Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第二十八話 救助 中編

「ガァァァァツ!!」

 

「撃てーっ!!」

 

 開戦を告げるフェラル・グールの咆哮、そして各々の銃口から放たれる弾丸の数々。

 足を、脇を、腕を、命中した弾丸が発するストッピングパワーによりえぐり取っていく。

 だが、それでも奴らは、俺達のいる陣地へと臆する事無く向かってくる。自らを突き動かす欲望を満たす為に。

 

「班長! 今回の襲撃は今までより数が多い!」

 

「余計な事は考えるな! フェラル・グール共をハチの巣にしていけば、じきにいなくなる!」

 

 それまでの襲撃とは数が異なるのか、悲観的な声が飛んだものの、それもロード・バイロの声と途切れる事のない銃声にかき消されてしまう。

 

「グレネード!」

 

 俺は枯れんばかりに叫び注意を促すと、手にしたM26手榴弾の安全ピンを抜き、それを途切れることなく陣地に目掛けて迫るフェラル・グールの集団に向かって投げる。

 緩やかな放物線を描き投げられたM26手榴弾は、程なくして数体のフェラル・グールを巻き添えに、その役割をきっちりと果たすのであった。

 

「くそ、まだ湧いてくる」

 

 だが、数体巻き添えにした所で、迫りくる波の勢いは衰える事はない。

 ならば、もっと大きな衝撃をもって、勢いを衰えさせるまでだ。

 

 衝撃発生装置たる装置一式、ミサイルランチャーと弾薬のミサイルをピップボーイから取り出すと、早速ミサイルをミサイルランチャーに装填し、準備を整える。

 

「撃ちます!」

 

 発射時に発生するバックブラストに見方を巻き込まないように後方確認を終えると、俺はトリガーを引いた。

 刹那、盛大なバックブラストが発生すると共に、甲高い音を引き連れミサイル本体がフェラル・グール達の間を突っ切ってゆく。

 

 やがて、進行方向上に偶然いたフェラル・グールにぶつかると、その衝撃が引き金となり、内包していた爆発エネルギーを周囲に放出する。

 爆炎が周囲のフェラル・グールを焼き尽くし、衝撃波が爆炎の届かぬ範囲のフェラル・グール達をなぎ倒していく。

 爆発の光と爆音で一瞬目を背けた後、再び目にした光景は、黒煙を中心に広がる、二度目の死を迎えたフェラル・グール達の姿であった。

 

「ヒューッ! 優しそうな顔して、やる事が派手だねぇ」

 

「どうも」

 

 近くにいたロード・バイロからお褒めの言葉をいただくと、再びM4カスタムを手に取り、5.56mm弾を生き残りのフェラル・グールにプレゼントしていく。

 

 ド派手な一撃のお陰か、さよならの歓迎に訪れるフェラル・グールは徐々に少なくなっていく。

 だが、どうやらフェラル・グール達は嬉しくもないサプライズを用意していたようだ。

 

「オオオォォォ!!」

 

 聞き覚えのある咆哮と共に、黒煙の中から突如姿を現したのは、十三階から落下して死んだ筈の、謎のクリーチャーであった。

 どうやら、謎のクリーチャーは、倒したあの個体だけではなかったようだ。

 

「えぇぃ! まだいたか!!」

 

 一心不乱に俺達のいる陣地目掛けて突進してくる謎のクリーチャー。

 その存在に気付いたノアさんは、不意に謎のクリーチャーの進行方向上に飛び出すと、その手にしたチェーンソードを振りかざした。

 

「さっさと地獄に帰るんだな!!」

 

 そして、謎のクリーチャーが範囲内に飛び込んだとみるや、振りかぶったチェーンソードは、その鋭利な刃をもって謎のクリーチャーの巨体を引き裂いていく。

 その巨体に似つかわしい豪快な血飛沫を屋上にまき散らしながら、やがて謎のクリーチャーは、巨大な二つの肉片と化すのであった。

 

「やっぱり化け物を倒すなら、この手に限るな!」

 

 着用するスペースマリーンパワーアーマーを返り血で染めながら、何処かの大佐のような台詞を吐くノアさん。

 しかし、そんな手を使えるのは、今のところノアさん位な気がするのですが……。

 いや、突っ込むのはこれ位にしておこう。

 

「はは! 君の仲間も見た目通り十二分に派手だな!」

 

「……どうも」

 

 なんて、再びロード・バイロからお褒めの言葉をいただいた矢先。

 

「ぬお!? なんだ!?」

 

 フェラル・グールの間を縫うように、何かがロード・バイロの腕に巻きつく。

 彼の声に反応して巻きついた何かを確認してみると、それは、まるで舌のような物体であった。

 

「ぬお!」

 

 刹那、まるで舌の持ち主は自らの方へとロード・バイロを引っ張るかのように、舌を戻し始める。

 そうはなるまいとロード・バイロも踏ん張ってはいるものの、今にも負けて引っ張られそうだ。

 

「危ない!」

 

 なので、俺はロード・バイロの体を掴むと、引っ張られまいと踏ん張る。

 が、見た目によらずとんだ馬鹿力なのか、このままでは俺ごと引っ張られてしまいそうだ。

 

「今助けるぞ!」

 

 だが、そこに救世主が現れる。

 返り血で装備を染めた救世主は、徐に伸びた舌を両手で掴むと、次の瞬間、まるでチーズを裂くかの如く、ロード・バイロの腕に巻き付いていた舌を引き千切った。

 

 しかし、それでは終わらない。

 続けざまに引き千切った舌を再度掴みなおすと、まるでハンマー投げの如く豪快なスイングを披露すると、綺麗なターンを描き、やがて。

 

「ぬぁぁぁっ!!」

 

 投げられたそれは、見事な放物線を描きながら、落下防止用の柵の向こう側へと消えていった。

 

「やはり化け物を倒すのは、この手に限るな!」

 

 だから、そんな手は知りませんよ、ノアさん。

 

 

 

 ノアさんの真似できない必勝法も効果があったのか。

 気づけば、フェラル・グールのさよなら送別会は、終わりを告げていた。

 

「……どうやら、私達の勝ちのようだな!」

 

 屋上に更に飛び散ったフェラル・グールの骸の数々を目にし、ロード・バイロは高らかに勝利宣言を行う。

 

 これで、後は本部の救助隊がベルチバードで駆けつけてくれれば、この地獄ともおさらばできる。

 誰もが、希望の未来を夢見て、その瞬間、張り詰めていた警戒の糸を緩めてしまっていた。

 その油断が、まさかこの直後、大きな代償となって戻ってくるなど思ってもいなかった。

 

「オォォォォオオッ!!」

 

 屋上に響き渡る獣の如く咆哮。

 その咆哮に、全員が顔を動かし、咆哮の正体を探し出そうとする。

 

 刹那、未だ立ち上り続ける黒煙を引き裂いて、何かが俺達のいる陣地目掛けて飛来する。

 それが、巨大なコンクリートの塊であると理解した頃には、巨大なコンクリートの塊は、陣地の防壁である幾つかの土嚢や家具を破壊しながら着弾した。

 

「くっ!?」

 

 まるで砲弾と化したかの如く、着弾した巨大なコンクリートの塊は着弾時の衝撃で粉砕し、小さな破片を周囲に飛散させる。

 小さくなってもそれはコンクリートだ。直撃すれば勿論の事、当たるだけでも、そのダメージはかなりのものとなる。

 

 近くにいたタロン社の社員達、そして、俺を庇う様な形で足に被弾したロード・バイロも、その痛みに顔を歪める。

 

「大丈夫ですか!? ロード・バイロ!」

 

「あぁ、くそ! 一体何なんだ!!」

 

 突然の出来事に加え、痛みを紛らわせる為に怒鳴り気味のロード・バイロ。

 兎に角足を引きずる彼に肩を貸そうと近づいた、その時であった。

 

「あぁ、くそ! 第二波だ!! 総員迎撃!!」

 

 何かに気が付いたロード・バイロが声を挙げる。

 それは、新たに現れた欲望に飢えた悪魔たちの姿。

 再び向かい来る、フェラル・グール共の姿であった。

 

「えぇ! ま、まだ来るんですか!」

 

「おいてめぇ、早くそいつを撃ちやがれ!」

 

「ま、待ってください、まだ慣れてなくて、リロードがうまくできないんですよ!」

 

 予期せぬ第二波の発生に、陣地内は混乱する。

 ニコラスさんはまだ扱い慣れていないM199 ヘビー・アサルトライフルの弾倉交換に手間取り、近くの社員から矢の催促を受け。

 

「あぁ、くそう、いてぇ! こんな事なら、俺、入隊するんじゃなかった!!」

 

「泣き言言わずにさっさと撃ちやがれ!」

 

 先ほどの巨大なコンクリートの塊の破片を受けた社員は、痛む部分を手で押さえながら泣き言を垂れ流し。

 難を逃れ無事な同僚は、そんな彼を鼓舞させようと言葉を投げる。

 

「えぇぃ、まだこんなに残ってやがったのか!」

 

 足を負傷したロード・バイロは、銃の反動が響くのを嫌ってか。

 反動のほとんどないAER9型 レーザーピストルに持ち替え、迫りくるフェラル・グールにその光線を照射していく。

 

 赤い光線の当たったフェラル・グールが、文字通り砂の如く崩れ、灰の山となる。

 

「弾幕薄いぞ! なにやってんの!!」

 

 不意の第二波に加え、それに伴う混乱。そして、巨大なコンクリートの塊による影響で攻撃手が不足し、弾幕の濃度が第一波の時よりも薄くなる。

 しかし、フェラル・グールの数は第一波と然程変わりはない。

 

 これから導き出される結果とは、言うまでもない。

 

「ちくしょう! やめろ、くるな!!」

 

 防壁ともいうべき土嚢や家具が破壊された個所などから、フェラル・グールが陣地内に侵入し、社員達に襲い掛かる。

 

「くそ!」

 

 馬乗りになり、今にも社員の喉元に噛みつかんとするフェラル・グールの背に駆け付けながら5.56mm弾を叩き込むと、とどめとばかりに、その貧相な後頭部にM4カスタムのストックを利用した重い一撃をお見舞いする。

 

「大丈夫ですか!?」

 

「あぁ、すまねぇ、助かった」

 

 差し出した手を握り返し、無事に立ち上がった社員の無事にひとまず安堵したのも束の間。

 再び、別の社員の悲鳴が響き渡る。

 

「あば、あ、あぁ!」

 

 喉を噛まれたのか、複数のフェラル・グールに押し倒された社員は、助けを求めてフェラル・グールの間から必死に手を伸ばす。

 

「くそ!!」

 

 早く助けなければ、その思いが焦りを生んだのか、トリガーを引いた筈のM4カスタムの銃口からは、5.56mm弾は放たれなかった。

 

 ──弾切れ!?

 

 弾倉交換している一秒も今は惜しい。

 気づけば、俺の手はM4カスタムを離し、レッグホルスターに収納している攻撃型カスタムガバメントに伸びていた。

 

 そして、攻撃型カスタムガバメントを構えると、.45口径弾を群がるフェラル・グール目掛けて放ち始める。

 

「あぁ、くそ! アンディー、おいアンディー! あぁ、畜生!!」

 

 群がるフェラル・グールを一掃した先に広がっていたのは、自らの血と肉の海に染まった、無残な社員の姿であった。

 仲が良かったのだろうか、同僚の社員の一人が、無残な彼に駆け寄ると、泣き崩れる。

 

「泣く暇があったら、あいつの分までフェラル・グール共に鉛弾をぶち込んでやれ!!」

 

 そんな社員の姿に気が付いたロード・バイロの声が飛ぶも、どうやら彼の戦意は既に喪失してしまったようだ。

 

「くそ! この野郎!」

 

「うわ! うわ! うわぁぁっ!!」

 

「ぬ! くそ!」

 

 ふと、周囲の状況を改めて確認してみる。

 陣地内は、もはや乱戦模様と化している。

 あちらこちらで生者と死者の取っ組み合いが巻き起こり、とても、爆発物で死者のみを一斉に火葬する事は出来なさそうだ。

 

 近接戦で強みを発揮するノアさんも、自身に取りついたフェラル・グール達のお陰で、身動きが取れそうにない。

 ニコラスさんも、もはや専用ドアシールドでフェラル・グールの魔の手を防ぐのに精一杯。

 

 もはや、組織的に攻撃する状況ではなく、各々が生き残るために精一杯な状況であった。

 

「っ! この!」

 

 そして、俺も。

 不意に迫っていた魔の手を振り払うべく蹴りを入れると、倒れたフェラル・グールの頭部目掛け、固いミリタリーブーツの靴底を踏み下ろす。

 

 さて、また一体、フェラル・グールに二度目の死を与えたわけだが、これから俺はどう行動すべきか。

 空になったM4カスタムと攻撃型カスタムガバメントの弾倉交換を行いながら、俺は思考を巡らせる。

 

 どうすれば、俺達に有利な状況に戻せるか、その為にどう行動するか。

 

 何度も何度も脳内シュミレーションを繰り返し、次にとるべき行動を選定していく。

 因みにこの間、まるで周囲はV.A.T.S.を使用したかの如く、時間の流れが緩やかになっていた。

 

「……ん?」

 

 こうして、次にとるべき行動を実行に移そうとした矢先。

 不意に、音が聞こえてくる。

 

「これは……」

 

 それは、銃声でも雄たけびでもない。

 丁寧に、そして優美でいて力強い、聞く者によっては、それは恐怖にすら感じる、まさにそれはメロディ。

 

 

 

 そんなメロディに付けられた名は、ワルキューレの騎行。

 

「っ!?」

 

 刹那、廃墟と化したビルの間を通り抜け、風邪を切り裂く音が木霊する。

 それは、鉄の塊が空を飛ぶ為に必要な揚力を得るべく発する音。

 その揚力を得るべく回転を続ける二つのティルトローター、それが発生させる空気の流れは、屋上にいる俺達の肌でも感じられる程強力だ。

 

 しかも、その発生源が一つではなく複数となると、猶更。

 

「ベルチバードの編隊!?」

 

 ホテルの上空にワルキューレの騎行と共に姿を姿を現したのは、複数のベルチバードであった。

 ホテルの上空を旋回しつつ、その姿を見せつける複数のベルチバードの機体側面には、タロン社を示すロゴマークが描かれている。

 

 どうやら、本部ご自慢の騎兵隊が到着したようだ。

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