Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第二十二話 剣と盾と時々足跡

 ジミー村を出発し、ロナルド・レーガン記念ハイウェイ沿いに東を目指して歩き続ける事数時間。

 現在俺達は、休憩の為にレッドロケット・スタンド ライル店の店内にいる。

 

 因みに、俺達よりも先にこの店を寝床として使用していたレイダーの方々は、残念ながら話し合いの余地がなかったので永遠にご退店していただいた。

 素直に譲りあいの精神を見せてくれたのならあんな惨状は体験しなくて済んだのに、でも、挨拶代わりに鉛弾をお見舞いしてきたのだから、仕方ないね。

 

「あ、あの……。お二人は、いつもあのような戦闘を経験してるのですか?」

 

 店内の休憩スペースで各々栄養補給の為の食事をとっていると、不意に、ニコラスさんがそんな事を質問してきた。

 

「え? いや……、相手にもよると思いますけど」

 

 一旦ピーナッツバターカップを食べる手を止め、ニコラスさんの質問に答えると、再び手を動かして食事を再開する。

 

「どうした。あれ位の戦闘が、よもや怖いのか? パワーアーマーを着ているというのに」

 

 先ほどの戦闘は弾丸の雨あられではあったが、ミサイルランチャーやヌカランチャー等の重火器をレイダー側は有していなかった。

 故に、ノアさんにとっては特に苦にならない戦闘だっただろう。

 いや、仮にレイダー側が重火器を有していたとしても、今のノアさんならやはり苦にならないような気がする。

 

「わ、私は、あまり戦闘というものは得意ではないので。……それに、お二人の様に、数多くの修羅場をくぐってきた訳でもありませんから」

 

 ノアさんは兎も角俺は言われるほど、と喉まで言葉が出かかったが、ニコラスさんからすればラッドローチの大群やジャイアント・アントの巣への突入なども立派な修羅場と言えるか。

 そう考え、結局言葉に出す事はなかった。

 

 因みに、先ほどの戦闘中のニコラスさんの行動はと言えば。

 俺とノアさんの戦闘の様子を、終始近くの物陰に隠れて見守っていた。

 一応、自衛と戦闘参加用にN99型10mm拳銃をニコラスさんには手渡しているのだが、それが火を噴くことはなかった。

 

「私やナカジマ並みの活躍を期待している訳ではない。だが、このまま私達の役に立たないようでは妹であるルシンダとの約束を反故にするとは思わないか?」

 

「それは、そうですが」

 

「でもノアさん。無理強いして前に出させるのも酷だとは思いませんか? パワーアーマーだって完全無敵という訳ではありませんし」

 

 パワーアーマーは確かに人型戦車とも形容できる性能を秘めている。

 しかし、人の手で作り出されたそれは、決して壊れる事の無い魔法の品物ではない。

 

 加えて、ウェイストランドの生態系の中には、パワーアーマーの性能をもってしても苦戦は免れない相手もいる。

 特に、先生とか、先生とか、先生だ。

 

 そんな訳で、核戦争のお陰で人知を超えた存在がごまんと存在するようになったウェイストランドにおいては、パワーアーマーも無敵の存在などではない。

 

「だが、このままではお荷物以外のなにものでもないぞ」

 

 ノアさんの言う事も一理ある。

 ルシンダさんの様に素晴らしい料理の腕前などを持っているのならば、まだ挽回の機会もあっただろうが。

 残念ながら、ニコラスさんは特に料理が得意でもなく。その他に優れている技能と思えるものも、本人曰く趣味以外特に思いつかないとの事。

 

 故に、現状ではお荷物と言われても仕方がない。

 

「あ、あの! せめて、せめてキャプテン・パワーマンのように"盾"を用意してくれれば、少しはお役に立てるように頑張ります!」

 

 と、ニコラスさんもこのままでは役立たずの烙印を押されっぱなしだと自覚していたのか、自ら提案を持ちかけてくる。

 

 因みに、キャプテン・パワーマンの盾とは、作中に登場するキャプテン・パワーマンの装備の一つで特徴の一つともいうべき物だ。

 設定では架空の希少金属と鉄との合金で作られた円形の盾で、盾としての用途の他、円盤投げなどの要領で投擲武器としても使用される。

 

 しかしながら、架空の希少金属を用いて作られた盾など作り出せる筈もなく。

 流石に完全に同じ物を提供できそうにはない。

 

「……あの、ニコラスさん」

 

「は、はい」

 

「完全に同じじゃなくても、"盾"ならいいですか?」

 

「え、えぇ。盾なら何でも」

 

「何か考えがあるのか?」

 

「えぇ、少し気になる物を見つけていたので、それを使えば盾を作れるかもしれません」

 

 実は、このレッドロケット・スタンド ライル店を制圧した際、残敵捜索で足を踏み入れたピット内で気になる作業台を見つけていた。

 それは、武器作業台。

 その名の通り、武器を解体したり改造したりできる作業台の事だ。

 

 因みに、ゲームでは盾と名が付く装備はあるものの、胴体装備やオブジェクトの為、本当の意味での盾というにはほど遠い。

 だが、これはゲームではなく現実。趣向を凝らせば、本当の意味で盾として用いれる防具を作り出す事も出来る筈だ。

 

 という訳で、残りのピーナッツバターカップも食べ終えると、早速盾を作るべくピットへと足を運ぶ。

 

 先ほどは流し目に見た程度であったが、改めて確認すると、ワークショップver.GMよりも幾分シンプルな見た目をしている。

 しかし、特徴的な違いとして、ガス切断機用のボンベ等が設置されている。

 

「それでは……、やりますか」

 

 ガス切断機のバルブを調整し先端から出る炎の色を青白くすると、もう片方の空いた手で武器作業台の上に放置されていた防護面を持ち、作業に取り掛かる。

 因みに、この手の機械の取り扱いについては、リーアセキュリティ時代に技能習得の一環として学んだ事があり、ある程度は扱える。

 

 そして、そんなガス切断機を用いるのが、同じくピット内に置かれていた自動車だ。

 エンジンの整備中か或いは交換か、開けっ放しにされたボンネットから覗けるエンジン部分は、見事にもぬけの殻であった。

 もっとも、エンジンが装着されていたとしても、見事に空気が抜けているこのタイヤでは、走行は不可能だろう。

 

 と、そんな観察を交えつつ、俺は作業を開始する。

 その作業とは、自動車のドアを取り外す作業だ。

 

 対応する工具や手順を守れば取り外せるが、そこはウェイストランド流。ワイルドにさせてもらう。

 火花をまき散らしながら切断する事数十秒、見事に、片側のドアを取り外す事に成功する。

 そして、同様の手順でもう片方も取り外すと、取り外した二つのドアを武器作業台の上に置く。

 

 さて、切断の次は溶接の時間だ。

 先ずは景色を楽しむために設けられたドアガラスの部分に、鉄板を溶接していく。

 再び飛び散る火花に臆する事無く、それぞれのドアのドアガラス部分に鉄板を溶接し終えると、再び、切断を行う。溶接した鉄板に覗き窓を作る為だ。

 

 こうして覗き窓を作り終えると、いよいよ、加工した二つのドアを一つに溶接する。

 覗き窓がずれない様に調節すると、二つのドアを一つの盾として生まれ変わらせるべく溶接していく。

 激しい動きなどで外れてしまわぬ様に念入りに溶接し終えると、防御力補強の為に外側に鉄板を溶接し、内側に取っ手を取り付けて、ようやく完成する。

 

 お手製、ドアシールドだ。

 

「うーん、なかなかの出来栄え」

 

 武器作業台の上に置かれたドアシールドの出来栄えを見て自画自賛した所で、ニコラスさんに披露すべく彼を呼んでくる。

 

「す、凄いです! これ、ナカジマさんが一から作られたんですか!? 本当に凄いです!」

 

「いやー、それ程ですよ」

 

 ドアシールドを目にし、ニコラスさんの口から飛び出す称賛の嵐に、俺は鼻高々であった。

 

「ではニコラスさん、手に取って使い心地も確かめてください」

 

「はい」

 

 作業中にも感じたが、このドアシールド、人力で取り扱うにはやはり難しい。

 元々盾としての用途とは異なる物で作られているのに加え、防御力の補強の為に鉄板を溶接している分、更に重量が増加されているからだ。

 

 しかし、人力以上の怪力を発揮するパワーアーマーならば、人が盾を扱うように、楽々と扱う事ができる。

 その証拠に、目の前ではニコラスさんがあの重たいドアシールドを片手で取り扱っている。

 

「どうです?」

 

「とてもいい感じです! 覗き窓があるお陰で、構えていても向こう側の様子が分かりますし。これがあれば、ナカジマさん達のお役に、少しは立てるかと思います」

 

「それはよかった」

 

 こうして、ドアシールドがニコラスさん専用ドアシールドにランクアップした所で、揃って休憩スペースへと戻る。

 

「ほぉ、なかなかいい盾ではないか」

 

 そして、ノアさんの感想もいただいた所で、十分な休憩も済んだので、再び東を目指して移動を再開する事となった。

 だが、店を出ようとした矢先、ピップボーイのレーダーに反応が現れる。

 

「敵?」

 

「む、敵だと! 数は?」

 

「反応は、四つですが」

 

「確認しよう」

 

 店の窓から反応のあった方を確認し、敵かどうかを判断する。

 流石に、ゲームの様に敵味方反応が分かるわけではないので、最後は目視による確認が必要だ。

 

「レイダー、ですね」

 

「先ほどの奴らの仲間か?」

 

 食糧や物資の調達にでも出ていた先ほどご退店していただいた方々の仲間が戻ってきたのか、四人のレイダーが店を目指して真っ直ぐ向かってきている。

 

「流石にこの距離では、見過ごしてはくれないでしょうね」

 

「では、戦うか」

 

 こうして戦闘準備を始めたのだが、その矢先。

 

「わ、私に任せてください! この盾を装備した今の私なら、レイダーの四人ぐらい、軽く一捻りにしてみせます!!」

 

 専用ドアシールドを手に入れて自信が付いたニコラスさんが、こちらの制止を聞く間もなく飛び出していったのだ。

 

 相手は統率や連携の練度の低いレイダーとはいえ、数でいえば俺達の側よりも一人多い。

 加えて、四人の内の一人は、先ほど確認した際にその肩に細長い筒状の物を担いでいた。

 詳細は確認できなかったが、あの形状は、ミサイルランチャーではないか。

 その他はパイプ系銃器を装備しているが、やはりミサイルランチャーで底上げされた火力は侮れないものがある。

 

 それらを踏まえて、ニコラスさんに制止を呼び掛けたのだが、今のニコラスさんにはどうやら俺の制止は届いていないようだ。

 

「あ!」

 

 そして、専用ドアシールドとN99型10mm拳銃を構えて突撃したニコラスさん目掛け、甲高い音を立てて何かが飛来する。

 白煙を噴射し飛来したかと思えば、次の瞬間には、爆音と共にニコラスさんの姿は爆炎と粉塵の中に消えてしまった。

 

「くそ!」

 

 ニコラスさんを爆炎と粉塵の中へと消し去った下手人は、やはり先ほど見たミサイルランチャーを持ったレイダーであった。

 そんな下手人に5.56mm弾をお見舞いしてやると、残りの三人にもノアさんのチェーンソードと5.56mm弾をもって天へと召してやった。

 

「ニコラスさん、大丈夫ですか!?」

 

 こうして四人のレイダーを片付け終えると、急いでニコラスさんのもとへと駆けよる。

 爆炎と粉塵がおさまった場所には、倒れたT-51パワーアーマーの姿があった。

 

 T-51パワーアーマーには一目で分かるほどの損傷は見られない、どうやら直撃は免れたようだ。

 しかし、中に搭乗しているニコラスさんが衝撃で負傷していないとも限らない。

 

「ニコラスさん、聞こえますか!?」

 

「……あ、はい。聞こえます」

 

「大丈夫ですか? 何処かぶつけた所はありますか?」

 

「いえ、特に痛むところはありません。……驚いた勢いで倒れてしまっただけですので」

 

 腕を動かし起こして欲しいとの意思を示すニコラスさん。

 すると、不意にやって来たノアさんが腕をつかんでT-51パワーアーマーを立たせる。

 

「す、すいません」

 

「まったく。盾を手に入れて自信をつけるのはいいが、だからと言って考えなしに突撃する馬鹿がいるか?」

 

「すいません」

 

「いいか、無理をしてまで期待に応えようなどとは安易に思わぬ事だ。お前はもう、私達の大事な仲間なのだ、それを自覚して今後は行動しろ! いいな? もう、私の目の前で仲間が死にゆく様を見るのは御免こうむりたいからな」

 

 ニコラスさんを説教するノアさんの言葉に、俺はある事を思い出した。

 ゲームではやり方次第でコンパニオンを失う事無くクリアする事が出来る、だが、公式の設定によれば、Fallout1のコンパニオンは一人と一匹が死亡した事になっている。

 ノアさんの口ぶりからするに、設定どおりの経験を経た可能性が高い。

 

 となると、抑揚を抑えて語っているノアさんの心情は、推して知るべしだ。

 

「もし自身の役回りが分からぬなら、お前はナカジマの盾として今後は行動していけばいい」

 

「盾、ですか」

 

「折角立派な盾を貰ったのだから、それを生かさぬ手はないだろう。ナカジマも、彼が目の届く範囲で動いてくれた方が安心というものだろう?」

 

「そうですね」

 

「では、ノアさんは?」

 

「私か? 私はナカジマの"剣"として恐れず敵に立ち向かう役回りだ。その為の鎧と剣なのだから」

 

「何だか、俺が中心になってますね」

 

「何を言う、君こそ私達を取りまとめるリーダーなのだから、中心にするのは当然だろう」

 

「そうですね。その通りだと思います」

 

「それじゃ、ノアさん、ニコラスさん。今後もよろしくお願いしますね」

 

 何だかんだあったが、結果として絆が深まった所で、レイダー達の所有物から再利用可能な物を回収し終えると、東を目指し移動を再開する。

 

 

 

 こうして移動を再開してから数十分後。

 歩いていた道路の脇にある地面に、何やら気になる形の窪みを見つける。

 

「これって、足跡?」

 

「うむ、そう見えるな」

 

「でも、大きいですよ」

 

 その窪みは、形からして足跡と分かる形をしていた。

 ただ、問題はその大きさで、直径七から八メートルはあろうかと思われる大きさなのだ。

 

 しかも、足跡の形は人間のものではなく、爬虫類。いや、恐竜とも思える形状をしている。

 

「所で、あれは何だ?」

 

「何かの肉片、ですかね?」

 

「ふ、踏まれたんでしょうか……」

 

 そんな足跡の真ん中には、何かの肉片と思しき何かの塊が見られる。

 塊の周囲に広がった血だまりから察するに、多分生前は人間だったのだろう。

 

「ん? 何か光ってる」

 

 そんな塊の中、太陽光に反射して何かが光っていた。

 近づいて光る何かを手に取ってみると、それは、茶色の鞄に入った機械であった。

 

 あれ、この機械って、ステルスボーイじゃないか。

 

「大切に使います」

 

 今は亡き持ち主に言葉をかけると、一礼し、移動を再開した。

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