とある策士の外史旅(仮)   作:カツヲ武士

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地味様とデ侯惇のお話

オリ設定!
オリ展開!

原作は既に無いっ!
嫌いな人は読み飛ばしっ!


地獄味は意外と甘い

曹操から使者が来たって言うから

だれかと思えば夏侯惇か。

久しぶりだな

 

「あぁ、洛陽で別れてからだから

かれこれ7.8年になるか?

お互い随分と変わったもんだ」

 

まぁな。立場もそうだが・・・

洛陽で片目を失ったとは聞いていた。

動きに支障はなさそうだな

 

「流石に馴れたさ。ただ私には・・・

秋蘭を失った事の方が大きいよ。

この感じには馴れる気がしないな」

 

アタシが言うまでも無いかもしれないが、

それも戦だ。

いままで散々敵を殺してきて

「自分たちは例外だ」なんて言えないさ

 

「そうだな。敵にも兵にも家族が居る。

私はそんなことも分かっていなかった」

 

・・・随分落ち着いたもんだ。

てっきり曹操の敵であるアタシに

噛み付いてくるかと思ったんだが

 

「華琳様か・・・」

 

ん?何かあったか?

 

「いや、私が政や策に弱いから

仕方ないんだが、最近は荀彧とだけ

話をしててな」

 

ふぅん、荀家の神童ねぇ?

今更アタシに使者を送ってくる時点で

頭がおかしいと思うんだが

 

「私もそう思う。既に白蓮殿、いや

公孫賛殿は覚悟を決めている。

今更どんな使者を送ったところで

意味はないだろう」

 

その通り。司馬様との離間も不可能だ。

机の上しか見れない軍師にはわからんの

だろうが。

 

「そうだな。私が秋蘭のように弁が立てば

あんな小策士に無意味な献策なんか

させないんだが・・・」

 

まっすぐなのもお前の持ち味だよ。

お前の部下たちはそんなお前に救われて

来たはずだ。

 

「ふ、公孫賛殿を陥れる為にきた使者を、

陥れられる本人が慰めるとはなぁ」

 

別にお前に恨みがあるわけでもないしな。

 

「恨みにも思われないほど差が開いた

と言うことか」

 

まぁそうだ。わかるだろ?今のお前じゃ

命を懸けてもアタシには届かない。

 

「あぁ、百回戦っても百回負けるな。

・・・私も鍛練してきたつもり

だったんだがなぁ」

 

曹操の周りにはお前より強いヤツが

居なかったからな。

ハッキリ言わせてもらえば、温い。

 

「温いか。武の世界は結果が全て。

今の私と貴女を見れば、確かに私が

してきた鍛練は温かったんだろう」

 

お前は一人で汗を流してきたが、

アタシは自分より強い人達に

鍛えられて血を流して来たんだ。

 

「そうか。それじゃあ勝てないな」

 

そう言うことだ。

あぁ、そういえば曹操からの書を

持ってきたんだろ?

 

「まぁそうだが、逆賊からの書だぞ?

受けとる気か?」

 

知り合いだからな。

 

「・・・感謝する」

 

おう。代わりに一つ教えて欲しいんだが

 

「なんだ折角感謝したのに、下心有りか?」

 

当然だろ?州牧だぞ?

 

「そうだな。その判断に家臣や領民の

命がかかってるんだから、当然だな。

ソレで、何が聞きたい?」

 

理解してくれて嬉しいよ

聞きたいことは簡単さ。

曹操は何がしたいんだ?

 

「・・・」

 

いや、漠然とした質問で悪いとは

思ってるが・・・そうだな。

死に場所を探してるとか、せめて

逆賊としては死にたくないとか

あるだろう?

 

「・・・」

 

別に戦略とかを話さなくて良い。

ただ戦って死にたいって言うなら、

せめてアタシが殺してやりたくてな

 

「・・・ご厚情には感謝する」

 

ん、流石に助命はできないからな

せめてもの情けだよ

 

「ありがたいと思うが、恐らくは不要

だろうな」

 

アイツならその前に自害するか?

 

「いや、わからないんだ」

 

わからない?

 

「以前の華琳様なら、公孫賛殿が

言うように自害したかもしれん」

 

以前の曹操なら・・・か?

 

「そうだ。自害を選ばなくても、せめて

堂々と兵を率いて司馬懿と戦う事を

選んだだろう」

 

まぁ、そうだな。孫堅が北上するか

冀州勢が南下するか董卓が東征するか

アタシが西征するか。

どれか一つでもされたら終わるのが

今の曹操だ。自害を選ばないなら

南陽にいる司馬様を狙うのがアタシの

知る曹操だな。

 

「私もそう思う。はじめに話を聞いた

時は、背後を気にしないようにする

ための使者かと思ったが・・・

しっかり話を聞いてみると、

時間を稼ぎ周囲を味方につける為の

使者だと言うじゃないか」

 

この状況で時間を掛ければ、曹操の

味方が居なくなり、司馬様が強化される

だけじゃないのか?

 

「私もそう言ったんだがな。軍師殿が

言うには、私にはわからない深謀が

あるらしい」

 

ソレがアタシへの使者?

 

「そのようだ。アレが言うには、何でも

司馬懿と公孫賛殿は不仲だから使者が

往来するだけで、公孫賛殿の立場が

悪くなるんだとか」

 

いや、まだ不仲とか言ってたのか?

 

「不仲だから、冀州から離して青州へ

侵攻させたんだそうだ」

 

意味がわからん。不仲ならさっさと幽州へ

返すか、冀州に留め置いて動きを封じる

だろうが。

 

「そうだよなぁ。わざわざ大量の兵糧を

持たせて侵攻させるわけ無いのにな」

 

そんな事すらわからないからウチの

連中に筍の神童とか言われるんだよ

 

「ふっ、筍か。無駄に背伸びしてる

ところなんか確かに筍だな」

 

男嫌いで他人を見下す癖があるような

名家の軍師を傍に置いたらダメだろうに。

 

「まったくだ。宮廷工作と書類仕事は

できるから重宝されてはいるが、ソレと

策を練る知謀は違うだろ?」

 

その通りだよ。少なくともウチじゃあ

兵士と同じ訓練ができないヤツに策を

練らせる事は無いな。

 

「うむ。戦うのは兵だからな。

武官を見下し、兵を見下すヤツに

将兵の動きや気持ちを理解できる

筈がない」

 

そうだ。そんなヤツが練る策なんて、

まさしく机上の空論。

長安や荊州の連中みたいに城の中で

足を引っ張り合う連中ならまだしも、

戦場で命を懸ける我らに通用する

わけが無いじゃないか。

今の曹操は、そんな事にも気付かないのか?

 

「そうだな。気付いて無いのか

現実を見たくないのか・・・」

 

現実ねぇ?ソレを言えば、そもそも穎川や

広宗の時点でおかしかったんだ。

県令でしかなかったお前達が、

何で穎川で糧食を焼いた?

何で司馬様に楯突いた?

 

「・・・普通に考えれば、兵の前で

兵糧を焼くのは間違ってるし、司馬懿が

言ったように食糧に貴賤は無い。

国の財と言われればその通りだよ」

 

あぁそうだな。

 

「広宗の軍議で許可なく発言しようと

したのも、軍規違反と言えばその通り。

更に不敬だ。首を討たれなかった事が

温情だったと、今ならわかる」

 

その通りだ。お前は腕を折られたが、

本来ならそんなもんじゃ済まない

 

「・・・やはり増長して居たのだろう」

 

・・・増長か

 

「そうだ。賊を相手に連戦連勝。周りの

州牧や将軍が負けた敵でも、私たちなら

当たり前に勝てた」

 

だから周りの意見など必要無いと、

自分が正しいのだと勘違いしたか。

 

「そうだと思う。私達も華琳様が

間違ってるなんて考えもしなかった」

 

そのうえ、名家の筆頭格である荀家の

神童までが一緒になって持ち上げる

んだもんな。

 

「朱儁にも手柄を認められ、

義勇軍には憧憬の眼差しで見られ、

民からは讃えられた」

 

誰にも否定されることがなく、

己の才と決断に絶対の自信が

有ったからこそ、己より高みに居る

司馬様を認められなかった・・・か。

 

「そんなところだ。すべては私達が

華琳様を盲信していた事が原因。

私達の過度な期待があの方を追い詰めた」

 

いや、全部ではないだろ。

半分以上は曹操自身の問題だ。

期待に追い詰められたと言うが、

家臣の期待を背負うのが主君だ。

耐えられないなら、分けるか

降ろせば良いだけの話だろ。

 

「ソレを教えてくれる相手も居なければ、

分ける相手も居なかったからな。

単純に私達の力不足さ。

今はアレが支えてるつもりだろうが、

実際は二人で自分達の世界に逃げてる

だけさ・・・」

 

その結果が往生際悪く、密室で小賢しい

策を練る主従か?

正直あの曹操がそんなのになるなんて

思っても居なかったよ。

 

「私もさ。流石に今さら集めた兵士を

鍛えたところで貴女方に勝てるとは

思えない。後は晩節を汚さぬように

散るだけと思ってるんだが、まさか

華琳様を置いても逝けん」

 

・・・夏侯家や曹家に遺せるような

人間は居るか?元服前なら何とか

してやれるかもしれん。

 

「・・・良いのか?」

 

ま、知り合いだからな。

 

「相変わらずのお人好しだ」

 

ソレを含めてアタシだからな。

それに晋ではソレなりにお偉いさん

に成る予定だから、少しくらいは

ワガママも許される・・・と良いなぁ

 

 

「・・・なんとも頼りないですが、

姪に尚と儒と言う子が居ます。

まだ元服してませんので出仕も

していません」

 

親は?

 

「既に居ませんので私が預かってます」

 

そうか。なら誰か適当な配下に預けてくれ。

そして本人達には

 

 

『軍師殿が曹操の寵愛を独占するため、

側近の身内で見目麗しい者を暗殺

しようとしている。

特に夏侯淵やお前に似ている二人は

危険だ。

アタシは敵だが、曹操とも親しいし、

お前とも真名を交わした仲だから

信じられる。お前たちはこっちで

夏侯家の名を残せ。』

 

 

とか言って逃がしてくれたら良い。

後はこっちでやろう。

 

「即興にしては中々・・・それに

嘘は無いです。今のヤツなら

やりかねませんし。

さらにヤツに悪名を着せることも

出来ます。断る理由はありませんね」

 

・・・何て言うか、お前の丁寧語は

スゴク・違和感があるな

 

「華琳様と話すときはこんな

感じですし。

夏侯家の当主として、家名を

護ってくれる提案をしてくれた

恩人に無礼は出来ませんよ」

 

あぁ、そう言えばそうだな。

真面目な話の腰を折ってすまん。

曹家はどうだ?

 

「曹真と言う子が居ますが、

流石に逃がす名目がありません」

 

んー。曹操は普段陳留に居るのか?

それとも許昌か?

 

「許昌ですね、大司馬ですし」

 

あぁ、大司馬(笑)だもんな。

その曹真ってのは?

 

「陳留ですね。まだ3歳くらい

なので、親と過ごしてます」

 

その親の説得は不可能なのか?

どっちが勝っても家名を遺すとか

言っても聞いてくれそうに無いと?

 

「さて・・・難しいかも知れませんが

説得はしてみます」

 

ま、別に強制じゃない。

コレはあくまでアタシの温情だ。

断るならソレが曹家の選択と見なす

だけの話だ。

 

「えぇ。それは理解してますよ」

 

なら良いさ。

何だかんだで袁家は遺ってる、

後はお前らを遺せればアタシに

憂いはない。

 

「本当に甘い。憂いが無くなるのは

私も一緒ですよ?」

 

あぁそうだな。ソレは困る

良し、条件を付けよう!

 

「格好がつきませんな。ココは

『全力で来い!』と言うところで

しょうに・・・」

 

格好付けて兵士が殺されても困るからな

 

「あぁ、成るほど。前言を撤回します。

貴女は最高の将軍ですよ」

 

ははっアタシなんかまだまださ。

ソレで条件だが・・・

アタシ達と戦うことになったら、

ウチの将からの一騎討ちを受けて欲しい

 

「・・・逆賊には過ぎたる栄誉ですが、

よろしいので?」

 

あぁ、逆賊曹操の配下には夏侯惇って

武将が居たと、史に遺してやるよ。

 

「・・・ありがとうございます」

 

おいおい、ココは『負ける気は無いぞ』

って宣言するところだぞ?

 

「ここまでのご恩を受けて、そんな

ことは言えませんよ・・・」

 

・・・そうか。

次に逢うとしたら戦場だろう。

何とかアタシ達と当たるように

してくれ。

 

「ちなみに、他の方々だとどうなるので?」

 

董卓のところの呂布はアタシより

強いし、華雄と張遼はアタシよりは

弱いがお前よりは強い。

一騎討ちどころか問答無用で

殺されるだろう。

 

「なるほど」

 

冀州にはお前らが洛陽で負けた

楊任殿と楊奉殿。更には徐晃殿が居る。

 

「前の二人はわかりますが、徐晃ですか?」

 

あぁ、ハッキリ言えば呂布より強い

 

「まさか?!」

 

本当だよ。だから冀州に挑んだら

雑兵として殺されるだろうな。

 

「・・・」

 

南陽は更にダメだ。その徐晃殿を越える

人が少なくとも三人居る。

あそこに挑んだら戦にはならん。

全員が雑兵として消されることになる。

 

「我々はそんな軍と戦おうと

していたのですか・・・」

 

そうだ。だから良く覚えておけ。

戦場で死にたいならアタシ達が

殺してやる。

他はただの処刑場でしかないぞ。

 

「・・・ご忠告、しかと承りました」

 

あとはお前たちの選択次第だ。

 

 

 

 

 

 

さて、使者の仕事についてだが、

曹操に対しての返書は認めない。

 

まぁアイツも期待はしてないだろう

 

「そうですね。あくまで書を受け取って

貰うことが目的のようでしたから」

 

もしかしたら筍の軍師は、アタシに

お前を殺させる気だったのかも

知れないがな

 

「かも知れませんね。本来なら

真っ先に使者になるべきなのに、

言葉巧みに他の人間を行かせて

ますから」

 

・・・つまらない死に方はするなよ?

 

「注意しますよ。まぁ、この状況で家名を

託せる事は確定してますから憂いは

ありません。精々足掻いて見せますよ」

 

おう、楽しみにしてるよ

 

「・・・では、失礼します」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

やはり勝てないか。だが、家は遺せた。

曹家はこれからだが、可能性は掴めた。

 

憂いはない。

華琳様のお側が私の死に場所だっ!

 

 

 

 

 

 

「華琳様っ!公孫賛に書を届けてきました!」

 

 

 




丁寧語のデ侯惇。
実際はおー様には丁寧語なんで
敬意を抱く相手には出来る設定

あと原作同様、ネコミミとは仲が悪いです。
取り成す妹も居ないんで加速します。

曹操の近くに居ないので、兵士たちを
通じて現実を見れてますね。

まぁこうしないと、どこぞの勘違いと
同じになっちゃいますからってお話。

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