Vaultシティを出発して二時間程が経過したか。
シカゴ外縁部を横切りながら南下し、その後はデトロイトへと続いている
進路上に放置されていた朽ち果てた自動車も、
こうして、デトロイトへの旅路は概ね順調、と思われていた。
ミシガン湖の湖畔に沿うように整備されたインターステイトの94は片道三車線の道路だ。
そして、そんな道路を、
「ヒャッハーッ!! オレ達はカッコイイッ!!」
「新鮮な車だーっ!!」
「あのビッチどもを引きずりおろせ! スゴイことしてやる!」
そんな
反対車線を、戦前は民間で広く販売され、戦後も道路などで時折廃車となった姿を見かける、丸い曲線を多用した可愛らしい見た目のトラックを独自改造した。
体当たり用にしては車体側面のみならず、運転席上部やボンネット上など明らかに意味のない箇所への設置も見られる棘や、髑髏を串刺しにした槍、更には、窓にはガラスの代わりに鉄格子が嵌められ、ボンネット等各所にロールバーや鉄板などが溶接され。
その姿は、まさに世紀末然としている。
しかし、驚くべきはその姿ではない。
そう、
そして、そんな世紀末トラックを運転しているのが、タロン社でもなければB.O.S.のような、高度な科学技術の運用を現在でも可能としている組織ではなく。
その明らかに統一性のない粗悪な装備に身を包み、下品な言葉を口々にしている連中。そう"レイダー"であるという事実だ。
まったくどうなってるんだ。
パワーアーマー程度なら、ゲームでも運用していたので、まだ運用していても不自然ではなかった。
だが、運転可能な車輛となると、違和感しか覚えられない。
いや、それとも、シカゴ・ウェイストランドのレイダーはラスト・デビル並のハイテクレイダーだったのか?
以前出会った事のあるア・カーンズの事を鑑みるに、とてもそうには思えないが。
「撃て! 男どもを殺せーっ!」
いや、そんな考察は兎に角後だ。
今は、降りかかる火の粉を払う事に意識を集中しなければ。
幸い、あの世紀末トラックには機関銃などの強力な車載火器は装備されていないが、荷台に同乗しているレイダー達の手持ちの銃器が火を噴き、
「おいユウ! 連中を何とかしてくれ! このままじゃ俺達ハチの巣になっちまう!」
「ニコラスさん! ヘビー・アサルトライフルで弾幕を張ってください!」
「わ、分かりました!」
無線機を使って荷台のニコラスさんに応戦する様に指示を出すと、刹那、荷台からM199 ヘビー・アサルトライフルの発砲音が鳴り響き始める。
それを確認すると、俺もM4カスタムを手に、運転席の天井に設けられたハッチを開いて上半身を乗り出し射線を確保すると、左側面を並走するレイダーの改造トラック目掛けて発砲を開始した。
「殺人タイムだ!!」
「じっとしてろ! 当てられねぇ!」
「はは! クソッたれ!」
しかし、静止している地面での銃撃と異なり、互いに動くトラックの上から撃ち合っているので、双方ともに命中率は極端に低下している。
それでも、何とか荷台のレイダーを一人始末する事に成功する。
「彼女を殺したな!!」
「怯むな! 銃撃継続!」
「あぁ! 腕が、撃たれた!!」
刹那、腕を撃たれて錯乱状態に陥ったレイダーの一人が、荷台からその身を投げ出した。
「ディジー! 体当たりしてくる!」
「面白れぇ! ベディーと張り合おうってか!! 臨む所だ! 全員しっかりつかまってな! 派手にぶちかますぜ!!」
刹那、風化し役目を果たせなくなった中央分離帯を突っ切り、レイダーの改造トラックが
それに負けじと、ディジーの操縦に従い、
そして、数トンもの重量を誇る巨体同士が、激しくぶつかり合い、ダイナミックな競り合いを展開させる。
その衝撃に、俺の体も激しく振り回される。
「フゥーーーッ!! イエェ!! やるじゃねぇか!!」
「黙ってろブリキ野郎!!」
「その言葉、そっくりそのまま返すわ!!」
と、運転席から銃声が木霊する。
どうやら、マーサがレイダーの改造トラックの運転手目掛けてリボルバーを発砲したようだ。
ただし、離れていくレイダーの改造トラックの運転席には、運転を続ける運転手の姿が確認できるので、どうやら外してしまったようだ。
「嬢ちゃん! 今度から近くで発砲する時は事前に一言言ってくれるか! 五月蠅くてかなわねぇ」
「あら、ごめんなさい」
こうして、鋼鉄の馬車同士の競り合いが終了すると、再び距離を取っての銃撃が再開される。
このまま決定打を欠いたまま戦うのは得策じゃない。
そう感じた俺は、ピップボーイを操作しミサイルランチャーを取り出すと、ミサイルを装填し、発射準備を整える。
「ディジー! 合図したらベディーを相手のトラックに巻き込まれないように離してくれ!」
「何!? 一体何をおっぱじめる気だ?」
「ミサイルでトラックを吹き飛ばす!」
「ヒューッ! やることが派手だねぇ。……オーケー! ユウの合図に合わせる!」
そして俺は、構えたミサイルランチャーの発射口を、レイダーの改造トラックの前輪部分に向ける。
「ディジー! 今だ!」
「オーケーッ!!」
刹那、一段とエンジンが唸りを上げた
そして、俺はミサイルランチャーのトリガーを引いた。
甲高く鋭い音と共に、白煙を上げ、ミサイル本体は吸い込まれるようにレイダーの改造トラックに飛来する。
刹那、狙い通り前輪に着弾したミサイルから解き放たれた爆発エネルギーは、凄まじい連鎖反応を巻き起こす。
そして、爆発のエネルギーにより車体前方に急ブレーキがかけられたが、後方の荷台部分は慣性の法則で前進を続けようとする。
この二つのエネルギーぶつかり、レイダーの改造トラックはその巨体をダイナミックに半回転させながら、やがて、甲高い金属音と共にその巨体を道路に叩きつける。
そして、エンジンに引火したのか。
やがて、後方から耳を劈く爆発音と共に、きのこ雲がその姿を現した。
「フゥーーーッ!! イエェ!! ユウ、やっぱあんたは最高だぜ!」
こうして、レイダーの改造トラックからの攻勢を退けた俺達は。
程なく、戦闘後の
「ディジー、ベディーの状態はどんな感じ?」
「あぁ、幸い、体当たりされた凹みや弾痕の後は残っちゃいるが、走行自体には何の問題もない。エンジンも無事だったしな」
駐車場に駐めた
幸い、戦闘での傷は対した事なかったようだ。
「それはよかった」
「って事で、いつでも出発できるぞ?」
「いや、少し休憩してから出発しようと思う」
こうして
各々が思い思いの休憩を取っている中、俺は、地元の情報に精通しているであろうディジーに、先ほど戦ったレイダーについて何か知っている事はないかと話しかけた。
「さっきの連中? あぁ、奴等は間違いなく、"デビル・ロード"の連中さ」
「デビル・ロード?」
「あぁ、って言っても、俺も本物を見たのは今回が初めてだがな。だが、奴等の情報は色々と聞いてる」
「デビル・ロードについて、知っている限りでいいから教えてくれないか?」
「いいとも」
ディジー曰く、デビル・ロードはインディアナポリスに根城を構え活動しているレイダーグループで、その規模は、中西部のレイダーの中でも一二を争う程巨大なのだとか。
また、先ほど見た通り、デビル・ロードの特徴はその規模のみならず、技術力の高さにあり。
噂では、複数のコンボイを組むに足りる程の稼働可能な車輛を保有し運用しているのだとか。
その為、タロン社シカゴ支店も、彼らには迂闊に手出しはできないとの事。
何故、レイダーが複数の車輛を運用できるまでの技術力を有しているのか。
その疑問の答えは、意外なものであった。
それは、デビル・ロードはかつてシカゴなど中西部で活動していたB.O.S.の一部が組織の解散後レイダー化し、時と共に巨大化して現在の規模にまで成長したからだという。
中西部のB.O.S.。
フォールアウトシリーズの一つであるFallout Tacticsに登場し、同ゲームの特徴でもある戦略シミュレーションにより、プレイヤーは同組織が現地採用した人間やグール、果てはスーパーミュータントやデスクロー等で部隊を編成し、ミッションをこなしていく。
確か、歴史的には二十二世紀末の出来事の筈なので、現在より約百十年程前だろうか。
後のナンバリングタイトル等では、Fallout Tacticsの結末のその後については明確な記載などはなかった筈なので、中西部のB.O.S.がこの百十年の間にどの様な歴史をたどったのかは、分からない。
ただ、ディジーの話によれば、中西部のB.O.S.はロボットとの軍団との決戦とも言うべき戦闘に挑み勝利したものの、代償にその規模をかなり縮小し。
そして最後には、残った隊員達が他の勢力に吸収されたりレイダー化して、自然解散してしまったのだという。
まぁ、設定的に事故で本来の人員の大半を失い、それでも孤立無援の中で現地調達で戦っていたのだから、組織としては危ういバランスの中にあったのは当然か。
そして、決戦でそのバランスが崩れ、自然解散に至ったのだろう。
何とも寂しい末路ではあるが、東海岸のB.O.S.以外の末路を鑑みると、こうなる運命だったのかもしれない。
そして、その一部が基となっているのなら、レイダーとはいえ高い技術力を有しているのも納得だ。
「とはいえ、連中にとっても稼働可能な車輛は一台でも貴重な筈だから、今回みたいに車輛で襲ってくる奴らと遭遇するのはそんなに多くはないと思うぜ。……と、俺がデビル・ロードに関して知ってるのはこれ位だ」
「ありがとう、とても有益な情報だったよ」
「そりゃよかった」
さて、浄水チップを探す旅で道中警戒しなくてはならない勢力が、また一つ追加された訳だが。
思えば、東に行くほどどんどん危険な度合いが上昇しているような気がする。
あれ? アパラチアって中西部じゃないよね?
この分じゃ、デトロイト周辺ってかなりのホットスポットじゃないかと思えてきた。
駄目だ、悪い方向ばかりに考えるな、大丈夫、ちゃんとその為の準備はしてきたし、頼れる仲間もいるじゃないか。
俺は二の足を踏んでしまいそうになる考えを振り払うと。
その後ディジーと、ドアにガラスを再び取り付ける事も含めて、手持ちの材料を使っての
再び移動を再開すべく、休憩の終わりを告げるのであった。
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