Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第六話 終わりと始まり

 リーアセキュリティの一員としての新たな日常も、気が付けば早いもので二年の月日が経過していた。

 ベッドの脇に置かれたベッドサイドチェスト、そこに置かれた目覚まし時計のアラーム音で目を覚ます。

 ベッドから起き上がり、日課のストレッチを終えて、リビングキッチンへと赴く。

 

「おはよう、ユウ」

 

「おはよう、母さん。……父さんはもう行ったの?」

 

「えぇ、もう出かけたわ」

 

「おはようございます、ユウ坊ちゃま!」

 

「おはよう、オネット」

 

 リビングキッチンでは母とオネットが迎えてくれたが、父の姿はすでになかった。

 警備長となった父は、朝早くから職場である本部に出勤し、警備長のデスクで日々己の使命にまい進している。

 

「ユウ、今日の帰りは遅いの? もし遅くないのなら、今日はグレッグの帰りも早いみたいだし、久しぶりに家族揃って楽しい夕食を楽しみたいのだけれど?」

 

「大丈夫だよ、母さん。今日は早く帰れる予定だから。……あ、でも、何か事件が起こったら、無理かな」

 

「ふふ、なら今日は一日平穏"武人"に過ごせるようにお祈りしておくわ」

 

「母さん、それを言うなら平穏"無事"、だよ」

 

 母さんのおちゃめな間違いを経て、変わる事のない美味しい朝食と食後のコーヒーを堪能し終えると、出勤の時間が近づいていた。

 

「それじゃ、いってきます」

 

 母とオネットに見送られ、自宅を出た俺は、中央広場を抜けて、俺と父の職場でもあるリーアセキュリティ本部のある官庁エリアへと足を運ぶ。

 リーアの中枢部といえる官庁エリア内には、リーアセキュリティ本部の他、リーア市庁舎、リーア裁判所等。文字通りリーアの行政に携わるものが存在している。

 

 それだけに、当然出勤ラッシュの時間帯には人でごった返す。

 

 そんな官庁エリアにあるリーアセキュリティ本部の正面出入り口を潜ると、受付窓口担当の隊員たちと挨拶を交わした後、専用のパソコンで自身の出勤簿にチェックを付けると、その足でロッカールームを目指す。

 自分のロッカーからセキュリティアーマーを取り出し着用すると、警棒や手錠などを収納するポーチが付いた警備ベルトを腰に巻く。

 最後に、セキュリティヘルメットを手にしたまま、俺は本部内でも最も警備レベルの高い区画へと足を運ぶ。

 

「おじさん、おはようございます」

 

「おぉ、ユウか。おはよう。ちょっと待ってな、今出してくるから」

 

 鉄格子付きの物々しいカウンターの向こうには、入隊以来お世話になっている、装備課のヴァルヒムさんの姿がある。

 ふくよかな体型に前頭部が寂しいものの、いつも陽気で明るく気さくに話しかけてくれる。

 因みに、本人曰く、昔はスマートでスタイリッシュな活躍から異性にモテモテだったそうだ。

 

 そんなヴァルヒムさんが、程なくして俺の装備をカウンターに持ってきてくれる。

 

「ほい、じゃサインしてね。……あぁ、そういえば聞いたかい、今度ラブ・スウィート・ファクトリーで新作ドーナツが販売されるんだってさ。いやぁ、楽しみだね」

 

 なお、最近はラブ・スウィート・ファクトリーと呼ばれるお菓子屋のドーナツに夢中だそうな。

 因みに、その店で働いているパティシエの一人は、スカイリーである。

 

「はい、終わりました」

 

 サインを終えると、カウンターに置かれた装備、警棒や手錠、それに無線機とN99型10mm拳銃、拳銃用の予備マガジンをそれぞれポーチとホルスターに収納していく。

 

 因みに、現在リーア内で標準的な拳銃として認識されているN99型10mm拳銃は、ゲームでいえば『4』の無改造の姿をしている。

 座学によれば、この拳銃は民生品で、原型の製品特許の保護期間切れ、即ちパテント切れにより戦前の国内外銃器メーカーからこぞって製造されたモデルの一つだそうだ。

 国内外銃器メーカーから製造されているあたり、原型の基本設計の良さが伺える。

 

 原型となった物は既に生産停止したらしいが、原型を製造・販売していた銃器メーカーは軍の要求で原型の正当進化というべき新規製造型を開発、軍によって正式採用されたとの事。

 因みに、軍採用の型は、製造メーカー独自の反動吸収システムを採用しており、優良な低反動性を実現している。ただしその分、民生品と比べ外見はかなりゴツイ。

 つまりは、軍採用型はゲームの『3』に搭乗した10mm拳銃のようだ。

 

「よし、それじゃ、今日も頑張ってね」

 

「はい」

 

 全ての装備を受け取り終えたので、軽く言葉を交わすと部屋を後にする。

 部屋を後に、勤務開始前のブリーフィングを受けるべくブリーフィングルームに向かっていると、交代制で先に勤務を終えた同期の隊員とすれ違う。

 

「よ、ユウ、お疲れ」

 

「お疲れ」

 

「はぁ、……にしてもいいよな、ユウは拳銃持てて。ま、俺なんかよりもよっぽど優秀だし、納得なんだけどさ、やっぱちょっと羨ましいわ」

 

「後三年もすれば受けられるんだし、それまでの我慢だよ」

 

「そうなんだけどさ、なんかいざ試験を受けられるってなったら、俺、受かる自信ねぇな」

 

「何事も弱気じゃ受からないからね。強気で臨まなきゃ」

 

「そうだな、っと、これからブリーフィングだったな、じゃ、またな」

 

「お疲れー」

 

 さて、先ほど同期の隊員の発言で気になる所があったので、その補足をしておこう。

 俺が拳銃を所持できているという言葉の意味であるが、実は、リーアセキュリティの隊員であっても、全員が拳銃の所持を認められている訳ではない。

 実は、拳銃の所持には条件があるのだ。

 その条件とは、『上級職員資格』と呼ばれる資格を有している事である。

 

 上級職員資格を得るには資格試験を受けて合格するのだが、試験を受けられるには条件がある。

 その条件とは、勤続五年以上、更には問題行動等を起こしていない模範的な勤務実態も加味される。

 上記の条件を満たした者は、実技・筆記の両試験を受け、合格すれば、上級職員資格を与えられる。

 

 さて、ここで更に疑問符が増えた事だろう。

 試験を受けるには勤続五年以上が必要だ、所が、俺はまだ勤続二年ほど。条件を満たしてはいない。

 では何故、上級職員資格を持っているのか。

 それは、何事にも、『特例措置』というものが存在しているからだ。

 

 特例措置の条件、それは上級職員資格を有する複数の隊員からの推薦、並びに班長クラスによる推薦、というものだ。

 ただし、特例措置は試験を受ける条件を免除するだけであって、資格試験そのものを免除するものではない。

 故に、資格試験は自身の力量が試される事となる。

 

 こうして、何とか資格試験を突破し、俺は無事に上級職員資格を有する事となったのだ。

 

「おはようございます」

 

「おーうユウ、おはようさん」

 

「おはよーす」

 

 と拳銃所持についての補足を説明している間にも、俺はブリーフィングルームへと足を運び。

 先に到着していた先輩隊員や同期の隊員に挨拶を交わしつつ、空いている椅子へと腰を下ろす。

 

 それから他の隊員たちもブリーフィングルームへと足を運び、全員が揃ったところで、班長であるアントムが書類片手に入ってくる。

 

「よーし、全員いるな。では、ブリーフィングを始める」

 

 ブリーフィングでは、その日の行動指示と注意点が告げられる。

 班長であるアントムから告げられるそれらを、俺達隊員は聞き逃さず忘れないように各々メモに取っていく。

 

 こうしてブリーフィングが終わると、いよいよ各々が与えられた仕事をこなすべくブリーフィングルームを後にする。

 俺も、メモ帳やペンなどを多目的ポーチに収納すると、セキュリティヘルメットを被り、巡回警備へと繰り出す。

 

 本部を出て、官庁エリアから中央広場へと足を運ぶと、通勤時間が過ぎたので、中央広場の混雑はそれ程でもない。

 椅子に座り何をするでもない者や、知り合いとのおしゃべりに夢中になっている者。お勤めご苦労様と声をかけてくれる者。

 一通り中央広場を見回って、特に不審な者もトラブルが起こる気配もないので、俺は次のエリアへと足を運び始める。

 

 結局、この日は他の隊員が通路で口喧嘩している夫婦の仲裁に入った位で、特に大きな事件など起こらず平穏に過ごす事となった。

 これも、母さんのお祈りが効いたお陰だろうか。

 きっとそうだろう、何故なら、久しぶりの家族揃っての夕食を、母さんはあんなにも笑顔で喜んでいたのだから。

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