Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第六十七話 モンスター・バッシュ 前編

 インターステイトの75(州間高速道路75号線)を使用し北上を続け、途中で一般道へと切り替えて目的地を目指し、走る事数十分。

 ディアボーンに足を踏み入れた俺達を出迎えたのは、デトロイト近郊の立地故に建物の密度が高く、瓦礫や廃墟など、戦前の建物が戦争による影響で無残な姿に変わり果てたゴーストタウンと化した光景。

 しかしながら、これまで見てきたゴーストタウンと異なり、自動車の街として知られているデトロイトに隣接している為、中古販売業者やトラック等の販売店、更には整備工場等、自動車に関連する建物などが多く、地域色が色濃く表れていた。

 

 そんなディアボーン内を走っていると、程なく、巨大な煙突や巨大なタンク、そして巨大な建物群が、目の前に現れる。

 それこそ、今やオーソリティの拠点と化した、アルフォード・モーターズの自動車工場であった。

 長年かけて整備したのか、工場の周辺は廃材や自動車工場らしく廃車等を用いて作られた防壁で囲まれている。

 やがて、出入り口の一つと思しき巨大な門が姿を現した。

 

「おい! 止まれ!!」

 

 巨大な門へと近づくと、門を守護していた懐かしい姿のパワーアーマーが、その鋼鉄の手で制止を促してきた。

 モンキーレンチを交差させドクロをあしらった、海賊旗のようなオーソリティのロゴマークが描かれたそのパワーアーマーは。

 独自改良により、廃材を使った追加装甲を施してはいるものの、頭部と胴体が一体型となったその特徴的な外見は、間違いなくノーヘッドであった。

 

「貴様ら、一体誰だ? ここに何の用だ?」

 

 以降オーソリティ専用ノーヘッドと称するパワーアーマーを装備した、組織の一員である門番は、高圧的な口調で俺達に対して質問を投げかけてくる。

 俺はベディー(M54 5tトラック)から降りると、争う姿勢がない事をアピールしつつ、相手を刺激しないように丁寧に自己紹介を始める。

 

「俺の名前はユウ・ナカジマと申します。仲間と共に傭兵業を営んでいる者です」

 

「傭兵? 傭兵が何の用だ? 生憎、ここの守りならもう事足りている」

 

 そう言って門番が示した通り、門には他にもオーソリティ専用ノーヘッドを装備した門番の他、マシンガンタレットや、オーソリティのロゴマークが描かれた警備用のプロテクトロンの姿もある。

 

「いえ、俺達は雇ってもらいに来たのではなく。ここで、モンスター・バッシュという面白い催しを行っていると聞いたので足を運んだのです」

 

 俺の口からモンスター・バッシュという単語が零れた刹那。

 表情の変化は窺えなかったが、その声色が、明らかに変化した。

 

「なんだ、お前らモンスター・バッシュに参加しに来たのか! それならそうと早く言え!! おいお前ら、ゲートを開けろ!! モンスター・バッシュに参加しに来た参加者様ご一行だ!!」

 

 それまでの警戒感剥き出しの態度から一変、俺達の来訪を歓迎し始める門番たち。

 

「そのトラックは入ってすぐの駐車場に止めておけ。それから、参加の受付は入って左側にある建物の中だ。……あぁ、それから、せめて第五ステージまで頑張ってくれよ、最近根性が足りない挑戦者が多くて、見ていてもつまんねぇからな」

 

 音を立てて開かれるゲートと共に、対応に当たった門番から丁寧な説明を受けると、俺はベディー(M54 5tトラック)と共に敷地内へと進入していく。

 別れ際、門番から個人的なお願いをされたが、当然ながら惜しいとろこで終わるつもりはない。狙うは制覇、そして賞品の自動車だ。

 

 と意気込みを新たにした所で、指定された場所に駐められたベディー(M54 5tトラック)から降りてきた他の皆と合流すると、早速参加の受付を済ませるべく、受付のある建物を目指す。

 因みにディジーは、ベディー(M54 5tトラック)の見張り番だ。

 

 するとその途中、余所者である俺達に対して無言の圧力をかけるかの如く、突き刺さる様な視線を感じる。

 そんな視線を受けつつ、俺達はオーソリティ・TVとの看板が掲げられた、屋上に巨大な電波塔が設けられている建物へと足を運んだ。

 

「お前ら、何者だ? ここに何の用だ!?」

 

 扉を潜り中に足を踏み入れると、途端、荒げた声と共に警備と思しき男性が手にしたコンバットライフルの銃口を向けてくる。

 俺は咄嗟に争う姿勢がない事をアピールしつつ、兎に角男性を落ち着かせる。

 と、男性の身に纏っている装備が、実にこの場所と関係が深いである事に気が付く。

 

 それは、自動車のパーツを寄せ集めて作られた、まさに"カーアーマー"と呼ぶに相応しい水色のアーマーであった。

 タイヤを用いた肩のパーツに、ドアやボンネットを用いた手足や胴体のパーツ、特に、胴体用のパーツにはヘッドライトを用いてアクセントを加えている。

 

 そんなカーアーマーを着込んだ警備の男性は、俺達の呼びかけに程なく落ち着きを取り戻したのか、手にしていたコンバットライフルの銃口を程なく床に向けた。

 

「いやはや、お見苦しい所をお見せしてどうも失礼した」

 

 刹那、奥から男性の声が響くと共に、人影が一つ、足音を立てて近づいてくる。

 

「許してくれたまえ、彼はまだ警備の任について日が浅く、慣れていないのだ」

 

 そして、俺達の前に姿を現したのは、恰幅の良い体型にタキシードとシルクハットを被り、そしてステッキを手にした中年男性であった。

 

「貴方は?」

 

「あぁ、申し遅れた。吾輩はオーソリティの幹部の一人にして、オーソリティ・TV一押しの大人気番組! モンスター・バッシュのプロデューサーを務めるストライルズと申します! 以後、お見知りおきを」

 

 紳士的な口調で自己紹介を行ったストライルズさんに応えるように、俺達もまた自己紹介を行う。

 すると、警備の男性を下がらせたストライルズさんは、早速俺達の訪問の目的を察したのか、両手を広げる大袈裟な仕草と共に、俺達の来訪を歓迎し始めた。

 

「あぁ、もしや皆様は、吾輩の番組であるモンスター・バッシュに参加希望の方々ではないのですか!? えぇ、そうですよね?」

 

「は、はい。その通りです」

 

「素晴らしい! 実に素晴らしい! それでは早速、参加の手続きを始めましょう! 吾輩に付いてきてください!」

 

 ストライルズさんは体の向きを変える際も、必要以上に大袈裟な仕草でしているあたり、もしかして演技ではなく素なのではと思いながら。

 俺達はそんな彼の後に付いて行く。

 

 程なく、テーブルと椅子が設けられた会議室の様な部屋に通されると、俺は促されるままに椅子に腰を下ろした。

 

「では先ず、参加するにあたって注意点を幾つかご説明します。先ずその一、モンスター・バッシュに一度に挑戦できるのは一人のみ。それも、人間でなければなりません。残念ながらロボットは参加不可なのです。だってそうでしょ、視聴者は、この番組に血沸き肉踊るスリルを求めている、血の通っていない鉄のお人形さんでは視聴者も興ざめですよ」

 

 テーブルを挟んで対面に座ったストライルズさんは、不意にハニーとビーちゃんに視線を向けながら注意点を説明する。

 

「その二、パワーアーマーを装備しての挑戦も不可能です。理由は、お判りですよね? 視聴者が求めるのはギリギリのスリル! パワーアーマーを装備されては、そんな緊張感の欠片もなくなってしまいます」

 

 次いで、ノアさんとニコラスさんの方に視線を向けながら、ストライルズさんは説明を続けた。

 

「その三、ここはテーマパークではありませんので、子供の参加もご遠慮願いたい」

 

 ユリアに視線を向け、彼女を子供と勘違いしながら説明を続けるストライルズさん。

 相変わらず表情の変化が乏しいユリアだが、僅かに眉が動いたのを、俺は見逃さなかった。

 あとでフォローを入れておこう。

 

「その四、ミサイルランチャーやミニ・ニューク等、一部の武器は使用不可能となっています。確かに、派手な戦闘は視聴者を喜ばせますが、あまりに派手過ぎてスタジオを壊されては、敵いませんのでね」

 

「成程、確かに……」

 

「そしてその五、使用できる武器や薬品の数には制限があります。大量の武器で圧倒したり、薬品で一時的に身体能力を強化して挑戦されても、視聴者側からすればつまらない筈ですからね。あぁ、ですがご安心を、本番中に消費した弾薬の補充はちゃんとご用意しております。……それと、そちらの腕に装着した物、ピップボーイですよね? それには大量の物資を収納可能な機能が備わっていた筈。もし挑戦するのなら、そちらも外してもらう事になります。もし、外せないというのなら、残念ながら挑戦は出来ません」

 

 と、一通り説明を終えた所で、ストライルズさんはテーブルの上に一枚の紙とペンを置く。

 それは、撮影に関する肖像権、及び挑戦した際に生じた損害の責任をオーソリティ・TV側は一切負わない事、等の内容が書かれた同意書であった。

 

「では、挑戦する方はそちらの同意書の記入欄にサインを」

 

 俺はサインを書くべくペンに手を伸ばしたのだが。

 刹那、横から同じくペンを求めて伸びる手がある事に気が付く。

 

「っ! マーサ」

 

 その手の主は、誰であろうマーサであった。

 

「マーサ、君が挑戦する必要なんて……」

 

「でも、危険なショーなのよ! もしユウの身になにかあったら──」

 

「元々、これは俺の使命が発端なんだ、だから、ここは俺が挑戦する。大丈夫だよマーサ、無事に戻ってくるから」

 

「……、ぜ、絶対無事に戻って来なさいよ! 約束破ったら、承知しないんだからね!」

 

 何だか周囲から物凄い視線を感じる気がするけど、俺はマーサの優しさに感謝し、無事に帰ってくる約束を交わすと、ペンを手に取り、同意書にサインを書く。

 

「では、準備を整えたら、控え室の方にご案内します」

 

 サインを書き終えると、俺は本番に向けて準備を始める。

 規定に沿って、持ち込む武器と薬品を選んでいく。

 メイン火力のM4カスタムにサブとして攻撃型カスタムガバメント。それらの弾薬を充填したマガジンに、M26手榴弾とスティムパックを規定上限の三本。

 そして、万が一の切り札として、以前手に入れたアレをピップボーイから取り出すと、腰のホルスターに収納し。

 

 最後に、ピップボーイを左腕から外すと、マーサに預かってもらうべく、彼女に手渡し、準備が完了する。

 

「では、控え室の方へご案内! ……あぁ、お連れの方々は、特別ルームで挑戦の様子を観戦出来ますので、ご安心を」

 

「それじゃ、いってくる」

 

「うん、気を付けてね」

 

「頑張れよ! ナカジマ!」

 

「応援してるわ」

 

「頑張って」

 

「ビーッ!」

 

「頑張ってね~」

 

「御武運を」

 

 皆の声援を受けながら、俺は案内役のカーアーマーを着込んだ男性の後に続き、控え室へと向かうべく部屋を後にするのであった。

 

 

 

 

 控え室と呼ばれたその部屋は、当然ながら演者のメイク用に鏡など設けられている訳もなく、時間つぶしの雑誌や小腹を満たすお菓子や飲み物等も用意されてはいない。

 椅子とテーブルが一つづ、それに戦前の古びたロッカーが一つ、それだけの小さな部屋だ。

 

 準備が整い次第呼ばれるので、それまで、俺はこの部屋で本番に臨むべく、精神統一に励んでいた。

 

「準備完了だ、出番だぞ!」

 

 すると、扉を叩く音と共に、呼び出しがかかる。

 俺は深く深呼吸した後、座っていた椅子からゆっくりと立ち上がると、扉に手をかけ控え室を後にする。

 

 案内役のカーアーマーを着込んだ男性に案内され、俺は建物内を更に移動する。

 元々工場だった建物を再利用している為か、むき出しの鉄骨や配管等、更に一部の光源を投光器で得ているなど、いかにも居住空間とは異なる光景を目に。

 更に、通路で掃除や小道具の制作などに勤しむオーソリティ・TVのスタッフたちの働きを目にしながら、移動を続け。

 

 やがて、第一スタジオと書かれたプレートが取り付けられた扉の前に案内され、立ち止まる。

 

「はい、こちらも準備できました、はい、はい、分かりました」

 

 すると、案内役の男性が、徐に扉の近くにあるインターホンを使い、何処かと連絡を取り始める。

 やがて連絡を取り終えた案内役の男性は、ぶっきらぼうに説明を始めた。

 

「間もなく本番開始だ。扉を潜ったら、通路を進んで次の扉の前で合図を待て」

 

 そして、扉が開かれると、俺は言われた通り扉を潜ると通路を奥へと進む。

 手書きの矢印に誘われ、組み立て用のコンベアーに沿うように通路を進んでいくと、程なく、説明にあった扉が姿を現し、俺は言われた通りにその前で足を止めた。

 

「皆様! 大変お待たせいたしました! 本日も皆様にウェイストランド一最高のエンターテイメントショー、モンスター・バッシュをお届けする時間がやってまいりました!!」

 

 すると、近くの壁にかけられていたスピーカーから、ストライルズさんの軽快なトークが流れ始める。

 

「今回も皆様が血沸き肉躍る事間違いなしの、興奮のゲームをご用意いたしました! そして、そんなゲームに参加する今回の挑戦者は、こちら!! 遥々西のシカゴからやって来た若き傭兵! 果たしてその実力のほどは如何に!? それは間もなく分かる事でしょう。それでは先ず、挑戦者である彼に盛大な拍手を!!」

 

 壁に設けられた監視カメラのレンズが俺の方に向けられると共に、スピーカーから無数の歓声と共に無数の拍手が流れる。

 おそらく、事前に仕込んでいたものだろう。

 

「挑戦者を待ち受けるのは、ウェイストランドに生息する凶暴で残虐なモンスター達! それらが解き放たれた数々のステージを制限時間内にクリアし、見事、全てのステージを制覇した暁には、偉大な名誉と素晴らしい賞品が手に入ります! え? クリアできなきゃどうなるかって? それは勿論、……あぁ、今晩のモンスター達の餌代が少しばかり浮きますね、ハハハハッ!!」

 

 ストライルズさんの軽快なトークは続く。

 

「おっと誰ですか? そんなの楽勝ですって? 甘く見てはいけませんよ。本日は以前よりも更に強力なモンスター達が参戦し、難易度が更にアップ! 凶暴で血に飢えたモンスター達と挑戦者が如何なる戦いを見せてくれるのか!? それでは、間もなくゲーム開始です!!」

 

 そして、俺は手にしたM4カスタムの状態を確認すると、もう一度深呼吸し、気持ちを引き締めると。

 自動的に開かれる扉を潜るのであった。

 

 

 

 

 扉を潜った先で俺を待ち受けていたのは、広々とした空間であった。

 壁には撮影用に複数のカメラ、更には照明の為の投光器。そして、壁にはカラフルなペンキで描かれた刺激的な落書きの数々が描かれ、刺激的なショーの盛り上げに一役買っている。

 そんな空間の床、その中心部分には、明らかにスタート位置として用意された目印が描かれていた。

 

 その目印の上に立つと、刹那、再びスピーカーからストライルズさんの声が流れ始める。

 

「それでは、殺るか殺られるか、単純明快なゲームの開始です!!!」

 

 そして開始の宣言が告げられた刹那、扉が閉じられ退路を断たれると、突如四方の壁の一部が稼働し、そこから複数の穴が現れる。

 と、そこから、鳴き声をあげながらモールラットが姿を現し、俺目掛けて襲い掛かってきた。

 

「ちっ!」

 

 俺は咄嗟にM4カスタムを構えると、襲い掛かっている一匹目掛けて照準を合わせると、間髪入れずにトリガーを引き、5.56mm弾をお見舞いする。

 早速一匹を片付けると、続けざまに二匹目三匹目と、5.56mm弾をお見舞いし、空腹なモールラット達に文字通り天にも昇る5.56mm弾の素晴らしい鉛の味を提供していく。

 

「この!」

 

 とはいえ、四方から次々に襲い掛かるモールラット達。

 死角から近づくモールラットに警戒しつつ、M4カスタムのストックを利用した重い一撃を利用して弾倉交換を素早く行い、更にモールラットの死体を築いていく。

 

 と、体にチカチカと光る何かを巻きつけられた個体を目にし、俺は、咄嗟にその個体に対して攻撃を集中する。

 刹那、攻撃を受けたその個体は、周囲の別の個体を巻き込みながら爆発すると、周囲に血と肉片をばら撒くのであった。

 

「地雷付き……、これも番組を盛り上げる為の演出か」

 

 個体の中に地雷付きモールラットと呼ばれる、文字通り体に地雷を巻きつけられた個体がいる事に気付かされた俺は。

 地雷付きモールラットの出現に神経を研ぎ澄ませながら、残りのモールラット達を排除していく。

 

「ハハハッ! やはりこの程度のモンスターの相手は朝飯前だったようですね。それでは、次のステージに進んでもらいましょう!」

 

 そして、再び壁が稼働し、穴が塞がれ新たなモールラットの出現が止まると、入って来た扉とは別の扉が開かれ、アナウンスが流れる。

 俺はアナウンスに従い、新たな扉を潜ると、手書きの矢印が所狭しと並べられた通路を進み、階段を上る。

 すると、新たな扉が目の前に現れ、俺は一旦足を止める。

 

 と、扉の横には、複数の弾薬が並べられた棚が置かれている。

 どうやらこれが弾薬の補充ポイントの様だ。

 

 俺は先ほどの戦闘で空になりダンプポーチに放り込んでいた空のマガジンに、補充用に用意された5.56mm弾を込めていくと、補充の完了したマガジンをマガジンポーチに収納する。

 

「それでは、第二ステージの開始です!」

 

 流れるアナウンスと共に、俺は自動で開かれる扉を潜る。

 扉を潜った先は、先ほどと同じく広々とした空間が広がっていた。

 

 ただ、先ほどとは異なり、盛り上げる為の仕掛けが施されていた。

 ホイールに痛々しい棘を無数に取り付けた鋭利な物体が、可動式のレールに取り付けられている。それも二つ。

 

 先ほどと異なり、立ち回りに注意が必要な第二ステージの舞台を観察しつつ、俺は中心部の目印に足を運ぶ。

 

「さぁ、今度はどんな戦いぶりを見せてくれるのかぁ~っ!?」

 

 刹那、退路を断たれると、稼働音と共に殺人ホイールが高速回転を始め、可動式レールの動きに合わせて周回する様に移動を始める。

 と、四方の壁の一部が稼働し、今度は少し大きめの穴が現れる。

 そしてそこから、うめき声の様な声をあげながら、這い出るかのようにそれは姿を現した。

 

「ガァァァッ!」

 

 そして、俺の姿を見つけるや襲い掛かるそれらに、俺は構えたM4カスタムから熱々の5.56mm弾をプレゼントしていく。

 頭を、或いは四肢を吹き飛ばされ床に倒れるそれらの名は、フェラル・グール。

 

「この!」

 

 フェラル・グール達の攻撃を躱しながら、攻撃を続けるが、当然ながらこちら一人に対して相手は複数。

 当然、弾倉交換の際には隙が生まれる。

 

 そこで、俺はステージに用意されていた仕掛けを有効活用する。

 

 弾倉交換のタイミングで、近づいてきたフェラル・グールに蹴りを入れて蹴り飛ばす。

 蹴り飛ばされたその先にあるのは、あの殺人ホイール。

 踏ん張れずに、高速回転する殺人ホイールにぶつかったフェラル・グールは、まさしくミンチより酷い状態となった。

 

 こうして仕掛けを有効活用して数の不利を補いながら戦っていたが、流石に攻撃を避け続けるにも限界に達し、手足にひっかき傷を受ける。

 しかも、個体の中にはオーソリティ・TV側が装備させたのか、廃材で出来たアーマーを装備している個体もおり。

 更には、モールラットに比べ横へのステップ等、人型故の複雑な動きも相まって、第一ステージよりも多少の苦戦を強いられた。

 

「いやー、素晴らしい! 実に素晴らしい! このステージも見事にクリアです。では、次なるステージに向けてお進みください!」

 

 それでも、なんとか第二ステージをクリアすると、新たに開かれた扉を潜り、次の第三ステージを目指して通路を進む。

 

 移動中、ここまでの戦闘で乱れた息を整えると、第三ステージの扉の前まで移動を終え、弾薬の補充を行う。

 

「さぁ、皆様お待ちかね! 爆発的でスリリングな第三ステージの開始です!!」

 

 扉が開き、中に足を踏み入れる。

 この第三ステージには第二ステージの様な仕掛けは、一見してないかに思われたが。

 よく見渡せば、天井から複数の配管が突き出していた。

 

「それでは! スリー! ツー!! ワンッ!!! スタートッ!」

 

 刹那、退路を断たれると、四方の壁の一部が稼働し、更に大きな穴が四つ、姿を現す。

 そして、聞き慣れた足音と共に姿を現したのは、大きな甲羅に一対の巨大なハサミ、そして複数の足、それは紛れもなくマイアラークの雌であった。

 

「くそ!」

 

 予想はしていたが、それでもステージを重ねるごとに、更に相手が強力になっていく事に悪態をつきながらも。

 構えたM4カスタムを発砲し、四方から迫るマイアラークの雌に攻撃を仕掛ける。

 しかし、モールラットやフェラル・グールと異なり、重装甲を誇るマイアラークは、一匹倒すだけのも苦労する。

 

「っ!」

 

 こうして倒すのに手間取っているその間にも、死角から近づいてきたマイアラークの雌の巨大なハサミが振るわれ、気配を感じ取った俺はそれを間一髪で躱す。

 限られた空間でのマイアラークとの戦闘と言う最悪の組み合わせの中、一匹ずつ確実に仕留めていく。

 

 と、突然、何かが燃えるような音と共に、天井の配管から、何かが落下してくる。

 

 ふと目にしたのそれは、赤い筒状に黒い導火線が取り付けられた。

 それは紛れもなく、"ダイナマイト"であった。

 

「取扱注意!! ダイナマイトの投入だぁぁーーっ!!」

 

 くそ! 爆発的でスリリングってそういう事だったのか!

 俺は内心悪態をつきながらも、降ってくるダイナマイトの爆発に巻き込まれないようにダイナマイトの軌道に注目しながら、位置取りに注意しつつ戦闘を続ける。

 

 爆発音と共にマイアラークの断末魔が響く。

 ダイナマイトの爆発に巻き込まれ、マイアラークのハサミや足が飛び散る。

 

 そんな惨状の中、俺は神経をすり減らしながら戦闘を続けていた。

 

「っ! ぐ……」

 

 だが、次の瞬間、何度目かのダイナマイトの爆発が起こり、それにマイアラークが巻き込まれたのだが。

 その際、飛び散ったハサミの一つが、運悪く俺の頭部に直撃した。

 

 甲羅と共にハサミもまた、重装甲を誇っている。

 そんなハサミは当然、鈍器としても相応の威力を有している。

 そんなものが、ヘルメットではなくミリタリーキャップを被った頭部に直撃したのだ、俺はその威力に脳が揺すられ、倒れそうになる。

 

「おっと! 今のは痛そうだが、挑戦者だいじょうぶかぁ~?」

 

 だが、寸での所で何とか踏みとどまると、頭部の痛みに耐えながら、戦闘を継続する。

 

「っ!」

 

 すると、新たに落下してきたダイナマイトが、俺のいる場所の近くに落ちる。

 後ろに緊急回避を行おうかと思ったが、後ろが壁である事に気が付き、咄嗟に近くに転がっていたマイアラークの死骸を手に取ると、身をかがめ、それを盾にすべく構えた。

 

 コンマ数秒後、耳を劈く爆発と共に、ダイナマイトが爆ぜた。

 

「ぐっ……」

 

 刹那、右脚と右肩に痛みが走る。

 どうやら完全に防ぎきれず、破片を浴びてしまったようだ。

 

 だが、いつまでも痛がってはいられない。

 俺は再び立ち上がると、粉塵舞う中、残りのマイアラーク達を片付けるべく構えたM4カスタムの発砲を続けた。

 

「素晴らしい! 本当に素晴らしい! 第三ステージをクリアした挑戦者に盛大な拍手を!! では、次なるステージへどうぞ」

 

 そして、第三ステージを終えた俺は、次なる第四ステージへ向け、新たな扉を潜る。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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