とある策士の外史旅(仮)   作:カツヲ武士

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同じ洛陽に居るのに、今まで全くかかわってこなかった
はおー様登場!

とうとう原作キャラとの絡みが?!

オリ設定、オリ展開です


幕間 ~はおー来訪者~

 

 

 

 

 

・・・また、留守、ね

 

 

 はぁ~

 

 いけないと思いながらも、思わずため息が出る。

あぁ、ほら、私のため息を聞いたせいで、

側仕えの春蘭が不機嫌そうな雰囲気を隠そうともしない。

秋蘭は・・・うん。隠せては居るわね。

 

 「まったく!男の分際で何度も華琳様に無駄足を踏ませるとはっ!」

 

 春蘭は理解しているのだろうか?

北部尉でしかない私と、九卿に叙せられた李文優では

男女の差があったとしても、社会的な格が違うと言うことを。

 

 そんな九卿の家の前で怒気を隠さずにいるなんて、自殺行為でしかないのに

 まぁ春蘭のそういうところも可愛いのだけれど・・・さすがに止めないとね。

 

 それくらいにしておきなさい。

 

 「ですが華琳様っ!」

 

 そもそも約束したわけでもないし、居留守と言うわけでもないのよ?外出を咎めるほど貴女が仕える私は狭量なのかしら?

 

 こう言えば、間違いなく大人しくなるだろう。

むしろ大人しくならなかったら、彼女の中の私がどれだけ暴君なのか

寝台の上で一晩中OHANASHIしなくてはいけないだろう。

 

 「しかしこうも会えないとなると、避けられているようにも感じますね」

 

 そんな秋蘭の声で我に返る。

 

 危ない危ない今夜のことを思って軽く意識を飛ばしていたけど、

確かにここまで会えないと、何か作為的なモノも感じる。

 

 運命と言う言葉は好きではないけど、彼と私の道は交わらないと言うことかしら?

けど、それはそれとして考えてみよう。

 

 

 問・彼が私を避けている可能性はあるか?

 

 答・否

 

 問・それは何故か?

 

 答・理由が無い。もし彼が避けてる相手が居るとすれば、それは私ではなく、彼を囲おうとしている名家や名族の連中だろう

 

  

 うん、そうね。

何せ彼の存在は、つい最近まで上位の家の連中で

独占していたのだ。

 

 故郷の沛国譙県に居たときはもとより、洛陽の学問所に通っていた時すら

私は彼の存在を知らなかった。  

 

 名門の学問所にとっては、通う師弟の面子や誇りを潰さない為。

名家にとって、貴重な種馬候補の情報を広めたくなかったという事情。

本人も特に名声に興味が無かったのか、積極的に広めようとはしなかった。

 

コレはまぁ、面倒の方が勝ると考えたのだろう。

 

 気持ちはわかる。

 

 名家だの名族と言う連中は、己の血を誇るだけで

実際には何もできない、先祖代々の遺産で食いつなぎ

腹が減ったら、漢と言う国すらを喰い漁る愚物の群れだ。

 

 まともな頭があれば、そんなのにわざわざ関わろうとは思わないハズ。

 

 私だって母上があの学問所を指定しなければ、

彼が通っていたような、中央から少し距離を置いた

学問所を選んだだろう。

 

 つまりは私が彼に会えないのは、名家たちのせいだと言えるわね。

まったく、どこまでも邪魔をしてくれる・・・

 

 

 それを考えたら、司馬仲達は本当に上手いことやったと思う。

 

 名家の人間でありながら、何故あのような場所を選んだのか?

皆が不思議に思っていたが、彼の情報を得た今ならば

アレが最適解であったと分かる。

  

 基本的に、私塾はともかく国営の学問所で学ぶことは全部同じだ。

そうでないと、仕事に就いた時にその成果に

バラつきが出来てしまう。

 

 だから基本は一緒。

基本でない部分は、学生同士で論を交わして高め合う。

 

 ・・・あの学問所には、私を高めることが出来るような人間は居なかった。

 

 私が真名を許したのは僅かに二人。

 

 その1人は名門袁家の次期当主、袁本初 

おそらく母上が繋がりを持ってほしいと願ったであろう人物。

 

 阿呆だけどね。

 

 ただ、麗羽はアレはアレで袁家の当主にふさわしい人間なのでしょう。

 

 阿呆だけどね。

 

 袁家内部の派閥やらなにやらは、パッと見ではわからないかもしれないが、かなり澱んでいる。

その中で暗殺やら何やらをされることなく、次期当主として認められていると言うのは、

間違いなく一つの成果なのだ。

 

 阿呆だけどね。

 

 そして成果を上げている人間を馬鹿にするほど、私は狭量ではないつもり。

 

 間違いなく阿呆だけどね。 

 

そしてもう一人は幽州の名門、公孫家の当主と愛人との間に生まれたという、公孫 伯珪

 

 これと言って特徴は無いのだけれど、普通に友誼を交わして

いつの間にか真名を交わすことになった少女。白蓮。

 

 漢の藩屏として、鮮卑や烏桓族と戦い続ける漢の精鋭を見て育った俊英

・・・のはずなのだけど、何故か特徴が無いのよね。

 

 地味なのよね。

 

 間違いなく愚かではない。

 弱くも無い。

 けど、凄みが無いと言えばいいのかしら?

 

 麗羽様の行動にツッコミを入れて、わずかでもその行動を鈍らせる

ことが出来るのは白蓮様だけですっ!って田豊と顔良は絶賛していたけど、

何と言うか、その、褒めてないわよね?

麗羽ありきじゃない?

 

 地味なのよね。

 

 戦場のような、人の本質が出る場所で

数多の人を引っ張るには【華】が必要だと思うの。

その点、麗羽だと文句は出ないわよね。

 

 あくまで神輿、汚れのない綺麗な神輿

それを重厚な袁家の家臣団が支えて行く。

 うん、それを考えればやっぱり麗羽は

私とは違う形ではあるけど、一廉の英雄と言えるわ。

 

 え?あぁ、白蓮の話だったわね。

 今のでわからない?

 

 つまりは・・・・・・地味なのよね。

 

 それに白蓮と私の間には麗羽が居るじゃない?

白蓮が麗羽に勝てる様子が浮かばないのよね・・・

 

 鎧袖一触で負けて、知り合いのところに逃げてそうな感じがするのよ。

 

 失礼・・・とも言えない想像は横に置いて

 

 李儒よ李儒。

 

 政を行えば、荘園の人口と石高を6倍以上にして

 兵を率いては神速の用兵で、賊は戦う前から負けている。

 そして個人の武に到っては指先1つで人を爆散させる魔性の拳の使い手!

 戦う前から相手に死を連想させる双眸!

 この男を前にすれば、賊など10000人居てもその前に立つことすらできないとか。

 

 どこまで噂か本当かはわからないけど、

 この情報は北部尉になってから集めた、

 ある名家が隠していた情報。

 しかも一つの家だけじゃない。

 大々的に広めているなら水増しと鼻で笑うところだけど

 隠していたというところが、この噂の信憑性を高めるのよね。

 故に、信じられないけど、まったくのウソと言うことは無いのでしょう。

 

 李儒の噂と言えば・・・

今思えばだけど、学問所の教員達の私を見る目は何処か生暖かかった。

少なくとも故郷で神童と謳われた私に向けられたのは

 

 恐怖・畏怖・怯懦・称賛・好色・嫉妬・・・

 

 自分たちと違うと恐怖して、

 理解できないと畏れられて、

 無茶をするヤツと怯えられて、

 並ぶものなしと称えられて、

 ハァハァ、曹操たんって色目で見られて、

 何であんなヤツにって嫉妬されてた。

 

 そんな視線を受けて来たこの私に、

 学問所の教員連中が向けた視線はどうだったか?

 

 安心・安堵・余裕・慰撫・好色・・・・・・応援?

 

くぅぅぅぅぅぅ!今思い出したらムカムカしてきたわ!

 

 アレは同じ神童と呼ばれた私と李儒を比べてたのね!

 

 アレに比べたらまだマシだと安心して!

 アレよりまだ理解できると安堵して!

 はねっ返ってるなぁと余裕をもって!

 比べられて可哀想にと慰められて!

 ハァハァ、曹操たんって色目で見られて!

 がんばれって応援されてたのね!

 

 

 「なんたる屈辱!!」

 

 自分の体から怒気が溢れ出るのがわかる!

 今なら殺れるっ!

 

 「あ、あの?華琳様?」

 

 え?何?今気分が悪いんだけど!

例えアナタでも今の私は止められないわ!!

 

 「いえ、あの」

 

 だから何?!

 

 「・・・見られてます」

 

 見られてる?だから何?!って

 

 

 

・・・・・・・・・見られてるわね

 

 

 

 「・・・ハイ」

 

 

 

 ふぅ

 

 

 

 はぁぁぁぁ

 

 

 

 ふぅぅ

 

 

 

 はぁぁぁぁぁぁ

 

 

 

 

 よし、落ち着いたわ

 ありがとう秋蘭。

 

 「いえ、いつもの華琳様に戻られたようで安心しました」

 

 ふふっいつものってさっきまで別人だったみたいに言うのね

 

 (・・・なぁ秋蘭)

 (姉者、今は何も言うな)

 

 どうしたの?

 

 「「い、いえ」」

 

 まぁ主が不在の館の門前でこうしていても迷惑でしょうし、

 今日のところは帰りましょう。

 

 「「はっ」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 李文優・・・今日のところは引き下がってあげる。

 けどいつか、そう、近いうちに私が受けたこの屈辱は必ず晴らして見せる!。

 それまで精々首を洗って待っていることね!!!」

 

 

 

 

 

 (なぁ・・・)

 (何も言うな)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二人とも神妙な顔してどうしたのかしら?

 

 

 

 あ、司馬仲達!アナタもよ!覚えてなさい!!




絡むとは言っていない

時系列としては
師弟が涼州に旅立った翌日です。

噂が勘違いではないのが拙作の李儒くんである


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