Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第五十九話 ところで傭兵、恐縮だが…

 翌朝、まだ太陽も地平線から僅かばかり顔をのぞかせ、うっすらと窓から光が差し込み始めた頃。

 目を覚ました俺が目にしたのは、俺の体に抱き着いて、穏やかな寝顔を浮かべている天使(マーサ)の姿であった。

 

 これは夢か?

 最初に目にした時、俺はそう思ったが。

 徐々に伝わってくる天使(マーサ)の柔らかな感触と寝息に、これは紛れもなく現実だとの認識に至ると、瞬く間に残っていた眠気は吹き飛んだ。

 

 と同時に、色々なものが覚醒してしまったが、何とかおさまるように抑え込むのであった。

 

 その後、何とか覚醒を抑え込むのに成功すると、マーサを起こさないようにベッドから起き上がると、日課のストレッチを行い。

 それを終えると、ピップボーイから適当な保存食を取り出し、朝食をとり始めるのであった。

 

 

 

 

 そして、朝食を食べ終えた所で、起きてきたマーサと挨拶を交わすと。

 マーサが朝食を食べている間に、俺は残りの支度を済ませていくのであった。

 

 それから暫くして、マーサの支度も整った所で、次はいつ使う事になるか分からぬ部屋に別れを告げると、俺とマーサは集合場所であるベディー(M54 5tトラック)のもとへと向かうのであった。

 

 すると、どうやらナットさん達は一足早く到着していたようで、俺達の到着を待っていた。

 ただ、俺達の様子を目にしたノアさんとニコラスさんは、何だか少しがっかりした様子で。

 逆に、ナットさんは、妙に嬉しそうな様子であった。

 

「何かあったんですか?」

 

「何でもないわよ、うふふ」

 

 気になったので尋ねてみたのだが、結局、三人の様子の原因は分からず終いとなった。

 ま、深刻そうな問題が起きた感じではないので、これ以上追及するのは止めておこう。

 

「それじゃユウ! 出発するか!?」

 

「ちょっと待ってディジー。その前に色々と買い物しておきたいんだ。それと、今後に備えてベディーも改造していこうと思ってる」

 

「おぉ! いよいよベディーを改造するんだな! よっしゃ、それじゃ楽しみに待ってるぜ!」

 

 デビル・ロードの存在など、デトロイトへの道のりは当初の想定よりもさらに厳しいものが予想される。

 なので、準備できる時に準備すべく、ベディー(M54 5tトラック)の改造を含めた強化を行い、そして必要な買い物を行うべく、俺達は街の商店に向かった。

 

 

 キャラバン達の拠点となっているだけあり、ポットマズーのメインストリートの一角に立ち並ぶ商店エリアは、まさに商店街の如く様々な商店が立ち並んでいた。

 そんな商店街に足を運ぶと、店先に並んだ様々な商品に目移りさせながら、どの商店で買い物するか頭を悩ませながら活気ある商店街を歩いていく。

 

「よぉ! 誰かと思えば! 街のヒーローとそのご一行じゃないか!」

 

「え? 俺?」

 

 すると、突然とある商店の店主から声をかけられ、足を止める。

 ダンディな髭を蓄えた、ナイスミドルなヒスパニック系のその店主は、間違いなく、俺の事をヒーローと呼んだ。

 

 そして気付けば、その理由を知りたいが為に、俺は店先に足を運んでいた。

 

「あの、さっき俺の事を街のヒーローって呼んでましたけど」

 

「あぁ、そうさ。あんた、この街を再開発したり、あのバカップルジャンキーどもの問題を解決してくれた流れの傭兵だろ? つまり、この街で暮らす俺達にとっちゃ、あんたは街のヒーローなのさ!」

 

 陽気な口調で理由を語る店主。

 どうやら、街の問題を解決した俺の活躍が、もう既に街中に人づてに伝わり広がっているようだ。

 持て囃される為にした訳ではないが、それでも、住民の方々から感謝されるのは、そう悪い気はしないな。

 

 ヒーローと呼ばれるのは、少し、照れくさいけど。

 

「それで、そんなヒーローさんが、お仲間さん達と共に今日はウチにどのようなご用件で? 新しい武器? それとも弾薬? さぁ、何がご所望で!?」

 

 と、俺の気分がよくなってきたと見るや、店主は間髪入れず営業トークを開始した。

 流れるように店頭取引に持ってくるあたり、流石は商店を経営する店主だけはあり、商魂たくましい。

 

 ま、これも何かの縁と、折角なので商品を見せてもらう事にする。

 

「ウチは、武器を取り扱う店の中でも街一番の品揃えが自慢でね。あぁ……、他の店が駄目って事じゃないんで、そこんとこよろしく」

 

「あはは……」

 

 苦笑いを浮かべる俺を他所に、店主は話を続けた。

 

「さてと、それじゃまずは。もうヒーローさんはご立派な銃をお持ちのようだが、万が一の備え、更にもう一挺サイドアーム(拳銃)を持っておきたいのなら、こいつはどうだい? ハンドメイド・パイプリボルバー! こいつはそこいらで見かけるパイプリボルバーよりも"ちょっと"は手の込んだ作りの銃で、各種弾薬に対応した型を揃えてる。ショットガン用で最も普及している12ゲージ対応型から、.308口径弾、.45口径弾、.38口径弾と幅広く対応している! これなら、一種類の弾薬が切れても安心ってもんだ!」

 

 自慢げに商品の説明を行う店主の話に耳を傾けながら、俺は店主がカウンターに置いたハンドメイド・パイプリボルバーに視線を移す。

 確かに、適当溶接感満載のパイプリボルバーよりも、銃身やフレームはしっかりしているし、アタッチメントでちょっとした銃剣も取り付けられ、トリガーも長尺ボルトになっている等、確かに手は込んでいる。

 それに、各種弾薬に対応した型があるのも、使う側としては嬉しい。

 グリップ部分に巻かれた青いダクトテープも、お洒落なワンポイントだ。

 

 だが、やはり原型がサタデーナイトスペシャルでは、多少手を込ませても、優先して使いたいとは思わない。

 

「おや、お気に召さない? それじゃ次だ。もし、拳銃よりももう少し強力な火力が欲しいのなら、こいつをお薦めするね。こいつは5.56mm弾を使用するハンドメイド・マシンガン! こいつは側面にマガジンを装填するタイプの銃だから、狭い所やしゃがんだ状態なんかでも取り回しがいいぞ。ただ、幾つか注意が必要で、こいつは遠距離での撃ち合いには不向きだし、フルオートで使うと、ハッキリ言って弾の無駄だな。だから"バカマシンガン"なんて呼ばれたりもしてる。とまぁ、ちょっと操作に癖はあるものの、慣れれば問題なしだ。それに、驚きの価格で拳銃よりも高火力を手に入れたきゃ、こいつが一番だね!」

 

 そして次にカウンターの上に置かれたのは、ステンガンのように側面装填式の銃器。

 フレーム中央に設けられた弾倉挿入部分、鉄製のハンドガードの下部には、針金等で木製のフォアエンドが取り付けられている。

 銃身にグリップ、そして貧相なストックと、ハンドメイドの名に相応しく、こちらも手作り感満載の銃だ。

 

 にしても、遠い前世の記憶、北の大地の地下世界を舞台にした何かの作品で、似たような感じの銃が登場していたようないなかったような。

 結局思い出せなかったが、何れにしても、この銃も買う事はないだろう。

 

「ありゃ、こいつも駄目か。だったらこいつはいかがです? 安くて大火力と言えばこれ! そう、パイプショットガン! 12ゲージのショットシェル(散弾銃実包)でレイダーだろうが野生生物だろうが一撃だぜ! もっと一撃の火力が欲しいなら、トリプルバレル型やクアッドバレル(四本銃身)型も取り揃えてますよ?」

 

 そして次にカウンターの上に姿を現したのは、まさに鉄パイプそのままな銃身に針金で木製のフォアエンドが取り付けられ、トリガーやグリップが設けられた、名前そのままな銃器。

 ショットシェル(散弾銃実包)は圧力が低く破裂の危険性が低いので、わざわざライフリングを施さなくてよい分、パイプ系統との相性は最高だろう。

 ショットガンも用途によってはライフリングを施されている物もあるが、この品質では、そこまでの使い分けは望んでいないし、必要ないだろう。

 このレベルの品質を求めている層は、兎に角、弾が撃てればいいのだから。

 

 そして、残念ながら、俺はこのレベルを率先して求める層の人間ではない。

 

「こいつもお眼鏡に適わないか。なら、しょうがない、とっておきだ!」

 

 そう言って今まで出した商品をカウンターから片付け、店主が店の奥から持ってきたものは、状態の良さそうなミニガンであった。

 それまでのお手製感とは一線を画す、ちゃんと整備されたラインにより製造されたその外見は、安心感と共に力強さを感じさせる。

 

「今コイツを買ってくれるなら、街を救ってもらった礼に、5mm弾を二箱付けてやるぜ!」

 

 間髪入れず店主の口から飛び出したのは、なかなか魅力的な言葉だ。

 このミニガンなら、状態も良さそうだし、銃架(機関銃を据え付ける為の架台)に据え付けて、ガントラックにするベディー(M54 5tトラック)の改造に使えそうだな。

 

「それはいいですね。それで、お値段は?」

 

「おぉ! やっとヒーローのお眼鏡に適ったか、よかった!」

 

「それと、あと弾薬の方も欲しいんですけど」

 

「おぉ、弾薬だな! 必要な種類と数を言ってくれ、直ぐに持ってくる!」

 

 俺の注文を聞くや、必要な弾薬の弾薬箱を抱えてカウンターと店の奥の倉庫を何度か往復した店主。

 やがて、その往復を終えると、合計金額を提示する。

 提示された金額(キャップ)を支払うと、満足そうな笑顔を浮かべる店主を他所に、俺は買ったものをピップボーイに収納していく。

 

「そうだ。あの武器作業台って使えますか?」

 

「おぉ、あいつか、使えるよ! いつもは使用料を貰ってるんだが、ヒーロー様だからな、特別にタダで結構だよ!」

 

 店先からチラチラと視界の中に映り込んでいた武器作業台。

 その使用許可を尋ねると、店主は快く了承してくれた。

 

 こうして使用許可を得た俺は、早速武器作業台の前に立つと、早速作業に取り掛かる。

 

 先ずは、ヴァルヒムさんの遺産として回収していたM199 ヘビー・アサルトライフルを二挺取り出すと、バレルをロングバレルに変更し、弾倉を大容量のドラムマガジンに変更する。

 そして最後に、防護の為のお手製防楯を取り付けると、完成だ。

 この防楯付きM199 ヘビー・アサルトライフルは、ベディー(M54 5tトラック)の荷台に銃架を取り付け、そこに据え付けて運用していく為の物だ。

 

 因みに、ニコラスさんの愛用しているM199 ヘビー・アサルトライフルも、ロングバレル化とドラムマガジン化、それに安定と命中率向上の為にストックを変更する改造を行った。

 お手製防楯は取り付けていない、既にニコラスさんは専用ドアシールドを持っているからだ。

 

 次に取り掛かったのは、ナットさんの愛用しているN99型10mm拳銃。

 瞬間火力を向上させる為フルオート射撃機能を追加させ、それに伴いマズルブレーキを追加、グリップも安定する物に変更し、弾倉もロングマガジンに変更した。

 こうして、N99型10mm拳銃改を作り上げると、その後も幾つかの武器を改造して、作業を終了する。

 

「ふー、我ながら良い出来だった」

 

 自画自賛を終えた所で、買い物の続きを行うべく店を後にしようとした時。

 ふと、店の端に、気になる物を発見する。

 

「あの、あれは一体?」

 

「ん? おぉ、あいつか。ヒーローさん、気になりますか?」

 

「えぇ、少し」

 

 すると店主は、気になる物の前まで歩み寄ると、その正体を説明し始めた。

 

「こいつは無人販売所計画で使う予定のプロテクトロンの試作品なんですよ。ヒーローさん、ガンランナーって武器屋、知ってます?」

 

「えぇ、存じてます」

 

「実は知り合いにそのガンランナーの店員をやってる奴がいましてね。そいつの話によると、西海岸じゃ、こういつプロテクトロンを店番に使って無人販売を行ってるらしいんですよ」

 

 まさかガンランナーの名前が出てくるとは思ってもいなかったので少し驚いたが、同業他社だし、つながりがあっても不自然ではないか。

 それにしても、店主の言う知り合いの店員とは、あのシカゴ支店の店員なのだろうか?

 

「それで、その話を聞いてピンときたんです! ロボットなら休憩も睡眠も必要ないから二十四時間ずっと営業できるってね!」

 

「成程。……それで、このプロテクトロンは試作品って言ってましたけど、具体的にはどの辺りが?」

 

「あぁ、このプロテクトロンは、街のメカニックである"シスター・エレノア"って女性に頼んで販売に必要なプログラムや接客用のプログラムを組み込んでもらったんだが。ちょっとばかり、その、個性を出したいって注文したんだが、思いのほかオーバーになっちまってな……。まぁ、聞いてみてくれ」

 

 そう言うと、店主はプロテクトロンを起動させた。

 

「ガンズ・バリューへようこそ!! アッハハハハハハハハハハッッッ!!!! ガンズ・バリューで物欲をぶっ潰せぇぇ~~!!」

 

 そして聞こえてきたのは、ハイテンションで耳を劈くような接客音声であった。

 あれ? ここはいつから大西洋の海底にある楽園になったのだろうか……。

 

「とまぁ、こんな感じな訳で、とても店番を任せられるような状態じゃないんだよ」

 

「あら、でも見方によっては結構個性的だから、案外噂になって繁盛するかもしれないわよ?」

 

 ナットさんのいう事も一理あるが、これ、二十四時間営業を想定しているという事は、真夜中に突然あのテンションの音声が響き渡るのだ。

 確かに噂にはなるが、それはいい意味よりも悪い意味でもものが圧倒的多数を占める事になるだろうな。

 

 こうして店主がプロテクトロンを試作品としている意味を理解した所で、今度こそ買い物の続きの為に店を後にしようとした、その時であった。

 

「あぁ、ちょっと待った!」

 

 突然、店主が待ったを掛けてきたのだ。

 

「何でしょうか?」

 

「実は、プロテクトロンのプログラムの修正をシスター・エレノアに頼みたいんだが、私は生憎忙しくてね。そこで、恐縮ながらヒーローさんに、シスター・エレノアに修正プログラムを希望している事を伝えてほしいんだ」

 

 そして、店主の口から飛び出したのは、頼み事であった。

 俺は暫し考え、そして、その頼み事を引き受ける事にした。

 

「ありがとう! それじゃ、シスター・エレノアに会ったら、ガンズ・バリューの店主がプロテクトロンの修正プログラムを希望しているって伝えてくれ。彼女はこの時間なら多分、自身の工房にいる筈だ。彼女の工房は、教会みたいに玄関の上にデカい十字架の看板が取り付けられているから、直ぐに分かる筈だ」

 

「分かりました」

 

「あぁ、そうだ。これは謝礼だ、受け取ってくれ」

 

 そう言うと、店主は.45口径弾の入った紙製の弾薬箱を一箱、手渡してくれた。

 それを笑顔と共に受け取った俺は、店主からの伝言を伝えるべく、シスター・ジェスと呼ばれた女性の工房へと向かうのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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