紅いイレギュラーハンターを目指して 旧話置き場   作:ハツガツオ

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ボツの理由:初っぱなからギャグに走りすぎて、アンの自己紹介が目立ってないように感じたため。


前回までのあらすじ

レイとオーウェン、マナリアにて再会。その後、オーウェンの部屋にて語り合いを行った模様


旧第二話 姫様と騎士が並んだら結構絵になるよね

朝日が昇り始めて薄暗いさが残り、大半の生徒達が未だベッドの中で微睡んでいるであろう時刻。相当の広さを誇るマナリア魔法学院のグラウンドにて二つの影が忙しく動き、静かなグラウンドでは鈍い金属音が鳴り響いていた。

 その二つの影の正体は、青と赤のジャージに身を包んだ男子生徒。片や青い意匠の施された剣、片や鈍い光を放つ銀色の刀身の刀を手に取っている。彼らは互いの獲物を以て、激しく鍔迫り合いを行っていた。

 

――まあ、その二人は俺とオーウェン君なんだけどね?

 

「ぜあああッ!!」

「なんの!!」

 

斜めに一閃。左上からの袈裟切りを仕掛けるも、彼の剣で受けられて右へと軌道を逸らされる。そしてがら空きとなったところへ、剣の柄での打撃を仕掛けてきた。

 直ぐさま右手を刀の持ち手部分から離し、腹部に当たる前に柄を握り込んで阻止する。……あっぶねぇ。ギリギリ間に合った。

 

 何が何だか分からないと思うから簡単に説明しよう。昨日あれからオーウェン君の部屋で七年間の近況報告会みたいなのをやってる最中、鍛錬とかの話しになったんだわ。

 で、そこで俺が座学をやってても、腕は落とさないように修行は続けてるって言った瞬間――

 

『では早速明日の朝より、共に鍛錬を行いませんか?』

 

 って、それはもう言うのが速かった。速さが足りないとかそんなレベルじゃなくて、最早未来視の如くこっちが言ってる最中に被せてきた。しかも前日だってのに、今すぐ俺はやれるぜみたいなオーラを醸し出しながら。遠足を翌日に控えた小学生かよって突っ込みたくなったわ。

 で、翌朝になって走り込みや素振りなどの基礎練が終わった後、こうしてやりあっている訳である。以上、説明終了。

 

 数秒の間膠着状態となったものの、オーウェン君が身体を反転させてその場から離れて仕切り直そうとする。

 しかしそこを逃すわけにはいかない。追撃として俺は刀を脇に構えて接近し、右からの横薙ぎを仕掛ける。これを彼は刀身で受け止めた。

 成る程、これも防ぐか。流石……と言いたいけど、まだ()()残っているんでね

――――!

 

「ハッオリャッ! ハットウッオリャ――ハァッ!!」

「ぐっ……!?」

 

 振り下ろし、斬り上げ、袈裟切り、大上段、斬り上げ、そして跳躍と同時の切り上げ――先の一発を含めた七連撃を間髪入れずに叩き込んだ。

 彼はその全ての斬撃を防ぐことは出来たものの、威力までは殺しきれずに数歩後ずさる。えぇ……(困惑)。

 

「なんという凄まじい連続攻撃……昨日もそうでしたが、以前よりも遙かに強くなっていますね」

「これを全部防いだお前も大概だと思うんだが……」 

 

 何で今の連撃――メシア乱舞を裁ききれるんですかねぇ……。確か七年前に乱舞擬きを繰り出した時も防いでなかったっけ、君。自分でいうのもなんだけど、これ結構防ぐの難しいと思うのよ。上下左右別々の方向から剣が飛んでくるし、防いでも腕の力とか足りなかったら剣が弾かれるし。

 原作の様な低空ジャンプとか防御不可の状態とかは流石に再現出来なかったけど、俺の中ではかなり強力な部類に入っている。あ、もちろんメシアもといオメガもオリジナルゼロだから、ゼロとしてカウントするからね?

 しかし威力の相殺はともかくこれを全段防ぎきるって……速度や精度も格段に上がっているというのに……ええぃ! マナリアの青い騎士は化け物か!! 防いでる間もカウンター狙ってるの見えてたし!! 当たり前だけど、この七年間で向こうもさらに強くなってるよ!!  ――でも、やっぱり……

 

「お前と打ち合うのは……楽しいな」 

「ええ、私も心が躍ります!!」

 

 そして互いに踏み込んでからの斬り合いが始まった。いやー、バトルジャンキーになったつもりはないし心はチキンだけども、友達と腕を競い合うってのは気持ちが良いものだね。

 

◇    ◇    ◇

 

 早朝の鍛錬が終わった後、俺達二人は制服に着替えて寮を出た。勝敗の方は想像にお任せします。

 これから入学式に参加するために会場である大講堂へと向かわなければならないのだが、その前に寄り道としてとある場所へと足を運んでいる最中である。

 理由としては、現在オーウェン君が受けている護衛任務。その対象である人物との待ち合わせだ。

 本来なら部外者に当たるであろう俺はいない方がいいと思ったのだが、相手に紹介したいので一緒に来て貰いたいとのこと。

 で、現在サクラの映える通りを突き進んで向かっている訳なんだが。

 

(たまに思うんだけどさ。この世界の服装ってどういう基準になってんの?)

 

 この世界に限ったものじゃないけれども、大概服装が謎。

 両親やココス村の人達は割と簡素な服装なものがほとんどだったから、そういうものだと考えてた。

 しかしハクランさんと共に他の島に向かった際、ビミョーに違う――というか、思いっきり違かった。具体的にはアウギュステでのふんどしとかユカタビラとか。

 それに今現在俺達が着ている制服もそうだ。ブレザーにワイシャツにズボンにネクタイと、ぶっちゃけ前世のそれとほとんど変わらなかったりする。正直な話、違和感満載である。服装の歴史とかは詳しくないからどうとも言えないし。

 いくら魔法や科学が入り交じっていたり、ヒューマン以外の種族がいたり、星晶獣というヤベー奴が存在する世界とはいえ、そこの部分はある程度の整合性があってもよかったんじゃないですかねぇ……。

 ちなみにズボンとネクタイの色は青、赤、緑の三色から自由に選択出来たので、迷わず赤を選択した。

 

 そんなどうでもいいことに思考を割いている間に目的地に到着したらしい。オーウェン君が目印であろう、周りよりも一際大きなサクラの木の前で足を止めた。ああ、もう着いちゃったのか……。

「ここが待ち合わせ場所なのですが……少し速かったようですね」

 

 そう呟きながら近くに立っている時計を見て呟いた。ほっ、良かった。

 なんで胸を撫で下ろしているのかだって? 察してくれ。緊張しているんだよ。だから服装に関することを考えて気を紛らわしていたんだ。

 

 しかし、護衛対象の人って一体どんな人物なのだろうか。一応オーウェン君からはある程度の情報は貰っているものの、分かっているのは天真爛漫な女性ということのみ。

 後は俺が勝手に予想をつけているのは、相当なお偉いさんの娘であることだけ。オーウェン君がその人のことを"あのお方"って言ってる位だから。……もしかして、この国の姫様とか? 生まれながらに膨大な魔力を宿していたとかの話を何処かで聞いた気がするし。国の騎士団から彼が駆り出されている程だし。

 いや、流石にそれは無いか。そんな物凄い立場の方に、俺なんぞの様な田舎育ちの一般庶民なんかを紹介するはずが無いだろう。いやまあ、だからと言って何処かの大臣の子供でも相当困るんですけども。騎士団関わってる時点で貴族なのは確定だろうけど。……そう考えると胃が痛くなりそうだ。主に不敬扱いされないかどうかで。

 心なしかキリキリと痛くなってきた腹部を摩ろうとした時、オーウェン君がこちらを向いて口を開いてきた。――顔は真剣そのもので。

 

「レイ、貴方に折り入って頼みがあります。」

「頼みだと?」 

「はい。……あのお方とご友人になって戴けないでしょうか」

「……何か込み入った事情があるらしいな」

 

 そう返すと、オーウェン君は首を縦に振った後に話し始めた。

 彼曰く、その方というのは立場の関係で生まれ育った場所からほとんど外に出たことが無いらしい。当たり前のことだが友達と呼べる存在すらおらず、寂しそうにしているのを何度も見かけたとか何とか。そのために同期として友達になってあげてほしいとのことだった。

 

「とりあえずいくつか質問をしたい。その相手というのは、全く外に出たことがないのか?」

「そうですね……恐らくですが片手で数える程、と言っていいでしょう」

「……言葉から察するに、相手は貴族なんだろう? 詳しくないからどうとも言えんが、他の貴族との繋がりはあるものなんじゃないのか?」

「残念ながら……。あの方には他にも()()()()がありまして、外部との関わりはほぼ無いとも取れる状況なのです。それにそのような関係が全うであると思えますか?」

「いいや、思えん」

 

 思えませんね。権力目当てで近づく輩がほとんどでしょうし。そうでなくとも立場諸々の事情とかで対等みたいな関係性を築くのは難しいと思う。良くても従者とかそんなん。

 こちらとしてはその人の地位や彼の言う()()()()というのはさっぱりだけども、多少の考えは思い浮かぶ。

 

「一部不明瞭ではあるものの、大体の内容は把握した。しかし俺でいいのか? お前の言うことに反するのを承知だが、俺は田舎育ちの平民な上に戦うこと以外には特に取り柄のない男だ。……愛想もかなりよくないし、言葉も荒かったりするしな」

「地味に気にしてたんですね……。それはともかくとしてですが、あの方は言葉遣い程度で癇癪を起こすような方ではないので大丈夫かと。それに私が貴方にこの話をしたのは、貴方の人柄を知っているからこそです。貴方なら、あの方を色眼鏡で見ないでしょうと思ったので」

 

 そんなことはないんじゃないかなぁー……。別に権力者だからってゴマを擦るような真似はしないけども、口調とか態度は結構無礼な方よ? いくら相手が気にしないって言っても、また別の問題になるだろうし。それに同い年でも立場が上だったら内心滅茶苦茶動揺したり、緊張したりするしね。……顔には出てない辺り、黙り癖様々と言えるけど。

 しかしオーウェン君がここまで真剣に話してくるからなぁー……。ただでさえ生真面目な子がさらに輪を掛けて言ってくるんだから、相当その人を思っているんだろうと判断できる。じゃなきゃここまでやらないだろうし。でもいくら彼の頼みでも、流石に俺には荷が重い気が……。

 

「頼めます……でしょうか?」

「ああ、俺でよければな」

 

 友達からの頼みには勝てなかったよ。即墜ちじゃないけど、返事は即座にでした。

 了承の意を返したら「ありがとうございます」と頭を下げられた。いや、あの、なんか罪悪感が凄いんですけども。やべぇ、今更になって大丈夫かどうかかなり不安になってきたぞ。と、とりあえず持ちこたえるためにも、他の情報を貰わねば。

 

「他に分かっていることは?」

「直にご本人に会って頂ければお分かりになるかと」

 

 何でそこで暈かすんですかねぇ……。そんなことを思った時、少し高めの元気な声が俺とオーウェン君の耳に飛び込んできた。

 

「――あ、いたいた!」

 

 声の方向に顔を向けると、新品の制服に身を包んだ一人の女子生徒が手を振りながら走ってきているのが目に映った。

 少したれ目で鮮やかな橙色の髪の毛を腰の辺りまで伸ばしており、笑顔が可愛らしい活発そうな女の子だった。もしかしてこの人かな?

 

「おはよう! 今日は待ちに待った入学式だね!!」 

「はい、おはようございます。お元気そうでなによりです、姫様。このオーウェン、今日という日を迎えられたことを大変喜ばしく思います!」

「あはは……。相変わらず堅いなぁ……」

 

 そう言って彼女は苦笑いする。うん、いいよねこういうの!! 姫様と騎士が並んでいるなんて、物凄く尊い光景――いや、ちょっと待て。今何つった。姫様って単語が聞こえた気がするが。もしかしてマナリア王国の王女様……いやいやいや、待て待て待て。まだ決まった訳じゃあないんだ。女の子の愛称みたいな感じで呼ぶことだってあるじゃないか!! よし、とりあえず、オーウェン君に確認しよう!!

 

「オーウェン、彼女が……?」

「ええ。この方が私が護衛を務めさせて頂くことになったお方。マナリア王国第一王女の――」

「アンだよ! よろしくね!!」

 

――アイエエエ!? 王女様!? 王女様ナンデ!? 

 

 おいちょっと待てェッ!! 何でそんな大物が魔法学院にいるんだよ!? いや、いても不思議じゃないかもしれんけども!! そもそもマナリア魔法学院は平民から貴族まで様々だってのも知ってるし!! だけどまさかのオーウェン君の護衛相手ですか!? こんなことってあんの!? もしかしてさっきちょろっと考えたのはフラグだったのか!? 俺フラグ建てちゃったの!? フラグ建築士の資格なんぞとった覚えはねえぞ!!

 ええい! う……うろたえるんじゃあないッ! ドイツ軍人……じゃない、ゼロの背中を追う者はうろたえないッ!! 顔にはおくびにも出してはならんのだァ――ッ!! 頼むから仕事してくれよ、黙り癖!! 今ここで発揮せずして、何処で役に立つ!! 

 

「……挨拶が遅れて申し訳ない、俺の名はレイ。同じ新入生としてよろしく頼む。あと言葉が荒いかもしれんが、そこはどうにもならん。勘弁してくれると有り難い」

「うん、よろしくね! 言葉遣いの方は気にしないから大丈夫だよ!!」

 

 そう言ってにこやかに返してくれた。ああ、良かった。とりあえず何も言われてないことから、顔には出すことだけは阻止出来たようだ。ナイスだ、黙り癖。お前の存在にこれほど感謝したことはない。あと、胃の痛み。さっきからキリキリと締め付けるような鈍痛が俺に冷静さを取り戻してくれた。そっちもグッジョブだ。

 

(しかし、まさかマナリアの王女様が護衛相手とはね……)

 

 内心で呟きつつオーウェン君の方を見る。新人でありながらこんな大役を振られるなんて……その成長ぶりにはお兄さん嬉しくなっちゃうよ!! ……止めよう、言ってて気持ち悪いわ。外見上は同い年なんだし。中身はカオスだけど。しかしこちらの事情など知ることの無い彼は、俺の視線に首を傾けていた。

 

「……その妙な視線は一体?」

「何、少し思うところがあっただけだ。悪い意味は無いから気にするな」

「は、はぁ……」

 

 何処か納得いかないような顔でオーウェン君は返す。その光景を見たアンさんが俺に声を掛けてきた。

 

「ねえねえ、レイってオーウェンと小さい頃からの友達なんだよね?」

「ん? ああ、そうだが……何故そのことを知っている?」

「オーウェンから何回か話を聞いてたんだ。七年前、ある村で出会った友達がいるって」

 

 そんなことを……。何というか、微妙にこそばゆいな。嬉しいんだけどもね。もしかしたらそういう話をしてあることが理由だったのかもね。初対面の相手よりはっていう理由で。

 

「ちなみにオーウェンからはなんて聞いてるんだ?」

「えーっとね……あまり喋らないし、表情の変化が少なくて、オーウェンと同じくらい強くて……」

 

 ふむふむ、傍からしたら大体間違ってないな。勘違いの方は修正不可能だから放置を決め込んでるから置いておくとしても。こちらとしては変人とか思われてなかったらいいわ。

 

「あと、ごくたまに高笑いすることがあるって」

「おいちょっと待て」

 

 今明らかに変人と間違われるであろう危険なワードがあったぞ。何話してるんだよオーウェン君は。

 反射的にオーウェン君の方へとジト目を向ける。対する彼の方は一体どうしたのかと言うように首をかしげていた。

 

「何か問題でも?」

「何か問題でも、じゃない。問題しかないだろう。お前は何を話しているんだ」

「当然ながらレイのことですよ。貴方のことをお伝えしようとすると、どうしても好ましく捉えることの出来ない部分が多くなってしまうのです。その為、少しでもマイナスのイメージを払拭出来たらと思い、愉快な一面をお伝えしたのですが……」

「愉快にも程があるだろうに……」

 

 思わず頭を抱えてしまう。

 うん、その気遣いはとても有り難いと思ってる。でもね、内容が内容なんだ。俺と君だけならともかくとして、第三者が耳にしたら頭の狂った男にしか聞こえないからね? 総合的に判断したら、普段黙っている癖に時折発狂したかのように笑う危ない奴にしか思えないよ。アウトだよ完全に。

 

「ま、まあ、いいんじゃないかな? オーウェンにだって悪気があったわけじゃ無いんだしさ。それに高笑い位誰だってしたい時はあると思うだろうから、気にしないでいいと思うよ?」

「フォローになっているのかそれは……」

 

 流石にメシア笑いを目の当たりにしたらドン引きすると思いますよ? それならやるなって話なんだろうけどさ。あと、高笑いがしたい時は誰にも無いと思います。悪の秘密結社とか悪の烙印を押されたロボット科学者でない限りは。具体的にはドクロマークが特徴的だったり、秘密基地が骸骨を模したものだったり、爆発した後に立ち上る煙が人間の頭骨の形だったりする変わった髪型の老人とか。

 

「それよりアンタは俺の話を聞いて変人だとは思わなかったのか? 今の話を他の奴が聞いたら、十人中十人が俺を危険人物(イレギュラー)として断定すると思うぞ」

「い、イレギュラー……? まあ、確かに今の内容だけだとね……。でもさ、話を聞くのと実際に会ってみるのとじゃ全然違うことだってあるよね? ほら、外見が途轍もなく強面な人でも話してみると物凄くいい人だったってこととか」

「……まあ、無いとは言えんだろうな」

「でしょ? それはレイに関しても同じだよ。思ったよりも口数は多いし、表情も割と変わったりしてるし。何より、いい人だって分かったからさ」

「……そこまで話していないのにか?」

「うん! さっきのオーウェンとのやり取りなんかも、それだけお互いに信頼してない限りはやらないものだし。それにこうやって普通に話してても、相手を悪くいうつもりは全然ないことが感じられるしね!!」

 

 そう言いながら満面の笑みで返してきた。

 人は外見に寄らず、か。というか、この短時間でよくそこまで見れたなこの人。観察眼というか人を見る目というか、その能力が半端ないわ。 

 心の中で感嘆していると、何かを思いついたかのように彼女が声を上げた。

 

「あ、そうだ! 私とも友達になってくれないかな? もちろん、レイがよければの話だけど」 

「俺としては何も問題はない。友人が出来るのは嬉しいことだからな」

「そっか! じゃあ、これからは友達だね!!」

「ああ」

 

 と、口では言ったものの内心ではかなりビクビクしている。俺なんかで本当にいいのかとか、色々な問題で。結構重荷すぎやしませんかねぇ……。しつこいと思われてるのは重々承知しているけども。

 

「ふふっ、じゃあこれで二人とも友達になれたわけだし大講堂に行こっか。そろそろ時間だし」

「二人……? オーウェンとも友達なのか?」

「はい、一応。……護衛騎士たる私には恐れ多いことですが」

「もー、そんなに堅くならなくていいって言うのにさー……」 

「それはなりません。以前も申し上げましたが、あくまで姫様と私は主と従者の関係で――」

「そうじゃなくて! 私はもっと砕けた感じで接してほしいの!! さっきのレイとのやり取りみたいに!!」

「いえ、ですが、それは……」

 

 絞り出すような声を出しつつ、オーウェン君は俺の方へと助けを求めるかのような視線を送った。ちょ、おま。ここで俺に振るのかよ。原因は俺かもしれないけど。……よし、なら助け船を出そうじゃないか。ただし、聞かれないように小声でだけど。

 

「(オーウェン、ここは彼女に従うしかないんじゃないか?)」

「(貴方までそれを仰るのですか!? 私がそんなことをすれば不敬にも程がありますよ!!)」

「(そうじゃない、俺が言いたいのは言葉を濁せという話だ。真っ向から否定すれば、望むような答えを得るまで食いついてくるぞ、この手合いは。だからどちらともとれるような回答を返せばいいだろう)」 

「(何で貴方がそんなことを知っているのかが非常に気になりますが……分かりました。助言感謝致します)」

 

 この後、オーウェン君はアンさんに「出来る限り善処を尽くします」と返した。それを聞いたアンさんは若干不満そうではあったものの、一応は納得するという形で収まった為に、全員で大講堂へと向かって入学式に参加したのだった。

 

 

おまけ

 

「あ、そういえばオーウェンにも黒歴史みたいなのあったよね」

「え」

「よし、今の話を詳しく聞かせてもらおうか」

「お待ち下さい姫様! それだけは何卒ご容赦を!!」

「そ、そこまでなの……?」

「何をやったんだお前は……」

 

 非常に気になったレイではあるものの、あまりの慌てっぷりから聞くに聞けないのであった。内容はそこまでではないのだが……。




ちょっと今回はやりたいネタが多すぎたためにギャグが七~八割となりました。前回との落差が激しすぎる部分があるかもしれないので、ご指摘があれば感想欄などにお願いします。

《補足説明》

※注意! 今更かもしれませんが、今回の補足説明にはロックマンゼロ3等のネタバレがあります! まだプレイしてない人や、興味を持ってこれからプレイする人は見ないことをおすすめします!!※




・オメガ

「我はメシアなり! ハァ――ハッハッハ!!」

ロックマンゼロ3の最終ステージにて待ち受けるラスボスであり、その正体は正真正銘のオリジナルゼロ。つまりは、プレイヤーが操作していたゼロは偽物とも言える。
しかし本物なのはあくまでレプリロイドとしてのボディそのものであり、心(魂)そのものは制作者がプログラムしたもの。要は身体は本物! 心は偽物! その名は……救世主『オメガ』!! というやつである。
原作の百年前に起こった『妖精戦争』。長きに渡る戦いを終わらせた為に、自らを救世主(メシア)と自称している。なお、CV諏訪部順一(グラブルの十天衆シエテの中の人)
本物の身体を使っているだけのことはあり、ゼロがこれまで使ってきたであろう技の数々を存分に振るってくる。例としてはX6の裂光覇やX5の滅閃光など。

しかし本性は悪そのもの。制作者からは『血に飢えた破壊神』と言われるように、破壊を楽しむ残虐な性格であり、ゼロの開発者が想像していた姿に近い。『妖精戦争』を終わらせた手段としても、破壊の限りを尽くした結果によるもの。オメガによる破壊活動の結果、地球上のレプリロイド約90%と人間約60%が死に絶えた。その後はエックスとゼロ(コピーボディ)によって活動停止(完全破壊には及ばず)させられ、宇宙船にオメガの制作者共々宇宙への追放となった。

普段の巨大な銀色の甲冑姿はパワーを押さえる拘束具の役割であり、耐久度もかなりのもの。攻撃能力もそれに劣らず(という設定)、正に難攻不落の要塞と言っていい。
実際、ゼロと何度も戦ったネオ・アルカディアの四天王達を拘束具の状態で再起不能に追い込んでいる。しかし、ダークエルフと呼ばれる存在を取り込むことでさらなるパワーアップを遂げることになる。

そして最終決戦。ゼロに敗れたオメガはダークエルフの力を使って回復を試みるも、駆けつけた四天王達によって邪魔された上、頼みの綱であるダークエルフも使用不可に。
オメガの制作者がゼロに向かって本物の身体が惜しくないのかと説得を試みるも、同じく駆けつけたエックスによる『大事なのは心なんだ』という言葉が後押しとなり、ゼロは破壊神としての自分に別れを告げることに。

……と、なったらよかったのだが、続編であるロックマンZXにてまさかの隠しボスとして再登場。超絶強化を果たされて、多くのプレイヤーを葬った。

ここまで書けば相当の強敵だと思うのだが、ハッキリ言って()()。それはもう、オリジナルとは何だったのかというレベルで。攻撃食らう度に怯むわ、攻撃頻度は少ないわ、制作者による『限界まで引き出せるようにしてやったまでだ』という名の弱体化と、枚挙に暇がない(ゲームバランスを考えれば仕方ないとはいえるが)。
しかし戦闘中のbgmは全シリーズ屈指の名曲とされており、サウンドトラックなどでもかなりの人気を誇っている。

そんな皆のメシアさんであるが、本作で言うメシア笑いとは戦闘開始前に叫ぶ冒頭の台詞から取ってきている。
ちなみに中の人がグラブルの天星剣王ではあるものの、それとはまた違った感じの声である為に気づかない人も多い。(時期的にはグラブル開始の約十年前近く。それでもその頃にはアニメ版Fate/stay nightのアーチャー役をやっていたため、知っている人は知っているだろう)
聞き比べてもらえれば、その違いがよく分かる。


・メシア乱舞

文中通り高速で相手を七回斬りつける技。初出はロックマンゼロ3のラスボスがEXスキルとして使用。こちらは予備動作無しの低空ジャンプで相手との距離を詰め、間合いに入った瞬間に発動。防御手段はこれを受けないことだけであり、迫られたら全段食らうことが確定する。たとえ攻撃を受けた後に発生する無敵時間中であっても、それすら貫通させて斬ってくる。
ダメージも中々のものであり、ハードモードでは即死が確定。通常プレイであっても、プレイヤーのライフゲージをこれだけで三分の一近く削ってくる。

初出のゼロ3では使用条件が一定以下の体力になったら解禁してくるという仕様なため、使用頻度はかなり少なめ。これらの事情から、プレイヤーによっては見たことがないという人もいるかもしれないと思われる。
しかし続編のZXにてメシアが隠しボスとして再登場。それに伴ってAIの変更、のけぞりや攻撃後の隙の激減、一部の技の強化やEXスキルの廃止に伴う通常技への移行などの魔改造によって、頻度の少なかった乱舞をガンガン使ってくることに。
これが本当にえげつなく、数多のプレイヤーからは非常に恐れられている。作者の実体験を挙げると、

・他の技でバトルフィールドの隅にまで誘導。回避不可の状況からステップ→乱舞のコンボを仕掛けてくる。

・技を食らってこちらが行動不能の無敵時間中にステップ。からの乱舞というコンボ紛いのことをやってのける。

・ステップを躱した――と思いきや、連続で繰り出してきたステップに引っかかり、乱舞を食らう。

・二連続ステップを警戒し、躱した後は流石に大丈夫――かと油断したら、三回目を即座に繰り出してくるというステップコンボを繰り出してくる。こんな技を繰り出しておいてどうやって避けろと言うんだ。

と、あまりの強さから権利元である『CAP○OM』の別作品『ストリート○ァイター』のコマンド技になぞらえて【瞬獄殺】と呼ばれることになったとか。
散々飯屋だのメシア(笑)だのと笑いものにしてきたプレイヤーに一泡吹かせたであろう技の一つ。


・アン

マナリアを代表する人物その一。内容的にも詳しい説明は次回以降。


・イレギュラー

元の意味では『不規則、不揃い、反則の』等といった意味を持つ。
しかしロックマンXシリーズでは『電子頭脳が故障などにより支障をきたし、人間や他のレプリロイド等に危害を加えるようになった存在』、ロックマンゼロシリーズでは『ネオ・アルカディアによって処分が確定されたレプリロイド達の総称』と意味合いが異なる。また、Xシリーズお馴染みのラスボスであるシグマからも『イレギュラーとは人間の言いなりとはならないレプリロイド』というような旨で言われていたりするために、定義が結構曖昧。
さらに、イレギュラーであっても思考回路が正常なもの、イレギュラーに生み出された生まれながらのイレギュラーであるもの、不当にイレギュラーとしてレッテルを張られたものなど様々である。そのことから、イレギュラー=悪と見なすのは非常に難しいと言える。もっとも、根っからの悪人は別としてだが。

この作品では主人公レイが度々イレギュラーという言葉を用いるが、ここでは他者に害意を及ぼすもの、誰がどう見ても危険な奴などの意味合いで使うことが多い。なお、本人は無意識な模様。

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