一般道を使っての移動を再開して数分。
突如、金属と金属がぶつかり合う甲高い音と共に、
それが銃撃されたと瞬時に判断すると、急停車と共に運転席の天井ハッチから顔をのぞかせ、発砲地点を探し始める。
「あそこだ! あの自動車の影だ!」
刹那、無線機からノアさんが発砲地点を突き止めたようで、その場所を知らせてくれる。
知らせてくれた場所に視線を移すと、そこには朽ち果てた自動車の影から幾つもの発砲炎が煌めくと共に、数人の人影が蠢いていた。
場所を特定したので反撃開始、と思った矢先、不意に、攻撃してくる謎の人々の声が銃声と風に乗って俺の耳に運ばれてくる。
「死ね! デビル・ロードども! ここは俺達の街だぞ!」
「出て行け! 出て行けデビル・ロード!」
彼らの言葉をよく聞くと、どうやら彼らは俺達の事をデビル・ロードと勘違いしている様だ。
「待ってください! 我々はデビル・ロードではありません!!」
なので、俺は出来得る限り声を張り、自分達がデビル・ロードではない事を告げる。
だが、相変わらず発砲は止まる事はない。
駄目なのか。
と、思った刹那。
「射撃中止! 射撃中止!!」
不意に聞こえてきたのは、射撃の中止を命令する男性の声であった。
そして、程なく銃声が止み、再び静寂が訪れる。
と、自動車の影から、パイプ系銃器を手に、ヘビー・レザーアーマーに身を包んだ、口周りの擾々たる髭に反して頭頂部がウェイストランドな男性が近づいてきた。
「あんた達、本当にデビル・ロードじゃないのか!?」
「そうです、俺達はデビル・ロードなんてレイダー集団の一員じゃありません!」
「どうやら、その様だな。幾らデビル・ロードでも、荷台のパワーアーマーは持っていない筈だ」
男性は、俺達の装いや荷台のノアさんの姿を確認して、誤解を解いてくれたようだ。
「すまなかった、本当に。見慣れないトラックだったんで、てっきりデビル・ロードの連中かと思っちまった。最近も、連中の名をかたるレイダーどもの襲撃があったんで、ピリピリしてたんだ」
「いえ、無用な血が流れずに誤解が解けたようで何よりです」
「そう言ってくれると嬉しいよ。それと、これは迷惑料だ、受け取ってくれ」
運転席を降り、男性と対面すると、男性は迷惑料として幾分かのキャップを手渡してきた。
付き返すのは折角の気持ちを無下にすると思い、有難く受け取る。
そして、迷惑料を受け取った所で、話を続ける。
「所で、貴方方は?」
「俺達はポットマズーって街の自警団で、俺は自警団長のデルバートだ」
「俺はユウ・ナカジマと申します。仲間と共に傭兵業を営んでます」
自己紹介と共に握手を交わした所で、俺はポットマズーと呼ばれる街について尋ねる。
「ポットマズーってのはこの道の先にある街で、この辺りで活動しているキャラバン達の拠点になってる」
デルバートさんが指し示したのは、先ほどデルバートさん達が身を隠していた朽ち果てた自動車がバリケードのように立ち並ぶ道路の先であった。
しかも、どうやら街はキャラバン達の拠点となっている様で、キャピタル・ウェイストランドにあるカンタベリー・コモンズのような街なのだろうか。
デルバートさんの話を聞いて、俺はポットマズーという街に興味を持ち始めた。
「どころで、さっき君は傭兵と言ったな?」
「はい、そうですけど」
「なら、是非とも街に立ち寄ってほしい」
すると、何とデルバートさんの口から、理由付けに最適な言葉が漏れ始める。
「どうしてです?」
「実は、街は今、ちょっとした問題を抱えていてな。そして君なら、その問題を解決できるだけの力を持っていると判断したからだ」
「仲間と相談しても?」
「あぁ、構わない」
一旦返事を保留にして、俺は他の面々にデルバートさんの頼みの件を含め、ポットマズーに立ち寄るか否かを相談する。
すると、全員漏れなく立ち寄る事に賛成のようだ。
特にディジーは、自警団に誤って撃たれた
確かに、街中なら、安全は確保されているだろう。
「お待たせしました」
「それで、返事は?」
「はい、俺達でお力になれるのなら」
「それはよかった! では、案内しよう」
こうして俺達は、デルバートさん達自警団に案内され、ポットマズーと呼ばれる街に進路を変更するのであった。
道路を進み、目の前に姿を現したのは廃材などで作られた防壁。
両脇の建物から道路を完全に遮断する様に設けられた防壁だが、よく見れば、所々破損が目立つ。
修理が追い付いていないのだろうか。
そんな防壁に設けられた門柱で区切られた門。
デルバートさんが声をかけると、門番の自警団員の合図と共に、門が音を立てて開く。
門を通って目にしたのは、戦前の建物を再利用し、或いはお手製のバラックを整備したりと。
ノース・レイク・サンズ以上、Vaultシティ未満、のような街中の光景であった。
そんな光景を暫し眺めつつ、
「ようこそポットマズーへ」
「賑やかな街ですね」
「この辺りは戦前の建物が崩れる事無く残ってるお陰でデビル・ロード自慢の自動車も下手に暴れられないし、おまけに、この辺りじゃ数少ない壁に囲まれた街だからな、安全を求めて多くの人がやって来てる。まぁその分、お呼びじゃない奴らもやって来るがな。……そして、ここが街の中心地だ。で、あのポール看板が、街の由来の一つとなったティーポットさ」
デルバートさんに少しばかり案内されて、街の中心地へと足を運んだ俺達。
元は十字路として、今では街のメインストリートが交差する中心地となった場所には、デルバートさんの言う通り、ティーポットの形をしたポール看板が立てられていた。
どうやら、食堂として再利用される以前は、紅茶の専門店であったようだ。
そんな戦前の名残を感じつつ、俺は、案内を終えたデルバートさんに、この街が抱える問題の詳細を尋ねる。
「あぁ、その事については俺よりも市長の方が詳しいから、市長に会って直接聞くといい」
「では、市長の所に案内してくれますか?」
「いいとも」
「それじゃ、俺と……」
「なら、マーサと二人で行ってきて、私達はディジーの手伝いをしながらベディーの所で待ってるから」
「そうだな、それがいいだろう。後は、若い二人にまかせよう」
市長に会いに行く組と、ディジーが
ナットさんによって強引に組み分けされてしまった。
にしてもノアさん、その台詞は絶対に使い方を間違っていると思いますよ。
という訳で、俺とマーサでポットマズーの市長に面会しに行く事となった。
デルバートさんに案内され足を運んだのは、戦前に役所として使用され、現在も役所として再び利用されている一階建ての重厚な建物であった。
「あー、その件は把握してる。だが今は他に優先すべき案件が沢山あるんだ、そっちの件はまだしばらく時間がかかる」
役所で働く職員とも顔馴染みのデルバートさんの後に続き、奥のオフィスに足を踏み入れると。
そこには、戦前のスーツを着込み執務机でペンを片手に、書類と数人の職員の相手をしている壮年の男性の姿があった。
「分かったらさっさと自分のデスクに……、あぁ、何だ、誰かと思えばデルバートか」
「スチュアート市長、どうも」
どうやら、忙しそうに職務に邁進している壮年の男性こそ、ポットマズーの市長のようだ。
「君達は戻りたまえ。……それで、デルバート。後ろの二人は誰だ? 見慣れない格好をしているが?」
「二人は旅の傭兵でして、驚くことに、稼働可能なトラックを運用しているんです」
オフィスの人払いが完了すると、デルバートさんは俺達の事を市長に紹介する。
すると、俺達が
「成程。デルバート、君が彼らを私に紹介した理由が分かったよ。確かに、トラックを運用できるほどの傭兵なら、この街が抱えている問題の解決に大変役立ってくれる事だろう」
そして、何やら勝手に話が進んでいると感じながらも、事の成り行きを見守っていると。
不意に、スチュアート市長が俺達の名前を尋ねてきた。
「ユウ・ナカジマと申します」
「マーサ・ヒコックよ」
「私はジェイムス・スチュアート。既に知っての通り、このポットマズーの市長をしている」
そして、自己紹介を終えると、スチュアート市長が早速本題を切り出し始める。
「下らん前置きは君達も望んではいないだろうから、単刀直入に言おう。この街が抱えている問題を解決するために手を貸してほしい、勿論、相応の謝礼は支払おう」
「謝礼と言うのは、具体的にはどれ程のものでしょうか?」
「そうだな……。三百キャップでどうだろうか?」
うーむ。
この街が抱えている問題がどれ程のものかまだ分からないので、この額が妥当かどうか、悩ましい所だ。
一応、手持ちのキャップはまだまだ余裕があるものの、やはり今後急な出費を強いる事態も想定すると、稼げるときに出来る限り稼いでおきたい。
「それだけですか? ポットマズーを愛し、ポットマズーの発展の為にも、今後問題を解決するために頭を悩ませずに済むという事を考えれば、もう少しお出しするのが筋というものではないでしょうか?」
なので、即決せずに少し吹っ掛けてみる事に。
「分かった、分かった。では、キャップの増額は出来ないがその代わりに、この街を拠点としているキャラバン達に言って、君が利用する際は特別割引を適用してもらうように頼んでおく」
「割引の適用期限は?」
「勿論、君が死ぬまで適用だ」
すると、渋々ながら、スチュアート市長の口から実に素晴らしい上乗せが提案される。
こうして素晴らしい条件が提示された所で、その条件で問題解決に協力する事を了承する。
「若いのに大したものだよ全く……。だが、その分しっかりと成果は出してもらうぞ」
「分かっています。それで、問題と言うのは具体的にはどんな内容なんです?」
「君も見ただろうが、この街は防壁に覆われ外界の脅威から守られている。故に、防壁の内側は安全なのだが……。如何せん、最近はデビル・ロードと呼ばれるハイテクレイダーや凶暴な野生生物等、防壁が一枚では不安な情勢だ。それに、肝心の防壁が度重なる外敵からの襲撃で防壁はあちこちに破損が目立ち始めている。だが、修理が追い付いていないのが現状だ。そこで、トラックを運用できるほどの技術力を有している君ならば、防壁の修繕を行う事など、容易い事、なのではないかね?」
やっぱり防壁の修理は追い付いていなかったんだな。
確かに、ワークショップver.GMを使えば防壁の修理等造作もない事だが、それでは、また時間が経てば同じ問題がぶり返してしまうだろう。
ならば、ここは根本的に問題を解決すべく、防壁の更なる強化を含め、街の防衛能力の再整備にまで手を付けた方が良いのではないだろうか。
「スチュアート市長、でしたらこの際、防壁の修理を含め街の防衛能力の再整備を行いませんか?」
「何!? 君はそこまで出来るというのかね!?」
「はい」
「そこまで大規模な再整備は考えてはいなかったが……。出来るというのなら、是非ともお願いしたい!」
なのでスチュアート市長に提案してみると、スチュアート市長もこの提案に賛成の意向を示してくれた。
「そうだ! そこまで大規模な再整備を行えるというのならば、是非とも住居の整備なども行ってはくれないだろうか!? ポットマズーはこの辺りでも安全が担保されている数少ない集落なのだが、故に、入植希望者が多く、最近では、彼らの為の住居などの整備が追い付かないのが現状なのだ。だから頼む、そんな彼らの為の住居の整備も是非頼みたい!」
自分の提案が切っ掛けとは言え、何だか話がどんどん大ごとになっていってしまった。
いつの間にか、依頼の内容がポットマズーの大規模な再開発となっている。
でもま、ポットマズーの人々の笑顔の為、何より乗り掛かった舟だ、最後まで責任をもって成し遂げるとしよう。
それにしても、拠点の再開発か、4で時間を忘れて拠点を開発していた記憶が蘇るな。
ふふふ、一つの街を俺色に染め上げる、素晴らしいな……。
「あぁ、整備の方法や内容などは君に一任するよ、必要なら自警団や市民に協力を頼んでくれても構わん。では、よろしく頼む!」
スチュアート市長の口から何とも有難いお言葉を賜った事だし。
これはもう、今まで磨いてきた技術とセンスを総動員して、素晴らしい街に再開発しなければ。
「分かりました! お任せください、スチュアート市長!!」
こうしてやる気十分となった俺は、早速役所を後にすると、他の四人と合流すべく
その道中、今回の依頼に対して急にやる気になった事を不思議がっていたマーサが、その理由を尋ねてきたので。
「だって再開発って浪漫でしょ!」
と答えたのだが、マーサには、どうやら理解してもらえなかった様だ。
暫しの間、彼女は唖然としていた。
先ずは再開発に協力してもらうべく、自警団や市民の方々に協力をお願いし、協力を申し出てくれた方々から参考となる意見などを聞いていく。
こうして集まった意見を参考に、大まかな再開発の設計図を頭の中で組み立てると、ワークショップver.GMを出現させ、再開発に取り掛かる。
先ずは、防壁の修理と共に、一枚では不安と感じ始めていた街を囲う防壁の強化だ。
破損個所の修理を手早く終えると、Vaultシティを参考に、流石にコンクリートは足りないので、金属の壁をメインとして、二重壁となるように既存の壁を囲う様に作っていく。
勿論、それで終わりではなく。
防壁の内側から安全に監視作業を行えるように、木製の監視塔を各所に作った他。
監視塔には夜間でも監視し易いようにスポットライトも完備。
更に正面の出入り口、及び警備が手薄となる箇所には、防壁の上部に"パイプタレット"と呼ばれる、三脚の上部にセンサーやパイプ系銃器、それに弾倉を取り付けたものを配置していく。
このパイプタレットなら、自警団の主装備であるパイプ系銃器と弾薬の相互性を持っている為、利便性は高い。
更に更に、襲撃などに備え、土嚢と木材で作った簡易トーチカも設置した他。
ノアさんに手伝ってもらい、資材調達の途中付近で見つけた、廃車となっていた大型トラックの箱型荷台をチェーンソードで通行可能なように改造すると。
それに新たに開閉式のドアを取り付け、従来の門の脇に設置する。
そう、これは人が行き来する為の通用口として利用してもらう為に設置したものだ。
従来の門と異なり、人間の通行の為だけに大掛かりな開閉作業も必要なくなるため、警備の負担も大分軽減される筈だ。
そして、通用口や従来の門共に、脇に設けたインターフォンで壁の内側とやり取り可能な為、先程の俺達が入ってきた時のように大声で防壁の内側の者に向かって開けてもらうように要請する必要もなくなった。
最後に、タレットの可動の必要不可欠な動力源となる中型発電機の設置し、電力を伝達する為の電線を敷設。
そして、タレットの制御を行うコントロールルームを防壁の内側に作り、襲撃を知らせるサイレンを設置した所で、防壁の再整備は完了となった。
さて、防壁の再開発が終われば、今度は内側の居住環境の再開発に着手だ。
先ずは、壁と屋根のある住居の建築だ。
しかし、防壁で囲まれている為、新規に住宅を建築し過ぎると必要な空間も埋もれてしまう。
そこで、集合住宅を建築し、新規の建築数を最低限に、必要な居住空間の確保する事にした。
再開発予定地を整地すると、土台を作り、マンションの様な三階建ての建物を建築する。
こうして完成したのは、デザイナーズマンションとは程遠い、木と鉄でできた見事な豆腐、或いはキューブなマンションであった。
因みに内装は、キッチンやトイレ等水回りは備わっていないが、パイプ式のシングルベッドや椅子にテーブル、夜でも明るい電球照明等、必要最低限のものは備わっている。
ま、まぁあれだ。
この世界じゃ、前世と違って壁と屋根があり、雨風弾丸を凌げる建物なら素晴らしい建物と評価する人が多いから、外観の優劣なんて関係ないよね。
と、相変わらずのデザインを正当化させるかの様な言い訳を脳内で垂れ流した所で、更に同じマンションをもう二棟建築する。
そして最後に、必要な電力を確保する為、騒音対策の為少し離れた場所に大型発電機を設置して電線を敷けばマンション建築は終了。
こうしてマンションの建築を終えると。
今度は共同トイレや共同浴場などの、水回り施設を建築していく。
水回りに必要不可欠な水は、どうやら街中には戦前の治水事業で整備された川が流れているようなので、そこで街の東側、戦前は公園として利用されていた場所に浄水器を設置して水道管を敷設する事とした。
さて、これにて住居関連の建築作業は終了したが、居住環境の再開発はこれで終わらない。
例え住居を確保できても、必要な食料が無ければ生きてはいけない。
という事で、旧公園跡地の農園を、文字通りの作物プラントに昇華させた。
この他にも、夜間の外出時に役立つ外灯の整備や、共同の資材保管所の建築等々。
細かなものを経て、依頼された街の再開発は完成を見たのであった。
因みに、気付けばこの再開発に五日もの日数を費やしてしまっていた。
いかん、どうやら思っていた以上に、俺自身拠点の再開発に熱中してしまっていたみたいだ。
本来の目的を忘れて拠点の再開発に熱中してしまうとは、反省しなければ。
でも、やっぱり建築は楽しい。
ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。