Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第六十一話 ようこそ、メトロポリタン・シティへ

 翌日、三度目の正直とばかりに俺達は支度を整えると、ベディー(M54 5tトラック)に乗り込み、デトロイトを目指すべくポットマズーを出発した。

 出発の際、デルバートさんやキッドさんにライドさん等、街で出会った方々に見送られながら、俺達は再び東を目指し始める。

 

 

 一般道を暫くひた走り、やがてインターステイトの94(州間高速道路94号線)への入り口から進入すると、そのまま東進を続ける。

 荒れ果てた大地、枯れた木々、道路上に放置された廃車の数々。

 そんな流れる風景を横目に、ゆったりとベディー(M54 5tトラック)での移動を楽しめればよかったのだが……。

 

「てめぇらは死肉の塊だぁーっ!!」

 

「ヒャッハー!!」

 

 そんな穏やかなドライブを楽しむ間も与えないかの如く、俺達はデビル・ロードの連中との戦闘を行っていた。

 今回遭遇した連中は、前回遭遇した改造トラックを有してはいなかったが。

 代わりに棘や槍、鉄格子や鉄板などで素敵な世紀末色に改造された自動車、更にはバイクまで、それも複数を有していた。

 

 しかし、相手が複数になろうと、ベディー(M54 5tトラック)とて、前回よりも強化されているのだ。

 荷台からは、左右を囲むデビル・ロードの自動車やバイク目掛けて、防楯付きM199 ヘビー・アサルトライフルがノアさんとナットさんの操作により火を噴き。

 運転席上部の銃架に据え付けたミニガンも、俺の操作に従うように銃身を回転させ始めると、程なく、指向した自動車の一台目掛けて、暴風の如く勢いで5mm弾をばら撒き始めた。

 

「望みがたた──」

 

 回避する間もなく車体をハチの巣にされた自動車は、程なく派手な爆発を起こすと、火達磨となり後方を走っていた仲間のバイクを巻き込みながら後方に流れていく。

 次いで5mm弾の餌食となった自動車は、前輪の片輪を撃ち抜かれると、コントロールを失いスリップすると近くを走っていた仲間の自動車とぶつかり、その勢いで派手に半回転して落伍した。

 

 程なくして、ベディー(M54 5tトラック)に据え付けた武装で、周囲を囲んでいたデビル・ロードの連中を、後方で立ち上る黒煙と共に道路上に置き去りにすると。

 俺は安全を確保できたことを確認すると、運転席の座席に腰を下ろす。

 

「ハハハッ! 今回もデビル・ロードの連中の丸焼き、一丁上がりだな! ユウ」

 

「俺としては、出来ればもう少し穏やかにドライブを楽しみたいんだけどね」

 

 確か以前、デビル・ロードの連中で車輛を使う奴等とは遭遇する頻度は高くない、と聞いた筈なんだが。

 おかしいな、聞いた事と実際と、かなりの乖離があるぞ。

 

 この分じゃ、デトロイトに到着するまでまだ何度か車輛を使うデビル・ロードの連中と遭遇する気がする。

 

 

 そんな心配をしていた俺だったが、どうやらその心配は、杞憂で終わってくれたようだ。

 確かにそれから一時間と経たずに、再びデビル・ロードの連中と遭遇したものの、それは連中が道路上に設けた関所の様な場所を守る奴等であった。

 

 ベディー(M54 5tトラック)自慢の巨体から繰り出される体当たりで門を突き破り、据え付けた武装で返り討ちにすると。

 地獄絵図と化した関所を背に、更に東へと進路を向けるのであった。

 

 

 

 

 それから昼食や小休止を挟みつつ、道中一般道などへ経路を変更し、野生生物と弾丸を使って戯れたり、野営したりしつつも東進を続ける事十数時間。

 俺達は遂に、デトロイト近郊にまで到着したのであった。

 

「ここまで来たけど、ここからはどうするの?」

 

「サイド7に関する情報を集めようと思う。ピートさんは正確な場所を知らなかったけど、この辺りで生活している人なら、サイド7の正確な場所に関して何かしら知っているかもしれないからね」

 

 こうして、目的地であるサイド7の場所に関して、重要な情報や、そのような情報を知っていそうな人物に関する情報を得るべく、情報収集を行うという方針を固めると。

 早速、レイダー等ではない、地元の住民を探すべく、移動を再開する。

 

 暫く人の姿を探しながら移動を続けていると、不意に前方の廃墟の影に、焚火の炎を見つける。

 更に目を凝らせば、その焚火の周囲には数人の人影が確認できた。

 

 俺は警戒感を持たれないように、離れた場所にベディー(M54 5tトラック)を駐めると、先ずは一人でゆっくりと焚火の方へと歩み寄る。

 焚火の周囲の人々の格好は、汚れや破損、継ぎ接ぎが目立つ衣服で、とてもレイダーには見えなかった。

 だが、一応の用心は怠らない。

 

「すいません」

 

「あぁ、なんだい?」

 

 あまり刺激しないように声を掛けると、焚火を囲んでいた内の一人、アフリカ系アメリカ人の中年女性が反応を示してくれる。

 

「突然この様な事をお尋ねするのは誠に不躾なのですが、この辺りで、コロニーと呼ばれる戦前の大規模シェルターに関して、何かご存知ではありませんか?」

 

「見た目に反して随分と教養をお持ちのようだ……」

 

 丁寧にサイド7に関する質問を投げかけると、中年女性は暫し考えるように視線を泳がせ、やがて、質問の答えを語り始める。

 

「この辺りに、ボルトとは別のそんな名称の大規模シェルターがあるって噂は聞いた事があるけど、生憎と、詳しい場所までは知らないわ」

 

「そうですか」

 

 結果は、やはりと言うべきか、デトロイト近郊に存在しているという事は噂として知っているようだが、正確な場所までは知らない様であった。

 しかも、どうやら中年女性はここに住んでいるグループのリーダー的存在だったらしく、他の方々にも有難い事にサイド7に関して知らないかと聞いて回ったが、結果は同じであった。

 

「質問に答えていただき、ありがとうございました」

 

「いいのよ。私の方こそ、貴方みたいな教養もあって心優しい方と出会えて嬉しかったわ」

 

 柔らかな微笑みを浮かべる中年女性に頭を下げ、皆のもとへと戻ろうとしたその時。

 不意に、声をかけられる。

 

「やっぱりだ。やっぱりそうだ!」

 

 声をかけてきたのは、継ぎ接ぎだらけの薄汚れた白衣を着込んだ一人の壮年男性。

 男性は俺の姿を見るや、興奮した様子で俺のもとへと近づいてくる。

 

「え、えっと、どちら様でしょうか?」

 

「あぁ、すまない! つい本人を目の前にして興奮してしまった。僕の名前はDr.コリー、ポットマズーを拠点に活動しているキャラバンの一人さ」

 

 Dr.コリーと名乗った壮年男性は、驚くべきことにポットマズーを拠点として活動しているキャラバンの一人であった。

 ポットマズーからこのデトロイト近郊まで、直線距離にして約二百キロはある。

 しかも道中は、当然ながら快適で安全などではない。

 

 にも関わらず、遠路はるばるポットマズーからこのデトロイト近郊まで足を運ぶとは、脱帽ものだ。

 

「ポットマズーから遠路はるばるここまで!? 凄いですね……」

 

「褒めてくれるのはありがたいけど、流石に徒歩ではないんだ。デトロイトへの移動には小型トラックを使っていてね、荷台にバラモンを乗せて長距離を移動しているんだ。小型トラックは少し離れた場所に、盗られないように隠してあるんだよ」

 

 どうやら、流石に約二百キロもの長距離を徒歩で移動する程の健脚は持ち合わせていなかった様だ。

 Dr.コリーはあっさりと種明かしをしてくれた。

 

「そうだったんですか。……所で、さっき俺の事を知っているような素振りでしたけど?」

 

「あぁ、そうだった。君、ポットマズーを救ってくれたヒーローだろ! 仲間のキャラバンが君の事を話していてね、その話を聞いてから、是非とも一度、直接会ってみたいと思っていた所だったんだよ!」

 

 そして、Dr.コリーは続けて、俺に会いたがっていた事も明かしてくれる。

 握手を求めてきたDr.コリーに、少し照れくさそうに応じる。

 やっぱり、ヒーローと呼ばれるのはまだ慣れない。

 

 こうして、握手を終えた所で、Dr.コリーにも、サイド7に関して何か知っている事はないかと尋ねてみる。

 

「すまない。生憎と僕も、この辺りに存在しているという噂話程度の認識しかないんだ」

 

「そうですか」

 

「でも、その手の情報を収集するのにうってつけの場所なら、心当たりがあるよ」

 

「本当ですか!?」

 

「ここから少し南に下がった所に、戦前の空港跡地に作られた"メトロポリタン・シティ"と呼ばれる街があるんだ。そこなら、人も多いから、情報収集にはうってつけだよ」

 

 すると、Dr.コリーの口から有力な情報を得る。

 成程、確かに街ならば、人も多いし情報収集するにはうってつけだ。

 よし、早速メトロポリタン・シティと呼ばれる街に向かうとしよう。

 

「有益な情報をありがとうございました! では、失礼し──」

 

「あぁ、ちょっといいかな!?」

 

 Dr.コリーにお礼を述べて立ち去ろうとした刹那、不意に、Dr.コリーに呼び止められる。

 情報を提供したお礼に何か商品を買って欲しいのか、と呼び止めた理由を推測していると、次にDr.コリーの口から飛び出したのは、そんな推測ではなかった。

 

「実は、僕もこれからメトロポリタン・シティに向かおうとしていた所だったんだけど。もしよければ、一緒に同行してもいいかな?」

 

「それならもちろん、喜んで!」

 

 有益な情報を提供して下さったお礼とばかりに、俺はDr.コリーの申し出を快く受け入れた。

 こうして、ベディー(M54 5tトラック)のもとで待つ皆のもとに、Dr.コリーと、相棒で商品の入った箱や袋をその体に背負わせたバラモンと共に戻った俺は。

 一路、メトロポリタン・シティを目指すべく、南に向けて出発するのであった。

 

 

 

 

 南に向かって走る事十数分。

 目の前に、地平線の先まで続いているかのようなフェンスが姿を現す。

 そのフェンスに沿うように移動していると、程なく、幾つものテントやバラック、そして巨大なターミナルビル等が姿を現した。

 

 どうやらここが、メトロポリタン・シティと呼ばれる街のようだ。

 

 更に周囲を取り囲むフェンスを沿うように進んでいると、やがて目の前に、街の出入り口である巨大な門が姿を現す。

 

「止まれ!」

 

 その巨大な門を守護していたのは、意外な事にパワーアーマーであった。

 しかも、その姿はこれまで目にしてきたどのパワーアーマーとも異なる、機動隊を思わせる頭部の造形に、両肩に設けられたパトライト、紺と白を基調とした塗装。

 それは、シリーズの一つであるフォールアウト76にて登場した、レスポンダーパワーアーマー塗装と呼ばれるパワーアーマーの外見変更用スキンのそれであった。

 

「やぁ、どうも」

 

「あぁ、誰かと思ったら、Dr.コリー、貴方でしたか」

 

 数体のレスポンダーパワーアーマー塗装は、各々手にした銃器の銃口をベディー(M54 5tトラック)に向けていたが、荷台から降り立ったDr.コリーの姿を確認するや、彼らはその銃口をベディー(M54 5tトラック)から外した。

 どうやらDr.コリーは彼らと顔馴染みのようだ、暫くすると、談笑し始める。

 

 そんな様子を眺めながら、俺はふと、謎のパワーアーマーの素性を、リーアにいた頃に座学で学んだ事を思い出した。

 

 

 あのレスポンダーパワーアーマー塗装が施されたパワーアーマーは、この世界では"ポリス・パワーアーマー"、通称"PPA"と呼ばれる、戦前の警察に配備されたパワーアーマーだ。

 主な使用用途は、暴動鎮圧。

 前世の感覚からすれば、暴動の鎮圧にパワーアーマーは過剰ではと思ったが、戦前のアメリカ社会は資源戦争の影響で治安は軒並み悪化しており。

 そこに銃社会の国民達の自衛意識が最高潮に達した事も相まって、アメリカ社会には低品質で安価なサタデーナイトスペシャルと呼ばれる銃器が溢れていた。

 その内の一部が今もなお、パイプピストル等の形で残っているのだが、それは以前紹介したので割愛する。

 

 兎に角この様に、戦前の暴動は、前世の感覚とはその破壊力が桁外れに高く、鎮圧するのにパワーアーマーは決して過剰ではなかったのだ。

 因みに戦前の警察は、暴動対策としてPPAと共に、暴動鎮圧用アーマーである、今やレンジャーコンバットアーマーと呼ばれる装備を備えていたようだ。

 

 さて、ここからは個人的な憶測なのだが。

 ノーヘッドやPPA等、軍用以外のパワーアーマーがこの世界に溢れている理由は、おそらく戦前の、当時の軍首脳部の軍事戦略が関係していると思われる。

 史上初の実戦配備型パワーアーマーとして登場したT-45のアラスカでの活躍を知った当時の軍首脳部は、その戦果に気を良くして、一種のパワーアーマー至上主義のようなものが蔓延したのだろう。

 更なる新型パワーアーマーの開発を推進すると共に、パワーアーマーの更なる配備を推進しようとした。

 

 だが、そんな軍首脳部の前に立ちふさがったのが、製造コストの問題。

 用意できる予算には当然ながら限りがある、またパワーアーマーのみに割り当てることも叶わない。

 そこでおそらく、軍のみならず他の行政機関や民間にも普及させる事で、量産効果による製造コストの低下を狙ったものと思われる。

 そして目論見通り、パワーアーマーは核戦争までにある程度普及し、現在、様々なタイプのものが存在している状況へと繋がっているのだろう。

 

 とはいえ、物理的に核戦争勃発までにアメリカ全土の警察にPPAを配備できたとは考えずらく、配備するにあたり優先順位は設けられた筈だ。

 そこでデトロイトが優先順位の中に含まれたのは、おそらく以前ディジーが言っていた、戦前からデトロイトが既にウェイストランドと呼ぶに相応しい程治安が最悪だったからだろう。

 

 

 と、つらつらと憶測を脳内で垂れ流していると。

 不意に、PPAを装備した門番の一人が、俺達に声をかけてきた。

 

「あんた達、Dr.コリーの知り合いなんだってな」

 

「え? えぇ、そうです」

 

 まぁ、知り合ったのは少し前なのだが、知り合いに違いはない。

 

「なら大丈夫だとは思うが、一応注意しておく。街の中でひと悶着起こすんじゃないぞ。……ま、起こしたくても起こせそうにはないが」

 

 おそらく最後の発言は荷台のノアさんの姿を目にしてのものだろう。

 

「兎に角ようこそ、メトロポリタン・シティへ」

 

 そして、門番からの歓迎の挨拶を経て、巨大な門が開かれると、俺達はメトロポリタン・シティへと進入するのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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