爽やかな笑みを浮かべてながら、話を続ける至高のオーバーロード・スミス。
「内容は特に難しい事ではないし、何なら、報酬は君達の希望に沿ったものを用意する事も可能だが、どうかな?」
「希望に沿ったとは、何でも、という事ですか?」
「無論、こちらとして用意できる範囲内、という注釈は付けさせていただくがね」
至高のオーバーロード・スミスから言質を取った刹那、俺はノアさんとニコラスさんの三人で相談すると言うや、二人と新たな協力を受けるかどうかを相談し始める。
「私は君の意見に従う」
「私もです」
と言っても、二人は特に反対意見もないので、とんとん拍子に話は進み。
要求する報酬内容を確認し終えた所で、俺は相談の結果を至高のオーバーロード・スミスに伝える。
「では、例えば。ベルチバードで希望の場所まで送ってもらう、という希望内容でも構いませんか?」
「それ位でいいのかね? だとしたら、お安い御用だよ」
「では、新しいご依頼、お受けいたします」
「そう言ってくれると信じていたよ、では、直ぐに依頼の説明を行う者を呼ぶとしよう」
すると至高のオーバーロード・スミスは、自身のデスクに置かれた電話を手に取ると、何処かへと電話をかけ始める。
暫く話をして受話器を置くと、担当の者が来るまで暫し待つように言われた。
言われた通りソファーに腰を下ろして待っていると、やがて、ドアをノックする音が響き渡る。
そして、許可を得て部屋に入ってきたのは、布のかけられた何かが乗った台車を押した、一人のタロン社社員であった。
「彼が、君達への新しい以来の詳細を伝えてくれる。では、君、依頼の詳細を伝えてくれたまえ」
「サーイエッサー! では、説明をさせていただきます」
脇に抱えていた書類に目を通しながら、社員の男性は依頼内容を説明していく。
「今回皆様に行っていただきたいのは、墜落したベルチバードの残骸の破壊と共に、墜落機と共に存在しているであろうパイロット達の死体から、彼らのドッグタグを回収する事です」
説明によると、どうやら墜落したベルチバードというのは、ホテルからの救出作戦時に撃墜させられたブラックホークのコールサインで呼ばれていたあの機体のようだ。
屋上からはどの辺りに墜落したかは確認できなかったが、あの後、本部が墜落現場を特定したようで。
機体は、貨物ターミナルに墜落した事が判明しているとの事。
「それで、その機体の残骸をどの様に破壊すればいいのですか?」
「それは、こちらをお使いいただきます」
そう言うと、社員の男性は、台車に乗せていた何かにかかっていた布を徐に外した。
そこには、三つのミニ・ニュークを束ね、謎の機械が取り付けられた一品が姿を現した。
「こちら、時限装置付きの爆破用ミニ・ニューク装置です。取り扱いは簡単、この装置を残骸に設置し、こちらの赤いボタンを押していただければ、十分後に爆破いたします」
爆破用ミニ・ニューク装置の取り扱いをレクチャーされ、とりあえず扱いを覚えた所で、社員の男性は再び依頼の説明を再開させる。
「パイロットの生存は確認できなかった為、既に死亡していると判断しました。よって、彼らのドッグタグを爆破前に回収してもらいます」
「もし、仮にパイロットが生存していた場合は?」
「仮にそのような事があれば、救助し、本部に連れ帰ってもらいます。……最も、その可能性はかなり低いものと思いますが」
こうして、一通りの説明を終えた社員の男性。
そんな彼の説明に、少しばかり補足するように、ずれた眼鏡をかけ直しながら、至高のオーバーロード・スミスが口を開いた。
「あぁ、それから。機体は破壊してもらうが、現場に残されたそれ以外の備品については、君達の好きにしてもらって構わんよ。装備のミニガンや死体の装備など、回収し、好きに使ってくれたまえ」
「よろしいんですか?」
「危険度の高い依頼を受けてもらう見返りがベルチバードの送迎では、見合わんと思ってね。むしろ、これ位の色を付けてもまだ私としては不釣り合いと思っているがね」
「ありがとうございます」
こうして、依頼の説明を聞き終えた俺達は、可能な限り素早い依頼の達成を望む、との至高のオーバーロード・スミスの注文をかなえるべく。
爆破用ミニ・ニューク装置をピップボーイに収納すると、部屋を後に、急いで準備を進める。
準備とは、ホテルでの戦闘で消費した弾薬類の補充だ。
本部ビル内に設けられている武器屋を探すと、何と、シカゴでお目にかかれるとは思ってもいなかった名前の店と出会う事となる。
その店の名は、"ガンランナー"シカゴ支店。
ノアさんが懐かしい名だと独り言を零す事からも分かるように。
ガンランナーはFallout1から登場する武器屋で、主に西海岸を中心に自社工場で質の良い銃器や弾薬を製造し、販売している、まさに一大商業組織だ。
製造業という業界が壊滅した世界において、貴重な製造・供給ルートを保有するガンランナーは、ウェイストランドにおける最大勢力、
そんなガンランナーが、遥々シカゴにまで出店していたとは驚きだ。
加えて、店番をしているのは、プロテクトロンではなく紛れもない人間であった。
「いらっしゃーい、どうも」
しかし、店番をするふくよかな男性店員は、ぶっきらぼうな歓迎で俺達を出迎えるのであった。
「ご注文、どうぞー」
カウンターに肘をつき、誠意を感じられない応対を行う男性店員。
その態度に、俺はまだプロテクトロンが店番をしていた方がましだ、と思うのであった。
だが、そんな思いを言葉にすることなくぐっと押し下げると、彼に注文を伝えていく。
「5.56mm弾ってありますか? .223レミントン弾じゃなく、NATO弾の方の」
「あー、あるよ。で、どこ産の奴をご所望?
5.56mm弾、と一言で言っても、実は共通化の為規格の範囲内ながら各国が独自に開発・採用しており。
前世の祖国でも、89式5.56mm普通弾という名称で、アメリカ軍が採用している5.56mm弾とは異なる独自の弾薬を採用していた。
「
一応、規格の範囲内で独自にアレンジした弾薬である為、アメリカ製の5.56mm弾使用の銃器に、他国独自アレンジの5.56mm弾を使用する事は可能だ。
しかし、例え規格が同じでも、やはりアメリカ製の銃ならば、アメリカ製の5.56mm弾、正規の組み合わせで使うのが望ましい。
銃に限らず、機械等でも、純正品以外との組み合わせでトラブルが生じた、という例は枚挙にいとまがない。
「種類は?
「M855でお願いします。あ、もしあるなら、M855A1もお願いします。数は……」
男性店員が尋ねた弾薬の名称は、一般的に言われる5.56x45mm NATO弾、別名NATO第二標準弾と呼ばれるNATO標準規格のアメリカ軍制式名称である。
因みに、NATOではSS109と呼ばれており。
また、M855は同規格の弾薬と差別化の為、弾丸の先端部分が緑色に塗られており、この事から、別名グリーンチップとも呼ばれている。
なお、M855A1とは、その名の通りM855の改良型で、その性能はAKシリーズの使用弾薬でお馴染みの、7.62x39mm弾以上とも言われている。
因みに、最初に俺が名をあげた.223レミントン弾とは、NATO規格の弾となったSS109が登場する以前にアメリカ軍に制式採用された弾薬で。
SS109の登場後も、民間用のスポーツ弾薬として製造が続けられた弾薬である。
それにしても、第一印象は接客態度が気になると思っていたが、やはりガンランナーの店員を務めるだけはあって、銃や弾薬に関する知識の方は相当のものを持ち合わせていると今では感じる。
「ほい、これで間違いないっすか?」
「えぇ」
「じゃ、合計で……」
カウンターの下から取り出した紙製の弾薬箱を置くと、合計金額を提示する。
提示された
こうして弾薬類の補充を終え、依頼を遂行すべく現場に向かおうと店に背を向けた時であった。
「あ、ちょっと!」
「はい?」
「その背負ってる銃、ちょっと見せてくれないか!? 頼む!」
突然、男性店員がカウンターから身を乗り出す勢いで、俺のM4カスタムを見せてほしいと頼み込んできた。
その目を一生懸命に輝かせながら。
「なぁ、頼むよ! あ、もし見せてくれたら、
俺が見せようかどうか悩んでいると、更に、気になる提案も飛び出してくる。
その貫通力がM855のニ・三倍と言われる貫通力を誇る、徹甲弾のM995。それを、一箱分、銃を見せるだけでプレゼントしてくれるというのだ。
とはいえ、M995はその高い貫通力故に、室内での使用に難がある。壁を貫通し、壁越しにいる味方も被弾しかねないからだ。
だが、戦前よりも面の皮が厚くなった方々が増加しているウェイストランドにあっては、その貫通力は魅力的だ。
「それじゃ、少しだけ」
「本当か、恩にきる!」
という訳、M995入りの紙製弾薬箱を受け取った代わりに、背負っていたM4カスタムを彼に手渡す。
「うひぉー、これスゲー。やっぱ思った通り、これ戦前の奴のレストア品じゃなく、完全オーダーメイドだ! スゲー! こんなスゲーもん、誰に作ってもらったんだ!?」
興奮で若干鼻息を荒くしながら、俺のM4カスタムを隅々まで観察する男性店員。
どうやら、あのM4カスタムは、かなり貴重な逸品だったようだ。
「あ、でもストックのここ、汚れてるじゃねぇか。おいおい、こんなにスゲーもんなんだから、もっと丁寧に扱えよ」
そんな事とは知らず、俺はストックでフェラル・グールを殴るなど、かなり荒っぽい扱いをしていた。
今後は少しだけ、丁寧に扱う事を心がけたいと思う。
「しゃーねぇな、こんなスゲーもん見せてくれたお礼に、ちょっと綺麗にしてやるよ」
男性店員は、徐に缶と布を取り出すと、M4カスタムを手入れし始める。
流石に、分解しての本格的なものではなく簡易的なものではあるが、それでも、手慣れた様子で汚れを落とすと、M4カスタムは手に入れた頃のように綺麗な状態に生まれ変わっていた。
「どうよ、俺様の手にかかれば、ざっとこんなもんよ」
と、得意げな表情と共に、その仕上がりを自慢する彼の後方から、一つの人影が忍び寄っていた。
「ほぉー、おめぇさんは仕事中に客の前で堂々とサボってんのを自慢するって訳か?」
「げぇ!? おやっさん!」
店の奥から現れたのは、ベースボールキャップを被り、いかにも使い古したと言わんばかりのツナギ姿の初老の男性。
その雰囲気は、いかにも職人というものを醸し出している。
「あれ程接客は愛想よくしろって言っただろうが馬鹿たれが!!」
「す、すいません!」
先ほどまでの小生意気な態度は何処へやら、おやっさんと呼ばれた初老の男性に、男性店員は頭が上がらないようだ。
「お客さん、すいません。こいつ、ブラッドの奴はガンスミスの腕の方は見込みがあるんだが、接客の方はとんといまいちで」
「あ、いえ、別に気にしてませんから」
「そうですか、すいませんね。……おいこら! さっさとその売り物の銃を片付けろ!」
「ちょ、おやっさん、これ売り物じゃないっすよ、これあちらのお客さんので」
「てめぇ! なに、お客様の銃を勝手に拝借してんだ!!」
「あ、待ってください! 俺が彼にクリーニングを頼んだんです!!」
今にもおやっさんの拳骨がブラッドに炸裂しそうだったので、慌てて止めに入る。
「ん? なんだそうだったんですか。……ったく、それならそうとさっさと言え!」
そして、なんとかブラッドの頭におやっさんの拳骨がさく裂する事だけは免れた。
「で、そのクリーニングとやらは終わってんのか」
「あ、はい、終わってます」
「ならさっさとお客様に返しやがれ!」
そして、俺のM4カスタムが再び俺の手元に戻ってくるかと思われた、刹那。
「っ! おい、ちょっと待て!」
突然おやっさんが声をあげたかと思えば、ブラッドの手からM4カスタムを奪い取るように取り上げると、手にしたM4カスタムをまじまじと観察し始め。
やがて、俺の方を向くや、俺にM4カスタムについて尋ね始める。
「お客さん! この銃、何処で手に入れたんで?」
「え、あ……。それは、知り合いの方から譲り受けたもので」
「って事は、お客さん、"ジョーニング"に直接頼んだんじゃねぇんだな」
聞き慣れないジョーニングなる人名、一体どんな人物なのかと思っていると、聞き覚えがあるのか、ブラッドが驚いた様子で声をあげた。
「えぇ! ジョーニングって、伝説のガンスミスって呼ばれてる、あのジョーニングですか!?」
「なんだおめぇ、気づいてなかったのか?」
「え、えぇ。でも、スゲー技術の持ち主が作った銃って事は分かってました」
「あの、ジョーニングという方は、ガンスミスなんですか?」
「そうよ、お客さん。俺達ガンスミスの間で生きる伝説と崇められているガンスミス、それがジョーニングよ」
おやっさんの説明によると、ジョーニングという名のガンスミスは、戦前からガンスミスとしてその才を発揮し、戦後の現在に至るも至極の逸品を生み出し続けている伝説の人物。
因みに、戦前から現在に至るまで存命であるという説明から何となく察してはいたが、彼は、グールとして現在も自身の工房で作品作りに勤しんでいるとの事。
「彼の銃は、俺達の作ったもんとは比べ物にならん程質のいいものだ。だが、それは誰でも手に入れられる訳じゃない」
「というと?」
「彼は、自分が気に入った者に対してしか銃を作らんのだ。どんなにキャップを積んでも、どんなに良い条件を提示しても、彼が気に入らなければ、頑固として銃は作らん」
まさに職人気質というべきか、その腕前に絶対の自信があるからこそ、安易に作品は作らない。
そして、おやっさんもそんなジョーニングの信念におやっさんも憧れているのか、目を輝かせながら、嬉しそうにジョーニングについて語り続ける。
「しかし、お客さんにこの銃を譲り渡した者は、相当お客さんの事を信頼してたんだな。じゃなきゃ、ジョーニングが手掛けた銃を譲り渡すなんて、普通は考えられん」
「ありがとうございます」
俺は、おやっさん越しに、リーアで俺の無事を祈るヴァルヒムさんに感謝の言葉を述べるのであった。
「それにしても、今日は俺にとって人生最高の日だな。まさか、今日一日でジョーニングの手掛けた銃を"二度"もこの目で拝めるなんてよ」
こうして、ジョーニングについて一通り説明を終えたおやっさんからM4カスタムを返してもらった矢先。
おやっさんの口から、気になる独り言が零れた。
「あの、今、二度拝められたって言いましたけれども。俺以外にも、ジョーニングの手掛けた銃を所持していた人に会ったんですか?」
「おう。お客さんの前にこの店を訪ねてきたお客でな。リボルバーだったが、あれもまた素晴らしい、まさに戦う工芸品だったな」
「お、おやっさん。それってもしかして、俺がトイレに行ってる間に応対してた、あの女二人組の事っすか?」
「あぁ、そうだ。おめぇがだらしなく鼻の下伸ばしてみっともねぇ面晒した、あのお客さんだ」
「いやでもおやっさん、あの青いツナギからこぼれんばかりに実ったアレ見て、鼻の下伸ばさねぇ男はいないと思うけどな。加えて、二人とも綺麗な顔してりゃ尚更だ」
「だとしても、お客様の前だぞ、もっと引き締めろ!」
おやっさんの喝が炸裂した所で、俺は、ブラッドの口から漏れた気になる言葉の真実を訪ねる。
「あの! その女性二人組のお客さんって、二人とも青いツナギのような恰好をしてたんですか!?」
「いや、青いツナギを着てたのは片方だけで、もう片方は赤いコートを着てたな。あぁ、そういえば、赤いコートの方はジャーナリストとか言ってたっけな。……あぁ、ジョーニングの手掛けた銃を持ってたのは青いツナギの方だった」
青いツナギ、この世界でその様な格好をしているという事は、やっぱりあの時見たのは見間違いなんかじゃなかったんだ。
しかし、もう一人の赤いコートの女性、それも自身をジャーナリストと名乗った人物。
まさか、
色々と気がかりな情報を意図せず仕入れる事になったが、今は、至高のオーバーロード・スミスからの依頼を遂行する方が先決だ。
二人に改めてお礼を述べると、俺達は、ブラックホークの墜落現場を目指し歩み始めた。