Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

63 / 76
第六十二話 正義のヒーロー

 メトロポリタン・シティ内へと進入した俺達は、戦前も駐車場として使用されていた場所にベディー(M54 5tトラック)を駐めると、メトロポリタン・シティへと降り立つ。

 

「では、僕は商売があるのでこれで失礼します。ヒーローさん、貴方の求める情報が手に入る事を祈ってますね」

 

「ありがとうございます」

 

 軽く会釈し、短い間ながらも色々とお世話になったDr.コリーと相棒のバラモンと別れると、彼らを見送りながら、この街の何処で情報を収集するかを相談し始める。

 

「今回は二手に分かれて情報を収集した方がいいわね」

 

 そして、ナットさんの意見を参考に、俺達は二手に分かれて情報収集を行う事にした。

 俺とマーサ、そしてナットさんとニコラスさんにノアさんの二手に分かれて、街中でサイド7に関する情報を聞き込んでいく方針だ。

 

 因みにディジーは、ベディー(M54 5tトラック)の見張り番だ。

 

 

 

 夕方にベディー(M54 5tトラック)のもとで合流する事を確認すると、俺はマーサを連れて街中を歩き始める。

 さて、先ずは情報と言えば酒場だろう、なので酒場を探して歩いていると。

 

「ねぇ、お兄さん、お姉さん。二人とも見かけない顔だけど、もしかして、この街に来たのは初めて?」

 

 不意に、突然声をかけられた。

 しかも、声をかけてきたのは、継ぎ接ぎだらけの衣服を身に纏った十歳ぐらいの男の子であった。

 

「そうだけど、君は?」

 

「僕はイーサン。この街に住んでるんだ」

 

 イーサンと名乗った男の子に、お返しに簡単な自己紹介を行うと、彼は俺が傭兵をしていると聞くや、目を輝かせて興味津々とばかりに色々と質問を投げかけてくる。

 

「じゃぁさ、じゃぁさ! レイダーやモールラットとも戦った事あるの!?」

 

「あるよ」

 

「凄い凄い! それじゃ、スーパーミュータントとも戦った事ある?」

 

「うん、あるよ」

 

「わー! お兄さん凄いや!! あのね、僕も大きくなったら、お兄さんみたいに悪党どもをやっつける正義のヒーローになるのが夢なんだ! お父さんやお母さんは農業を継がせたがってるみたいだけど、でも僕は絶対、正義のヒーローになるんだ!」

 

 透き通った瞳で俺の事を見つめるイーサンに、俺は一瞬どう返答すべきかと言葉を詰まらせた。

 子供の夢を壊すのは不憫だが、かといって彼の人生を思えば、彼のご両親の言う通り、安全なこの街で農業に従事していた方が、退屈だろうが幸せであるのも事実。

 

「……イーサン、正義のヒーローは、決して簡単になれるものじゃないんだ。危険と隣り合わせだし、辛い事もたくさんある。でも、もしそれでも、本当に正義のヒーローになりたいのなら、その気持ちを忘れちゃだめだよ」

 

「うん!」

 

「それともう一つ、農業のお手伝いをすることも、正義のヒーローになる為には必要だと思うんだ。正義のヒーローは、困っている人を助けるものだから、忙しいお父さんやお母さんのお手伝いをすることも、立派な正義のヒーローさ」

 

「そっか!」

 

 俺はイーサンの頭を優しくなでながら、彼にアドバイスを送る。

 夢を叶えるか諦めるかの選択は彼が決断する事だ、だから、今の俺は少し助言を送るのみでとどめよう。

 

「それじゃイーサン、俺達はもう行くね」

 

「あ! 待って! お兄さんもお姉さんも、この街は初めてなんでしょ。ならさ、僕が案内をしてあげるよ!」

 

「本当、それは助かるよ。……そうだ、はい、これ」

 

 街の案内を申し出たイーサンに、俺は十枚ほどのキャップをピップボーイから取り出すと、彼の小さな手のひらに乗せた。

 街を知れば、情報収集の効率も上がる筈だ。イーサンはそんな手伝いを率先して引き受けてくれた。

 だから、そんな小さな正義のヒーローに報酬を出すのは当然の事だ。

 

「小さな正義のヒーローに、街を案内してくれるお礼さ」

 

「ありがとう!!」

 

 笑顔と共に受け取った十キャップを嬉しそうにズボンのポケットに入れると、やる気に満ち溢れたイーサンは街の案内を始めた。

 そんなイーサンの後に付いていく俺とマーサ。

 

「ユウって、子供の扱いが上手いのね」

 

「そうかな」

 

「これなら、いいお父さんになりそうね」

 

 すると不意に、マーサからかけられた言葉に、俺は自身の血を分けた子供をあやす姿を想像する。

 そして、そんな俺を隣で見守ってくれている女性の姿も。

 

 そう、今まさに俺の隣を肩を並べて歩いている……。

 

「お兄さん、まずここが街一番の食堂、"スカイライン・ダイナー"だよ。店主のダリアさんが作るラッドスコルピオンの卵を使ったオムレツは美味しいって評判なんだ」

 

「ひゃい!」

 

 と、俺がそんな想像に耽っていると。

 不意にイーサンに声をかけられ、驚いてつい声が上擦ってしまった。

 

「? どうしたのユウ、変な声出して?」

 

「ちょ、ちょっと考え事してただけだよ、は、ははは」

 

 疑問符を浮かべるマーサに、俺は笑ってその場を誤魔化す。

 

「ま、いいけど。さ、行きましょ」

 

 どうやら上手く誤魔化せたらしく、次の案内場所に向かうイーサンの後に続き、マーサも移動を再開する。

 そんなマーサの後姿を目にしながら、何とか誤魔化せたことに内心安堵すると、多くの人で賑わう、トタンと木材で作られたスカイライン・ダイナーと呼ばれる大きな食堂を横目に、二人の後を追いかける。

 

 

「次にここが"メトロポリタン・マーケット"。ガラクタから日用品、食料や銃、兎に角欲しいものはここに来れば大抵売ってるよ」

 

 木材やトタン、それにテント等。

 形や大きさも様々な店舗が立ち並び、店先に佇む店主たちが威勢のいい声と共に元気よく呼び込みを行っている。

 街の一角に設けられたそのエリアは、まさしくマーケットと言う名に相応しく、街の中でも特に活気と人の溢れる場所であった。

 

 そんなメトロポリタン・マーケットを程なく後にした俺達は、暫く歩くと、今度は目の前に整備された農地が姿を現す。

 

「次はここ、"メトロポリタン・ファーム"。ここでは僕の家や他の農家さん達が、野菜や果物、それにバラモンやラッドチキン等を作ったり育てたりしてるんだ。それで、あそこが僕の家の畑だよ!」

 

 柵で囲われた畑には、それぞれ野菜や果物等が実り、収穫の時を待ちわびている。

 更に大きな柵で囲われた牧畜エリアや養鶏エリアには、飼育されているバラモンやラッドチキン達が、のびのびと日向ぼっこを堪能していた。

 

 そして、そんなメトロポリタン・ファームの一角を指さすイーサン。

 指を指した先にあったのは、立派なトウモロコシ畑。どうやら、イーサンのご両親は、トウモロコシ農家を営んでいるようだ。

 

「立派なトウモロコシ畑だね」

 

「ありがとう。それじゃ、次の場所に行こう」

 

 やはりご両親のトウモロコシ畑を褒められるのは嬉しいようで、照れくさそうな様子のイーサンの後に続き、再び移動を再開する。

 

 程なく歩いて足を運んだのは、外壁の錆がいい味を出している倉庫群であった。

 イーサン曰く、ここは戦前に運輸業者が荷物の保管用に使用していたものらしいのだが、今では、街の酒場のオーナー達が自身の店で取り扱う商品の保管所として利用しているとの事。

 ここはそれ以上深く解説する点もないとの事で、早々に別の場所に移動しようとしたのだが。

 

「あら? ユウにマーサじゃない?」

 

「ナットさんにニコラスさん、どうしたんですか、こんな所で?」

 

 意外な事に、とある倉庫の前で佇んでいるナットさんとニコラスさんにばったりと遭遇し、俺達は足を止めた。

 

「私達は、情報収集のついでに、ちょっとお小遣い稼ぎをね。……それよりも、ユウとマーサこそ、こんな所で何をしてるのかな~。もしかして、デート?」

 

「な! 何言ってるんですかナットさん!! ち、ちがわないます!」

 

 意味ありげな薄笑いを浮かべたナットさんが続いて漏らした言葉に、マーサが即座に反論する。

 ただ、慌てて噛んでしまったのか、少しその意味は解らなかった。

 

「俺達はこの子の案内で巡ってるんです」

 

「あぁ、成程ね。確かに、街を知る事も情報収集よね」

 

 少しがっかりした様子ながら、イーサンの姿を目にして、納得したように言葉を漏らすナットさん。

 

「あの、所で。ノアさんの姿が見えませんけど?」

 

「あ、あの、ノアさんなら、この倉庫の中です」

 

 俺が先ほどから抱いていたい疑問に答えてくれたのは、ニコラスさんであった。

 どうやら、先ほどナットさんが言っていたお小遣い稼ぎに関連して、ノアさんは倉庫の中に入っているようだが。

 一体、お小遣い稼ぎの内容とはどのようなものなのだろうか。

 

 その詳細をナットさんに尋ねようとした、刹那。

 

 突如壁を突き破る様な音と共に、倉庫の外壁の一部が崩れ、そこから、人間の上半身が飛び出した。

 その光景を目にして、俺はお小遣い稼ぎの内容を大方理解する(だいたいわかった)のであった。

 

 

 こうして理解もした所で、ナットさん達と別れた俺達は、再び街巡りを再開する。

 

「そしてここが、街の治安と安全を守ってくれている"メトロポリタン・セキュリティの本部"だよ」

 

 倉庫群からほど近く、重厚な外見の三階建ての建物。

 出入り口上部の一部欠けている看板には、その建物が戦前は空港警察署として利用されていた事を静かに物語っていた。

 

 そんな建物は今や、メトロポリタン・シティの治安維持と外部からの脅威から住民達を守る使徒であるメトロポリタン・セキュリティの本部として、その意思を、継承する者達により再び利用されていた。

 

 しかも、驚くべきことに、その意思を継承していたいのは建物のみではなかった。

 メトロポリタン・セキュリティの使用しているPPAの他、制服やアーマー等も、戦前の警察の制服やレンジャーコンバットアーマーことライオットギア等。基本的には戦前の警察のものをしようしている。

 最初は単に警察署内に残っていたものを有益に再利用しているのかと思ったのだが、どうやら、そうではないらしい。

 

 イーサンが学校の授業で習った、このメトロポリタン・シティの歴史の説明を聞き、意思の継承が単なる偶然ではない事が判明したからだ。

 何とこのメトロポリタン・シティを開拓したのは、"レスポンダー"と呼ばれる、核戦争を生き残った人々が結成した民兵組織だったのだ。

 ただし、イーサンの話を聞く限り、ウェストバージニアから流れてきたのではなく、元々空港で活動してた消防隊員や警察官、それに医療従事者等により結成されたもので、ウェストバージニアとは繋がりがないようだ。

 

 しかし、組織の理念としてはウェストバージニアのそれと変わらず、核戦争を生き延びた一般市民の支援や医療サービスの提供など、高潔なものである。

 だが、そんな彼らの理念も、やはりウェイストランドの厳しさの前ではあまりに脆弱であり、幾度にもわたる外敵との戦闘を経て、組織の理念は変化していった。

 そして今や、母体となった組織の名を捨て、メトロポリタン・シティとして日々を過ごしているものの。

 セキュリティの使用している装備などは、かつてのレスポンダーの残滓として、今もなお受け継がれ存在しているのであった。

 

 

 こうして、メトロポリタン・セキュリティの本部と、メトロポリタン・シティの歴史の一部を垣間見えた所で、俺達は再び街巡りを再開する。

 

「ここが、街の中心でもある"セントラルエリア"だよ。ここには市役所とか、僕の通ってる学校とかが入ってるんだ」

 

 しばらく歩いて足を運んだ先で目にしたのは、巨大なターミナルビルであった。

 以前訪れたタロン社のシカゴ支店本部もそうであったが、やはり空港跡地を再利用するにあたっては、ターミナルビルは中心地として再利用しやすい様だ。

 

「それじゃ、次で最後だよ、ついてきて」

 

 イーサンの後に続き、セントラルエリアと名を変えた巨大なターミナルビルに足を踏み入れると、行き交う人々の間を縫うように、セントラルエリアを横断する。

 そして目の前に広がったのは、広々とした滑走路に建てられた、テントやバラック等の光景であった。

 

「ここが"住宅地"。僕の家もここにあるんだ」

 

「成程ね。……所で、あそこの旅客機は?」

 

 そんな光景を眺めていると、ふと、駐機場の一角に駐機されていた旅客機の姿が目に留まる。

 以前目にした、道路を塞いでいたものと同型の巨大な旅客機、巨大な翼が折れてしまい、もはや飛び立つことは叶わぬその鋼鉄の怪鳥には、階段が設置され、ネオンなどの装飾が施されていた。

 

「あれはホテルだよ。ケイリーさんが経営しているんだ」

 

 イーサンにその正体を尋ねると、どうやら今は、ホテルとして再利用しているようだ。

 そういえば、前世でも現役を退いた旅客機を再利用したホテルが存在していたな。

 

 

 

「以上で街の案内は終了です」

 

「ありがとうイーサン。とっても役に立つ案内だったよ」

 

「えへへ……。僕も、正義のヒーローのお兄さんとお姉さんの役に立てて凄く嬉しいよ。じゃあまたね! お兄さん、お姉さん!」

 

 無邪気に手を振りながら、自宅の方へと走っていくイーサン。

 そんな彼の姿を見送りながら、俺とマーサはサイド7に関する情報収集を始めようとした。

 

「あんた! そこのあんた!」

 

 その時であった。

 不意に、声をかけられ、声の方に振り返ってみると。

 そこには、擦り切れ継ぎ接ぎだらけの衣服を身に纏った一人の男性老人であった。

 

「あんた! さっき子供に正義のヒーローと呼ばれておったな!」

 

「え、えぇ……」

 

「なら、なら儂を助けてくれ! 儂の奪われた家と畑を取り戻してくれ! この通りじゃ!」

 

 男性老人は懇願する様に、俺の手を取ると、何度も何度も家と畑を取り戻してほしいと叫ぶ。

 しかし、助けようにも状況が分からなければ助けたくても助けられないので、兎に角男性老人を落ち着かせると、順を追って状況を説明してもらった。

 

「儂は、この街から少し離れた場所で小さな農園を営んでいるんじゃが、そこに数日前、レイダーの集団がやって来て、農園と儂の家を占領したんじゃ。幸い、儂はその時、この街のマーケットで作った作物を売った帰りじゃったので事なきを得たが……、じゃが、このままじゃ儂はお終いじゃ!」

 

 男性老人の話によれば、大事な自宅と農園をレイダーの集団に留守の間に占領されてしまったとの事。

 男性老人は自宅と農園をレイダーの集団に占領されたと知るや、メトロポリタン・セキュリティに助けを求めたそうだが、街の住民ではない為、取り合ってもらえなかったそうな。

 今はまだマーケットで作物を売って得た資金はあるものの、このままではいずれそれも枯渇し、にっちもさっちもいかなくなる。

 

 そこで、そうなる前に、俺達に家と農園を占領しているレイダーの集団を退治してほしい、という訳だ。

 

「どうしてわざわざ街の外で農園なんて営んでるのよ、ファームで作ればいいじゃない」

 

「あんた達、もしかして街に来てまだ日が浅いのか? なら教えておいてやろう。メトロポリタン・ファームを利用するには借地料が掛かるんじゃ、それも、高額のな。じゃから、街の中で農家はできんのじゃよ」

 

 マーサの質問に、男性老人は肩を竦めながら答えた。

 レスポンダーとしての理念が残っていれば、男性老人にもメトロポリタン・ファームを利用できたのだろうが、残念ながら、今となっては街を運営していく為の財源として借地料を設けているようだ。

 

「頼む! 農園がなきゃ、作物を作れなきゃ、このままじゃ儂は死んじまう! 頼む、助けてくれ!!」

 

「ユウ、どうする?」

 

 俺は、再び懇願し始めた男性老人の手を取ると、彼の涙で潤んだ瞳を見つめながら告げた。

 

「分かりました。お助けします」

 

 すると、男性老人の瞳から、大粒の涙があふれ出した。

 

「おぉ、おぉ!! ありがとう! 本当にありがとう!!」

 

 男性老人は大粒の涙を流しながら、何度も何度も感謝の言葉を口にして頭を下げた。

 

 サイド7に関する情報収集も大事だが、今は、目の前で困っている男性老人を救う事を優先する。

 それに、ここで見過ごしては、正義のヒーローの名が廃るというものだ。

 

 程なく、落ち着きを取り戻した男性老人から自宅と農園の場所を教えてもらうと、俺とマーサは早速その場所へと向かう。

 相手はレイダー、しかもデビル・ロードのような車輛を保有する連中でもないとの事で、俺とマーサの二人だけで充分だと判断し、二人で向かう事にした。

 

 

 メトロポリタン・シティを出て、南へ下る事約一時間。

 荒廃した大地の、ひび割れ破損した十字路の角に、補修の施された戦前の住宅が一件、佇んでいる。

 その住宅こそ、男性老人の自宅であった。

 住宅の裏手には、男性老人が作物を作っている小さな農園の姿も確認できる。

 

「それで、ユウ。どうやって家の中にいるレイダー達を始末する? グレネードを投げ入れて一気に吹き飛ばしちゃうとか?」

 

「流石にそれは……」

 

 そんな男性老人の自宅から少し離れた廃墟の影に身を潜めている俺とマーサは、自宅の中にいるレイダー達をどう倒すか、その作戦を決めるべく話し合っていた。

 今回の目的はレイダー達の排除ではあるが、流石にグレネードを投げ入れて倒すのは、男性老人の自宅にもダメージを与えるので却下だ。

 序に言うと、家の中で撃ち合うのも、折角取り戻しても自宅がレイダー達の鮮血で血まみれなのも忍びないので、自宅の外に誘き出してレイダー達を始末する事に決めた。

 

「なら、外に誘き出すのはあたしに任せて!」

 

「大丈夫?」

 

「任せてよ」

 

 そして、この作戦で重要な役割であるレイダー達を自宅の外に誘き出す役目、その役目をマーサは進んで行うと口にした。

 俺としては自分が行おうと思っていたのだが、マーサを信じて、彼女に任せる事に決めた。

 こうして作戦が決まれば、あとはそれを実行するのみ。

 

 俺は姿勢を低くして自宅を正面に捉える事の出来る、道端に放置された廃車の影に移動すると、自宅の玄関前に移動したマーサに合図を送る。

 そして、いつでもマーサを援護できるように、M4カスタムを構える。

 

「すいませーん」

 

 俺の合図を確認したマーサが、少し甘えた声と共に玄関扉を叩き、自宅の中にいるレイダー達を誘き出す。

 すると程なくして、玄関扉がゆっくりと開き、自宅の中から見慣れた廃材再利用の装備を身に纏った奇抜な髪形の男性レイダーが姿を現す。

 

「ん? ぐへへ、お嬢ちゃん、どうし──」

 

 男性レイダーはマーサの姿を目にするや、目の色を変えた。

 そして、卑猥な笑みを浮かばせながら、マーサに手を伸ばそうとした男性レイダーよりも早く、マーサの右手が男性レイダーの喉元付近をかすめる。

 

 刹那、男性レイダーの喉元から、大量の鮮血が吹き出す。

 どうやら、右手に握った投げナイフで、男性レイダーの喉元を切り裂いたようだ。

 

「なんだ!?」

 

「医者を呼べ!! 流血患者だ!!」

 

「殺人タイムだ!」

 

 すると、異変に気付いた仲間のレイダー達の声が自宅の中から響き、次いで、次々と発砲音が響き渡り始める。

 標的は当然、仲間を早業で仕留めたマーサだ。

 

 だが、マーサは殺した男性レイダーの死体を文字通りの肉盾にしながら、徐々に後退を始める。

 

「じっとしてろ! お肉ちゃん!」

 

「タイムオーバーだ! プリンセス!」

 

 そんなマーサに導かれるかのように、自宅の中にいたレイダー達が、次々と玄関扉を潜って外へと姿を現す。

 刹那、俺は狙いを定めると、M4カスタムのトリガーを引いた。

 放たれた5.56mm弾は、狙い通りにレイダーの頭部に命中すると、そのストッピングパワーで生物としての行動を不可能にさせる。

 

「かくれんぼかぁ!? 俺に見つかったらやば──」

 

「あ゛ー! 嫌だ!」

 

「新手だ、畜生!」

 

「望みが絶たれたぁーっ!」

 

「うぬ!」

 

 更にこちらの居場所を知られる前に、可能な限り5.56mm弾をレイダー達に叩き込む。

 勿論、マーサも片手にリボルバーを構え、可能な限り攻撃を加える。

 

 こうして、自宅の前をレイダー達の死屍累累で飾っていると、ボスのご登場の如く、自宅の中から大物が姿を現す。

 

「てめぇら! これで終わりだと思うなよ!!」

 

 現れたのは、放置されたパワーアーマーを廃材などの間に合わせの資材で修理し運用可能とした、所謂レイダーパワーアーマーを装備し。

 両手でスレッジハンマーにロケットブースターを取り付けた、スーパースレッジと呼ばれる鈍器を持った、集団のボスと思しきレイダー。

 

「死にやがれ!!」

 

 威勢のいい声と共に、レイダーパワーアーマーの巨体が、地響きを響かせながら近づいてくる。

 俺は一刻も早く迎撃すべく5.56mm弾をお見舞いしたかったが、運悪くボスが現れたのは弾倉交換を始めた直後であった。

 

 慌てず、こんな時こそ落ち着いて弾倉を交換する。

 しかしその間にも、地響きはどんどん近づいてくる。

 

 そして、弾倉交換を終えて迎撃を開始しようとした、その矢先。

 

 突然、ヘルメットのシールド部分が真っ赤に染まったかと思えば、レイダーパワーアーマーが勢いよく倒れ込み、そして、再び動き出す事はなかった。

 一体何が起こったのかと周囲を見回すと、ふと、倒れたレイダーパワーアーマーの後ろに佇む、銃口から硝煙が微かに残る自慢のリボルバーを両手に装備したマーサの姿を発見する。

 よく見ると、レイダーパワーアーマーのヘルメットの後頭部には複数の弾痕が刻まれていた。

 

 この状況から推測するに、どうやらマーサがV.A.T.S.を使用し、レイダーパワーアーマーの背後に回り込み、至近距離から後頭部目掛けて弾丸を撃ち込んだようだ。

 

「これでお掃除完了ね!」

 

「うん、そうだね」

 

 どうやらレイダーパワーアーマーを装備したボスを倒した事で、男性老人の自宅と農園を占領していたレイダー集団は全員始末できたようだ。

 一応、隠れていないか自宅の中も捜索したが、誰も隠れてはいなかった。

 

「それじゃ、この死体を片付けたら、あのお爺さんに報告に戻るわよ」

 

「あ、マーサ、その前にちょっと待ってくれるかな」

 

「?? 何よ?」

 

「折角だから、この自宅の周囲を少し改造していこうと思って。また他のレイダーの集団に占領されないとも限らないしね」

 

 自宅前に転がるレイダー集団の死体を、再利用可能な物を回収すると、近くの場所に穴を掘って埋葬し片付ける。

 それを終えると、ピップボーイからワークショップver.GMを出現させると、男性老人の自宅と裏手の小さな農園を囲う様に、木材の壁を設置していく。

 更に四隅の上部にパイプタレットを設置し、自宅の中にコントロールを設け、自宅の脇に小型発電機を設置してそこから電線を敷設して稼働可能なようにすれば、改造完了だ。

 

 これならば、また留守の間にレイダー等に自宅を占領される心配はぐっと減る事だろう。

 

 

 

 

 こうして改装を終えた俺とマーサは、男性老人にレイダー達を排除し自宅と農園を取り戻したことを報告すべく、約一時間かけてメトロポリタン・シティへと舞い戻る。

 俺とマーサの帰りを待っていた男性老人は、俺とマーサの姿を見つけるや、急いで駆け寄ってくる。

 

「どどど、どうじゃった!? わ、儂の家と畑は、取り戻してくれたのか!?」

 

「もう大丈夫ですよ、占領していたレイダー達は俺とマーサで撃退しました」

 

「おぉ! ほ、本当かい……。ありがとう、本当に、ありがとう!!」

 

 そして、レイダー達を排除したと報告すると、男性老人は俺の手を取り大粒の涙を流す始めると、何度も何度も、感謝の言葉と共に頭を下げた。

 

「それから、少しご自宅の周りを改造して、今後同じような事が起こらないようにしておきました」

 

「ありがとう! 本当にありがとう!! あんた達は、あんた達は鷲の救いのヒーローじゃ!!」

 

 それから暫くして、男性老人が落ち着いた所で、俺は男性老人に別れを告げた。

 

「あぁ、待ってくれ!」

 

「何でしょう?」

 

「ここまで助けてもらって、何のお礼もできないんじゃ、儂の気持ちがおさまらん。これを、これを受け取ってくれ!」

 

 すると男性老人は、徐に何かを取り出すと、取り出したそれを手渡してきた。

 受け取ったものは、黒光りする一挺の大型自動拳銃。

 バースト射撃機能を備えたベレッタ 93Rをベースに、大型スタビライザーや大型リアサイトにグリップの変更等々、全体に改造が施された逸品。

 

 その外見はまさしく、サイボーグ警官の相棒に酷似していた。

 

「そいつは何でも、儂の先祖が戦前に手に入れた一族の家宝じゃそうだが、今の儂には持ってても価値のないもんじゃ、だから、せめてあんたが使ってくれ」

 

「そんな、大事な家宝を……」

 

「いいんじゃいいんじゃ。是非、受け取ってくだされ」

 

「では、大事に使わせていただきます。……そういえば、まだお名前を伺っていまっせんでしたが、お名前は?」

 

「アレックスじゃ」

 

 大事な家宝と聞いて貰うのを躊躇ったが、本人が受け取ってほしいと希望しているのだ、ここで付き返してはそれこそ失礼というもの。

 なので、俺はその大型自動拳銃を有難く受け取ると、ピップボーイに収納し。

 男性老人ことアレックスさんに感謝の言葉を述べると、今度こそアレックスさんに別れを告げ、その場を後にするのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。