Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第四十八話 新たなる道標

「すみません、ニコルズ市長。そろそろ、住所の方を教えていただけないでしょうか?」

 

「あぁ、そうだったな。おーい! 来てくれ!」

 

 ニコルズ市長が声を張り誰かを呼ぶと、オフィスの扉を開け、戦前のスーツに身を包んだ一人の男性が現れる。

 

「彼に案内させるので、彼の後を付いていくといい」

 

「ありがとうございます」

 

「あぁ、それから。収集家の彼だがね、丁度君達が儀式に同行している間に帰ってきたそうだ」

 

 そして、ニコルズ市長の口から告げられた嬉しい知らせに、俺は一層の感謝の気持ちを込めて言葉を述べると、職員の男性に案内され、市役所を後にすると、中心街の街中を歩き始める。

 いよいよ待ち焦がれた人物と対面できる、探し求めていた浄水チップを手に出来るかもしれない。

 そんな期待に胸を弾ませながら、歩く事数分。

 

「ここが、収集家ピート氏の自宅です。では、私はこれで」

 

 俺達は、希望の地として名を刻む事になるかも知れない人物の自宅前にたどり着いた。

 収集家という活動故か、想像以上に自宅は大きな二階建てであった。

 

「すーはー」

 

 胸の高まりがピークを迎えたので、一旦落ち着かせるべく深い深呼吸を行い、気持ちを落ち着かせる。

 そして、ある程度気持ちが落ち着いた所で、俺は玄関扉の前に立つと、玄関扉を叩いた。

 

「ごめんくださーい!」

 

 すると、程なく、自宅の中から足音が近づいてくる。

 

「どなたかな?」

 

 そして、玄関扉が開かれ姿を現したのは、少々頬がこけた痩せ型の、白衣に眼鏡をかけた中年男性が姿を現した。

 

「すいません、収集家のピートさんでしょうか?」

 

「いかにも、私はピートだが。何の用かね?」

 

「実はピートさんに是非ともお聞きした事が……」

 

 と、浄水チップに関する話題を切り出そうとした矢先。

 

「おぉ、そうか! 分かったぞ! さぁ、上がってくれた前! おぉ、彼らは君の連れかね? なら君達もさぁ!」

 

 突然ピートさんは何かを察したように、俺達を自宅へと招き入れ始めた。

 その勢いに押され、俺達はピートさんの自宅にお邪魔すると、ピートさんは更に俺達を二階へと案内し始める。

 

「さぁ、ご覧あれ!! これが今まで私が集めたコレクションの数々を展示している、ピート・ミュージアムだ!!」

 

 そして、二階に足を運んだ俺達が目にしたのは、二階部分を全て利用した、広々とした空間に、様々なアイテムが展示台や展示棚などに整然と並べられた光景であった。

 

「では早速私自ら案内しよう! 先ずこれを見たまえ! これは戦前の国内家電大手であったジネラル・エレクトリック社が西暦二〇六七年に販売したスチームアイロンだ!」

 

 俺は収集したコレクションの鑑賞の為に尋ねたのではないと言う間も与えず、ピートさんは生き生きと自身がこれまで収集してきたアイテムを俺達に説明し続ける。

 

「次にこれだ! これは西暦二〇六〇年代にヴィムポップ社がヌカ・コーラ社に対抗すべく販売していたヴィムホップに付いていたおまけフィギュアだ! Mr.ハンディにMs.ナニー、T-45パワーアーマーやシークレットのT-51パワーアーマーまで、全種類揃っている! この細部まで作りこまれたこの造形美、素晴らしいと思わないかね!?」

 

「そ、そうですね。あのそれよりも、俺の話を……」

 

「では次はこれだ!! これは非常に珍しいだろう! そう、クアンタム・ハーモナイザーとフォトニック・レゾナンスチャンパーだ!! 驚いただろう!? 私も、まさかこの二つをこうして揃って手に出来る日が来るとは夢にも思わなかったよ!」

 

 あぁ、ダメだ、どうやら本人の気が済むまで待たないと、俺の話を聞いてもらえそうにない。

 仕方がない、ここは暫くピートさんのコレクションの鑑賞に付き合おう。

 

 それにしても、これがあの有名なクアンタム・ハーモナイザーとフォトニック・レゾナンスチャンパーなのか。

 何というか、これは、駄目だ。これは何とも形容し難い。

 

 ただ、想像していたよりもそのサイズは、すごく、大きいです。

 

「さて、君達はクアンタム・ハーモナイザーとフォトニック・レゾナンスチャンパーこそ、私のコレクションの中で最も一押しの物と思っているだろうが、そうではない。実は、今私が最も一押しとするコレクションは、こいつだ!!」

 

 そう言うと、ピートさんはピート・ミュージアムの一角、展示台に飾られ、神々しくライトアップされて展示されているアイテムを示した。

 レバーとボタンの付いた台座に、二本の支柱に先端がゴム製の二本謎のアーム、そして頭頂部にはMr.ハンディを模したデザインの物体。

 という、謎の機械が展示されていた。

 

「これは戦前、名もなき中小零細企業が生き残りをかけて開発・販売した物で、販売台数が少ない事もあり希少価値が高く、更に戦後にこれ程状態の良い物はこれ以外には見つからないであろうことから、私のコレクションの中で最も一押しとなっている! その名を"全自動たまご割りマシーン"だ!!」

 

 そして、そのアイテムの名を聞いた時、おそらく俺以外の四人も同じことを考えたであろう。

 

 これは実に、無駄に洗練された無駄の無い無駄な機械だ、と。

 

 同時に。

 この様な戦前の、今となっては使い道もへったくれもない無価値のアイテムの数々を収集し、自宅で大事に保管・展示している。

 それを人生をかけてやっているのだから、周囲から変わり者と呼ばれていても仕方がないな、とピートさんの情熱をかける方向性に内心呆れ果てるのであった。

 

「さて、私の案内はここまでだが。もし何か質問がるのなら、遠慮なく言ってくれたまえ!」

 

 その後も、暫くコレクションの鑑賞が続き。

 漸くピートさんが案内を終えた所で、俺は今回自宅を訪ねた本当の目的を切り出した。

 

「すいません。今日、俺達がピートさんの自宅を訪ねたのは、コレクションを見せてもらう為じゃないんです」

 

「なんと、では、一体何の用で私の家を訪ねたのかね?」

 

「実は、浄水チップと呼ばれる物を持っていないか、或いは浄水チップに関する何か有益な情報を知ってはいないかと尋ねる為に訪れたんです」

 

「そうだったのか、それならそうと、早く言ってくれればよかったものを」

 

 言おうとしたけれど、貴方のマシンガントークで言わせてもらえなかったんです。

 と文句を口にする事なく、話を続ける。

 

「それで、どうでしょうか?」

 

「うーむ、浄水チップ、浄水チップ……」

 

 首を傾げ浄水チップに関する記憶をたどるピートさん。

 その様子を固唾を飲んで見守っていると、やがて、思い出したかの如くピートさんが声を挙げた。

 

「思い出した。確かコレクションの中に、そんな名前のアイテムがあったな」

 

「本当ですか!!」

 

 その瞬間、俺は喜びの声を挙げた。

 やった、これでリーアは救われる、俺の浄水チップを探す旅も、同時に終わりを告げる。

 

「あの、その浄水チップ、俺に譲ってくれませんか!! 必要な分のキャップは出しますから!」

 

「君は、その口ぶりからするに随分と浄水チップを求めているようだが、どういう理由でかね? 差し支えなければ、教えてほしい」

 

 リーアの人々の命の恩人となる人だ、俺は、ピートさんに俺が浄水チップを欲している理由をリーアの事情と共に説明する。

 

「成程、そういう事か。……では、浄水チップを譲ることは出来ないな」

 

 そして、説明を聞いたピートさんの口から飛び出した言葉に、俺は凍り付いた。

 

「え……、な、何故です!?」

 

「意地悪で言っている訳ではない。私も、君の故郷の人々の事を思えば、譲りたい所ではある」

 

「なら、何故!?」

 

「だが出来ないんだ。君が探しているのは"交換用"の浄水チップ、即ち、状態の良い未使用のものだ。……だが、私の持っているのは、残念ながらあまり状態の良くない、使用済みのものだ。おそらく、交換用としては適さない品物だろう」

 

「そ……、そんな」

 

 折角、折角ゴールに手が届きそうだったと言うのに、ここまで来て、また振出しに戻される。

 今までの苦労が一瞬にして泡と消えた事実を前に、俺はその場で膝をつき、項垂れた。

 

 父さん、母さん、オネット、それにアントムにリーアの皆さん、すいません、ここまでやって来たのに、また、振出しに戻ってしまいました。

 時間は貴重だと言うのに、その貴重な時間を浪費して、本当に、本当に……。

 

 気が付けば、俺の頬を一筋の涙が伝っていた。

 

「君、諦めるのはまだ早いぞ!!」

 

「……、え?」

 

 そんな絶望に打ちひしがれる俺に声をかけたのは、誰であろうピートさんであった。

 

「私も伊達に三十年近く、アイテムを探してウェイストランド中を収集の旅で巡ってはいない。状態の良い浄水チップが残されていそうな場所の目星ならついている」

 

「ほ、本当ですか!?」

 

「あ、あぁ、本当だ」

 

「よかった、本当によかった……」

 

 そして、ピートさんの言葉に、直ぐに立ち上がると、俺はピートさんに詰め寄り。

 刹那、まだ僅かばかりの希望が残されていた事に、心の底から安堵するのであった。

 

「そ、それで、その場所というのは……」

 

 暫くして、気持ちも落ち着いた所でピートさんに目星をつけた場所の事を尋ねようとした時。

 不意に、腹の虫が鳴る。

 どうやら、感情の起伏が激しかった為に、カロリー消費が促進されてしまったようだ。

 

「おや、お腹が空いているようだね」

 

「す、すいません」

 

「いやいや、謝る事はない。そうだ、こうして出会えたのも何かの縁、どうだろう、一緒に夕食を食べないかね。場所の話も、食べながらしようじゃないか」

 

「いいんですか」

 

「勿論だ。……実を言うとね、最近一人で食事をすることが寂しく思えるようになってね。それで、どうだろうか?」

 

「喜んで!」

 

 こうして、俺達はピートさんに夕食をご馳走になりながら、目星をつけた場所の事を含めた話の続きをする事となった。

 

 因みに、ご馳走させていたただくにあたり、せめてものお返しにと、ノアさんが先ほど手に入れたマイアラークのミソをメニューに加えようと提案したのだが。

 その提案は、誤魔化しながらなんとか阻止する事に成功した。

 

 危ない所だった、危うく残された最後の希望が潰えてしまう所だった。

 

 

 

 さて、ピートさんの広い自宅の広いキッチンで、楽しく食事をしながら目星をつけた場所についての話を要約すると以下の通りとなる。

 

 その場所とは、アメリカ中西部、五大湖に面した州の一つにして北米における自動車産業発祥の州とされるミシガン州。

 その中でも、戦前のアメリカ中西部において有数の世界都市として、そして自動車の街としても名を馳せていた"デトロイト"。

 その近郊に設けられていると噂されている"コロニー"だ。

 

 そう、驚いた事に、ピートさんが目星をつけた場所は、リーアと同じコロニーの一つである、その名を"サイド7"。

 

 聞くところによると、サイド7は番号からも分かる通りリーアの後に建造が進められていたコロニーだが、核戦争勃発時点では建造途中で未完成な状態であったそうな。

 それでも、サイド7内には当時、建造に携わっていた工事関係者とその家族、更には警備の為に派遣されていた軍人などがそれなりに入居しており。

 その為、戦後も未完成な状態ながらも、入居者たちによるコミュニティが生活を続けている、との事。

 

 

 そして、何故このサイド7に未使用の浄水チップが残されているとピートさんがにらんだかと言えば。

 既に入居が行われていたので、未完成ながらも必要な設備は搬入されている事は確実で。

 しかも、核戦争勃発時点で収容人数が定数を下回っている事から、設備の消費も緩やかであると考えられるからだ。

 

 勿論、二世紀以上も経っている現在では状況は変化しているだろうが、それでも、今はこのピートさんの言葉を信じてみるしかない。

 

 

 こうして、新たなる目的地であるサイド7の情報を仕入れた俺達は、早速その為の準備に取り掛かった。

 とはいえ、今日はもう遅いので、ピートさんのご厚意に甘え。ピートさん曰く、一人暮らしでは持て余す程、という自宅の部屋を幾つか借りて一夜を過ごす事となった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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