Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第十六話 新たなる一歩

 青を基調としたそのパワーアーマーは、T-45等のTシリーズやX-01など、この世界ではまだ実物を見た事はないが、ノーヘッドと同程度の大きさを誇るパワーアーマーに比べ一回り程大きく感じる。

 T-51パワーアーマーよりも更に曲線を多用した造形、胸部に施された髑髏と天使の羽をあしらった金色装飾、X-01よりも凶悪さを増したヘルメットの造形。

 そして、騎士の銅像を思わせる、台座に突き刺したチェーンソーを剣にしたかのような鋭利な武器が添えられている。

 

 ──あ、思い出した。

 これ、フォールアウトよりも更に遥か未来、四一千年記と称される途方もない未来、天の川銀河を舞台に、銀が全体へと支配を広げた人類唯一の国家、『帝国』と敵対勢力との戦いを描いた作品。

 世界トップシェアを誇るミニチュアゲームを基本とし、各種媒体でも展開している、その作品の名は、Warhammer 40000(ウォーハンマー40K)

 

 そして、台座に置かれた謎のパワーアーマーは。

 同作品の顔ともいうべき、帝国の守護神にして帝国の長たる皇帝陛下に忠義を尽くして戦う騎士、『スペースマリーン』が使用するパワーアーマーだ。

 

 でも何で、そんな品物がこんな所に置かれてるんだ。

 これも、フォールアウトを土台とした別の世界観である故なのか。

 

「ほぉ、これなら私でも着られそうだな」

 

 等と考えていると、ノアさんが興味深くスペースマリーンパワーアーマーに近づいていく。

 設定では、スペースマリーンの兵士達は遺伝子改造を施された強化兵、スーパーミュータントと通ずるものもある。

 ならば、ノアさんでも無理なく着用できそうだ。

 

 というか、スーパーミュータントがスペースマリーンパワーアーマーを装備するって、あれ、これチートじゃないか。

 

「……いや、どうやら、私には着る資格がないようだ」

 

「え? 急にどうしたんですか」

 

 しかし、何故か態度を百八十度変換し切れないと言い出したノアさん。

 理由を尋ねてみると、ノアさんはスペースマリーンパワーアーマーに張り付けていたという一枚のメモを見せてくれた。

 

 ──最高の戦友(とも)に敬意を表して、ここに安置す。

 

 台座を含めた遺産の保管場所を建造したのはヴァルヒムさんだろう。

 ならば、このメモを書いたのもヴァルヒムさん本人だと思われる。

 では、メモに書かれた戦友(とも)とは、傭兵時代のヴァルヒムさんの仲間の方なのだろうか。

 

 本人は個人で傭兵家業を行っていたと言っていたので、同じく個人で事業を行っていた同業者の方だろうか。

 

 何れにせよ、その方の持ち物をこの様な状態で保管しているという事は、戦友(とも)と呼ばれた方はヴァルヒムさんにとって大切な方だったのだろう。

 

「どうやらこのパワーアーマーは、この場所の持ち主にとって大切な品物のようだ。だから、私が安易に使ってよいものではない」

 

「……ノアさん、この場所の持ち主からはこの場所にある物"全て"、俺の好きに使っていいと言われました。ただし、後悔のないようにとの言明付きで」

 

「後悔のないように、か」

 

「もしこのパワーアーマーの元の持ち主の意思を尊重したのなら、このパワーアーマーについて何らかの言及があってもおかしくはない筈です。それがないという事は、このパワーアーマーも使ってほしいんだと思います。台座に置かれているよりも、誰かの役に立ててほしいと思っている筈です」

 

 暫し口元に手を当て考えるノアさん。

 やがて、考えがまとまったのか再び口を開く。

 

「そうだな。埃をかぶっているよりも、再びその双肩に誇りを取り戻したいはずだ。使わせてもらうよ、このパワーアーマーを」

 

 台座に上り状態を確認するノアさん。

 刹那、背部の搭乗用ハッチが開き、ノアさんの巨体がスペースマリーンパワーアーマーの中に消える。

 

 そして、搭乗用ハッチが閉じ、程なくすると、長年動くことのなかったスペースマリーンパワーアーマーに光がともり始めた。

 

「おぉ、これは凄い。こんなパワーアーマー、生れて初めてだ」

 

 ゆっくりと、当初はぎこちない動きのスペースマリーンパワーアーマーであったが、程なくすると、まるでノアさんの手足の様に滑らかな動きを見せる。

 

「おぉ、この武器も、一撃でデスクローを葬れそうなほどだな。素晴らしい!!」

 

 手にしたチェーンソードを起動し、高速回転する鎖刃の凶悪な姿に、表情は分からないが声の様子から大満足な様子のノアさん。

 

 あれ、もしかして俺は、今とんでもないものを誕生させてしまったのかもしれない。

 やばい、俺、異端審問官(インクィジター)に究極浄化させられるかも。

 

 なんて、ちょっぴり凶悪性を増したノアさんの姿に戦慄していると。

 不意に、ノアさんが俺の前までやって来ると、突然、俺の目の前で跪いた。

 

「え!?」

 

「君には本当に感謝の言葉もない。本当に、君は私にとって最高の存在だ。だからこそ、改めて誓わせてくれないか。……私は、君の良きパートナーとして、時に命を懸けて、君の旅にお供しよう」

 

「ありがとうございます、ノアさん」

 

 最後に、着用する前よりも威圧感を増したノアさんとの握手を経て、部屋を後に三度メインの倉庫空間へと戻る。

 

 こうして中断していた品定めを再開したのだが、その途中、ある事に気が付く。

 ピップボーイでいつでも出し入れ可能となったワークショップver.GMに、ピップボーイに入りきらない分を全て収納しておけばいいのではないか。

 

 思い立ったらすぐ行動。

 早速ワークショップver.GMを出現させ、ピップボーイに入りきらない分をノアさんにも手伝ってもらい全て収納していく。

 

 そして、収納が完了すると、ワークショップver.GMを再びピップボーイに収納する。

 

 よし、問題なさそうだ。

 

「ふぅ」

 

 残しておくのは惜しいと思っていた物を全て持っていける事に満足し、一息漏らす。

 しかし、どうやらワークショップver.GMに収納した品々は、ワークショップver.GMをピップボーイに収納した状態では取り出せないようで。

 取り出すには、一度ワークショップver.GMをピップボーイから外に出さなければならないようだ。

 

 ま、面倒だがピップボーイの収納容量が増えたと思えば、それ位の手間は特に深刻な問題ではない。

 

「では、外に出ましょうか」

 

「そうしよう」

 

 最後に一礼し、俺とノアさんは、遺産の保管場所を後に、そのまま外へと直進する。

 

 穴の外に出て、久しぶりに感じた太陽は、既に頂上付近に差し掛かっていた。

 時刻を確認すると、既にお昼に差し掛かろうとしていた。

 

「それじゃノアさん、まずノース・レイク・サンズに戻って……」

 

「その前に、この新しいパワーアーマーと武器の性能を少しばかり試していきたのだが」

 

 ノース・レイク・サンズに戻る前に、ノアさんの提案でスペースマリーンパワーアーマーとチェーンソードの性能テストをする事となった。

 因みに、テストの為に生贄、もといご協力いただいたのは、近くを放浪していたレイダーのご一行様だ。

 

「誰かぁー! 医者を呼んでくれーっ!!」

 

「地獄だぁ! 地獄が来たぁ!!」

 

「いやだー、あー! ……うぬ」

 

 戦闘開始当初こそ、殺人タイムだぁ! や、お前は死肉の塊だぁ! 等と威勢のいい声が聞こえていたが。

 それもものの数分で命乞いする程情けないものに変わっていた。

 

 しかし、仕方がいない。

 彼らの持つ武器ではスペースマリーンパワーアーマーには豆鉄砲でしかないし、着用者のノアさんは長年ウェイストランドで生き残ってきた猛者だ。

 戦闘の結果など、火を見るより明らか。

 

 故に、俺は加勢することなく少し離れた所から見守っている。

 あ、人間って、周囲の住宅よりも遥かに高く飛べるものなんだな。

 

 等と暢気に思っていると、性能テストを終えたノアさんが近づいてくる。

 青いスペースマリーンパワーアーマーの至る所に、返り血を付着させて。

 

「本当にこの装備は素晴らしい!」

 

「それはよかったです」

 

 本当に、この分ならチェーンソードだけでデスクローと一対一で勝てそうだな。

 

 と内心思いつつ、ますます上機嫌になったノアさんを連れて、ノース・レイク・サンズへと戻るのであった。

 

 

 

 ノース・レイク・サンズに戻ってくると、案の定、門番の自警団員達から警告を受ける事となる。

 

「ん? その顔、腕の妙な機械……、ひょっとして朝出て行った傭兵か!?」

 

 一瞬他人だと思われても仕方がない、朝と全く違う装いで帰ってきたのだから。

 加えて、後ろにいるノアさんの存在もあれば猶更だ。

 

「所で……、後ろの、その、あぁ」

 

 自警団員は、ノアさんをどう表現していいのか分からず言葉に詰まる。

 

「でかくて強そうな奴は、一体誰なんだ?」

 

「彼は、俺の仲間です。遅れて落ち合う手はずになっていたので、合流したんですよ」

 

「あ、あぁ、そうか」

 

「ノアと申します」

 

 ノアさんの自己紹介に、自警団員は及び腰になりつつ言葉を返す。

 よく見ると、他の自警団員もノアさんの威圧感に萎縮していた。

 

 こうして無事に門を潜りノース・レイク・サンズへ足を踏み入れると、まずはラデシュ首長に会って偽の報告と必要な情報をもらうべく、ラデシュ首長の邸宅へと向かう。

 

「ミスターナカジマ、君は私が出会ってきた中で最高の傭兵だよ!」

 

 ラデシュ首長のオフィスに足を踏み入れると、ラデシュ首長は満足げな笑みで俺の事を迎え入れる。

 しかし、それの束の間、後ろに控えるノアさんの姿を目にし、早速ノアさんについての質問を飛ばしてくる。

 

「所で、そちらはどなたかね?」

 

「彼は俺の仲間です、今回のスーパーミュータント討伐では彼の力が大いに役に立ってくれました」

 

「ノアと申します」

 

「ほう、それはそれは。ミスターナカジマ、君は大変有能なお仲間を連れていらっしゃるな」

 

 ノアさんの存在感に萎縮するかとも思われたが、ラデシュ首長はそんな素振りもなく、ノアさんと握手を交わす。

 そして、握手を交わし終えると、いよいよ本題である情報を話始めた。

 

「昨日話したVaultシティの事は覚えているかね?」

 

「はい、シカゴから北西部に位置する町、ですね」

 

「そうだ、その町に、ピートという名の収集家がいてね。彼は戦前のガラクタ等を中心に熱心に収集していると聞く。彼ならば、君が求める浄水チップとやらも、持っているかもしれん。仮に持っていなくとも、何らかの有益な情報を知っている可能性はあるだろう」

 

 流石に二度も情報を小出しにするような事はなく、ラデシュ首長から浄水チップに関する重要な情報を得る事が出来た。

 

「ありがとうございました、ラデシュ首長」

 

「いやいや、こちらこそ、ノース・レイク・サンズの為に働いてくれて本当に感謝しているよ」

 

 こうしてラデシュ首長の邸宅を後にした俺は、早速Vaultシティへ向かう為の準備に取り掛かる。

 まずは、腹ごしらえからだ。

 

 

 

「いや~、びっくりしましたよ。朝と全く別の格好だし、それにこんな大きなお仲間さんも一緒だし」

 

 そして足を運んだのは、ケーレのダイナーだ。

 カウンターで昼食をとる俺を他所に、ノアさんはテーブル席、というよりも大きさの問題から複数の座席だけを置いてそこに腰を下ろして休憩している。

 

 因みに、ちょうど休憩中のギルさんは、ノアさんに興味津々なのか色々と質問攻めにしている。

 

「ギル! 程々にしとけよ、ユウのお連れを困らせるんじゃないぞ!」

 

「すいません」

 

「いや。それよりもユウ、首長から浄水チップについての情報は教えてもらったのか?」

 

「おかげさまで。あ、それで、今から準備を整えて、教えていただいた人を尋ねに行こうと思ってるんです」

 

「そいつはよかった。……で、何処に行くんだ?」

 

「Vaultシティです」

 

「Vaultシティ? 聞いたことないな? その辺りにあるんだ」

 

「アーリントンハイツです」

 

「アーリントンハイツだって!?」

 

 昼食を取りながらケーレさんと今後について話していると、突然、ケーレさんが声を上げた。

 

「どうか、したんですか?」

 

「いや、あぁ……。ユウ、お前さん、ここからアーリントンハイツまでどのルートを通って向かうつもりだ?」

 

「フォックス川を渡って、そこからは真っ直ぐ向かうつもりです」

 

「よし、よく聞け。それは、無理だ」

 

「え?」

 

「ここからアーリントンハイツまでの直線上には幾つかの"核の爆心地"がある、今じゃ"輝きの海"と呼ばれている場所だ。しかも、放射能汚染が酷いのみならず、スーパーミュータントやフェラル・グール共が闊歩してる。だから、悪い事は言わん、真っ直ぐ向かうのは止めておけ」

 

 輝きの海、ゲームでも登場した地域だ。

 ゲームでも最高難易度の危険地帯として知られ、生半可な装備では一瞬でゲームオーバーとなる。

 

 ゲームならばコンティニュー出来るが、現実では、一度死ねばコンティニュー不可。

 

 ここはケーレさんの忠告を素直に聞き入れよう。

 

「分かりました。それじゃ、別のルートを考えます」

 

「シカゴ方面から大きく迂回していけばいいだろう。ただし、シカゴも絶対安全って訳じゃないがな。あぁ、今じゃウェイストランドで絶対に安全な場所なんて数える程しかないか、ははは!」

 

 その後、ケーレさんの提案で、シカゴ方面から大きく迂回しVaultシティへ向かうことが決定した。

 やっぱり、シカゴもボストンやワシントンD.C.の様に、レイダーやスーパーミュータント等が日夜勢力争いを繰り広げているのだろうか。

 

 過去と現在が入り混じる混沌の最前線に期待と不安を抱きつつ、俺は昼食を食べ終えると、お世話になったケーレさんとギルさんに別れを告げ。

 店を出た足で、サンズ・サイド雑貨店を訪ねた。

 

 理由は、Vaultシティまでの旅路に消費する食料の調達の為だ。

 

「あ~ら、ちょっと見ない間に随分と雰囲気変わったわね。所で、後ろのミステリアスな雰囲気漂わせてる大男さんはどなた?」

 

「俺の仲間で……」

 

「ノア、と申します」

 

「あ~ら、良いお名前。うふ」

 

 サリーさんへのノアさんの自己紹介も終えた所で、早速本題の食糧調達を開始する。

 

「ま、こんなに沢山買ってくれるの、嬉しいわ! ……それじゃ、この食料殺菌剤、オマケで付けて、ア・ゲ・ル!」

 

 沢山買ってくれたお礼にと食料殺菌剤を貰った。

 名前から顆粒タイプの物かと思ったが、何やらファンの付いた箱状の物であった。

 サリーさん曰く、これを食糧の近くに置いておくだけで、鮮度を劇的に保つらしい。

 

「ありがとうございます」

 

「うふ、こちらこそ、ありがとね」

 

 こうして食糧調達も終了し、旅支度が整った所で、短いながらもお世話になったノース・レイク・サンズに別れを告げ。

 一路、アーリントンハイツはVaultシティを目指し、俺とノアさんは歩み出す。

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