Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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未完作品もある中、また新たに小説を投稿させていただきました。
マイペース更新となりますが、精進いたしますので、何卒よろしくお願いいたします。


第一章 Happy New Life
第一話 世紀末からおはようございます


 ──人は、過ちを繰り返す。

 

 人は有史以前、自らの拳と歯で、或いは木や石を用いて、そして火を使用して、争いという行為に勤しみ。

 有史以降も、剣を、銃を、砲を、そしてミサイルを。

 人は自らを取り巻く環境を発展させ豊かさを手に入れる一方で、有史以前から変わることのない争いという行為を止める事はなかった。

 

 やがて、人は取り巻く環境の豊かさが頭打ちとなると、その現実から逃れるように、更に争いという行為へと邁進する。

 それが、母なる大地の命を削ると解っていても。

 

 

 そして、遂に膨れ上がった争いの炎は、人を、有史以前から続く文明を、母なる大地を、全て飲み込むこととなる。

 

 

 やがて訪れたのは、静寂と終末の足音であった。

 

 

 一度は死の淵にあった母なる大地が緩やかに息を吹き返す中、人もまた、不死鳥の如く死の大地から蘇り、逞しく未来を紡ごうとしていた。

 

 だがそれでも、人は遺伝子の奥深くに書き込まれた争いの呪いから逃れることは出来ず。

 そんな呪いの効果によって生まれた、死の灰に覆われた新たなる世界の住人達と、生存競争と言う名の争いに興じる事となる。

 

 母なる大地とは対照的に、嘗て母なる大地の頂点に君臨していた人が緩やかな滅亡へと歩む中。

 

 

 

 ──それでも人は、過ちを繰り返す。

 

 

 

 

 

 希望よりも絶望に溢れた世界、明日どころか今日すらも五体満足に生きていられるか分からない世界。

 そんな世界の住人に就寝して目が覚めたらなっていた、と分かったら、一体どうなるだろうか。

 とりあえず、現実を受け入れたくなくてパニックになるだろう。

 

 このクアンタム・ハーモナイザーを君のフォトニック・レゾナンスチャンパーに入れるぞ!

 と、パニックのあまり叫んでしまうかもしれない。

 

 だが、幸いな事に俺はそうはならなかった。

 これも、俺の中のもう一つの記憶、肉体が持つ記憶というべきか。この世界で生を受けこの世界で九年間を過ごした記憶があったからこそ、どこかこの摩訶不思議な出来事を客観的に受け入れられたのかもしれない。

 とはいえ、目が覚めてベッドから起き上がり周囲の状況を把握して、自身の状況を置かれた状況を理解した時は、流石に冗談だろうと声が漏れてしまった。

 あと、ちょっとだけ頬もつねった。

 

 まさか漫画やアニメよろしく、嘗て住んでいた世界、今や前世となった世界で『ゲーム』として体験していた世界が、『現実』の世界として実体験する事になろうとは。

 

 

 さて、ではここで、幸か不幸か摩訶不思議な転生、いや元々この肉体は俺のものではなかったので憑依転生といった所か。

 そんな摩訶不思議な出来事に巻き込まれた俺自身の自己紹介をしよう。

 

 俺の名前は『ユウ・ナカジマ』

 何処かの軍のモルモット隊のメンバーみたいな名前だが、俺は彼のように極端な無口ではないのであしからず。

 性別は男で、年齢はラッドローチも恥らう満九歳だ。

 ただし、精神年齢的には既に壮年期真っ只中なのでご了承を。

 

 では、自己紹介を終えたので、続いては俺が転生したこの世界の事について少し説明しよう。

 それには、間もなく俺が起きた事を確認すべく部屋を訪れるとある者の事も交えて説明するのが、より分かりやすいだろう。

 

「おはようございます、ユウ坊ちゃま」

 

「おはよう、オネット」

 

 自動ドアを潜って俺の部屋に現れたのは、無機質な壁面よりも更に無機質な真ん丸銀色のボディを持ち。

 同じく真ん丸な三つのメインカメラと、各種アタッチメントに換装可能な三本のマニュピレーターを持ち。

 ボディ下部に備えられた低出力ジェットを噴射して、ふわふわと浮遊移動する事が出来る。

 だが、そんな無機質な外見に似合わず、その内部に備わっている成長型AIには、人間以上に愛情溢れた心を持っている。

 

 ゼネラル・アトミックス社が満を持して世に送り出したお手伝いロボット、それが、Mr.ハンディなのだ。

 

 そして、そんなMr.ハンディの一個体であり、我が家の家族の一員でもあるのが、今し方俺の部屋にやって来た『オネット』だ。

 個体識別用の製造番号などもあるが、それでは親しみやすさがないのでオネットと名をつけて呼んでいる。

 

「気温二三度、湿度五十パーセント、本日も過ごしやすく快適な日和です!」

 

 本日の快適な環境を伝えると、オネットはふわふわと俺の腰掛けているベッドの脇までやって来て、三本のマニュピレーターの内の一本が持っていたコップを手渡してくる。

 受け取ったコップの中には、清潔な水が淹れられていた。

 

「ん、ありがとうオネット」

 

「既にお父様とお母様はお起きになってリビングでお待ちですよ。お母様の素敵な朝御飯と共に」

 

「分かった、直ぐ行くよ」

 

 起床直後の喉の渇きを潤すと、空になったコップをオネットに返還し、受け取ったオネットは用を終えたので部屋を後にする。

 

 さて、オネットの素性を話した所でお気づきの方も多いかも知れないが。

 この世界は、まさに世紀末、核戦争後の荒廃したアメリカを舞台とし、ナンバリングタイトルやスピンオフが作られた大人気シリーズ。

 俺自身も、前世ではバニラやMOD導入など、飽きる事無く遊んだゲーム。

 『Fallout(フォールアウト)』、放射性降下物を意味するゲームの世界だ。

 

 舞台はアメリカであるが、一部を除き主要なゲームの舞台となるアメリカはその名で呼ばれなくなって久しく。

 戦後はもっぱらウェイストランドと呼ばれており、その実情はもう前世の第三世界も真っ青なほど無秩序で、法令遵守、何それ美味しいの? である。

 国内に投下された核の影響で変異したモンスター共に、理性などねじ切ってオモチャにしてしまった人々等、もはやこの地において善人なんてものはMODを大量に導入してCTDしない位の希有な存在だ。

 しかし、そんな世界になっても戦前と変わらないものがある、人の持つ欲望だ。

 それはもう素晴らしきかな『お金』『お暴力』『お薬』『合・体!(Showtime!)』が所狭しと蔓延しているのだ。

 

 まさに時代は力こそが正義。いやはやどうして、いい時代になったものだ……。

 

 

 と、話が脇道にそれてしまったので戻すとしよう。

 え、その前に、何故大事な部分の説明が丁寧語だったのかって? しかも、最後のものに関しては何故隠語なのか?

 

 考えてもみて欲しい、精神年齢は兎も角、今の俺の肉体はぴっちぴちの健全な九歳児なのだ。

 一般的に考えて九歳児がそんな過激な言葉を使うなんて、衛生上よろしいわけないでしょ。だからである。

 

 さて、再び話が脇道にそれてしまうそうになる前に、話を戻そう。

 

 俺が今いるのが混沌たる世界である事は理解されたと思う。

 では、そんな世界で生活しているにも拘らず、何故俺は穏やかに朝の爽やかな目覚めなんて享受しているのか。そう思うことだろう。

 それには、フォールアウトの世界を語る上で外せない、とあるシェルターの存在が関係している。

 

 Vault-Tec(ボルトテック)

 戦前のアメリカにおいて建設業を行っていた大企業で、前世の日本に例えればゼネコンのような会社だ。

 そんなボルトテックが戦前にアメリカ政府と契約し、建造を進めていたのが、核戦争を想定した大規模避難用シェルター。

 その名を、『Vault(ボルト)

 

 当時のアメリカ政府が策定した社会保全計画に基づき、戦前から建造が進められていたが、結局核が降り注ぐその時までに建造できたのは僅か一二二基。

 しかし、ナンバリングタイトルやスピンオフ内にはナンバリング外のボルトも存在しており、正確な数は分からない。

 

 と、これだけを聞くと国民の為に尽力した素晴らしき企業に思えるかも知れないが、何事にも表があれば裏もある。

 実は、ボルトの真の目的は社会の保全等ではなく。当選して入居してきた人々に対して様々な人体実験を行い、その経過観察などを行う狂気の実験施設なのだ。

 簡単にその一部を紹介すると。

 十年経つと入り口が勝手に開放されるようになっていたり、全てをギャンブルで決めたり、十五歳以下の子供のみ居住させたり、ハハッ!ゲイリー!!

 

 と、もはや表立って公表できるものではない実験が行われている。

 そんな実験の数々を大々的に平然と行ってしまうのだから、ボルトテックはもはや、前世の価値観からすればブラックなんて生ぬるい、超極悪企業である。

 しかし、悲しいかな、フォールアウトの世界に登場する企業は、総じて倫理観なんてものはねじ切ってオモチャにしてしまっているのが殆どなのだ。

 

 最も、ボルトの中には比較的社会保全計画に近い実態のものも僅かばかりはあるので、もしかすると、それらはボルトテックに残された最後の良心だったのかもしれない。

 

 

 と、フォールアウトの世界を語る上で外せないボルトについて説明した所で、再び俺の置かれている現状について話そう。

 

 ボルトの中には比較的社会保全計画に近い実態のものも僅かばかりあると説明したが、では、今俺がいるのがそういったボルトの一つなのか。

 その答えは、ノーである。

 では、狂気の実験を行うボルトかと言われれば、それも違う。

 

 では一体、俺は今、フォールアウトの世界の中の何処にいるのか。

 それは──、原作のゲームでは影も形もなかった筈の『コロニー』と呼ばれる大規模避難シェルターの中だ。

 詳しく言うと、アメリカ中西部はイリノイ州のオーロラと呼ばれる都市、その郊外に設けられた『サイド6』の名を持ち『リーア』の愛称を持つコロニーの一角だ。

 

 さて、サイド6やリーアの名でピンときた方もいるだろうが。

 これらの名前はフォールアウトとは別の、とある作品内に登場しているものだ。

 誰しもがその名前は聞いたことがあろう、日本を代表するロボットアニメの金字塔、機動戦士ガンダムの作中に登場するスペースコロニーの集合体の一つだ。

 設定では一年戦争当時中立を保ち。ガンダム本編にも一部のコロニーが登場している他、宇宙世紀を題材とする各媒体のガンダムシリーズにも登場している。

 

 ただし、ガンダム本編に登場したようなシリンダー型の形状はしておらず、デザイン的にはボルトとあまり変わりがない。

 しかし、規模が大きい為収容可能人数は二倍の二千人規模、更には純粋に社会の保全を目的としている為、安心感は段違いだ。

 

 因みに、フォールアウトとガンダムとは何の接点もない。

 公式でのコラボなど、前世にいた頃は影も形もなかった。

 

 ただし、公式ではない非公式な形でなら接点はある。

 フォールアウトを語る上で欠かせない『MOD』と『パワーアーマー』に関係してだ。

 所謂改造データであるMODの中には、パワーアーマーと呼ばれる、所謂強化装甲服の見た目をガンダムシリーズに登場するモビルスーツに変更するものや。

 パワーアーマー着用時のサウンド、又は武器の外見、更には銃声等。ガンダムシリーズを素にしたMODが見受けられていた。

 

 

 それが関係しているのかどうかは、今の所分からない。

 ただ、本来のフォールアウトの世界には現れないはずの事象が起こっている事から考えるに、おそらくこの世界は、フォールアウトという世界観をベースとした別世界の可能性が高い。

 そう考える根拠の一つが、現在の暦が『二二九七年』であるという事実だ。

 フォールアウトのシリーズ内では、この暦辺りの背景は語られていない。前世でプレイしたナンバリングタイトルでさえ、その背景の暦は十年前の二二八七年だった。

 一応、シリーズの中には約十年後の二三一六年の出来事の一つが描かれてはいるが、これは主人公の子孫に関することで、それ以上深堀はなされていない。

 

 しかし結局の所、あれこれ考えを巡らせたところで、世界の全容はリーアの中ではなく外にある為、今の俺では分からない事の方が多い。

 だから、とりあえず今は、外に出るかもしれなくなったその時の備えて、色々と準備していくつもりだ。

 

 

 さてと、状況説明がてら、改めて肉体の記憶から得た情報と前世での記憶とを照らし合わせた状況確認と現状の整理を終え。

 同時に、目覚めの後の日課であるストレッチも終わった所で、朝食を食べにリビングキッチンへと向かうとしよう。

 腹が減っては準備も出来ぬ、からだ。




皆さまからの温かなご意見ご感想、お待ちしております。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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