Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第六十八話 モンスター・バッシュ 後編

「っ!」

 

 第四ステージへと続く通路を歩いていた刹那。

 不意に、めまいに襲われ、堪らず壁に手をつく。

 

 そして、何かが頬を伝うのを感じ、拭った後、その手にはめていたミリタリーグローブに付着した赤いシミを目にして、俺は、頬を伝っていたそれが汗ではないと理解した。

 と、まるでそれがトリガーとなり、戦闘中に分泌されていたアドレナリンの効果が切れたのか、突如、先ほどの戦闘の疲れと痛みが体中を襲う。

 

「くっ!」

 

 俺は咄嗟に、メディカルポーチからスティムパックを一本取り出すと、出血と痛みを治癒するべく使用する。

 

「はぁ……、はぁ……」

 

 出血が止まり、傷が癒えても、スティムパックは蓄積された疲労までは回復してはくれない。

 出来れば、少し休憩してから次のステージに臨みたいが、どうやらそれは叶わないようだ。

 

「何をしている! 早く次の扉の前に移動しろ!」

 

「ほら、早くしろ!」

 

 カーアーマーを着込み、コンバットライフルを肩にかけた男性二人が何処からか現れ、次のステージに進むように高圧的な態度で急かしてくる。

 オーソリティ・TV側としては、流れを止めて変な間を作りたくないのだろう。

 

 俺は二人の催促に応えるように、何とかだるい体を奮い立たせると、通路を進んで第四ステージの扉の前まで足を運ぶ。

 そして、弾薬の補充を終えると、深く深呼吸して、息を整え。

 最後に、気合を入れる。

 

「さぁ、残るステージもあと二つ! 果たして、今回の挑戦者は、見事完全制覇を成し遂げるのか!? 運命の第四ステージ、開始です!!」

 

 扉が開き、中に足を踏み入れる。

 第四ステージにも仕掛けは施されていた、壁の幾つかに、先の尖った金属パイプが複数取り付けられ、凶器と化している。

 

「果たして無事に生き残れるのか!? それともここで脱落か!? 運命の第四ステージ、スタートッ!!!」

 

 合図と共に、もはやお決まりとなった退路が断たれると、俺は四方に目を配る。

 だが、そんな俺の警戒に反して、壁が稼働したのは正面の一面のみ。

 

 ここまできて肩透かしを食らったかと思った、刹那。

 

 正面の壁に現れた巨大な穴からのそのそと姿を現したモンスターの正体を目にして、俺の顔は途端に強張った。

 二メートル近い体長に、毛が抜け落ち、がっちりとした体形が露わになった巨体、獰猛な顔つきが、凶暴な本能を体現しているその生物の名は、ヤオ・グアイ。

 戦前、捕虜収容所に収監されていた中国人たちが呼んでいた名が、今や正式な名称となった。核戦争の影響で変異したアメリカグマだ。

 

 何故戦前に核戦争の影響で変異したアメリカグマを捕虜の中国人たちが呼んでいたのか、最初は疑問に思ったが。

 おそらく、戦前に不法廃棄された核廃棄物の影響で、既に戦前であっても、一部の地域では生物の変異が始まっていたからではと考えられる。

 

 と、余計な考察はこの辺りにして、今は目の前のヤオ・グアイとの戦闘に意識を集中させよう。

 

 一対一。

 これまでのステージと異なり、数では同数。

 だが、身体能力で言えば、基がクマだけにヤオ・グアイはウェイストランドの生態ピラミッドでも、上位の位置を占めている生物の一種だ。

 

「ガァァァッ!!!」

 

「っ!」

 

 刹那、ヤオ・グアイが咆哮と共に、その凶暴で鋭い歯を露わにしながら、俺に襲い掛かる。

 俺は構えたM4カスタムの照準をヤオ・グアイの足に目掛けると、トリガーを引く。

 

 身体能力の高いヤオ・グアイとの戦闘の基本は、兎に角動きを止める為に足に重傷を負わせる事だ。

 野外でならば、遠くの物陰から居場所を悟られる事なく、安全な距離を確保して足を狙える。

 

 だが、ここは空間に限りがある場所。しかも、既に互いの居場所は明らかだ。

 当然、その巨体に似合わぬ素早さで彼我の距離などあっと言う間に詰められ、足に重傷を負わせる前に、その凶暴な爪を有した前足が俺を襲う。

 

「っ! く!」

 

 何とか前足の爪が俺の体を捉える寸前で避ける事に成功するも、今のは危なかった。

 余裕をもって避けたつもりが、思いのほかギリギリだった。

 何だか、自分で思っているよりも体の敏捷性が損なわれている気がする。

 それだけ、疲労の蓄積が想像以上なのか。

 

 だが、そんな俺の状態などお構いなしに、ヤオ・グアイは更に二撃目をくり出してくる。

 

「っ!」

 

 その後ヤオ・グアイの鋭い爪を躱しつつ、5.56mm弾を浴びせるも、やはり十数発被弾した程度ではびくともしない。

 逆に、躱しきれずヤオ・グアイの鋭い爪が掠り、左腕に引っ掻き傷を受けた俺は、顔を歪ませ、奥歯を噛みしめながら、痛みを堪えた。

 

「な! ……がはっ!」

 

 そんな綱渡りのような状態で何とか戦闘を続けていたが、ふと、弾倉交換のタイミングで意識をヤオ・グアイから逸らしてしまった隙をつかれ、ヤオ・グアイの重たい一撃を受けてしまう。

 幸い引っ掻きではなかったが、その巨体から繰り出されたパワーを前に、俺は弾き飛ばされ、壁に叩きつけられる。

 

 背中から全身に伝わる痛み、叩きつけられた拍子に意識を手放しそうになるも、何とか寸での所でつなぎとめる。

 

 ただ、そこでも幸いだった事がある、隣を見れば、先の尖った金属パイプの束。

 もし弾き飛ばされた先が横に数センチずれていれば、俺は醜い串刺しと成り果てていただろう。

 

「く……」

 

 とはいえ、戦況としてはより厳しいものになった事に違いはない。

 壁に叩きつけられた痛みで、立っているのもやっとであると気付いているのか、ヤオ・グアイはその鋭い爪でトドメを刺すべく俺に迫る。

 

 俺は咄嗟に、レッグホルスターから攻撃型カスタムガバメントを素早く抜くと、意識を集中させ、ヤオ・グアイの眼光鋭い眼に照準を合わせ。

 そして、トリガーを引いた。

 

 マズルフラッシュと共に銃口から放たれた.45口径弾は、ヤオ・グアイの顔目掛け飛翔し。

 

「グォォォォッ!!!」

 

 刹那、見事に眼光鋭い左の眼を貫いた。

 筋肉と言う鎧で身を固めたヤオ・グアイも、流石に眼だけは鎧のようにはできていない。

 

 その痛みに耐えかね、ヤオ・グアイは足を止めると、暫し悶え始める。

 

 そして生まれたその隙に、俺は次の手を打つ。

 隣に設けられていた先の尖った金属パイプの一本の根元を攻撃型カスタムガバメントで撃つと、外れそうになったその一本を両手で強引に外す。

 

 こうして先の尖った金属パイプを手に入れた俺は。

 

「うぉぉぉぉっ!!」

 

 力を振り絞るべく雄叫びをあげながら、ヤオ・グアイ目掛けて駆け出し、懐に飛び込むと。

 手にした先の尖った金属パイプの切っ先を、ヤオ・グアイの口目掛けて勢いよく突き刺した。

 

「ギャ! ガァァァッ!!」

 

 口内から脳を貫通する様に突き刺すと、ヤオ・グアイの口から大量の血が流れ出る。

 だが、それでもヤオ・グアイは死ぬ事無く、そんな状態にも関わらずヤオ・グアイは大きく頭を振るう、まるで突き刺さった金属パイプを勢いに任せて抜くかの如く。

 

 しかし、金属パイプは抜けなかったが、金属パイプを手にしてた俺は、勢いに負けて振り払われると、床に叩きつけられる。

 

 再び体に痛みが走るが、俺はそんな事気にも留めず、体勢を立て直すと、すぐさまレッグホルスターから攻撃型カスタムガバメントを抜き、トリガーを引いた。

 狙ったのは、ヤオ・グアイの頭だ。

 畳みかける様に、装填しているマガジンの残り分を叩きつける。

 

 すると、程なく。

 か細い断末魔と共に、ヤオ・グアイの巨体がゆっくりと床に横たえた。

 

「決まったぁーっ!! 第四ステージもクリアだぁーっ!! さぁ、残すはラストの第五ステージのみ! 果たして、今年初の完全制覇となるかぁ!? さぁ、挑戦者は運命の第五ステージへ!!」

 

 その瞬間、スピーカーから割れんばかりの歓声と拍手が流れる。

 

 

 

 

「っ、はぁ……、はぁ……」

 

 それを耳にした瞬間、俺はヤオ・グアイとの戦いに勝利したと確信すると共に。

 突如として襲い掛かってきた痛みと疲労に耐え切れず、片膝をついてしまう。

 

 俺はメディカルポーチからスティムパックを一本取り出すと、痛みを癒すべく使用する。

 

 痛みはそれにより徐々に引いていく。

 だが、疲労は未だに残ったままだ。

 体が、重い。力が、入らない。

 

 できる事なら、このまま倒れ込んで少し休みたい。

 だが、それは叶わぬ願いの様だ。

 

「さっさと立て! 休むな!!」

 

「おら、行くぞ!!」

 

 カーアーマーを着込み、コンバットライフルを肩にかけた男性二人が扉からステージ上に姿を現すと、俺の手を引き無理やり立たせ、そのまま引きずるかのように最後のステージへと続く通路へと連れていく。

 

 程なくして、最後のステージの扉の前まで連れてこられると。

 俺はもう、弾薬を補充する行為すら辛いと感じつつも、補充を済ませると、その時が訪れるのを待った。

 

 このステージで最後、これをクリアすれば、終わる。

 

 まるで自分自身に言い聞かせるように、何度も何度も心の中で言葉を繰り返しながら。

 

「それではいよいよ、運命の第五ステージ、開始したいと思います!!」

 

 扉が開き、俺は少々ふらつきながら、最後の舞台である第五ステージへと足を踏み入れる。

 そこで目にしたのは、特に仕掛けも施されていない、正面に巨大な扉が設けられたステージの光景であった。

 

 どうやら、最後のステージは仕掛けもなく、シンプルな戦いの舞台として整備されている様だ。

 

「さぁ、泣いても笑ってもこれがラスト! 果たして、挑戦者が手にするのは名誉か!? それとも地獄への片道切符か!? それでは、イッツ・ショーーターーーイムッ!!」

 

 そして、合図と共に退路が断たれると、正面の巨大な扉が音を立ててゆっくりと開いていく。

 

「……ち! 最後はこんな大物かよ!」

 

 そこから姿を現したモンスターの姿を目にして、俺は包み隠さず舌打ちした。

 三メートルはあろう巨体に、鋭い手足の爪、強靭な皮膚に巨大な尻尾。そして、凶暴な顔面にヤギの様な角。

 その姿は、モンスターと言うよりも怪獣という方が適している。

 

 ウェイストランドの生態ピラミッドでも、間違いなく最上位の一角を占める、最も凶暴で危険な捕食者の一種。

 悪魔の如くその名は、デスクロー。

 

「グウォォォッッッッ───!!!!」

 

 これまでのモンスターとは桁違いな、大地を揺るがさんばかりのデスクローの咆哮。

 

 くそ、こんなのパワーアーマーを装備していても楽に戦えるような相手ではない。

 しかも今の俺の体の状態は最悪だ。

 勝ち目なんて、あるのか……。

 

 いや、咆哮に怖気づいて、消極的になるな。

 リーアの人々の為。それにマーサとの約束を果たす為!

 

「うぉぉぉっ!!」

 

 俺は恐怖を振り払い、気持ちを奮い立たせんと雄叫びをあげると、手にしたM4カスタムのトリガーを引いた。

 兎に角、デスクローもヤオ・グアイ同様、先ずは足を狙う。

 

 だが、デスクローはその巨体に似合わぬ敏捷性で巨体を左右に動かして5.56mm弾の火線を逸らしながら、一気に彼我の距離を詰める。

 

「ぐっ!!」

 

 そして、鋭い手の爪が俺を捉えるべく迫り、俺は避けられないと判断し、咄嗟に手にしてたM4カスタムでその一撃を防ごうとした。

 刹那、爪により弾き飛ばされるM4カスタム。

 床に弾き飛ばされたM4カスタムを目にすると、銃身は無残に折れ曲がり、機関部やハンドガードも、鋭い爪の傷跡が刻み込まれていた。

 もはや、使う事は出来ない。

 

「くそ!!」

 

 刹那、俺はデスクローから距離を取るべく駆け出す。

 こんな場所では、デスクロー相手に多少距離を取った所で気休めでしかないが、それでも俺は駆け出す。

 

 だが、疲労からか、思ったほど速く走れない。

 

「グォァァッ!!」

 

 と、逃すまいと再びデスクローの鋭い手の爪が俺に迫り。

 

「ぐは!」

 

 その鋭い爪が、俺の胴体を捉え、引っ掻く。

 ショルダーストラップは無残に引き裂かれ、取り付けられていたマガジンポーチが床に散らばる。

 そして防弾チョッキにも、痛々しい引っ掻き傷をつけられる。

 

 ただ、幸い防弾チョッキにより、爪が体にまで達しなかったのか、そこまで痛みは感じない。

 

 とはいえ、戦闘開始からデスクローにいいようにやられてばかり。

 何とか状況を逆転させないと……。

 

「っ! がはっ!!」

 

 と思った刹那。

 デスクローの巨大な尻尾が、俺を弾き飛ばす。

 

 弾き飛ばされた俺は、壁に叩きつけられる。

 刹那、俺は床に両手と両膝をつくと、込み上げてくる何かを床に吐き出した。

 

 そして目にしたのは、床に広がった真っ赤な血溜まり。

 そう、それは紛れもなく、俺自身の血であった。

 

「く、くそ……」

 

 だが、吐血したからと言って、今は休んでなどいられない。

 俺はふらつきながらも何とか立ち上がると、強者としての余裕に満ち、ゆっくりと近づいてくるデスクローを睨みつける。

 

 だが、その視界は、最早霞んでいた。

 

 戦況はまさに最悪だ。

 メイン火力のM4カスタムは使用不可能になり、体はボロボロ、もはや傍から見れば万事休すだろう。

 

 しかし、俺は最後まで諦めるつもりはない。

 

 腰のホルスターから切り札、エイリアンブラスターを抜くと、小刻みに震える両手でそれを構えた。

 おそらく、次の一撃で勝負が決する。

 

「グォァァッ!!」

 

 デスクローの咆哮と共に、デスクローの巨体が一気に迫る。

 俺は、霞む視界に捉えたデスクロー目掛け、エイリアンブラスターのトリガーを引いた。

 

 刹那、エイリアンブラスターから放たれた青白い光線が、デスクローの巨体に着弾する。

 すると、次の瞬間、デスクローの巨体が一瞬の内に青い灰と化した。

 

 

 

 

「か、勝った……」

 

 デスクローが青い灰と化した事を確認した俺は、安堵と共に再び膝をつく。

 

「がは!」

 

 だが、それで緊張の糸が切れたのか、再び痛みと疲労が襲い掛かり、俺は再び吐血する。

 振るえる手で、何とかメディカルポーチから最後の一本となったスティムパックを取り出すと、使用する。

 

 これで吐血と痛みは何とかなった。

 だが、相変わらず疲労困憊で、最早立ち上がる事すら難しい。

 

「お……、おぉっと!! 何という事でしょう!! あのデスクローを見事に倒しました!! 見事、実に見事!! 皆様、栄えある名誉を手に入れた挑戦者に盛大な拍手を!! それでは、見事に完全制覇を成し遂げた挑戦者の表彰式を執り行いたいと思います。皆様、チャンネルはもう少しそのまま」

 

 まさかデスクローを一撃で、それも青い灰と化して倒してしまう等、想像もしていなかったのか。

 暫し沈黙が続いた後、我に返り、役割を思い出したかのように再び喋り出すストライルズさん。

 

「イェーイ!! ヒュー! ヒューッ!!」

 

「やっちゃたよ、おい! やっちゃったよ!」

 

「イェーイッ!! ハハッ!!」

 

 すると、扉が開き、ピエロの衣装にカーニバルにでも登場するような。

 いや、よく目を凝らせば、フォールアウト76の期間限定イベント、ファスナハトに登場するマスクを被った複数の男女が、文字通りお祭り騒ぎの様なテンションで現れる。

 おそらく番組のスタッフだろう。

 

「よ、ヒーロー!!」

 

「あんたが大将!!」

 

「モンスター退治は彼にお任せ!!」

 

「ヒューッ! ヒューッ!!」

 

 正直、疲労困憊の今の状態でこのテンションを相手にするのはしんどいのだが。

 俺は何とか立ち上がると、ぎこちないながらも笑顔を作り、数度、軽く会釈して応える。

 

「それじゃ、我らがヒーローの表彰式だ!」

 

「行こ行こっ!!」

 

「イェーイッ!!」

 

 そして、そんな彼らの肩を借り、俺は表彰式が行われる場所へと移動する。

 扉を潜り、階段を下りて、通路を進んだ先で目にしたのは。

 スポットライトで照らされた特設ステージ上で、主役である俺の到着を心待ちにしている、ハイテンションの番組スタッフとストライルズさん。

 そして、そんな特設ステージの様子を放送用のビデオカメラで撮影している番組スタッフと、その脇で佇むマーサ達の姿もあった。

 

 ふと、心配そうな表情をしたマーサと目が合ったが、今はまだ番組の最中という事もあり、駆け寄ろうとしたマーサは番組スタッフに止められる。

 

「さぁ、主役のご登場だぁ!」

 

「イェーイ!!」

 

「いいぞ! いいぞっ!!」

 

「よ! 待ってました!!」

 

 陽気な格好の番組スタッフ達が場を盛り上げる中、特設ステージの上に足を運んだ俺は、中央に設けられていた、きらびやかな椅子に座らされる。

 

「それでは、先ずは見事完全制覇を成し遂げた挑戦者の彼に、挑戦した感想を聞いてみましょう!? いかがでした?」

 

「と……、とても、難しい、ものでしたが。挑戦し甲斐のある、ものでした」

 

 マイクを向けられ、どの様な感想を述べようかと思った刹那。

 放送用のビデオカメラの脇にいた番組スタッフが、手にしたカンペを必死に指さしている事に気が付く。

 

 なので俺は、そのカンペに書かれた言葉を一言一句間違う事無く口にするのであった。

 

「ハハハッ! 素晴らしい感想をありがとうございます!! それでは、表彰式とまいりましょう!」

 

 そして、ストライルズさんが読み上げる賞状を受け取り、更に賞品である自動車の鍵を受け取ると。

 

「さぁ、笑って、笑って! ほら、ちゃんと笑わないと、そうそう」

 

 最後に、無理やり笑顔を作ると、フラッシュがたかれ、記念撮影を最後に表彰式を終えると。

 全ての進行が終わり、無事に番組は終わりを告げた。

 

「ハハハッ、本当に素晴らしい活躍だったよ! これなら、一年は再放送できるな、ハハハッ!! では、また挑戦したくなったらいつでも来てくれ、歓迎するよ。では、失礼。……ほら、さっさと戻って、次のショーの準備だ!! おい、捕獲の連中に、今度はもっと凶暴な奴を捕まえてくるように言っとけ!」

 

 番組が終わり、足早に撤収するストライルズさんや番組スタッフ達。

 

 

 こうしてオーソリティ・TVの面々がいなくなった所で、マーサ達が俺のもとに駆け寄ってくる。

 

「ユウ!」

 

 真っ先に駆け寄ってきたのは、誰であろうマーサであった。

 マーサは俺に抱き着くと、凄く心配したと、すすり泣くような声で何度も何度も繰り返した。

 

「でも、マーサ、約束、守ったよ……」

 

「馬鹿! 馬鹿馬鹿っ!! こんなにボロボロじゃない!」

 

 そして、遂に耐え切れなくなったのか、マーサの瞳から大粒の涙がこぼれ、彼女の頬を伝う。

 駄目だな、女性を泣かせるような男は最低だと、父から言われていたのに。

 心配をかけて、泣かせてしまって……。

 

「心配かけて、ごめんね……」

 

 俺は、最後の力を振り絞って、精一杯の笑顔を作ると、マーサの頭を優しく撫で。

 

 そして、次の瞬間、俺は意識を手放した。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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