Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第十五話 遺産

「それじゃ、一旦ノース・レイク・サンズに戻ってラデシュ首長に……」

 

「その前に、一つ確認したいことがあるんだが」

 

「? 何でしょうか?」

 

「これから旅をするとなると、その道中、様々な村や町に立ち寄り食糧などを調達していかなければならない。そうなると、この私を同行させて村や町に入るのはあまり得策ではないと思うのだが」

 

「村や町の住民の中には、スーパーミュータントを極端に毛嫌いし殺意すら持っている人がいるかもしれないという事ですか」

 

「そうだ、私だけに向けられるならばまだいい。だが、同行している君まで危害が加わるかもしれない。だから、その対策をどのように考えているのか聞かせてくれないか」

 

 ゲームでは、スーパーミュータントを仲間にしたからといって町などに入れない訳もなく、住民たちの反応も変わる事はなかった。

 だが、これはゲームではなく現実だ。

 ノアさんを同行させて無事に町などに入れるかは不透明だ。仮に入れたとしても、無事に過ごせるとの保証も出来ない。

 

「そうですね……、周囲の人たちに怪しまれないような変装、でもできればいいんですけど」

 

「変装か、案としていいが、私の身体は多少の変装で周囲の目を欺けられるものでもないぞ」

 

「うーん、スーパーミュータント用の変装セットなんてあるかな……」

 

「そういえば……、この洞窟の奥に、鍵のかかった謎の扉があったな。もし開ける事が出来れば、何か役に立つものが見つかるかもしれないが」

 

 ノアさんの口から漏れた言葉に、俺は何故かヴァルヒムさんから貰った鍵の事を思い浮かべた。

 そして、ふと現在地をピップボーイの地図を確かめてみると、何と、この場所はあのマーカーが追加された場所ではないか。

 となると、鍵のかかった扉を開ける為の鍵は、もしかしてあの謎の鍵なのかも知れない。

 

 これは、実際に扉で使えるかどうか確かめなければ。

 

「ノアさん、その鍵のかかった扉の場所に案内してくれますか!?」

 

「急にどうしたんだ?」

 

「もしかしたら、持っている鍵で扉を開けられるかもしれません」

 

 俺の言葉に、ノアさんも頷くと、早速扉を目指して移動を始める。

 ノアさんの仮住居から更に奥へと下ると、急に人工的な建築物の一部が姿を現す。

 

 ノアさんの言った通り、頑丈そうなコンクリートの壁の中央に、鍵のかかった扉が一つ。

 更に、何処かからか電気を引いているのか、壁には取り付けられたランプが辺りを照らしている。

 

「合っててくれよ……」

 

 祈るような気持ちでピップボーイから取り出したあの鍵を、鍵穴に差し込む。

 途中で引っ掛かる事もなく、奥まで差し込んだ所で解除の為に鍵を回す。

 

 そして、その瞬間は訪れる。

 ロックの解除を告げる音が、周囲に響き渡る。

 

「おぉ」

 

 それにはたまらず、ノアさんからも声が漏れる。

 

「開けます」

 

 果たして、こんな穴の奥に鍵をかけて保管する程のヴァルヒムさんの遺産とはいか程のものなのか。

 期待に胸を膨らませつつ、俺は手にかけた扉をゆっくりと開けた。

 

「……あれ?」

 

 すると、扉の先に広がっていたのは、壁に設置されたランプが照らし出す二畳ほどのコンクリート造りの空間。

 そして、明らかに重要なものを守っていますよとばかりの電動式の鉄製の重厚な扉。

 その脇には、制御用のパソコンがある。

 

「まさか、二重ロックとは……」

 

 ノアさんが俺の感想を代弁するかのように声を漏らす。

 それを他所に、俺は扉を制御するパソコンへと近づくと、早速起動させてみる。

 

 すると、モニターに開錠用のパスワードを入力せよとの指示が現れる。

 

「これって……」

 

 俺はヴァルヒムさんのメッセージに出てきた1997を入力すると、開錠開始を選択する。

 刹那、重厚な鉄製の扉が甲高い音を立てて開き始めた。

 

「おぉ、これは何と凄絶な光景か……」

 

「凄い……」

 

 電動式の重厚な扉の向こうへと足を踏み入れた俺とノアさんが目にしたのは、想像を絶する光景であった。

 物理と電子の二重ロックで守られているだけに、それ相応の価値があるものが保管されているとの想像はできたが、実際はその遥か上であった。

 

 まるで倉庫を彷彿とさせる広さを誇るコンクリート造りの空間内には、保管している品々が並べられた棚の数々。天井には相応の数のライト。

 その品揃えたるや、拳銃からミサイル及びヌカランチャーまで、何でもござれ。

 実弾系のみならず、光学系、近接用の刃物や鈍器、更には爆発物と、西海岸のガンランナーも真っ青な品揃えだ。

 

 更に、棚に陳列されていたのは武器だけではない。

 戦前の衣服にスーツ、戦前の米軍が採用していたBDUやRADスーツに防護スーツ等の軍事用途の衣服も陳列されている。

 勿論、戦前産のみならず、レイダーアーマーや傭兵服、それにレザーアーマー等のウェイストランド産のアーマー類などの姿もある。

 

 武器と防具、保管されているのはそれだけではなさそうだ。

 棚に陳列されてはいないが、壁際には、各種弾薬の入った弾薬箱が置かれている。

 

 まさにここには、ウェイストランドを生きていく上で欠かせない品々が保管された天国であった。

 これで食糧の類があれば完璧だったのだが、これ以上の高望みは強欲すぎるというものだ。

 

「ヴァルヒムさん、ありがとう」

 

 白い歯を輝かせ親指を立てていそうなヴァルヒムさんに感謝を述べると、早速、持っていく物の品定めを行っていく。

 本当なら全て持っていきたい所であるが、流石にこの量はピップボーイでも容量オーバーだからだ。

 

「うーむ、このカツラは小さすぎるな」

 

 因みに、ノアさんは変装に使えそうな物がないかを探しているようだが。

 ノアさん、その超ロングリーゼントのカツラは、逆に目立ってしまいますよ。

 

「とりあえず、レーザー銃とミサイルランチャー……」

 

 現状実弾系しか所持していないので、バランスよく光学系と爆発物を組み込んでいく。

 あ、ヌカランチャーは必須だな、ミニ・ニュークも忘れずに。

 

 

 こうして武装をホクホクにしていると、ふと、更に奥へと続いている扉がある事に気が付く。

 ドアノブに手をかけてみるも、どうやら鍵がかかっているようだ。

 

「これかな?」

 

 試しに先ほど使った鍵を使ってみると、何と、ロックの解除に成功する。

 

 一体この奥にはどんな物が保管されているのか。

 先ほどの品揃えからさらに胸を膨らませて扉の中へと足を踏み入れると、そこは、先ほどの空間と異なり、車二台分が駐車可能なガレージ程の大きさの部屋であった。

 

 部屋には、棚が一つだけ置かれていた。

 しかし、その棚に陳列していたものは、先ほどの空間に置かれていた物よりも、更に目を見張るものであった。

 

「これは……」

 

 それは、戦前の米軍採用BDUとは異なるBDUに、防弾チョッキ。

 更には各種ポーチを取り付け可能なMOLLEシステム対応型のベルトにレッグプラットフォーム、ショルダーストラップ。取付用のポーチ。

 そしてレッグホルスターに片方のみだがニーパッドもある。

 無線機とヘッドセット、そしてお洒落にも気を使ったミリタリーキャップとサングラス。

 

 まさに、ゲームのバニラ状態ではお目にかかれないコーディネート一式がそこには陳列されていた。

 

「コイツもあるとは……」

 

 更に加えると、その脇にはM4カービンと呼ばれる、ゲームではMOD等で実装できるアサルトライフルの姿もあった。

 しかも、改造が施されており、フラッシュサプレッサーはガバメント同様凶悪なスパイク状に交換され、ハンドガードはピカティニー・レールではないものの、フラッシュライトが取り付けられている。

 ストックも、純正の物から別の物に交換されている。

 

 使用弾薬は変わらず5.56mm弾だ。これなら、今の装備でも弾薬を共有できるので問題はない。

 

「大切に使わせていただきます」

 

 一回転して眩いばかりの白い歯と共に親指を立てていそうなヴァルヒムさんに向かって、再び感謝の言葉を述べると、早速人目を気にする心配もないのでコーディネート一式に着替えていく。

 BDUのサイズは特に問題なく袖を通す事が出来た。

 それから一つ一つ身に着け、ポーチに各種マガジンを、レッグホルスターに攻撃型カスタムガバメントを収納し。

 最後に着心地を確かめ終えると、無事に着替えも完了する。

 

「うん、いい感じだ」

 

 流石に室内なのでサングラスはかけてはいないが、それでも着替える前と比べると、レトロ感が抜け、近代的でスタイリッシュになった。

 

「さ、戻ろう」

 

 以前の装備をピップボーイに収納し、新たにメインウェポンとして使用していく事に決めたM4カスタムを背負うと、ノアさんのいる空間へと舞い戻る。

 

「おぉ、何処に行ったのかと思った……。ん? 少し見ない間に随分と装いを変えたものだな」

 

「えぇ、ここの持ち主から好きに使っていいと言われていたので」

 

 俺の新たな装いに、ノアさんは短い感想を漏らした後、ついてきてくれと何処かに先導し始める。

 

「これを見てくれ」

 

「扉、ですね」

 

 先ほど入った扉の直線上、何故か棚で隠すように、その扉は存在していた。

 ノアさんが塞いでいた棚を退かし、俺が扉のドアノブに手をかける。

 こちらも、鍵がかかっていた。

 

 三度目の鍵を使い、ロックを解除すると、扉の向こうへと足を踏み入れる。

 

 

 扉の向こう側は、今までのコンクリート造りの空間とは異なる、リーアを思い出されるメカニカルな内装であった。

 部屋の中央には、台座に置かれた何処かで見た事のあるようなないようなパワーアーマーの姿があり。

 その手前には、赤い色合いがよく目立つ作業台の姿があった。

 

「これは!」

 

 作業台に近づき、それが俺の予想通りのものであるかを確かめる。

 万力、ドリル、丸ノコ。それは紛れもなく、唯一の生存者のスーパー錬金術の源、ワークショップであった。

 

「これが……、ワークショップ」

 

 画面越しではない、その目で、触った感触で、触れて目にするワークショップ。

 久方ぶりに感じる、ゲームが現実になった実感を噛みしめていると、ふと、ワークショップに置かれていたメモに目が留まる。

 

「何々? これはワークショップver.GMです。スタンダードと異なり、収納容量の増大、オブジェクトの種類増大等の性能が向上しておりますぅぅぅっ!!」

 

 聞いた事のない名前もさることながら、その秘めたる能力の説明文に、俺は驚かずにはいられなかった。

 あ、ノアさん、そんな目で見ないでください。

 

「さしずめワークショップの上位互換、最上位機種といった所か」

 

 それにしても、凄い性能だな。

 これなら、どんな建造物でも作れそうだ。例えばそう、この遺産の保管場所とか。

 

「あ、そうか……」

 

 そこで俺は気が付いた、もしかして、この保管場所はこのワークショップver.GMを用いて作られたのではないかと。

 そして、同時に俺は思い出す。

 ヴァルヒムさんからアップデートしてもらったピップボーイの性能を。

 

「この機能を使ったのか」

 

 ピップボーイのモニターに表示されていた、収納可能なワークショップの反応を示す文言。

 試しに収納開始を選択してみると、次の瞬間、目の前のワークショップver.GMが眩いばかりの光を放ち。

 

 そして、光が収まると、既に目の前にワークショップver.GMの姿はなかった。

 

「い、今のは一体! 何が起こったんだ!?」

 

 事態を飲み込めていないノアさんは目を丸くしているが、俺が事の経緯を説明すると、納得しながらも何処かで信じられないといった表情を浮かべる。

 

「ピップボーイにその様なアップデートがあったとは、知らなかった。……しかし、改めて戦前の技術力というものは凄まじいものなのだな」

 

「そうですね。今じゃ考えられませんけど」

 

 収納完了と表示されたモニターを他所に、俺はノアさんとのやり取りを行った後。

 台座に置かれたパワーアーマーに目を移す。

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