Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第二十四話 理性なき者達の墓標

 ピップボーイの地図に示された目的地を目指し、俺達は瓦礫や放置された自動車などを合間を縫うように移動していく。

 

「それにしても、結局助けに行くことになっちゃいましたね」

 

「まぁ、これも何かの縁、ですかね」

 

 後ろを歩くニコラスさんにそう答えると、次いで前を歩くノアさんから言葉が飛んでくる。

 

「しかし、今回の件は迅速に行わねば、本来の使命に差し障るのは確実だろう」

 

「まぁ、そうでなくても、今回の件は時間との勝負ですけどね」

 

 時間的制限があるとはいえ、俺の本来の使命に比べ、救助を待つ班長達に残された時間は決して長くはないだろう。

 そんな考えが頭をよぎると、自然と歩く速度も速さを増していく。

 

「ん? 待て!」

 

 だが、そんな矢先。

 不意に先頭を歩くノアさんが静止を促した。

 

 一体何事かと思っていると、刹那、不意に進行方向上に放置されていた廃車の屋根に何かが落ちてきた。

 

 着地時に相応の音を響かせながら、近くの半壊したビルから落ちてきたと思われるそれは、声にもならないような声を挙げつつ、着地姿勢からゆっくりと体を起こす。

 

「──がぁぁっ!!」

 

 そして、両手を広げ威勢のいい声を発すると、それは勢いよく俺たち目掛けて走ってくる。

 腐敗したその身体の何処からあれ程の推進力を生み出しているのか、そう思わずにはいられない程の勢いで接近するそれは、懐に飛び込む寸前、ノアさんが手にしていたチェーンソードによって綺麗に真っ二つにされてしまう。

 鮮血というには適当とは思えぬ変色し茶色がかった血を迸らせながら、先ほどまでフェラル・グールであった二つのそれは、道端に転がるのであった。

 

「い、今のが、フェラル・グール、ですか……」

 

 一連の出来事を終始最後尾から眺めていたニコラスさんが、そんな言葉を漏らす。

 

「ん? フェラル・グールを見た事がないのか?」

 

「あ、あまり村の近くでは見かけなかったもので……」

 

 ノアさんからの言葉に、ニコラスさんは気弱に答える。

 

「安心しろ、理性を失っているだけで身体能力はグールと同じ元人間、パワーアーマーを着ていれば大丈夫だ」

 

 そんなニコラスさんの答えに、ノアさんは不安を取り除くかのように言葉を投げかけるのであった。

 

 

 こうしてフェラル・グールの歓迎を受けてから暫くした後、再び、目的地を目指す俺達はフェラル・グールの歓迎を受ける事になる。

 

「レーダーに反応、数は一体」

 

「来たぞ」

 

 瓦礫の影から姿を現す一体のフェラル・グール、理性を失っているので、もはや俺達を存在に気付いた途端に臨戦態勢だ。

 

「お二人とも、ここは私にお任せください!」

 

 それに応えるべく、ノアさんが一歩前に出ようとした刹那、それよりも早くニコラスさんが最前列に躍り出る。

 

「任せて大丈夫なのか?」

 

「ふふふ、身体能力が生身の人間と同じと分かれば、パワーアーマーと専用の盾で武装している分、私の方が遥かに有利! であれば、ここは私にお任せください!」

 

 どうやら先ほどのノアさんの言葉で自信を付けたのか、ニコラスさんはやる気十分だ。

 幸い相手は一体だけなので、ここはそんな彼の気持ちを尊重すべく任せる事となった。

 

「さぁこい! 天に召されぬ哀れな魂を、その骸の中からこのキャプテン・パワーマンが解放してやろう!!」

 

「──がぁぁっ!!」

 

 ニコラスさんの台詞に反応したかどうかは定かではないが、ニコラスさん目掛けて突進するフェラル・グール。

 しかし、ニコラスさんは自慢の専用ドアシールドでその突進を受け止めると、パワーアーマー自慢の怪力で受け止めたフェラル・グールを押し返す。

 

 押し返されることを予想していなかったのか、押し返された勢いに負けたフェラル・グールは、暫くよろけると近くの自動車へと背中を打ち付けるのであった。

 

「くらえ! 正義の10mm弾!」

 

 動きを止めたその瞬間をチャンスと捉えたニコラスさんは、手にしてたN99型10mm拳銃の銃口をフェラル・グールに向けると、次の瞬間、10mm弾を浴びせ始めるのであった。

 興奮していたからか、フェラル・グール一体にマガジン一本分の10mm弾を浴びせたニコラスさん。最も、何発かはフェラル・グールではなく自動車の方に当たっているが、ま、自動車も爆発せず、フェラル・グールも息絶えたようなので良しとしよう。

 

「ははは! 正義は勝! なんだか、今ならフェラル・グール百体でも二百体でも倒せそうな気がします!」

 

 俺やノアさんに頼ることなくフェラル・グールを倒せて上機嫌なニコラスさん。

 しかし、ニコラスさんの気持ちを尊重する俺とは違い、ノアさんは危うい戦い方を改める様に忠告し、勝って兜の緒を締めよとばかりに言葉を投げかけるのであった。

 

「ま、一人で倒せたことは、褒めるべき事だがな」

 

 最も、ノアさん自身もニコラスさんの成長は認めているようだ。

 

 こうしてニコラスさんの成長を垣間見え終えた所で、再び目的のホテルを目指して歩み始めた矢先の事であった。

 不意に、先ほどニコラスさんが10mm弾を当てた自動車からけたたましい音が響き始めた。どうやら、二世紀ぶりに防犯アラームが作動したようだ。

 防犯アラームが作動した瞬間は、一瞬体を強張らせたが、正体が分かれば、なんてことはない。

 

「……ん? 気を付けろ!」

 

「どうしたんですか、ノアさん?」

 

「音がする」

 

「あの防犯アラームですか?」

 

「それじゃない、別の、それもかなりの数だ」

 

 響き渡る防犯アラームの音とは別の、それも複数の音が聞こえてくる。

 突如足を止めそんな言葉を発したノアさんに対し、俺も聞き耳を立てて音を探ってみるも、防犯アラームの音が邪魔になってそれらしい音は耳に入ってこない。

 因みに、ニコラスさんもノアさんの言う複数の音とやらは聞こえないようだ。

 

「ノアさん、ノアさんの言う音というのは……」

 

 と言おうとした矢先。不意に、ピップボーイのモニターに警告文のような文字が表示される。

 

 ──奴らが押し寄せてくる音。

 

 なんだこの警告文は、と疑問符が頭の中に生まれると共に、ノアさんの緊迫した声響く。

 

「ひぃぃぃっ! さ、流石に本当に百体相手にするのは無理です!」

 

 ノアさんの声に反応するように視線を向けた先には、まるで防犯アラームの音に吸い寄せられたかのように、瓦礫や残骸等を超えて俺達の方へと向かってくる大量のフェラル・グールの姿があった。

 通行可能な道を塞ぐかの如く、壁の様に迫ってくるフェラル・グール達は、ニコラスさんの言う通り、本当に百体はいるかとも思える程大量だ。

 

「ニコラス、ナカジマの前に出ろ! 盾としての役割を十分に果たせるようにな!」

 

「たた、戦うんですかぁ!? あの数相手に!?」

 

「今更逃げても逃げきれん、それに我々は土地勘もないんだ、下手に逃げて袋小路に追い込まれれば今より状況は悪くなる」

 

 ノアさんの言う通り、フェラル・グール達は前方から迫って来ているが、後方からは確認できない。

 相手が一方から迫ってきているのなら、ここで戦えば、いざという時も後方に逃げる事が出来る。

 一方、ここまでピップボーイの地図に頼って歩いてきた為、悠長にピップボーイの地図を眺めていられる状況にない中で、どこまで来た道を逆走できるかも不透明である。

 

 なら、戦闘と逃走のリスクを比べれば、この場にとどまり戦闘でしのいだ方が生存確率が高い。

 

「ニコラスさん、ここは覚悟を決めましょう!」

 

「正義のヒーローなのだろう」

 

 戦闘準備を進める俺とノアさんを他所に、ニコラスさんはあの数を目にして先ほどまでのやる気などは吹き飛んでしまったようだ。

 しかし、多数決的に戦闘する決定を覆せない、或いはもう逃げられないと悟ったのか、覚悟を決めたかのように俺の前へと歩み出す。

 

「や、やってやりますよ! 私はキャプテン・パワーマン! 悪を前に背を向ける事などない!!」

 

 覚悟を決めた台詞を吐くと、準備も整い、いよいよその時が訪れる。

 

「ぬおおぉぉぉっ!」

 

 壁の様に迫ってくるフェラル・グール達が有効範囲内に飛び込んでくるや、ノアさんの手にしていたチェーンソードが音を立て、横に一閃する。

 刹那、汚い鮮血と共が迸り、複数のフェラル・グールの上半身と下半身が永遠の別れを告げる。

 

 そんなノアさんの戦闘を他所に、情けない声を挙げながら、ノアさんが処理しきれない或いはノアさんを無視し突っ込んでくるフェラル・グールの波をその専用ドアシールドで受け止めるニコラスさん。

 一応、勢いを殺すべく、もう片方の手に持っているN99型10mm拳銃を発砲して数を減らそうと努力はしているようだが、あまり効果のほどは感じられない。

 

 そんな訳で、塞き止められながらも漏れ出たフェラル・グール達目掛け、俺は構えたM4カスタムの銃口を向け、5.56mm弾をお見舞いしていく。

 その爛れた頭部や上半身に5.56mm弾を受け、のけぞりながら倒れるその様は、まさにゾンビ映画のワンシーンを彷彿とさせる。

 

 しかしながら、数が多い。

 流石にマガジン一つ分で片が付く事はないので、必然的にマガジンを交換しなければならない。

 なのでタイミングを見計らってマガジン交換を行うも、やはりそんな絶好のチャンスを簡単に見逃してくれるはずもなく。

 隙を突いたとばかりに脇に飛び込んでくるフェラル・グールに、渾身の銃床右フックをお見舞いしノックアウトして時間を確保する。

 こうして無事にマガジン交換を終えると、再びM4カスタムの銃口が火を噴き始めた。

 

「むぅ、倒しても倒しても、ラッドローチの如く次々と湧いてきりがないぞ」

 

 先ほどから一心不乱にチェーンソードを振るうノアさんからの声に、改めて状況を確認してみると。

 道端などに転がるフェラル・グール"だった"ものの数々や、空薬莢、それらは確実に数が減っている事を物語っている。

 それにも関わらず、いまだに押し寄せてくるフェラル・グール達の数が減っている様子は感じられない。

 

 確かに、このまま決定打を欠いたままでは押し込まれる可能性もある。

 

 ではどうするか、簡単だ、状況を覆す一撃を加えればいい。

 丁度、そんな一撃を放てる品物を、俺は今ピップボーイの中に収納している。

 

 早速ピップボーイを操作し、一撃に必要なミサイルランチャーと弾薬のミサイルを取り出すと、早速ミサイルをミサイルランチャーに装填し、準備を整える。

 

「ノアさん! ニコラスさん! 射線を開けてください!!」

 

 俺の言葉に、ノアさんとニコラスさんは一瞬俺の方を振り向くと、瞬時に何をするのかを察してくれたらしく。

 次の瞬間にはさっと、直線上の空間がぽっかりと開ける。

 

 刹那、反動に負けぬ様に構えたミサイルランチャーのトリガーを引くや、甲高い音と共に、ミサイルが発射される。

 本来は誘導性能を有していたのだろうが、誘導装置未装着のこれは、携帯型対戦車ロケット弾のように直進するのみであった。

 

 コンマ数秒の後、フェラル・グールの壁の中心とも呼べる地点に着弾したミサイルは、内包されていた爆破エネルギーを全方位に開放し、周囲のフェラル・グール達を爆炎に包み込む。

 更に爆炎の範囲外にいたフェラル・グール達には、爆破の際に生じた衝撃波が襲い掛かり、耐えきれずに次々に地に伏していく。

 

 まさに状況を覆す一撃、その威力に周囲が一瞬の静寂に包まれたものの、それもつかの間。

 一時停止から再生ボタンを押されたかの如く、再びフェラル・グール達による攻撃は再開されたものの、その勢いは一撃を与える前と比べ明らかに弱くなっている。

 先ほどの一撃が聞いているなによりの証拠だ。

 

「このまま乗り切りましょう!」

 

 再び戦闘が再開されるも、そこには一撃を加える前まで存在していた、終わりの見えない恐怖は存在していない。

 一体、また一体と、着実に数を減らすフェラル・グール達。

 そして、遂に。

 

「ふんっ!」

 

 ノアさん渾身の左アッパーで天高く舞い上がった最後のフェラル・グール。

 これにて、長かったフェラル・グール達との戦闘も終わりを告げた。

 その結果は、無論、俺達の勝利である。

 

「やりました! 私、生きてます!」

 

「よく頑張ったな」

 

「お二人とも、お疲れ様です」

 

 生き残れた喜びを分かち合う俺達、だが、その喜びが、まさか次の瞬間に絶望に豹変するなど、思ってもいなかった。

 

「ん?」

 

「あ……」

 

「あれ、何だか嫌な予感が」

 

 最後に吹き飛ばされたフェラル・グールは、暫く吹き飛んだ後、やがて重力に逆らう事無く少し離れた場所に放置されていた自動車の天井に叩きつけられたのだが。

 その自動車、外見からして廃車ではなさそうな感じがする。

 

 そして、次の瞬間。

 恐れていた事態が、現実のものとなる。

 

 鳴り響く、防犯アラームの音。

 ピップボーイに表示される、奴らが押し寄せてくる音、との警告文。

 

「む、これがデジャヴか……」

 

「ノアさん!!」

 

「どどど、どうしましょう!?」

 

 原因を作っておきながら暢気なノアさんに、パニックに陥るニコラスさん。

 不味い、先ほどの一戦で気力も体力も弾薬も消費しているのに、さらに間髪入れずもう一戦。

 これはもう、選択すべき選択肢は一つだ。

 

「ノアさん、ニコラスさん、逃げましょう!!」

 

「それがよさそうだ」

 

「早く逃げましょ!」

 

 迫りくる悪に躊躇なく背を向けながら、俺達はフェラル・グールとの戦闘を避けるべく、ビル群の間を駆け抜けていくのであった。

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