Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第五十五話 ジャンキーマァァァァーンッ!!

 流石に五日もかけて大々的な再開発を行ったものだから、再開発以前よりも街の様子はかなり様変わりしてしまった。

 その為、俺の案内がてら街を隅々まで視察したスチュアート市長も、あまりの変貌ぶりに最初は声が出なかったが。

 やがて、視察を終えて中心地へと戻ってくると、思い出したかのように感想を述べ始める。

 

「す、素晴らしいよ! 本当に、ありがとう!!」

 

「ご満足していただけたようで何よりです」

 

 ここまで満足してくれると、俺としても頑張って再開発をした甲斐があるというものだ。

 

「新しい入植希望者達の為の集合住宅や作物プランのお陰で新しい入植希望者を受け入れてもまだ十分な余裕は残っているし、強化された防衛能力のお陰で安心感も格段に向上し、君の再開発はこの街の更なる発展に大いに貢献してくれるよ! 本当にありがとう!」

 

 スチュアート市長の口から漏れる称賛の嵐。

 何だかここまで称賛されると逆にむず痒くなるな。

 

 とはいえ、再開発した防衛能力の有用性を検証してくれるかの如く、マンションの建築中にちょっとしたレイダーの集団が街を襲ってきたのだが。

 彼らはパイプタレットの弾幕を前に、当初の威勢を悲鳴に変えながらその多くが、彼らの言う血肉の塊と成り果てた。

 

 衣食住が整備され、外敵からの対策もかなり高い。

 確かにスチュアート市長の言う通り、ウェイストランドでも有数の安心が担保されるようになったポットマズーは、今後さらに発展していくのだろう。

 そして、そんな発展に貢献できたと思うと、喜ばしく思う。

 

「あの、スチュアート市長。新しくなったポットマズーの門出を祝ってパーティーでも行いませんか?」

 

「あ、それいいわね!」

 

「ほぉ、それは名案だな」

 

 折角の機会にと、俺はスチュアート市長にポットマズーの新たな門出を祝うパーティーの開催を提案する。

 するとその提案に、マーサやノアさんも賛同の意を示す。

 

「でもあまり凝ったものでは手間でしょうから、例えば"ヌカ・コーラ"で乾杯する程度なんてどうでしょうか」

 

「でも、"ヌカ・コーラ"だけじゃちょっと寂し過ぎない? せめてつまみ位は欲しいわね」

 

「わ、私もそう思います」

 

 俺が提示したパーティーの具体的な内容に、ナットさんが修正案を出し、ニコラスさんがナットさんの案に同意を示す。

 こうして俺達がパーティーの内容について盛り上がっていると、不意に、スチュアート市長が慌てた様子で待ったを掛けた。

 

「き、君達! 出来れば、街の中で"コーラ"の話は控えてくれないか!」

 

 もしかしてパーティーは余計なお節介だったかと思ったが。

 どうやら注意したいのはパーティーではなく、度々出てきたヌカ・コーラの事についてのようだ。

 

「え? どうしてよ。ただの飲み物の話じゃない?」

 

「そうなのだが、兎に角控えてほしい。実はこの件はまだ君達には伝えていない街が抱える問題の一つなのだ」

 

 マーサのもっともな意見に対して、スチュアート市長は周囲を見回しながら答える。

 どうやら、ヌカ・コーラが街の抱えている問題らしいのだが、一体どういう事なのだろうか。

 

 スチュアート市長の態度からして、ある程度深刻そうな問題らしいが、ヌカ・コーラが街にどうやって災厄を齎しているのか、全く想像が出来ない。

 

 と、内心困惑していると、ふと、何処かから音楽らしきものが流れている事に気が付く。

 それは、気付いた時には遠くから流れているのか小さかったのだが、だんだんと、音が大きくはっきりと、発生源が近づいている事に気が付く。

 

「あぁ、しまった、遅かった……」

 

 すると、スチュアート市長も謎の音楽に気が付いたのだが。

 どうやらスチュアート市長は謎の音楽の正体を知っているのか、頭を抱え始める。

 

「あの、スチュアート市長。この音楽はいっ──」

 

 と、他の面々も謎の音楽に困惑する中、俺がスチュアート市長に謎の音楽の正体を尋ねようとした、その矢先。

 

「迷える子羊を救うべく、キャプテン・ポップマン、只今けんざぁぁぁぁぁっん!!!」

 

 大音量で流れる謎の音楽と共に、Vのアルファベットを彷彿とさせるデザインの仮面を付け、海賊を彷彿とさせる衣装に身を包んだ、キャプテン・ポップマンなる謎の男性が決めポーズと共に俺達の前に颯爽と姿を現した。

 

「え……」

 

「あ、あれは! まさか、キャプテン・パワーマンのコミック第13巻巻末のコラボ漫画に登場した……」

 

「知っているのか、ニコラス!?」

 

「はい」

 

 唖然とする俺を他所に、ニコラスさんはキャプテン・ポップマンなる謎の人物について知っている様で。

 ノアさんと何処かで見た事のある様なやり取りを終えると、キャプテン・ポップマンの説明を始めた。

 

 曰く、キャプテン・ポップマンとは、ヴィムポップ社が自社の炭酸飲料の販売促進の為に世に送り出したマスコットキャラクターで。

 男性のキャプテン・ポップマンの他、第二次大戦時の飛行服を模した衣装のヴィム・ガールなる女性キャラクターもいたそうだ。

 因みに、キャプテンつながりでキャプテン・パワーマンの原作漫画にも"一度だけ"コラボした事があるそうな。

 

 そんなキャプテン・ポップマンになりきっている、おそらくニコラスさんと同じ類の男性は、爽やかな笑顔と共に白い歯を見せつけながら、話を始めた。

 

「君達! ヴィムはいいぞぉ、最高だ! 飲むと母なる海を感じられるぞ!!」

 

「は、はぁ……」

 

「さぁ、僕と一緒にレッツイン! 因みに僕は、一日"五リットル"も飲んでいるよ!!」

 

 どうやらキャプテン・ポップマンは、先ほど俺達がヌカ・コーラの話をしていたので、大好きなヴィムホップ社製の炭酸飲料ことヴィムを勧めたいようだ。

 成程、これがスチュアート市長の言っていた問題か、確かにこれは、精神的な面で凄く問題だな。

 

 と、漸く問題の本質を理解したと思った刹那。

 

「ちょっと待ちなさーーーーいっ!!」

 

 突如女性の声が鳴り響いたかと思えば、ヌカ・ガールのロケットスーツを着込んだ金髪女性が何処かから現れた。

 

「ヌカ・コーラを愛す者に邪なものを吹き込まないでくれる!?」

 

 そして、状況の理解が追い付かず唖然とする俺達を他所に、彼女はキャプテン・ポップマンと口論を始めた。

 どうやら同業他社の商品を愛する者同士、この二人は仲が悪いようだ。

 

「大体ヴィムって 放射性物質もろくに入っていないような"ただ色が付いただけの砂糖水"でしょ、あんなの何処が美味しいのかしら!? 核と一緒に吹き飛んじゃえばよかったのに」

 

「は! 放射性物質入りのお陰で脳みそが吹き飛んじまったヌカ野郎になんて、このヴィムの素晴らしさを理解してほしくないね!」

 

「言うじゃない! それと私は野郎じゃないわよ!! そもそも、あんた、"たったの"五リットル程度で熱狂的なファンを名乗ってんじゃないわよ! 熱狂的なファンを名乗りたかったら、私みたいに毎日"十リットル"は飲みなさいよ!」

 

「馬鹿言うな! ヴィムはヌカ・コーラの一・五倍のエネルギーがあるんだよ! だから五リットル×一・五倍で……、ん? 幾らだ?」

 

「七・五です」

 

 計算に困っているキャプテン・ポップマンに救いの手を差し伸べる俺。

 すると、キャプテン・ポップマンはもやもやが解けてスッキリしたが、刹那、十リットルに届いていない事に気づき愕然と肩を落とした。

 

「そうそう、ってうぉぉぉっ!!?」

 

「バーカ、バーカ、結局負けてるじゃない!! そもそもその程度の計算が出来ないんじゃ、ファン名乗る資格なんてあーりませーんっ!」

 

「うぎぎぎぎっ」

 

 何だろう、この何処か子供の喧嘩を彷彿とさせる口論は、聞いてるこっちが疲れてくる。

 そもそも五リットルだろうが十リットルだろうが、そんな量を毎日飲んでいる時点でもうどっちもどっちだ。

 

「あぁ、何だか疲れた……」

 

「「大丈夫? ヌカ・コーラ(ヴィム)飲む?」」

 

 息ピッタリに勧めてくる姿を目にして、本当は二人とも凄く仲がいいんじゃないのかと、そんな気さえしてきた。

 

 

 その後も低レベルな口論を暫し続け、程なく二人はお互いの住居へと引き上げていった。

 

 そして、嵐が過ぎ去った後の如く訪れた静寂を突き破るように、俺は先ほどの二人についてスチュアート市長に尋ねる。

 

「さて、君達も直接会って分かったと思うが、あの二人が、我が街の抱えている問題の原因となる二人だ。まぁ、物理的に言えば被害は殆どないが、精神的には、な……」

 

 スチュアート市長曰く、ヴィムの熱狂的ファンことキャプテン・ポップマン。本名、ヘンリー・キッド。

 そして、ヌカ・コーラの熱狂的ファンことヌカ・ガール。本名、マーガレット・ライド。

 

 この二人は、お互いライバル企業同士の炭酸飲料をこよなく愛する、まさにジャンキーと呼ぶに相応しい程の愛好家。

 無論、ただの愛好家ならば何の問題もないのだが。二人は互いに愛して止まないヴィムとヌカ・コーラの素晴らしさを広めるべく、勧誘活動に勤しんでいるのだ。

 それも、お互いに勧誘度合いを競い合うかのようにして。

 

 この為、街中でコーラのコの字が飛び出ようものなら、先程のようにすぐさま二人が駆け付け、自分達の側に引き込もうと勧誘合戦を繰り広げる。

 まさに傍迷惑以外何物でもない。

 

「お陰で、ポットマズーではコーラの話題はご法度いう暗黙のルールが設けられ。食堂や商店ではヌカ・コーラもヴィムも取り扱えない事態となっている」

 

「それは、頭の痛い問題ですね……」

 

「という訳で、傭兵。頼む! この問題の解決に手を貸してほしい!」

 

「それは……」

 

「報酬なら出す! 四百キャップ! それに、街の商店に言って、君達が利用する場合は特別割引を適用してもらうように頼んでおく! 無論期限はキャラバンと同じだ! これでどうかね!?」

 

 食い気味に再開発よりも高いキャップの額に、追加分の提示まで。

 どうやらスチュアート市長としては、再開発よりも二人の傍迷惑な勧誘活動の方が頭痛の種だったようだ。

 ここまで必死に頼まれては、断る訳にもいかない。

 

「分かりました。何とか解決してみます」

 

「おぉ! ありがとう!!」

 

 こうして二人の愛好家問題の問題解決を請け負ったものの、何処から手を付けようか。

 とりあえず、当人達から話を聞くことから始めよう。

 

 

 

 

 二人の愛好家は街では結構な、当然いい意味ではないが有名人らしく。

 二人の住居の場所を通りがかりの通行人に尋ねると、口々にその場所を教えてくれた。

 

 そして俺達が足を運んだのは、一軒のバラック。ヘンリー・キッドの自宅だ。

 だが、その外見は、屋根に取り付けられた鮮やかな電飾に彩られたヴィムホップ社のロゴを模したネオンサインが嫌でも目に付く、周囲と比べ完全に浮いたものであった。

 

「こんにちは」

 

 そんな訪ねる事を躊躇しそうな外見に臆する事無く、俺はバラックの玄関扉を叩き、中から了承する声が聞こえると共に、玄関扉を開いて中へと足を踏み入れた。

 因みに、一緒にキッド宅へとお邪魔したのはマーサとナットさんの二人だけで、ノアさんとニコラスさんには、自宅の外で待っていてもらった。

 なお、ディジーはベディー(M54 5tトラック)の見張り番をしている為、同行していない。

 

 こうしてキッド宅へお邪魔した俺達三人が目にしたのは、自宅の至る所に飾られたヴィム関連のグッズやフレーバーの数々。

 そこまで広くない内部を、更に手狭にするような自販機や、ピートさんの自宅でも拝見したおまけフィギュア。

 その他、消しゴムやピンバッチやバッグ等々。兎に角様々なヴィムグッズで埋め尽くされていた。

 

「やぁ、誰かと思えば先ほどであった君達か!」

 

 そんな半ばグッズ保管庫と化した自宅内で、キッドさんは先ほどと変わらぬキャプテン・ポップマンの格好で俺達を出迎えた。

 簡単な自己紹介を終えると、早速キッドさんが口火を切る。

 

「それで、どういった用件で僕の家を訪ねてきてくれたのかな? あぁ、そうか、分かったぞ! 僕の秘蔵のコレクションの数々を──」

 

「違います、今回訪ねたのは、キッドさんと少し話がしたいからなんです」

 

 この手の人間と何度かやり取りして、相手のペースに任せていては本題に辿り着くまでに時間がかかると学習していた。

 なので、はっきりと目的を伝えると、明らかに落胆した様子のキッドさんと話を始めた。

 

「それで、僕に話というのは一体どんな話なのかな?」

 

「キッドさんの行っている勧誘活動についてです」

 

「あぁ、それが何か?」

 

「その、ハッキリ言いまして街の皆さん、とても迷惑しているんです。ですから、もう止めていただけると有難いのですが」

 

「な!? 何だって!」

 

 まさかの事実を聞き、動揺を隠せないキッドさん。

 この手の人間は、純粋にその物や行為が好きで好きで仕方がなく、そしてそれ故に周囲が見えずらくなっている。

 だが、それ故に、理解できない者からすれば敬遠されてしまう。

 

 故に、誰かが周囲の状況を伝えなければ、その状況は変わる事がない。

 例えそれが、本人にとって酷なものだとしてもだ。

 

「街の皆は、本当に僕の事を……」

 

「えぇ、言葉にはしていませんが、かなり迷惑と感じている様です」

 

「そ、そうか……」

 

 だが、人間は何度でもやり直せる、そして、それに挑むのに遅いなんて事はない。

 今からでも、まだまだやり直せる。

 

「でも、そんなに落ち込む事はありません。心を入れ替えて、これまで迷惑をかけた分、街の為に働けば、きっと街の皆さんもキッドさんの事を敬遠しなくなる筈です」

 

「本当か!?」

 

「えぇ」

 

 すると、落ち込んでいたキッドさんも、俺の言葉を聞いて心を入れ替え、迷惑な勧誘活動を止める事を約束してくれた。

 

「ねぇ、所で。貴方はどうしてマーガレットと勧誘活動で競い合っていたの?」

 

 これでキッドさんの方は解決したと思った矢先、ナットさんがキッドさんにライドさんと勧誘合戦を行っていた理由を尋ねる。

 

「わ、笑わないで、聞いて欲しいんだ。じ、実は、僕と彼女は、元々付き合っていたんだが……」

 

 すると、キッドさんは照れくさそうに理由を語り始めた。

 

 実はキッドさんとライドさんは元恋人同士で、恋人の頃はそれはもう愛し合っていたのだが、現在はご覧の通り。

 そして、二人が別れた理由と言うのが、二人が大好きな炭酸飲料に合う食べ物の違い、という、本人たちにとっては大変重要な問題によるものであった。

 こうして別れた二人だが、どうやら互いに未練たらたらな様で。

 

 そこで、お互い示し合わせたように大好きな炭酸飲料を勧誘し相手よりも勝る事で、未練を断ち切ろうとしたという。

 

 身勝手で傍迷惑以外のなにものでもない理由であった。

 

「ふむ、成程ね。……ねぇユウ、マーサ」

 

「何ですか?」

 

「??」

 

 こうして勧誘合戦の理由が判明した所で、ナットさんが俺とマーサを呼んだ。

 何やら、内密な話があるようだ。

 

「これは利用できるかもしれないわ。私の見立てでは、ヘンリーはマーガレットとやり直したい。多分、彼女の方も同じだと思うの。だから、これを利用して今回の問題を一気に解決するのよ」

 

「でもどう利用するの、ナットさん?」

 

「それは、マーガレットにも話を聞いてからね」

 

 ナットさんの内密な話とは、二人の復縁をうまく利用して問題の解決を図るというものであった。

 成程、それはいい案だ。

 

 俺はナットさんの案に賛成すると、早速キッドさんを説得すると、彼を連れてライドさんの自宅に向かう事となった。

 

 

 キッドさんの自宅からメインストリートを挟んだバラック群の一角。

 そこに、ヌカ・コーラ社のロゴを模したネオンサインが屋根に取り付けられている、ライドさんの自宅はあった。

 

「いらっしゃ──、ヘンリー、何で貴方がここにいるの!?」

 

「やぁ、マーガレット」

 

 ライドさんの自宅の中も、ヌカ・コーラ関連のグッズやフレーバーで埋め尽くされており。

 そんな自宅に住んでいるヌカ・ガールのロケットスーツを着込んだライドさんは、素敵な笑顔で俺達を迎え入れてくれたが、キッドさんの姿を見るや否や、その表情を曇らせた。

 

「で、ヘンリー引き連れて、私に何の用?」

 

「私達、貴女と少し話をしに来たのよ」

 

 少々不機嫌な様子のライドさんに、ナットさんが刺激しないように話を始める。

 ナットさん曰く、ここは女同士の方がいい、という事で、俺は今回静観している訳だ。

 

「そう、そうだったのね。……ま、薄々感づいてはいたけど」

 

 ナットさんの話を聞いて、ライドさんも自身の置かれている立場というものを認識したようだ。

 そして、説得に応じて、ライドさんも迷惑な勧誘活動を止める事を約束するのであった。

 

「さて、それじゃこの話題はここまでにして。ねぇマーガレット、貴女、ヘンリーと付き合ってたんだって?」

 

「な! どうしてそれを!?」

 

「彼から聞いたわ。でね、ここからの話なんだけど。ごめんね皆、少しマーガレットと二人きりで話したいから、外に出てくれる」

 

 と、ナットさんがライドさんと二人きりで話がしたいというので、俺達はその言葉に従い自宅の外で話が終わるのを待つことに。

 

 それから数分後、話が終わったのか、ナットさんが一人でライドさんの自宅から出てくる。

 

「それじゃ次はヘンリー、貴方にも少し話を聞かせてもらうわ」

 

「う、うん、いいよ」

 

 そして今度は、少し離れた所で二人きりでキッドさんから話を聞くナットさん。

 程なく、こうして二人からそれぞれ話を聞き終えたナットさんは、キッドさんに聞こえないように俺達を集めると、肝心の計画内容を話し始めた。

 

「二人から話を聞いて、双方ともにまだ未練たらたらである事はハッキリしたわ。そこで、これを利用して、迷惑な勧誘活動が二度と再発しないように、二人を復縁させる計画、題して、"ヌカっとラブラブ・ヴィム! ラブ ユー!"計画始動よ!」

 

 何だか二人の仲を取り持つことにかなり気合が入っているナットさん。

 いつの間にか、計画の名称まで出来上がっていた。

 

「その内容だけど、吊り橋効果を利用するわ。これはピンチの状態の時に男女でそのピンチを乗り越える事で愛が深まるというものよ。これを利用する」

 

「でも、ピンチと言っても、特に二人には差し迫った危機らしきものは……」

 

「そうでもないのよ。実は二人に話を聞いて、この街から少し離れた所にある戦前の配送センターに、丁度二人ともそれぞれ手に入れたがっているグッズが存在している事を聞いたわ。これを利用する」

 

「ナットさん、まさかそこに二人で行かせるって言うの? 流石に危なくない?」

 

「当然、戦闘に不慣れな二人だけで行かせないわ。私達も同行して補佐する。でも、メインとなるのは二人よ! 二人で共同してそれぞれ目当てのグッズを回収する! そうすれば、互いに相手の魅力を再認識して、復縁! これよ!」

 

「そんなに上手く行くものなのか?」

 

「いくわ! 私の勘がそう告げているもの!」

 

 自身の勘が確信の源、と一見すると不安しかないが。

 女の勘は恐ろしい程侮れないというし、案外、逆に安心できるかもしれない。

 

 こうして、ナットさんの立てた計画が発表された所で、早速実行に移すべく動き出す。

 

「えぇ、あの配送センターに! 確かに、あそこには僕の欲しいヴィムグッズがあるとは知ってるけど……」

 

「確かに、私の欲しいヌカ・コーラグッズもあるけれど。あそこは今、ラッドローチが占拠して、奴らがうじゃうじゃといるのよ」

 

「マーガレット、うじゃうじゃなんてものじゃないよ、うじゃうじゃの十倍さ!」

 

「そんな所に行くなんて、ねぇ……」

 

「心配ないわ! 私達も付いていく、ラッドローチが大群でも大丈夫よ。だから、配送センターに行って、お互いの欲しいグッズを見つけましょ?」

 

 何とか二人を説得し、渋々ながらも了承を得ると、二人と共に、俺達はベディー(M54 5tトラック)に乗り込み。

 ポットマズーから少し離れた場所にある、戦前に郊外に設けられた配送センターへと到着すると、早速二人を引き連れ内部へと突入する。

 因みに、キッドさんとライドさんには、護身用にN99型10mm拳銃を手渡して万が一に備えている。

 

 

 配送センターと言うだけあり、内部は巨大な鉄骨で骨組みされ、広々とした空間内には、積み上げられたコンテナや木箱、それにダンボール箱の数々が置かれている。

 そして、そんな箱の間を縫うように、相変わらず嫌悪感を湧き立たせるあの生物が闊歩していた。

 

 縄張りに侵入してきた俺達に襲い掛かるラッドローチ達を、装備した火力で蹴散らしながら目的のグッズを探していく。

 

「きゃ!」

 

「マーガレット、危ない!!」

 

 不意に現れた一匹のラッドローチがライドさんに襲い掛かる。

 だが、それを寸での所でキッドさんが手にしたN99型10mm拳銃を発砲し助けた事で、ライドさんは事なきを得る。

 

「大丈夫か!? マーガレット?」

 

「えぇ、ありがとう」

 

 驚いた拍子に尻餅をついてしまったライドさんに手を差し伸べるキッドさん。

 暫し見つめ合い、そして、手を引いて立ち上がるライドさん。

 

 どうやら、ナットさんの目論見はうまくいきそうだ。

 

 と、安心した所で、俺はふと、マーサの方に目をやった。

 するとこそには、嫌悪感を現す事も臆する事もなく、自慢のリボルバーを両手に持ち、見事な早撃ちで次々にラッドローチ達を駆除するマーサの姿があった。

 

 うん、マーサは逞しいな。

 

 

 その後、順調にラッドローチ達を蹴散らしつつ、お目当てのグッズを探し回った俺達は。

 奥の方に置かれていた木箱の中から、漸く二人のお目当てのグッズを発見するのであった。

 

「それ、私が欲しいって言ってたヌカ・コーラのトースター……」

 

「それは、僕が欲しがってたヴィムのラジオ時計……」

 

 どうやら、二人が欲しがっていたグッズは、お互いに付き合っていた頃から欲しがっていたグッズだったようだ。

 二人は、照れくさそうにお互いのグッズを交換すると、やがて、復縁の証として、俺達がいる事も忘れてキスをするのであった。

 

 

 

 こうして復縁したキッドさんとライドさん。

 二人はその後、これまで迷惑をかけた街の為に、別の活動を二人で始めた。

 それは、俺のアドバイスを参考にしたもので。

 

「覚悟しなさい、怪人シープスカッチ! くらえ、ヌカ・チェリー・ビーム!」

 

「アババババッ!」

 

 街の一角に設けた特設舞台で、ヌカ・チェリー・ガンを手にしたヌカ・ガールことライドさんが。

 巨大な二足歩行の山羊の化け物に扮したキッドさん相手に戦い、そして勝利を飾った。

 

 そんな舞台上で繰り広げられる演劇に、観客の子供たちは大いに沸く。

 

 そう、俺のアドバイスを参考に二人が始めた活動とは、街の子供達を楽しませるキャラクターショーである。

 実は二人の自宅を訪ねる途中、街の子供たちが二人の勧誘合戦を娯楽として街の子供たちが楽しみにしている事を耳にしていたので、ならばという事で、二人にキャラクターショーの活動を持ちかけたのである。

 子供にとって娯楽が少ない世の中だからこそ、子供達を笑顔にさせられる娯楽を提供できれば、今まで迷惑をかけた街への恩返しになると思って。

 

 当然、ショーは二人だけでは出来ないので、街の有志の方々にも手伝ってもらって開催にこぎつけている。

 因みに、二人への演技指導は、演技の経験がある俺達が行った。

 

 

 今後は、二人で協力して、街に笑顔を増やしていってくれる事だろう。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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