Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第四十五話 ねんがんの通行許可証をてにいれたぞ!

 舞台に立っていた間はアドレナリンが随分と出ていたのか、宿屋のベッドに到着するや否や、俺は気絶したかのように、直ぐに深い眠りに落ちた。

 そして翌日、支度を整えて、俺達は役所に赴くと、窓口にシーキ団長から受け取った完遂証明書を提出する。

 

「は、ははは! 驚いた、よくあの老いぼれグールのショーマンから完遂証明書を貰ったな。どうやった? ん? 後ろの女二人を一晩貸したか? っと、そりゃ賄賂になるか? ははは!!」

 

 相変わらず鼻につく態度の男性スタッフの嫌みに耐えながら、俺はそろそろ通行許可証を発行するに足る貢献度ポイントが貯まっているのではと尋ねる。

 

「あー、そうだな。あんたらの累積状況は、もうあと一歩って所だな」

 

 すると、少々苦々しく、男性スタッフは現在の貢献度ポイントの状況を教えてくれる。

 よし、なら今回の依頼を手早くこなして、中心街に足を踏み入れよう。

 

 と、俺が意気込んでいると、不意に、男性スタッフが不敵な笑みを浮かべた。

 

「それじゃ、通行許可証を発行出来るか否か、それを決める大事な、今回あんたらに受けてもらう依頼だ」

 

 そして、差し出された紙に目を通して、俺は、声を漏らす。

 

「え? あの、これって……」

 

 受け取った紙には、前回同様依頼内容と思しき文言は書かれておらず、依頼場所のみが記載されていた。

 しかも、その場所というのが、何処であろう、この"役所"であったのだ。

 

「そう。今回の依頼主は、この"俺"さ!」

 

 とても素敵(不敵)な笑みを浮かべながら、男性スタッフは勝ち誇ったかのようにそう告げた。

 あぁ、そうだ、ここ何日か忙しかったから忘れていたが、今まさに男性スタッフの態度を目にして思い出した。

 中心街の連中は偏屈な奴が多いと、そして、目の前の男性スタッフは、その中でも屈指の偏屈者だと。

 

「どうした、依頼の内容を聞きたくないのか?」

 

「あ、いえ、お願いします……」

 

 くそ、油断していた、まさか役所まで依頼主側になるなんて。

 しかも依頼主は目の前の男性スタッフ、今までの彼の態度からしても、おそらく依頼の内容は相当骨の折れるものを頼んでくるのだろう。

 

 と、内心身構えている俺に、男性スタッフは依頼の内容を伝えるべく口火を切った。

 

「それじゃ、今回のあんたらにやってもらう依頼の内容だがな。まずは案内してやるから、役所の前で待ってろ、直ぐそっちに行く」

 

 刹那、男性スタッフは突然席を立つと、窓口から移動し、奥へと姿を消した。

 彼の言葉に従い、俺達も役所を出ると、役所の前で男性スタッフがやって来るのを待つ。

 

 それから程なく、センター・ゲートを通って、男性スタッフが姿を現す。

 

「よし俺の後に付いてこい」

 

 そして、言われた通り、俺達は彼の後に付いていく。

 それから歩く事数分、案内されたのは、スラム街のメインストリートに面した一角であった。

 

「よし、ここが、あんたらに今回やってもらう依頼の遂行場所さ」

 

 そう言って男性スタッフが手で指示した先にあったのは、数軒のバラック。

 しかし、その状態はとても良いとは言えず、ハッキリ言ってどれも廃墟も同然だ。

 

「このバラック達をどうするんです?」

 

「あんたらには、このボロバラック達を解体して、その後の更地に、新たにバラックを建てて欲しい。それが、今回の依頼の内容だ。あぁ、当然完成後は厳しくチェックするからな。手抜き工事や第三者の手を借りた場合は、当然ながら依頼は失格だ」

 

「はぁ!? それどういう事よ!!?」

 

 今回の依頼の内容が告げられ、いの一番にマーサが声を挙げた。

 

「あたし達だけで解体して新しく建築しろって! 一体どれだけ時間がかかると思ってるのよ!!」

 

「前にも言っただろう? 依頼の遂行に期限は設けないと、不正をせず、時間をかけて作ればいい」

 

「だからあたし達には時間がないって……」

 

「マーサ、落ち着いて」

 

「そそ、そうですよ」

 

 ナットさんとニコラスさんの二人がかりで、今にも飛び掛かってしまいそうなマーサを落ち着かせる。

 そんな様子を他所に、男性スタッフは勝ち誇った様子でさらに口火を切る。

 

「ま、無理だって言うのなら、通行許可証は諦めるんだな。はははは!!」

 

 勝ち誇ったように笑う男性スタッフ。

 だが、そんな彼に、俺は言葉をかけた、不敵な笑みを浮かべて。

 

「すいません。この依頼が遂行できれば、通行許可証を発行するに足りる基準にポイントが達するんですよね?」

 

「あぁ、そうだ。この依頼がいつ終わるかは知らねぇが、遂行できればな。っははははは!!」

 

「なら、直ぐに終わらせますね。ノアさん」

 

「うむ。では取り掛かろう」

 

「あ、アレを使うんですね!」

 

 俺の秘密兵器と言うべき存在を知るノアさんとニコラスさんも、今回の依頼でその秘密兵器が大いに役に立つのを理解し、準備に取り掛かる。

 早速俺は、ピップボーイから久々となるワークショップver.GMを出現させる。

 

「あら? これって確か、サンクチュアリで使われていた……」

 

「えぇ!? それって持ち運べるの!?」

 

「な、何だありゃ」

 

 突然出現したワークショップver.GMに驚く、ナットさん、マーサ。

 そして、困惑する男性スタッフを他所に、回収マーカーを四人に手渡していくと、解体を行うべく廃墟のバラックに設置していってもらう。

 

「何してやがるんだ、一体……」

 

 一度使った事のあるノアさんやニコラスさんはもとより。

 おそらくマーサとナットさんも、通常のワークショップを使って同じような作業をした事のあるのだろう、俺が説明するまでもなく手際よく作業を進める。

 

 こうして、数分後、廃墟となった数件のバラック全てに回収マーカーが設置される。

 

「よし、回収」

 

「な、何が起こったんだ!!? 今のは一体なんだ!!?」

 

 ピップボーイを操作し、一瞬にして数件のバラックが綺麗さっぱりなくなる。

 この光景を始めて見た男性スタッフは、もう開いた口が塞がらないかの如く驚いている。

 

 そんな男性スタッフを他所に、俺は久々となる建築を行っていく。

 と言っても、回数を全然重ねていない為、建築技術もデザインも最初の頃と殆ど変わらず。

 

 結局出来上がったのは、何処からどう見ても正方形な、豆腐建築な新築バラック達であった。

 

「相変わらずのデザインだなナカジマ」

 

「あはは……」

 

 ノアさんの採点に、俺は苦笑いを浮かべるのであった。

 

「ば、馬鹿な!? こんなことが、ありえねぇ!」

 

 と、一連の解体・建築工程を見ていた男性スタッフが、信じられないとばかりに頭を抱えながら声を挙げた。

 

「ど、どうせ見てくれだけで手抜きなんだろ! 今すぐチェックしてやる!!」

 

「えぇ、どうぞ」

 

 先ほどまでとは一転、今では逆に、勝ち誇った気分の俺は、男性スタッフに隅々まで、納得するまでチェックして下さいと促す。

 すると、男性スタッフは手前の新築バラックから順に、隅々までその状態をチェックし始めた。

 

 それから十数分後、最後の新築バラックのチェックを終えた男性スタッフが再び俺達の前に戻ってくると、悔しさを滲ませ、とても納得がいかないと言わんばかりに叫んだ。

 

「くそ! ふざけるな!! あの短時間であそこまでのものが作れるなんて! 何かの間違いだ!!」

 

「見苦しいぞ、私達はちゃんと言われた通りの物をルールを守って作った、素直に認めたらどうだ?」

 

「黙れ!! 余所者が偉そうに!! こんなの無効だ! この妙ちくりんな機械を使ったんだから、無効だ、無効!!」

 

「あら、確か説明では、違反となるのは私達申告者以外の第三者の手を借りたり、依頼主に賄賂を贈って依頼の遂行を偽装する事だって言ってたわよね。なら、ワークショップ等の道具を使う事は違反ではないのでは?」

 

「黙れ! 黙れ!!」

 

 ノアさんとナットさんの言葉に、男性スタッフは負けを認めるどころか、更に逆切れの度合いを強める。

 

「こんの、素直に負けを認めなさいよ!」

 

「おお、落ち着いて」

 

「うるせぇっ! お前ら即刻ブラックリスト入りだ! 直ぐにここから追い出してやる!!」

 

 と、その時であった。

 不意に、男性スタッフの背後から、数人の人影が近づいてくるのが目に入った。

 

「君、一体何を騒いでいるのだね?」

 

「あぁ? 誰だ? 誰だか知らねぇが、あんたにゃ関係ない話だ、すっこんでろ!」

 

「そうもいかん、何を揉めているのかは分からんが、君が関与しているという事は、私にも関係があるという事なのでね」

 

「はぁ? あんた何訳の分からん事を言って……、え?」

 

 男性スタッフは自分自身に話しかけてきた人物の顔を確かめるべく振り向いて、そして、固まった。

 センター・ゲートの門兵同様の装備を身に纏った、数人の警護に護られている一人の男性。

 

 状態の良い戦前の高級スーツを身に纏い、厳格な雰囲気を醸し出したその男性の顔を目にし、男性スタッフの顔からみるみる血の気が引いていく。

 

「あ、あああぁ、し、市長!? ニコルズ市長!!?」

 

「君は確か、役所の窓口業務を担当している者だったかな?」

 

「は、はい! そうです!! どどど、どうしてニコルズ市長がここに!?」

 

「今日は日頃世話になっているシムズ保安官へ労を労うべく、彼の事務所に赴いていたのだよ。今はその帰りだ」

 

「あぁ、そういえばそうだった。……っ! 先ほどは何て暴言を、お、お許しください!!」

 

 相手がVaultシティの最高権力者にして、自身の上司でもあるニコルズと呼ばれたVaultシティの市長であると気づくや否や。

 威勢のいい態度が一変、腰が低くなる。

 

「それよりも、君は一体彼らと何を揉めていたんだね?」

 

「そ、それはですね……」

 

 ニコルズ市長の質問に、男性スタッフは今回の事を正直に説明し始めた。

 

「ほぉ、成程」

 

 と、説明を聞いたニコルズ市長は、不意に俺達の方に近づくと、ワークショップver.GMと俺達の事を交互に目にしながら、俺達に声をかけた。

 

「これはワークショップだな。……これは、誰のものかね?」

 

「俺です」

 

「君か。……先ほどの彼の説明では、突然現れたと言っていたが?」

 

「このワークショップは少し特別なものでして、見ていてください」

 

 そして俺は、ピップボーイを操作し、ニコルズ市長の目の前でワークショップver.GMをピップボーイに収納する。

 すると、それを目にしたニコルズ市長は、あまり表情には出さずとも、目の前で起こった現象に驚き禁じ得ない様子であった。

 

「C.A.M.P.と呼ばれる、性能はワークショップの下位互換ながらも、持ち運びが可能な物がある事は知っていたが。まさか、ワークショップにこの様な持ち運び可能な物が存在していたとはな」

 

 実際はワークショップではなく、ピップボーイにヴァルヒムさんが集積回路を組み込んでくれたお陰なのだが、ここは黙っていよう。

 

「それで、君達は先ほどのワークショップを使って、あの新築バラックを建築したのだね」

 

「はい、そうです」

 

「ふむ……」

 

 そして、顎に手を当て、何かを考え始めるニコルズ市長。

 程なく、考えがまとまったのか、不意に男性スタッフの方に振り返ると口を開いた。

 

「君は彼らがルールを破ったと説明したが、私が考えるに、彼らは何らルールを破ってはいないな。ワークショップを使ってはならないという記述は、何処にもないのだから、問題ないだろう」

 

「そ、そんな!?」

 

「それと、以前より、君の窓口担当としての資質には疑念を抱いてはいたが、君の長年の勤労を鑑みて、これまで目をつぶってきた」

 

「そ、それは……」

 

「しかしながら、今回ばかりは、もう看過できん。君には、窓口担当の業務から外れてもらう。そこで、君には新しく……、あぁ、丁度清掃業務の担当者に欠員が出ていた筈だ、久々の肉体労働だが、頑張ってくれたまえ。正式な辞令は追って通達される筈だ、よろしく頼むよ」

 

「そ、そんなぁ……」

 

 ニコルズ市長に肩を叩かれながら告げられた内容を聞き、愕然とした様子の男性スタッフ。

 

「とはいえ、辞令が通達されるまでは君はまだ今回の一件を担当する担当者だ。君も市政に携わる一員であるとの自覚がまだあるのなら、最後まで責任をもって職務を全うしたまえ」

 

「は、はい……」

 

「では役所に戻り必要な物を準備したまえ。さ、君達も、必要な物を窓口で受け取るといい」

 

 こうして、落胆した様子の男性スタッフやニコルズ市長達と共に、俺達は役所へと舞い戻る。

 そして、準備の為暫し待った後、遂に待ちに待ったものを受け取る。

 

「ほらよ、あんたらの通行許可証だ」

 

 クレジットカードほどの大きさの通行許可証を受け取ると、俺は、最後に男性スタッフに声をかけた。

 

「今までお世話になりました」

 

「ふん、とっとと行きな……」

 

 こうして役所を後にすると、俺達は通行許可証を手に、センター・ゲートに足を運ぶ。

 門兵の一人に通行許可証を見せると、可動式ゲートが音を立て開いていく。

 

 程なくして、スラム街と中心街を隔てていた唯一の出入り口が開かれ、俺達は、中心街へと足を踏み入れた。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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