇ、そうね今の貴女には

私の庇護は要らないわね。

 

「う、うん。私はもう、大丈夫なんだから!」

 

こうして成長した娘が見れた。

漢に混乱を産んだ私の最後には

もったいないくらいの幸せよ。

 

 

 

「・・・お母様。陳家は

陳家は私が守ります!」

 

えぇ、お願いね。

 

「教頭先生の元で学んで、

もっと成長してみせます!」

 

うん、そうね。

 

「お母様より綺麗になってみせます!」

 

それは、難しいかもね?

 

「お母様より長生きして!

沢山の事を見て!」

 

あぁ、それは素敵ね。

 

「可愛い子供に囲まれて、

笑顔でお母様に会いに行くんです!」

 

あらあら、楽しみが出来ちゃったわね。

 

「だからお母様!」

 

えぇ

 

「「また逢いましょう!」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

こんなことが、こうして死を覚悟しないと

わからないなんて、

どれだけ温い世界に居たのか。

 

死を覚悟して生きてるのは私たちだけじゃない。

 

・・・子を持つ親は私だけじゃない。

これから漢には今まで以上の

混乱と、沢山の血が流れることになる

 

この罪を背負うならこの痛みは当然。

 

この痛みの中で歩む一歩一歩が

私の罪の重さ。

 

けど、これが、私から流れ出るこの血が、

喜雨の罪を洗い流すなら。

 

私の娘一人が許されることに対して、

例え全ての子を持つ親に恨まれてもかまわない!

 

愚かな女と笑え。

謀略家気取りの女と笑え。

 

ただ母親として、私は胸を張って死のう!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

この度、新帝により廷尉の位を

授かった。陳漢瑜である。

 

 

これよりその任に従い、

我が罪を暴き、そしてその罪を裁く。

 

我が罪とは

 

逆賊曹孟徳の口車に乗り

本来の皇統をねじ曲げ、

その場に立つ資格のない愚物を

新帝として奉じた罪である。

 

漢に、更なる混乱を産み出した

罪である。

 

例え脅されたとは言え、

愚物の皇帝僭称に協力し

この漢に混乱を招いた罪は重い。

 

故に我に与えられる罰は死以外になく、

その財の全ては豫州牧たる袁公路様へ

帰属するものとする。

 

また、その一族も袁公路様預かりとする。

尚、袁公路様及び、後見を務める孫文台様の

ご意向によっては、一族に死を賜ることも

受け入れよ。

 

我が一族には、既に己の意思で

生死を決める資格など無いと知れ。

 

以上。一族全ての断罪でもって

陳漢瑜の罪に対する罰とする。

 

 

 

 

 

 

 

(喜雨、さようなら)

 

 

 

 

 

 

 

 

「お、お母様ぁぁぁぁー!」

 

 

 

 

 

 

――――――――――――――――――

 

 

 

 

 

 

『いや、なんかスゴク・良い感じに

纏まってるように見えますけど、

教頭先生ってはじめから漢に混乱

もたらす気でしたよね?』

 

うむ、その通りだ。

 

『陳珪、無駄死にですか?』

 

いや、そのままなら逆賊として

一族朗党が殺されていたが、

きっちり生き残ってるだろ?

 

『あー確かに』

 

陳登も生き地獄を耐え抜いた。

 

『アレ、良く耐えましたよね』

 

お陰で陳珪は成長した娘を見れて、

陳登は母の覚悟を見た。

 

更に娘にあるのは親の罪だけ。

ソレも孫堅次第でなんとでもなる。

 

これだけで陳親子には十分な報酬だろう?

 

『なるほど(´・ω・`)』

 

その上、全てを袁術に渡したから

沛国を攻めたら、孫堅への

敵対行為だ。やつらに出来るか?

 

『無理ですよねー』

 

そういうことだ。

だから、陳珪にとって無駄死にではない。

 

『わかりました!』

 

更に連合は出鼻をくじかれ、

新帝の祝いに泥を塗られたな。

 

『そーですよね。いきなり廷尉が

罪を自戒して死んでますからね!』

 

しかもその罪が皇帝僭称だ。

内部の人間にすら認められてない

帝だと、漢全土に晒したぞ。

 

『確かに!お母様も遠慮なく

劉表を攻めれますね!』

 

元々遠慮するようには

思えんが、まぁ、そういうことだ。

 

で、俺は新血愁が

覚悟を決めた将に対して

どれだけ効果が出るかって

事を確認出来た!

 

『二人も手に入りましたからねー』

 

最終的には陳母娘が納得して、

逆賊が混乱して、俺が喜ぶ。

 

ほら、一人の謀略家気取りの死としては

もったいないくらいの意味があるじゃないか。

 

『絶対最後のが一番大きいですよね』 

 

当たり前だ。

何で俺が無償で謀略失敗した

阿呆の為に動かなきゃならんのだ。

 

『ですよねー。

元々が陳珪の自業自得なんですから、

木人間くらいにはしないと

割に合いませんよね?』

 

まったくもってその通り。

 

『あとは変態女中がいつ弾けるかですか?』

 

ふむ。そう言えば居たな。

あの覚悟ができてない変態女中も、

陳珪の爆発四散を見て、今ごろは青い顔して

頭を抱えて居るだろうよ。

 

『いっそ弾け飛んだら楽だと

思うんですけどね( ノД`)』

 

死にたくないって言うのは

生き物としては正しい感情だからな。

 

自分が死んでも・・・!

なんて覚悟を決めるほど

陶謙は良い主君でもないし。

 

『じゃあ、あの変態女中はどう

動きますかね?』

 

普通なら降伏だな。

 

『主君を見捨てて、ですか?』

 

自分が先に降ることで糸口を掴む!

とか自分に言い訳しそうだ。

 

『あぁ、追い詰められた連中の

定番ですよね』

 

無駄に機密情報とか持ってきそうだが、

今更要らないんだよなぁ

 

『情報収集要員にしたりは?』

 

あんな目立つ密偵なんざいらん。

必要なのは個人より組織だからな。

 

『ですよねー』

 

 

後は誰かに救いを求めるかだが、

アレを破れるヤツがいるかな?

 

『無理でしょー』

 

無理かなぁ。

 

 

―――――――――――――――

 

 

 

まさか、まさか、まさかっ!

 

「華琳様っ!」

 

あ、あぁ桂花。

取り乱したわね。ごめんなさい。

 

「い、いぇ。その、仕方ないと思います」

 

仕方ない。えぇ、そうね。

さすがに燈があんな真似をするなんて

想定外だったわ。

 

「あのような死に方をしてまで

自害するなんて。

一体何が不満だったんでしょうか?」

 

今となってはわからないけど、

三公ですらない廷尉に不満があったの

かも知れないわね。

 

「で、ですが、所詮太守ですらない

身ですよ?!九卿なら十分じゃないですか!」

 

一郡の太守でしかなかった

私が大司馬ですもの。

一緒に立ち上げた身としては

内心で忸怩たるものが

あった可能性は高いわ。

 

「だから自分が擁立した新帝だけでなく、

華琳様をも侮辱して。

よりにもよって袁術に

降ってから死んだと?!」

 

この場合は袁術ではなく、

先帝によって定められた豫州牧に、ね。

 

「あ、孫堅に降ることを

前提とした、豫州牧・・・」

 

そうね。これで沛国は孫堅が

庇護する地となった。

 

「新帝は沛国に攻め入りますか?」

 

いえ、その前に汝南と荊州を見るでしょう。

 

「こうなったら孫堅は

豫州を纏めねばなりませんからね。

下手に手を出したら、

そのまま戦になってしまいますか」

 

そうね、袁術に降ると宣言しても、

あっちにしてみたらいきなり敵地に

飛び地が出来たようなモノ。

先頃盧江の兵が北上したばかりよ?

準備も何も出来てないわ。

 

「かと言って降った連中に何の手も

打たなければ、今後の豫州運営に

差し障りが出ますね」

 

とりあえずは寿春と合肥が壁になる。

二つを残して正解だったわね

 

「はいっ。まさしく華琳様の英断です!」

 

陶謙はしつこく攻めようとしてたけどね。

 

「今、孫堅とぶつかるわけには行かないのに、

そんなこともわからない。

目の前しか見れてない愚物ですよ!」

 

そうね。汝南攻略と南陽の攻略。

さらに董卓の南下に備えるので

精一杯なのに、この上孫堅なんて

相手にしてられないわ。

 

「新帝の勅で汝南と南陽の

官軍の動きを止め、

公孫賛の動きをちらつかせて、

董卓と司馬懿の動きを拘束。

長安と盟を結び、劉璋を逆賊として

共同で討伐し。

劉弁殿下と新帝を婚姻させて、

新たな人事を発令させれば漢は立ち直る。

まさしく漢全土を覆い尽くす大計!

こんなの華琳様にしか思い付かきません!」

 

そうね。そのためには長安の混乱に

付け込む必要があるわ。

だから各勢力の動きを少しでも鈍らせて、

時間を稼がなきゃいけないのに・・・

 

「それなのにあの陳珪がっ!」

 

彼女の不満を読みきれなかった

私の不明よ。

 

「そんなっ!」

 

桂花、事実は事実として受け止めましょう。

彼女に憤死するほどの不満を与えていた

のは他でもない、この私よ。

 

「・・・はい」

 

全てが終わったら。私を諌めたとして

公の位でもあげないとね。

 

「そんなことする必要無いです!!」

 

桂花。コレは陳珪の名誉の為じゃない。

私の誇りを示す為に必要なの。

 

「華琳様の誇り、ですか?」

 

えぇ、批判されたからと言って

感情的に振る舞っても相手は死人。

どうしようもないわ。

 

「・・・はい」

 

なら精々讃えてやりましょう。

そうすれば陳珪が私を貶めようとした

自害が、私の名を上げる契機となるわ!

 

「なるほど、陳珪にとっては

最高の皮肉ですね!」

 

あとは残った娘の陳登をどうするか、だけど。

 

「陳珪が前もって陳登に指示を

出していた可能性はかなり低いですよね」

 

そうね。もしそうなら、沛国は

あそこまで混乱してないわ。

 

「陳登は母の遺命に従い、その身ひとつで

盧江へと赴いたそうです」

 

ある意味ではアレも被害者よね。

・・・良いでしょう。

陳珪に公位を与えたときに

陳登の罪も恩赦しましょう。

 

「よろしいのですか?」

 

元々陳登の罪は陳珪の罪に連座したモノ。

ならば、陳珪の罪を赦すなら彼女の罪は

元から無くなるわ。

 

「あ、確かに!」

 

それに、母親の陳珪が私を恨んでも、

娘の陳登が私に感謝すれば

泉下の陳珪はどう思うかしらね?

 

「なるほど!陳珪の死の全てが華琳様の

得となりますね!!」

 

そういうことよ。

とりあえずは新帝陛下を落ち着かせて

から目の前の汝南を攻略して

もらいましょう。

 

「そうですね!煩く騒ぐだけの連中は

汝南に行ってもらった方が楽ですしね!」

 

えぇ。元が洛陽から逃げ出して劉表に

保護されていた自称清流派。

何をするにも口を挟んでくる連中よ。

 

董卓が問答無用で首を飛ばした

気持ちもわかるわ。

 

「ち、調整は私にお任せ下さい!」

 

よろしく頼むわ。

ヤツらも、新帝擁立に多大な貢献

をした荀家の家長には文句

つけようが無いからね

 

「はいっ!華琳様のご期待に答えて見せます!」

 

えぇ、よろしく。

ご褒美は・・・もう少し

落ち着いてから、ね?

 

「あ、は、はい!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・・・秋蘭、アナタが居ないとダメね。

夜も満足に寝られないんですもの。

 




娘眼鏡は盧江~南陽に行く模様。

眼鏡?好きですが何か?

はおー様はお疲れなんです。
ガンバレーミンナガンバレーってお話。

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