Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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久々の投稿となります、お待たせいたしました。


第四十三話 ヌカ雪姫 中編

──玄関の扉を叩いてみますが返事がありません。

──ヌカ雪姫は申し訳なく思いながらも、扉に鍵がかかっていなかったので、お家に足を踏み入れました。

──するとどうでしょう。散らかりっぱなしの食器、床に散らばったゴミの数々、そして何故か転がっていた電気回路や簡易バッテリー等があり。

──まさにお家の中は、荒れ荒んだ状態でした。

 

「まぁ、これは酷い。……きっとここの住人さんはズボラな人たちなのね」

 

──家の中の惨状を目にしたヌカ雪姫は気合を入れると、掃除を始めました。

──ゴミを片付け、転がっていた電気回路や簡易バッテリー等、ゴミ以外の物を棚などに戻し。そして、ドレスの汚れも気にせず掃除を終えたヌカ雪姫は、次に、料理を始めました。

──お鍋がことこと、ことこと、お肉の焼けるジューシーな、そんな美味しそうな音がキッチンに響き。やがて、美味しそうなスープとステーキが出来上がりました。

 

「あーん。んー! 我ながらいい塩梅! ……ぷはーっ! 冷えたヌカ・コーラが五臓六腑に染み渡るわ! 犯罪的よ!!」

 

──自画自賛で料理を食べ終えたヌカ雪姫は、締めのキンキンに冷えたヌカ・コーラを小気味好く飲み干すと、やがて満腹感と掃除の疲れから、眠くなってきました。

──丁度、掃除の最中に家の二階に寝室を見つけていたヌカ雪姫は、寝室のベッドで眠る事にしました。

 

──こうしてヌカ雪姫が眠りについたその頃、森の奥から、ヌカ雪姫のいる家を目指して、複数の影が近づいていました。

 

 暗転、場面は、森の中を進む複数の影の正体を告げるものへと変わる。

 

「「ハンディ・ホー、ハンディ・ホー。皆で楽しく、ハンディ・ホー、ハンディ・ホー!」」

 

 聞き馴染みのある噴射音と共に、舞台袖からフワフワと照明に照らされ姿を現したのは、七体のMr.ハンディ。

 それぞれが虹を構成する色に塗装された、七人の小人ならぬ、七体のハンディだ。

 

──愉快な歌を歌いながら現れたのは、家の持ち主である七体のMr.ハンディです。

──Mr.ハンディ達は、仕事を終え、家へと帰ってきました。ところが……。

 

「やや!? これはどういう事だ!!?」

 

──Mr.ハンディ達は驚きました。

──家に帰ってみると、仕事に出かける前とは見違える程、家の中が綺麗に片付いていたからです。

 

「見て見て! 美味しそうな料理もある!」

 

──緑色の塗装を施したMr.ハンディことトビーは、キッチンの料理を発見すると、更に幸せな雰囲気を漂わせ料理を食べようとします。

 

「おめぇはロボットだから食えねぇだろうが!」

 

「あいて!」

 

──しかし、赤色の塗装を施したグラトリーに突っ込まれます。

 

「ふむ……、何だか分かりませんが、不思議な事が起こっているようですね」

 

──そんな二体を他所に、リーダー格にして黄色の塗装に聴診器をぶら下げた、ドクターと呼ばれるMr.ハンディが家の中の変化を怪しみます。

 

「どうでもいいよ、ふぁ……。僕眠いからちょっと寝てくる」

 

──スリーパーと呼ばれる橙色の、常にメインカメラが半目なMr.ハンディは、マイペースに二階の寝室へと向かっていきます。

 

「な、何だか、恥ずかしい、な」

 

「それより、綺麗になったらなったで、何だか……、は、は、ハックショィッ!!」

 

「むふー」

 

──残りの三体のMr.ハンディ。

──紅葉色の塗装を施された、七体の中で一際ぱっちりとしたメインカメラを持った、ティミディテと呼ばれるMr.ハンディはこの状況に何故か恥ずかしがり。

──青色の塗装を施した、七体の中で一際過敏なセンサーを持ったニーゼンと呼ばれるMr.ハンディは、くしゃみと共に低出力ジェットが勢いよく噴出し。

──黄緑色の塗装が施された、何処かあどけなさを醸し出す、カントナータと呼ばれるMr.ハンディは、家の中を何気なくふわふわと飛び回っている。

 

「うひーっ!?」

 

「「何だ!? 何だ!?」」

 

──こうして、Mr.ハンディ達が各々の反応を示していると、不意に、二階の寝室からスリーパーの驚く声が聞こえてきました。

──スリーパーの声に反応した残りのMr.ハンディ達は、慌てて二階の寝室へと向かいます。

 

 暗転、場面は二階の寝室に変わる。

 

「こ、これは、一体?」

 

「おいおい、こいつは誰だ!? 何で俺達のベッドで気持ちよさそうに寝てやがるんだ!」

 

「でもこの寝顔、何だか幸せそうなんだな」

 

「うぅ、知らない人、恥ずかしい」

 

「誰かは知りませんが、くしゅん! もしかしたら、家の中の状況は、くしゅん! この人のお陰なのかも」

 

「あーうー?」

 

──二階の寝室でMr.ハンディ達が目にしたのは、ベッドで気持ちよさそうに眠っているヌカ雪姫の姿でした。

──Mr.ハンディ達は、ヌカ雪姫が一体何処の誰かが分かりませんでしたが。しかし、状況から彼女が家の中を掃除し、料理まで作った犯人である事は容易に推測していました。

 

「叩き起こして、家から追い出そうぜ!」

 

「待て待てグラトリー。確かに彼女が、私達の家に勝手に侵入したのは事実だろう。しかし、彼女にも何か止むに止まれぬ事情があっての事かもしれん。ここは、本人に話を聞いてから処遇を決めても遅くはあるまい」

 

──今すぐ追い出そうとするグラトリーに対し、ドクターは、先ずはヌカ雪姫から話を聞くべきと提案します。

──ドクターの提案に、グラトリーが渋々了承した、刹那。

 

「……ん? 何?」

 

──不意に、ヌカ雪姫が目を覚ましました。

 

「……え? きゃっ!!?」

 

──そして、ヌカ雪姫は自身を見つめる二十一個のメインカメラの存在に気が付くと、体をびくつかせ、Mr.ハンディ達に何者かを尋ねました。

 

「怖がらないで、お嬢さん。私達はこの家の住人のMr.ハンディ。因みに私はドクターと言う、よろしく」

 

「わ、私は、ヌカ雪姫」

 

「ヌカ雪姫……、良い名だ。所でヌカ雪姫、君はどうして私達の家に?」

 

──ドクターとの自己紹介を終えたヌカ雪姫は、無断でMr.ハンディ達の家に侵入した事を謝ると。

──次いで、何故自分がこの家に侵入したのか、それは王妃様の魔の手から逃れる為だと、これまでの事を素直に彼らに話しました。

 

「成程、その様な事情がおありだったんですね。……では、こういうのはどうでしょう? ヌカ雪姫、貴女をこの家に住まわせてあげます。ただしその代わり、貴女にはこの家の家事全般を頼みたい。どうでしょう?」

 

──ヌカ雪姫の事情を知ったドクターは、彼女に家の家事全般を任せる代わりに、交換条件としてこの家に住んでもよいとの条件を提示します。

 

「本当ですか!? ありがとう! それじゃ、うんと頑張ります!」

 

──この条件をヌカ雪姫は快く受け入れ。

──こうしてヌカ雪姫は、Mr.ハンディ達の家で暮らす事になりました。

 

──そしてその日の夜。家の中では、ヌカ雪姫の歓迎を祝う宴が大いに盛り上がったのでした。

 

 

 

 

 暗転。

 場面は再び王妃の秘密の部屋へと切り替わる。

 

──こうして、ヌカ雪姫がMr.ハンディ達の家で幸せな日々を送り始めた矢先の事。

──王妃様が、魔法の鏡にあの質問をぶつけたのです。

 

「魔法の鏡よ鏡、世界で一番美しいのはだぁーれ?」

 

「若さと可愛さを兼ね備えた美しき女性、それは"ヌカ雪姫"でございます」

 

──王妃様は魔法の鏡からの返答に我が耳を疑いました。

──ヌカ雪姫は既に亡き者になった筈、その証拠に、部屋の片隅に置かれた木箱の中には、あの日特命を与えたプロテクトロンが、ヌカ雪姫のものと言って持って帰ってきた心臓が確かに入っていました。

 

「こ、これは、よく見ればこれは人間の心臓ではなく、モールラットの心臓じゃない!?」

 

──しかし、木箱の中の心臓を取り出しよくよく観察してみると、それは、モールラットの心臓だったのです。

──実はあの日、プロテクトロンはヌカ雪姫の死を偽装すべく、モールラットの心臓をヌカ雪姫の心臓と偽って王妃様に渡していたのです。

 

「よくも、よくもこの私を馬鹿にしてくれたわね!!」

 

──程なくして、裏切者のプロテクトロンをパワーフィストによる鉄拳制裁で処分した王妃様は、今度こそヌカ雪姫を確実に亡き者にすべく、今度は自らの手でヌカ雪姫を亡き者にすべく準備をはじめました。

 

「ふふふ、待っていなさい、ヌカ雪姫。今度こそ貴女を殺してあげるわ! おっほほほ!!」

 

 王妃の高笑いを背景音楽に暗転。

 場面は、再びヌカ雪姫とMr.ハンディ達の家へと切り替わる。

 

──仕事に出かけるMr.ハンディ達を見送るヌカ雪姫。

──すると、ドクターがヌカ雪姫に対して警告を出しました。

 

「ヌカ雪姫、忘れないでくれたまえ。私達がいない間は、誰かがドアをノックしても、決してドアを開けてはいけないよ」

 

「えぇ、分かっているわ、ドクター」

 

「なら、よろしい。では、行ってくるよ」

 

「いってらっしゃい」

 

「あーう……」

 

「ふふ、カントナータもお仕事いってらっしゃい。帰ってきたら、一杯なでなでしてあげるからね」

 

「わふ!」

 

 カントナータとか言うMr.ハンディ、あれは演技なのか、それとも素なのか。

 別れ際に別れが寂しいからか、ぐずりながらマーサの胸元にメインカメラをうずめていた。

 

──こうして、Mr.ハンディ達を見送ったヌカ雪姫は、いつものように家事に取り掛かりました。

──それから程なくした頃。家の中を掃除していると、不意に、家のドアがノックされました。

──まだMr.ハンディ達が帰ってくる時間でもなく、少し不審に思いながらも、ヌカ雪姫はドアに近づくと、どちら様かと尋ねます。

 

「ドクター? 皆もう帰ってきたの?」

 

──そして、ドアのドアスコープを覗き込み、ドアの向こうを確認すると。

──そこには、黒いローブを着込んだ、一人の老婆が立っていました。

 

「あぁ、どうか、どうかお助けを。見ての通り害のないしがない老婆です。どうか、この哀れな老婆を助けてはくれませんか。もうお腹が空いて今にも倒れそうなんじゃ」

 

──しゃがれた声で訴えかける老婆の姿を目にしたヌカ雪姫は、この老婆なら家に入れても安全だと思い、ドクターとの約束を破り、ドアを開けると、老婆を家の中へと招き入れました。

 

「おぉ、何て美しいお嬢さんなんじゃろ。こんなお嬢さんに助けていただけるなんて、儂はもう幸せ者じゃ」

 

「さぁ、どうぞ、今温かいスープをお出ししますね」

 

──そして、ヌカ雪姫はお腹を空かせていると訴えている老婆の為に、夕食の為に準備しておいた温かいスープを差し出します。

──こうして温かいスープを堪能した老婆は、ヌカ雪姫に感謝の意を示します。

 

「ありがとう美しいお嬢さん。……あぁ、でもどうしよう、儂はキャップを持っていないんじゃ……」

 

「そんな、困っている人を助けただけだから、キャップなんていらないわ」

 

「おぉ、何と素晴らしいお嬢さんじゃ。……しかし、それだと儂の気持ちが。……おぉ、そうじゃ、では、このキンキンに冷えたヌカ・コーラを代わりに差し上げましょう」

 

──そう言うと老婆は、持っていたかごバッグから、表面に水滴の付いた、見た目にも冷たそうなヌカ・コーラの瓶を一本、ヌカ雪姫に手渡しました。

 

「ありがとうお婆さん。私、ヌカ・コーラ大好きなの!」

 

「ほほほ、それはよかった。実はそれは特別なヌカ・コーラでね、一口で天にも昇る程の一品なんじゃ」

 

──老婆の言葉に、ヌカ雪姫は早速瓶の蓋を開けると、そのヌカ・コーラを一口、口にしました。

──すると、次の瞬間、ヌカ雪姫は一瞬で気を失うと、そのまま床に倒れ込んでしまったではありませんか。

 

「……ふふふふふ、おっほほほほほ!!! やった、やったわ!! 遂にヌカ雪姫を亡き者にしたのよ!!」

 

──刹那、老婆の姿がみるみると変化し、そして姿を現したのは、王妃様でした。そう、老婆の正体は王妃様が魔法で変身していたのです。

──そして、床に転がったあのヌカ・コーラは、王妃様がヌカ雪姫を亡き者にすべく作った、毒入りのヌカ・コーラだったのです。

 

──床に倒れたまま二度と起きる様子のないヌカ雪姫の姿を見て、王妃様は大満足した様子で家を後にしていきました。

 

 

 

「うわーん! ヌカ雪姫ぇ!」

 

「誰だ! 誰がこんなひどい事をしやがった!!」

 

「うぅ、悲しい、アンハッピー」

 

「うぅ、しくしく」

 

「か、悲し過ぎて、くしゅ!! くしゃみが、止まりま、せしゅん!!」

 

「あうー! うああー!」

 

「どうやらこの毒入りのヌカ・コーラを飲んだことが原因らしい。……おそらく、彼女の命を狙っていた王妃の仕業に違いない」

 

──やがて、仕事から帰ってきたMr.ハンディ達は、床に倒れたヌカ雪姫の姿を見つけ、悲しみにくれました。

──そして、悲しみを癒すかのように、Mr.ハンディ達はヌカ雪姫を家の近くに設置したガラスの柩に安置し、その悲劇を忘れないようにしました。

 

 

 さぁ、いよいよ物語も佳境に近づいてきたぞ。

 俺の出番も間近、何だか、そう思うと緊張感がまた湧き上がってきそうだ。

 

 よし、ここは手のひらにアルファベットのEという単語を三回書いて飲み込み、緊張をほぐそう。




ご愛読いただき、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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