Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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間が空いてしまい申し訳ありませんでした。
今回、シリーズでも愛されるあの会社の方々がご登場いたします。


第二十三話 シカゴ、それは笑顔の絶えない職場

 移動を再開し、東へ移動する事二十時間あまり。

 途中、野生動物。特に、俺の中でラッドローチと同格の、慈悲すら与えず問答無用で殺すべき存在たるブラッドバグとの戦闘などを体験し。

 更には、廃墟でひっそりと暮らしているウェイストランド人の為に、技術向上も兼ねてワークショップver.GMを使用し、今回はちゃんとキッチンも完備の自作住居第二号(豆腐建築第二号)を建築したり。

 

 更に更に、ラッドスコルピオンとジャイアント・アントの仁義なき戦いを眺めたりしながら。

 

 こうして移動を続け、到着したのは、まさにシカゴを眺められる場所だ。

 と言っても、正確には眺められるのはシカゴの外縁部。シカゴの中心部たる摩天楼群を見る為には、ここから更に歩いていかなければならない。

 だが、今の俺達の目的地はシカゴ中心部ではなく、ここから北に向かった所にあるVaultシティだ。

 なので、外縁部を沿うように移動する為、摩天楼群をこの目で見るのはお預けだ。

 

 だが、外縁部とはいえ、そこは戦前アメリカ国内第三位の人口を誇った巨大都市。

 外縁部にも、背の高いビルがぽつぽつと点在している。

 

 外縁部ではあるものの、奥の方を覗けば、そこには核戦争後手つかずのまま放置された瓦礫や自動車等が行く手を阻んでいる。

 やはりボストンやワシントンD.C.同様に、中心部に向かうにつれて入り組んだ地獄が広がっているのだろうか。

 

 そんな思いを馳せながら歩き続けていた時の事であった。

 不意に、ピップボーイが反応を示したのだ。

 

 しかもそれはレーダーではなく、ラジオの受信反応であった。

 

「なんだ?」

 

 ピップボーイを操作し受信した信号を確認する。

 どうやら、軍が使用していた周波数を使って発信しているようだ。

 

「現在──ホテル屋上にて──ールからの──ちに救援を──」

 

 受信した内容を聞き取ろうとしたものの、中心部から信号は発せられているのか、ビル群の干渉のお陰で音声はかなり雑音交じりでとてもクリアとは言えない。

 それでも、ピップボーイに耳を近づけ意識を集中し、なんとか部分的に聞き取る事には成功した。

 

 聞き取れた内容から察するに、この信号の発信者は、助けを求めていることになる。

 

「何なのだ?」

 

「どうやら、助けを求める信号のようですが……」

 

「え!? 助けを求めてるなら、早く助けに行かないと!」

 

「いや、でも、信号の発信源が特定されていないんですよ」

 

 焦りの色を隠せないニコラスさんを他所に、ピップボーイを操作し再度確かめてみるも、地図には信号の発信源らしき場所のマーカーは示されていない。

 ゲームならば、受信したと同時に目的地へのマーカーが表示されるが、現実はそうではない。

 

「それに、場所を特定できる情報も何処かのホテル、程度ですし。シカゴの土地勘もないので、場所を割り出すのはちょっと……」

 

 ホテルと言っても巨大都市だ、シカゴ内に一軒だけしかない訳がない。

 それに、土地勘もないので不用意に探し回って迷子になってしまっては元も子もない。

 加えて、あまり考えたくはないが、この信号の内容自体"嘘"である可能性もないとは言い切れない。

 

 そもそも、俺には時間制限付きの使命がある。

 目の届く範囲外の助けにまで手を差し伸べて、目の前のリーアの人々に救いの手を差し伸べられなければ、それこそ本末転倒だ。

 

「だから、今回は諦めましょう」

 

 助けられるのなら助けたい、だが、差し伸べられる俺の手は限られている。

 だから、残酷かもしれないが、見て見ぬ振りも必要なのだ。

 

「分かりました、ナカジマさんがそう仰るのなら、従います」

 

 こうして、謎の信号の一軒はこれにて終了したかと思われた。

 

「あれ? お二人とも、誰かが走ってきますよ」

 

 だが、ニコラスさんのこの一言が、まさか俺達をシカゴという魔窟へと誘う切っ掛けになろうとは。

 その時はまだ、知る由もなかった。

 

「本当だ」

 

 ニコラスさんの声に反応し、彼が指さす方を見てみれば。

 そこには確かに、転ばぬ様に瓦礫などを避けつつ、建物の間を縫うように俺達の方へと目指して走る者の姿があった。

 特に、何かに追われているような様子ではない。

 

 基本であるオリーブドラブではなく、黒一色に塗装されたコンバットアーマー一式を身に纏ったその者は。

 途中で俺達の存在に気が付いたのか、明らかに進行方向を俺達の方に変えると、一段と走る速度を上げた。

 

「た、助けてくれぇー!」

 

「うお!?」

 

 その勢いのまま俺目掛けて突進してくるかと思ったが、寸での所で俺の前に出たノアさんのお陰で、それは阻止された。

 

「た、助けてけれ! このままじゃ班長が、仲間が!!」

 

「あの、先ずは落ち着いて。話はそれから」

 

 軽いパニック状態であるその者をとりあえず落ち着かせ、少し落ち着きを取り戻した所で、事情を聞くことに。

 

「では改めて、一体どうしたんですか?」

 

「その前に、一応自己紹介しておく。俺は"タロン社"社員のミロ」

 

 ご丁寧に自己紹介していただいたミロと名乗った男性。

 だが、俺の関心は、彼の所属している『タロン社』の方にあった。

 

 タロン社、Fallout3にのみ登場する傭兵集団。

 規律も規則も核の炎で焼き尽くされたウェイストランドにおいて、規律と規則を重んじ組織立った活動をする民間軍事会社のような連中だ。

 その組織力の高さは、黒を基調とした自社製のアーマーを社員に支給できる事や質の良い武装からも容易に想像できる。

 

 また、訓練された社員達の練度の高さからも、組織力の高さをひしひしと感じられ。

 複数人によるチームでの集団行動を基本とし、支援専門のチームの存在や、更には迫撃砲を運用する重火力支援チームの存在など。

 ウェイストランドにおいても頭一つ抜けている組織である事が分かるだろう。

 

 また、ゲームプレイヤー的に言えば、数々の名?(迷?)言をゲーム内で残し、プレイヤーの記憶にその存在を刻み込んだ事だろう。

 

 しかし、悲しいかな。

 タロン社はシリーズでもFallout3にのみの登場で、その活動範囲もFallout3の舞台であるワシントンD.C.周辺のみ。

 の筈だと思っていたのだが、どうやら、この世界ではその限りではないようだ。

 

「それで、ミロさん。一体何があったんですか? 助けを求めていましたが?」

 

「そうだ! なぁ、あんた達、見た所スゲェ強そうだから、班長達を助けてくれないか!?」

 

 俺の問いかけに、思い出したかのように再び語気を慌ただしくさせるミロさん。

 言葉から察するに、どうやらミロさんの上司を助けてほしいとの事らしいが、その詳細は説明不足で分からない。

 

 故に、更に詳細を聞き出すべくミロさんに説明を求める。

 

「俺達は、上の命令でシセロ内の敵対勢力の排除を命ぜられ、レイダーやフェラル・グール共を排除してた」

 

 一刻も早く助けてほしい焦りからか、要点を抑えつつ可能な限り素早く説明を行うミロさん。

 因みにシセロとは、シカゴに隣接する工業都市の名である。

 

「だが、作戦中、運悪くフェラル・グールの大群に襲撃され、応戦するもその圧倒的な数の暴力に押され、途中何人か殺られつつ、俺達はシセロ内のとあるホテルに逃げ込むしかなかった」

 

「そのホテルの名は?」

 

「確か、"ノブレス・ザ・ホテル"って名前のホテルだ。……で、そのホテルに立て籠もって応戦してたが、それも次第に難しくなり、最後はホテルの屋上まで追い詰められた」

 

「という事は、ミロさんはそのホテルの屋上から何とか脱出してきた、という訳ですか?」

 

「あぁ、一応本部に救助を求めるべく救助信号も発信していたんだが、どうも届いてないのか、待てども待てども一向に救助がやって来る気配がない。で、班長がしびれを切らして、救助を本部に知らせるべく俺を使者として使わせたって訳だ。……自慢じゃないが、俺は班の中では一番足の速さには自信があるんだ」

 

 適材適所な人選に感心しつつも、先ほど受信した信号がミロさん達の班の救助信号であり、罠の類ではなかったのだと納得する。

 

「という事は、ミロさんは本部に救助を求めに行く途中で俺達にも助けを求めたと?」

 

「まぁ、そうなる」

 

「本部に助けを求めに行くならば、無関係の我々に助けを求める事もないのではないのか?」

 

 ここまで黙って話を聞いていたノアさんが、俺の疑問を代弁してくれる。

 同じタロン社の社員ならまだしも、幾ら上司や仲間の命がかかっているとはいえ、全く縁もゆかりもない俺達に助けを求めるものだろうか。

 

「確かにあんた達とは今さっき会ったばかりだ。だが、あんた達は俺達タロン社でも見た事がない装備やお目にかかれない貴重な装備を身に着けてる。だから分かったんだ、あんた達は只ものじゃないって!」

 

「だから、助けを求めたと?」

 

「今やノブレス・ザ・ホテル内は地獄だ、そんな地獄からでもあんた達ならきっと班長達を助け出してくれる! あんた達の姿を見て、そう確信したんだ! だから頼む! 班長達を助けてくれ!!」

 

「しかし、何度も言うが本部の救助も求めるのだろう?」

 

「……本部に救助を求めても班長達が必ず助かるとは言えない、本部が救助は難しいと判断して班長達を見殺す事だってあり得るだろ」

 

 ミロさんの言う事も一理ある、組織である以上、一部を助ける為に全体を危機にさらすぐらいなら対象となる一部を切り捨てる。

 保全の為、そんな判断を下しても、何ら不思議ではない。

 

「だから、あんた達に頼んでるんだ! あんた達ならきっと班長達を助けられる! だから、頼む!!」

 

 刹那、ミロさんは突然地面に座り込むと、その頭を、埋まるのではと思えるほど地面に付け始めた。

 それはまごうことなき、前世の故郷日本に古来より伝わる礼式の一つ、土下座。

 

 見事なまでに披露されるミロさんの土下座を前に、彼の言葉を断れるものだろうか。否、断じて否。

 

「分かりました、分かりましたから! 頭を上げてください!」

 

「それじゃ、助けに行ってくれるのか!?」

 

「保証はできませんけど、可能な限りは助け出してみせます」

 

「ありがとう! 本当にありがとう!!」

 

 涙を流しつつ、差し伸べた俺の手を取り感謝の言葉を述べるミロさん。

 そしてしばらく感謝の気持ちを伝え、それを終えると、立ち上がり、救助を求める班長達のいるノブレス・ザ・ホテルの場所を教え始める。

 

「ホテルの正面出入り口は俺達が俺達が立て籠もった際に塞いじまって使えない、だから、隣接するデパートの連絡橋を使ってホテルに入ってくれ」

 

 その後、簡単なホテルの状況を伝えた後、ミロさんは救出成功の際の報酬の話も含め本部に話を伝えるべく再び走り去っていく。

 

 そして、そんなミロさんを見送った俺達は、ミロさんの上司たる班長や同僚達を救助すべく、ピップボーイの地図に示されたノブレス・ザ・ホテルを目指して、巨大な墓標たるビル群の奥へと進むのであった。




最後までご愛読いただき、本当にありがとうございます。
次回も、可能な限り早く記載できるように精進いたします。
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