Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第五十三話 道での遭遇

 モニカの中古車市場を後にし、再びインターステイトの94(州間高速道路94号線)へと戻り東進を続ける事一時間。

 再び、ベディー(M54 5tトラック)の巨体が減速を始めると、程なくその動きを止めた。

 

 その理由は、道路を塞ぐようにその巨体を横たえらせている物体にあった。

 墜落の衝撃で無残に幾つかの残骸に分離したのは、かつて大空を飛び回っていたであろう鋼鉄の怪鳥。

 数機のエンジンを備え、機体全体が主翼により構成される所謂全翼機のその鋼鉄の怪鳥は、戦前、旅客機として運用されていた一機であった。

 

 ナンバリングタイトルの4においては、戦前の航空会社としてホライゾン航空とスカイレーン航空という二社が登場している。

 目の前の無残な残骸がどちらの会社のものかは分からないが、何れにせよ、目の前の機体も、ゲーム中に登場する二社所属の旅客機同様、核爆発により発生した電磁パルスの影響でこの場所に墜落したのだろう。

 

 

 と、目の前で道を塞ぐ残骸の観察を終えた所で、俺はディジーに別の道を進む事を提案する。

 ワークショップver.GMでも回収は難しそうだし、流石のベディー(M54 5tトラック)でも、この旅客機の残骸を押し退ける事は出来ないからだ。

 

 こうしてUターンすると、近くのジャンクションから北へと進む高速道路へと進入し、そのまま暫く北上を続ける。

 やがて、出口から一般道へと進路を変更すると、そのまま一般道を使い再び東進を再開する。

 

 だが、程なく。

 突然ベディー(M54 5tトラック)の巨体が激しく揺れ出す。

 直ぐに路肩に停車させると、ディジーが運転席から飛び出し、ボンネットを開くと、エンジンの状態を調べ始めた。

 

「ディジー、何か問題が?」

 

「いや、そうじゃない。これはあれだ、ベディーはいままでこれ程長く激しい運転なんてした事なかったから、興奮し過ぎてちょっとばかりバテちまったみたいだ。だが大丈夫、問題ない」

 

 運転席を降り、エンジンの状態を調べているディジーに状況を尋ねると、どうやら問題はないようだ。

 

「ただ、ちょっとばかり直すのに時間がかかるんで、その間、悪いが時間を潰しててくれるか?」

 

「分かった」

 

 しかし、問題が解決するには少しばかり時間がかかるようだ。

 なので、時間を潰すように言われたのだが、急に言われても、どうするか。

 

 道具の手入れなど、時間つぶしの方法はいろいろと思いつくが。

 流石に銃のクリーニングは屋外ではやりたくないので、となると、近くを散策して時間を潰すか。

 

 とりあえず時間を潰す方法を決めると、俺は近くの散策を始めた。

 

 どうやらこの辺りは戦前は商店が立ち並ぶ地区らしく、目に見える建物などはその殆どが商店であった。

 試しに、攻撃型カスタムガバメントを手に、その内の一軒に足を踏み入れてみる。

 どうやらこの店は、珈琲店のようだ。

 長年放置され色あせ、傷んでいるが、それでも戦前の営業していた頃の名残は各所に感じることが出来る。

 

 カウンターの奥の棚に並べられたコーヒーカップを、試しに一つ手に取ってみる。

 そして、手にしたコーヒーカップをまじまじと見つめながら、このコーヒーカップが香りと味をお客様に提供していた頃に思いを馳せた。

 

 この辺りは核戦争の影響も少なく、また戦後も今日に至るまであまり荒らされる事なく当時の姿を残している貴重な場所だ。

 この場所では戦前、休日になると少し離れた住宅街から多くの家族連れなどで賑わっていたのだろう。

 楽しそうな声の数々、溢れる笑顔、当たり前の日常が、確かにここには存在していた。

 だが、核戦争が、そんな日常を人々から奪い、世界を一変させた。

 

 そして現在、ウェイストランドと名を変えたこの世界では、生き残った人々の末裔が、新しい世界での生活を営んでいる。

 そう、リーアもまた、その内の一つだ。

 そして今まさに、リーアは俺が浄水チップを持って帰って来る事を待ち望んでいる。

 

 だからこそ、必ず未使用の浄水チップを見つけて、それをリーアに持ち帰る。

 

 と、決意を新たにした刹那。

 物音と共に気配を感じ、俺は慌てて手にしていた攻撃型カスタムガバメントの銃口を、気配のする方へと向けた。

 

「きゃ! ご、ごめんなさい、驚いちゃった?」

 

「……何だ、ナットさんでしたか」

 

 驚いた拍子に両手を上げたのは、誰であろうナットさんであった。

 正体が判明し安全だと判ると、俺はゆっくりと攻撃型カスタムガバメントの銃口を床に向けた。

 

「すいません、てっきり」

 

「いいのよ。それよりも、何か面白いものでも見つけたの?」

 

「えっと、少しばかり、戦前の雰囲気ってやつを感じていたんです」

 

「ユウって、ロマンチストだったのね。てっきりリアリストかと思ってたけど」

 

「え、俺だって、ロマンを馳せる事だってありますよ」

 

「それって、マーサのあーんな姿とか、こーんな姿とか想像しちゃうってやつ?」

 

 刹那、ナットさんの口から飛び出た例えに、俺は手にしていたコーヒーカップを落としてしまいそうになる。

 

「そそそ! そんな卑猥な事、想像なんてしてませんよ!!」

 

「別に隠さなくてもいいのよ、男の子だもんね、そんな想像の一つや二つ位するものよね」

 

「な、ナットさん、からかわないでくださいよ!」

 

「ふふ、ごめんね。でも、ユウの慌てた様子を見てたら、ちょっぴり意地悪したくなっちゃったの」

 

 こうして、小悪魔な笑みを浮かべるナットさんに少しばかり弄ばれた俺は、コーヒーカップを棚に戻すと、話題を変えるべくナットさんの別の話題を振る。

 

「所で、ナットさんは何か面白いものを見つけたんですか?」

 

「そうそう、ユウ、ちょっと付いてきて」

 

 すると、どうやらナットさんの方は何か面白いものを見つけらたしく、その場所に俺を案内し始めた。

 ナットさんの後に付いて歩いていくと、俺の入った珈琲店から数分の所にある商店に辿り着いた。

 

 どうやら店の屋根に飾られたドーナツ状の看板からして、ここはドーナツ屋のようだ。

 

「こっちよ」

 

 と、手招きして、そんなドーナツ屋の裏手に案内するナットさん。

 ナットさんの後に続き店の裏手に回ると、そこには、目を疑う光景が広がっていた。

 

「な、ナットさん、これって……」

 

「えぇ、凄いでしょ」

 

 正面から見た限りでは、戦前の姿を保っていると思っていたが。

 裏手に回ると、円盤状の物体が、店の壁をぶち壊し、店内を滅茶苦茶にしてしまうように店に突っ込んでいた。

 

 ベアメタルに輝く、店に突っ込んだ円盤状の物体は、戦前の航空機、と言うよりも人類が作り出すものとは造詣が明らかに異なり。

 航空力学等、人類の科学では説明のつかない機体の形状にエンジン等、もはやこれは未確認飛行物体(UFO)と呼んで差し支えない。

 

「この造詣、とてもウェイストランド、いや、戦前どころか、おそらく人類が作り出したものではないわね!」

 

 興奮気味に、早速ペンとメモ帳を手に、目の前の未確認飛行物体(UFO)をスケッチするナットさん。

 

「これはきっとアレね、二十年程前にマーサの両親が遭遇した事があると言ってた、高度な知性と技術を有する地球外生命体の乗り物に違いないわ!」

 

 と、どうやらマーサのご両親はUFOイベントに遭遇した事があるようだ。

 

「ねぇユウ、ユウはこの宇宙には、私達以外に知性を持った生命体が他にも沢山いると思う?」

 

「うーん、俺としては、多分いると思いますよ」

 

「その方がロマンがあるから?」

 

「まぁ、そうですね」

 

 言葉を濁して返事を返したが、この世界の基となっているフォールアウトシリーズでは、エイリアン関連のイベント等はもはや伝統だ。

 特に3のダウンロードコンテンツでは、Vault101のアイツが母艦内で大暴れして撃沈までしてしまう程だ。

 

 だから、この世界にも、高度な知性と技術を有する地球外生命は沢山存在するであろう事は間違いないだろう。

 

 それに、そんなエイリアンたちが宗教的・軍事的な連合体を組織していなければ、ゲーム内でも殆どフレーバーという位置づけの彼らにそこまで怯える事はないだろう。

 だが仮に、エイリアンたちが連合体として地球に押し寄せてくることがあれば、その場合彼らの相手をするのは、たやすいことではない、だろう。

 

 と、ロマンに思いを馳せていると、スケッチを終えたナットさんが、未確認飛行物体(UFO)に近づき捜索し始める。

 

「な、ナットさん、不用意に近づくのは危ないですよ!」

 

「大丈夫よ」

 

 心配する俺を他所に、程なく、ナットさんは何かを発見したようだ。

 

「ねぇユウ、これって、何かしら?」

 

 発見した物を手に取って見せてくれるナットさん。

 ナットさんが手に取ったそれは、一見すると玩具の銃に見えなくもないが、それは間違いなく、未確認飛行物体(UFO)の持ち主であるエイリアンが使う、エイリアンブラスターと言う名の武器であった。

 

「それってもしかして、地球外生命体の武器なんじゃないですか」

 

 とはいえ、はっきりと断言してしまうと怪しまれかねないので、それとなくそれが武器である事をナットさんに伝える。

 

「成程! そう言われれば武器に見えなくもないわね! それじゃ、この近くに落ちていた光るコレは、この武器の弾薬って所かしら?」

 

 すると、エイリアンブラスターの近くに落ちていた、専用エネルギーカートリッジと言うべきエイリアンブラスター・ラウンドを手に取るナットさん。

 どうやら、弾薬となるエイリアンブラスター・ラウンドは幾つか落ちていた様だ。

 

 程なく、落ちていたエイリアンブラスター・ラウンドを回収し終えたナットさんは、先に拾ったエイリアンブラスターと共に、それらを俺に差し出してきた。

 

「え? ですけど、これはナットさんが見つけたものですし……」

 

「私には愛用の10mm拳銃があるし、それに、こうしたロマンあふれる逸品は、ロマンを理解している人が使うべきだと思うからね」

 

「ありがとうございます」

 

 こうして、エイリアンブラスターとエイリアンブラスター・ラウンドを手に入れた俺は、内から溢れる嬉しさを隠しながら、ピップボーイに収納していく。

 シリーズによっては最高クラスの威力を有する武器だが、如何せん専用弾薬と言うネックがある為、使用する場面は選ぶ事になるだろう。

 

「そうだ、もう一つ見つけたんだけど、これもユウに渡しておくわ」

 

 そう言うと、ナットさんは俺に銀色の小さな筒状の物を手渡してきた。

 エイリアンブラスター・ラウンドとも異なる謎の筒状の物、特にボタンらしきものも見当たらず、用途は全くもって不明だ。

 

 しかし、一応これもピップボーイに収納するのであった。

 

「さて、他に気になる物は落ちてなかったし、そろそろベディーの所に戻りましょうか」

 

「そうですね」

 

 どうやら未確認飛行物体(UFO)付近には、先ほど手に入れた物以外、エイリアンの死体などは見当たらなかったようだ。

 遠い宇宙からやって来た地球外生命体、の痕跡との遭遇を終えた俺とナットさんは、ベディー(M54 5tトラック)のもとへと戻る。

 

 すると、丁度問題も解決した所らしく、全員揃ったので、再びベディー(M54 5tトラック)に乗り込み、移動を再開するのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
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