Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第六十話 約束された勝利のロボット

 街の商店街から歩くこと数分。

 途中通行人に場所を尋ねて到着したのは、街の一角に建てられたシスター・エレノアの工房。

 トタンと木材で作られたその大き目の建物の玄関扉の上には、聞いた通り、十字架の形をした看板が設けられていた。

 

「すいませーん!」

 

 俺は玄関扉を叩くと、中からの反応を待つ。

 しかし、待っても返事は返ってこない。

 もう一度叩いて返事を待つも、やはり返事は返ってこない。

 

 もしかして、留守なのだろうか。

 

「……あれ? 開いてる?」

 

 と思ったら、ドアノブに手をかけ動かしてみると、玄関扉に鍵はかかっていなかった。

 

「失礼します」

 

 勝手に入るのは少々後ろめたさを感じるものの、在宅か不在かを確かめるべく玄関扉を開けると、俺は工房に足を踏み入れた。

 街のメカニックという肩書を有しているだけはあり、工房内は、様々な機械部品や工具などで溢れていた。

 

「すいませーん! いらっしゃいませんかーっ!」

 

 そんな工房の奥に向かって、俺は声をかける。

 しかし、返事は返ってこない。

 やはり不在だったのか、と思った刹那。

 

 奥から物音が聞こえてきた。

 

「あーはいはい。だーれー?」

 

 次いで、シスター・エレノア本人らしき女性の声が聞こえてくる。

 どうやら、単に俺の声に気付いていなかった様だ。

 

「……な!」

 

「はーい、どちら様?」

 

 それから程なく、奥から近づいてくる人影を目にして、俺は呆気に取られた。

 俺達の目の前に現れたのは、作業服の上半身を腰巻にして、上半身は下着のみという格好の、顔にマシンオイルを付け、瓶底眼鏡をかけた妙齢の女性であった。

 因みに、下着に全体が収まりきらない程のたわわなものをお持ちであった。

 

「ちょ! あんたなんて格好してるのよ! ちゃんと服着なさいよ!」

 

「マーサ、貴女が言ってもあんまり説得力ないわよ……」

 

 女性の格好を見た瞬間に、マーサが吠えるも、確かにマーサの普段の格好を見れば、ナットさんの言う通りだろう。

 

「ユウ! あんたも何鼻の下伸ばして見てるのよ!」

 

「え!? あぁ、ごめん!」

 

「で、どちら様なの、あなた達?」

 

「兎に角先にちゃんと服着てきなさいよ!!」

 

 こうして、マーサの気迫に押されて、女性は腰巻を解くと作業服を着直すのであった。

 

「これでいい?」

 

「えぇ、いいわ」

 

「それで、あなた達は誰なの?」

 

「えっと、俺はユウ・ナカジマと申します。シスター・エレノアさん、ですよね?」

 

「えぇ、確かに私はエレノアよ。でも、本名はプリシラ、プリシラ・エレノアよ。シスターは愛称で、週末にシスターとして教会の手伝いをしているから、皆からそう呼ばれているだけ」

 

「そうだったんですね。あ、それで、今日訪ねたのは、ガンズ・バリューの店主さんから預かった伝言をお伝えしに来たからなんです」

 

「あら? それってもしかして、この間プログラムを組み込んだプロテクトロンに関する事?」

 

「はい。店主さんはプロテクトロンの修正プログラムを希望しているんです。少し、希望していたものとは違っていたようなので」

 

 伝言を伝えると、エレノアさんは口をへの字にすると、不満を垂れ始めた。

 

「えー。折角可愛くプログラムしてあげたって言うのに。……はぁ、これだから機械の事を理解し切れない奴は」

 

 と、一頻不満を垂れ流した所で、エレノアさんは修正プログラムの件を了解した旨を告げた。

 

「では、用件も済んだので、俺達はこれで失礼します」

 

 こうして、伝言を伝え終えたので買い物に戻ろうとした矢先。

 

「ちょっと待って!」

 

 突然、エレノアさんに待ったを掛けられた。

 あれ? 何だろうこれ、デジャヴを感じる。

 

「思い出した! 貴方、街の皆が噂してたヒーローよね!」

 

「あ、はい。そう呼ばれているみたいですね」

 

「ならお願い! 私の頼み事を聞いて欲しいの!」

 

 あぁ、やっぱりそうなるんだ。

 しかし、女性が手を合わせて必死にお願いしているのに、それを無下にするのは、男が廃るというものだ。

 

「分かりました。いいですよ」

 

「ちょ、ちょっとユウ! あたし達そんなにのんびりしている暇ないでしょ!」

 

「でもマーサ、困ってる人を放ってはおけないよ。それに、少しくらいなら、まだ余裕はあるから大丈夫」

 

「……なんで、なんでそんなに優しいのよ」

 

「え? 何か言った?」

 

「別に! 何でもない!!」

 

 急に顔を赤くしたマーサに、俺は小首を傾げ、頭上に疑問符を浮かべた。

 ふと、周りを見ると、何だか他の皆から暖かい視線を向けられている事に気付くのであった。

 

「あー、それじゃ、兎に角聞いてくれるのね、よかった」

 

「それで、頼み事の内容と言うのは?」

 

「実は、この街の南西方向に戦前の大学の廃墟があるんだけど、そこの調査をお願いしたいの」

 

 エレノアさんの頼み事とは、戦前の大学廃墟の内部調査。

 具体的には、今ではW.M.U.廃墟と呼ばれている戦前の大学の内部に今も残されているという戦前のロボット技術に関する調査だそうだ。

 

 エレノアさん曰く、同大学は戦前、この辺りでも有名なマンモス大学であり、様々な学部が存在していた。

 そして、その内の一つである機械工学部が、当時の政府に依頼されロボット兵器に関する研究開発を行っており、その成果の一端として生まれた試作品が今も強固なセキュリティに守られ、学部の研究所内に保管されている。

 との事だ。

 

「大学の周囲や内部は、今でも忠実に職務を全うしているプロテクトロン達がウロウロしているの。お陰で、とても一人じゃ近づけないし、そもそも私は戦うのって自慢じゃないけど不得意だから。それに、護衛を雇える程の財力もないから、手をこまねいてたの」

 

「分かりました。では、その機械工学部の研究所内を調査して、その結果を報告すればいいんですね」

 

「えぇ、でも、出来れば現物も持ち帰って来て欲しいの。試作品そのものとか、メモリーモジュールとかマグネトロンとか、あとはレポートの束なんかも。兎に角持ち帰れるだけ持ち帰ってきて!」

 

「ねぇちょっと、あんたが依頼したのは調査でしょ。現物の回収まで頼むのは図々しいんじゃない?」

 

「いいじゃない別に、ついでよついで。それに、ちゃんと報酬は支払うわよ」

 

「あんたさっき人を雇う程お金がないって言ってなかった?」

 

「だから、カ・ラ・ダ、でね」

 

 刹那、エレノアさんの妖艶な声と共に、彼女は豊満な魅力を意味深な様子で強調し始めた。

 そんな彼女の姿に俺の目が釘付けになろうとした刹那。

 

「だ! そんなのダメーッ!!」

 

 突然マーサが俺とエレノアさんの間に割って入ると、ものすごい剣幕でエレノアさんに対してまくし立て始めた。

 

「だだ、駄目に決まってるでしょそんなの!! 大体、そんな簡単に自分を売るんじゃないわよ! もっと自分の身体は大事にしないさよ! そういうのはね、好きな人とするものなんだから! それに、ユウはあた……あわわ!! じゃなくて! ユウだって困ってるんだから、兎に角駄目!!」

 

「あなた、言ってることが支離滅裂よ。……でもそうね、あまり自分を安売りするものじゃないわね。それに、私が満足させるまでもなく間に合ってそうだし」

 

「わ、分かってくれれば、それでいいのよ!」

 

「ならそうね。……そうだわ、これでも機械の造詣に関しては自信があるから、機械に関して何か困ったことがあったら力になるわ、遠慮なく言ってね」

 

 こうして、少し残念ながらも、エレノアさんは報酬として自身の機械に関する造詣の深さを生かした協力を提示する。

 機会に関して困った事か……、うーむ。

 

 暫し唸って、彼女に協力してもらえそうな事があったかを考えていると、ふと、ベディー(M54 5tトラック)の改造の一件を思い出す。

 

「では、ベディー。えっと、俺達の使っているトラックの改造を手伝ってくれませんか?」

 

「お安い御用よ。そうだわ! なら折角だから、私の改造を加えたものを取り付けてもいいかしら!? 実は、丁度アサルトロンってロボットの頭部を幾つか手に入れたの、それで、レーザーの威力と射程を向上させてみたんだけれど、もしよかったら、取り付けてみない!?」

 

「え、えっと……。お気持ちは有難いんですけれど。今回はご遠慮させていただきます」

 

 ふと、アサルトロンの頭部が各所に取り付けられたベディー(M54 5tトラック)の姿を想像して、背筋が凍った。

 うん、恐ろしい絵面だ。

 

「そう、まぁいいわ。もし取り付けたくなったらいつでも私に言ってね。……さて、それじゃ、早速改造に取り掛かる?」

 

「えぇ、そうします」

 

「なら少し待ってて、愛用の工具箱を持ってくるから」

 

 こうして報酬としてベディー(M54 5tトラック)の改造を手伝ってくれることになったエレノアさん。

 愛用の工具箱を片手にした彼女と共に、俺達は工房を後に、ベディー(M54 5tトラック)のもとへと向かうのであった。

 

 

 

 

 ベディー(M54 5tトラック)の所に戻った俺達は、早速嬉しそうなディジーと、ベディー(M54 5tトラック)の姿を目にして更にやる気が湧いてきたというエレノアさんと共に、ベディー(M54 5tトラック)の改造に着手する。

 先ずは荷台の防弾性能をさらに向上させるべく、防弾用の鉄板を追加すると、荷台の左右に銃架を設けて、そこに防楯付きM199 ヘビー・アサルトライフルを据え付ける。

 続いて、運転席の上部にも銃架を設けると、そこに購入したミニガンを据え付ける。加えて防護の為のお手製防楯を取り付け射手の安全性をある程度確保する。

 そして、ボンネットや運転席のドアにも防弾用の鉄板を取り付け。そして、忘れてはならない、ドアガラスも忘れずに取り付ける。

 更には、フロントウインチを装備させ、更に使い勝手を良くする。

 

 最後に、改造による重量増加に対応させるべく、核電池式のエンジンを改良すれば、改造完了だ。

 

「フゥーッ! ハハハッ! スゲェべっぴんになったじゃねぇかベディー! これなら、戦前の戦車でも出てこねぇ限り、向かう所敵なしだな!」

 

 生まれ変わったベディー(M54 5tトラック)の姿を改めて目にして、ディジーは大変満足そうな声を挙げた。

 そしてそれは、俺も声にこそ出さないまでも、気持ちは同じであった。

 これなら、凶暴な野生生物やデビル・ロードの集団が相手でも、渡り合う事が出来るだろう。

 

「手伝っていただき、ありがとうございました、エレノアさん」

 

「いいのよ、報酬だもの。それじゃ、内部の調査、よろしくね」

 

「分かりました」

 

 手伝ってもらったエレノアさんに感謝の言葉を述べると、今度はそんなエレノアさんの期待に応えるべく、俺達が体を張る番だ。

 早速、改造で生まれ変わったベディー(M54 5tトラック)に乗り込むと、一路、W.M.U.廃墟を目指してポットマズーを出発する。

 

「新生ベディーの初陣だ! ハッハーッ!!」

 

 改良された核電池式のエンジンが唸りを上げ、上機嫌なディジーの運転と共に、門を潜ったベディー(M54 5tトラック)は南西目掛けてその巨体を走らせるのであった。

 

 

 

 

 

 出発してから数分、俺達はW.M.U.廃墟に到着した。

 流石は戦前にマンモス大学と呼ばれていただけの事はあり、その敷地面積はかなりの大きさを誇っている。

 

「ホアンプログラム二シタガイ、カンケイシャ、オヨビジゼンテツヅキニシタガイキョカヲエタモノイガイノシキチナイヘノタチイリハキンシサレテイマス。スミヤカニタイキョシナイバアイハ、グンジコウドウヲオコナッテセイサイソチヲトリマス」

 

「トマレ、ソノバデト、バァーッ!!」

 

「イハンシャヲケンチ、コウゲキヲカイシシマス」

 

 そんな敷地内にベディー(M54 5tトラック)で突撃した俺達は、現在、主なき今でも忠実に職務に邁進しているプロテクトロン達と戦闘の最中であった。

 一体のプロテクトロンをベディー(M54 5tトラック)の体当たりで吹き飛ばしたのを皮切りに、様々な方向からベディー(M54 5tトラック)に向かって赤いレーザー光線が飛来する。

 それに対して、俺達は銃架に据え付けた火器を用いて反撃を行う。

 

「ヴー!」

 

「ヴぁー!!」

 

「コロス、コロス……、ハ、カ、イイィィ」

 

「うー! あー!」

 

 流石は元マンモス大学の保安を担当するだけはあり、プロテクトロン達をかなりの数相手にすることになったが。

 それでも、何とか襲い来るプロテクトロン達を撃退する事に成功する。

 

 ちょっとしたプロテクトロン達の残骸の山を築いた俺達は、使えそうな物を回収し終えると、目的の場所を探し始める。

 敷地内に設けられていた案内板を確認して、程なく、目的の機械工学部が研究所として使用していた研究棟の場所を突き止めると、直ちに向かう。

 

 程なく、俺達は重厚な外見が今なお完璧な状態で残っている研究棟へと到着した。

 

「それではノアさん、よろしくお願いしますね」

 

「うむ」

 

 ノアさんとディジーを研究棟の前に駐めたベディー(M54 5tトラック)に残し、俺とマーサ、それにニコラスさんとナットさんの四人で研究棟内へと突入する。

 突入した俺達四人を出迎えたのは、内部の保安に従事していたプロテクトロンと、天井に設置されたレーザータレットであった。

 

 狭い研究棟内の廊下に響き渡る弾丸とレーザーの発砲音。

 次に響き渡るのは小さな爆発音と火花が散る音。

 そして、廊下に残されるのはプロテクトロンやレーザータレットの残骸達であった。

 

 こうして、行く手を阻む障害を排除しつつ、研究棟内を進む俺達。

 途中、研究室などで集積回路やメモリーモジュール、更には幾つかのレポートの束などを回収しつつ、更に研究棟内を進む。

 

 そして、最後に辿り着いたのは、研究棟の地下であった。

 上階とは異なり、ここだけ妙に配置されたレーザータレットの数が多く、また、扉もカードキー認証によるものなど、セキュリティのレベルが異なっており。

 どうやら、この地下に最重要目的である試作品が保管されているようだ。

 

 幸い、上階を探索中にカードキーを見つけていたので、扉はすんなりと通ることが出来た。

 

 

 地下室の扉の奥に広がっていたのは、様々な機材が置かれた広い部屋。

 そしてその部屋の更に奥には、窓付きの壁に隔てられた、白色蛍光灯に照らされたクリーンルーム。

 

「あれは……」

 

「あれ? あれってあんなに小さいのもあったの?」

 

「あら? あれって確か連邦でモニュメントとして展示されてる……」

 

 そんなクリーンルームの中央、ハンガーに固定されていたのは、本来は人間の背丈を優に超える全高を有する筈の巨大人型ロボット。

 戦前のアメリカが、文字通り決戦兵器として開発していたが、結局開発が間に合わず、実戦に投入される事はなかった。

 しかしながら、核戦争後二世紀以上を経て、東海岸のB.O.S.により修復され、遂に鋼鉄の巨人は目を覚ました。

 その相手となったのが、アメリカ政府の末裔でもあるエンクレイヴであるというのは、何とも皮肉な事である。

 

 エンクレイヴとの戦闘により破壊された鋼鉄の巨人だが、それから十年の時を経て、かつてボストンと呼ばれた大地において、鋼鉄の巨人は再び復活したのであった。

 

 ブリキの玩具の様な外見を有したその巨大人型ロボットの名は、"リバティ・プライム"。

 

 本来ならば十数メートルの全高を有する筈のリバティ・プライム、おそらくボストンと呼ばれた大地に所縁のあるマーサとナットさんが見たのは、オリジナル、ゲームにも登場した方であろう。

 一方、目の前の窓から見える、クリーンルームのハンガーに固定されたそれは、どう見てもパワーアーマーと同等の全高しかない。

 

「おぉ、漸く吾輩を解き放つ人間が現れたか! さぁ人間、吾輩を早くこの檻から解き放ち、地上へと案内するのだ!」

 

 謎のリバティ・プライムを眺めていると、突然、ヘッドランプが点滅し、近くのスピーカーから流暢な口調が流れてくる。

 

「おい、何をしている! 民主主義の旗手であるこの吾輩の言葉が分からぬのか! ヴァカめ! 貴様の目は節穴か!? 吾輩のこの勇ましく優美な姿が目に入らぬ筈なかろう!」

 

 あれ、リバティ・プライムって、こんな言葉を、否、こんな性格だったか?

 いや、絶対に違う。

 民主主義の素晴らしさをこれでもかと叫び続けるプロパガンダ戦闘マシーンなので、ここまで流暢な、と言うよりも煩わしい筈がない。

 

 だが、その姿はどう見てもリバティ・プライムに瓜二つ。

 一体この煩わしさを掻き立てる謎のロボットは一体何者なのか。

 

「え、えっと、すいません」

 

 俺はそれを確かめるべく、近くのマイクのスイッチを入れ、謎のロボットに話しかけ始める。

 

「何だ、やはり吾輩の言葉が聞こえていたのではないか、ヴァカめ! さぁ、早くそこの赤いスイッチを押したまえ!」

 

「あのその前に、貴方は一体何者なんですか?」

 

「何だと!? 貴様、吾輩の事を知らずにここまで来たのか!? ヴァカめ! それならそうと早く言え! よかろう、民主主義の体現者にして旗手! そして素晴らしき英国紳士であるこの吾輩の自己紹介をしてやろう!」

 

「えっと、……ここアメリカなんですけど」

 

「ヴァカめ! 吾輩は英国から亡命してきた機械工学の権威であるスティーブン・ネルトン博士の手により開発されたのだ! 故に、吾輩は立派な英国紳士なのだ、ヴァカめ!」

 

「はぁ……」

 

「それよりも自己紹介だったな。吾輩の名は"エクスカリバー"! 個体認識用に長ったらしいアルファベットと数字の羅列もあったが、そちらは英国紳士である吾輩には相応しくないのでもう捨てた! 偉大なる兄弟であるリバティ・プライムの能力をそのままに、このサイズまで縮小させたのがそう、この吾輩である!」

 

 謎のロボットの正体は、名前に違わぬ凄い能力のロボットであった。

 彼? の言う通り、オリジナルのリバティ・プライムの能力をそのままにサイズを縮小した物だとすれば、まさに向かう所敵なし、勝利を手にしたも同然だ。

 

 ただ名前といい、この煩わしい感じといい、何処かで見た事のある様な気がする。

 

「そうだ、自己紹介ついでに吾輩の偉大なる武勇伝を聞かせてやろう! だがその前に、これも何かの縁だ、君達には吾輩と同行できる権利を与えよう! ヴァカめ! 誰が無条件でと言った! 同行するにあたっては守ってもらいたい千の項目がある。レポート用紙にまとめてその辺りに置いている筈だ、必ず目を通すように! 特に第四五二項、五時間に及ぶ吾輩の美声が奏でる朗読会には是非とも参加願いたい」

 

 ふと近くの机の上を見ると、そこには辞書ほどの分厚さのあるレポート用紙の束があった。

 

「では始めよう! そう、吾輩の朝は一杯の天然オイルから始まる。私の午後は、アフタヌーン天然オイルにて始まる。そして夜は、就寝前のナイトキャップ天然オイルを飲む。何故だか分かるか? ヴァカめ! これだからヌカ・コーラ等という低俗な飲料を飲む者は困るのだ。いいか、これは守って御貰いたい項目の第一項! "吾輩の朝は一杯の天然オイルから始まる"、なのだ。忘れるでないぞ!」

 

 え、これもしかしてこれ、千の項目を前部説明する流れなのか?

 と思った矢先、何故か一言も喋らなくなるエクスカリバー。

 

「え……、えっと、もしもーし?」

 

 まさか壊れたのか、と喋らなくなったエクスカリバーの様子に焦り始めた刹那。

 

「ヴァカめ! 思考の時間は必要なのだよ! そしてその時間を楽しむ余裕もな。全く、最近の人間は性急で困る、もっとゆとりを持て。向う見ずに飛び出すなど、愚の骨頂! ……そう、あれは吾輩の見惚れる優美なボディが出来上がる前の頃、吾輩は一体のMr.ハンディと出会ったのだ。その時交わした素晴らしき会話の内容はホロテープに録音して残しておいた、全七十分に及ぶ素晴らしきものなので、是非とも一言一句、聞き漏らす事の無いように聞いていただきたい! つまり何が言いたいかと言うと、千の項目の第二七八項、決して合成オイルを使ってはならない、につながるのである!」

 

「そうだ、武勇伝を語る前に、景気付けとして長き拘束時間中に吾輩自らが考えた素晴らしき素晴らしい歌を、吾輩の美声に乗せて奏でてやろう。ヴァカめ! 耳を澄ませて聞くのだぞ! ではゆくぞ、ひぁ~うぃ~ご~!」

 

 EXCALIBURーッ! EXCALIBURーッ!

 

 From United States

 I'm looking for heaven

 I'm going to Alaska

 

 EXCALIBURーッ! EXCALIBURーッ!

 

 From United States……。

 

 それから暫く、ノリノリで歌を歌うエクスカリバー。

 やがて、満足したのかエクスカリバーは満足げな声を漏らした。

 

「ふむ。考えてみれば、吾輩の武勇伝は君達との旅のスパイスとして、いずれ語る事にしよう。では、今度こそ赤いスイッチを押して吾輩を解き放つのだ! そして行こう! 吾輩と共に民主主義の勝利と栄光を手に入れ、素晴らしき民主主義の世界を統べようではないか!! さぁ行かん! 君達と共に!!」

 

 そして、俺はエクスカリバーの声に反応し、赤いスイッチを──、押す事なく踵を返すと、部屋を後にする。

 

「え? お、おい! 何処に行くのだ人間! 何故部屋から出て行こうとしているのだ!」

 

「えっと、本当なら是非ともここから出してあげたいんですけど。……ウザイからやめた!!!」

 

 これでもかと言わんばかりの苦虫を噛み潰したような表情と共に、俺は吐き捨てるように言い残すと、同じような表情を浮かべた三人と共に部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 W.M.U.廃墟からポットマズーへと戻った俺は、その足でエレノアさんの工房へと調査結果の報告に向かった。

 

「それとこれが、回収した物です」

 

「ありがとう!! 本当に、ありがとう!」

 

 ピップボーイに収納していた回収物をエレノアさんに手渡すと、彼女は目を輝かせながら感謝の言葉を述べた。

 

「そうだ。所で、例の試作品はどうだった?」

 

 そして、試作品と言う単語がエレノアさんの口から漏れた刹那。

 俺の脳裏に、あのエクスカリバーの、表情の変化がない事がまた逆に煩わしさを掻き立たせる姿が思い起こされ。

 再び、これでもかと言わんばかりの苦虫を噛み潰したような表情を浮かべた。

 

 すると、そんな俺の表情からエレノアさんは何かを察したのか、それ以上試作品について言及する事はなかった。

 

 

 その後、エレノアさんの依頼を終えた俺達は、残りの買い物を済ませると、今度こそデトロイトに向けて出発。

 といきたかったのだが、エクスカリバーの相手で思いのほか時間がとられたので、結局今出発しても途中で野営する事になったので、今晩もポットマズーで一夜を過ごす事に決めた。

 

 まさか、今朝いつ使う事になるか分からないと言っていたあの部屋を、こんなに直ぐに使う事になろうとは。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
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