Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第七十一話 伝説との邂逅

 退院祝いのパーティーを終えた翌日からも、俺のリハビリは続いた。

 リハビリの為、メトロポリタン・シティの住民の方々の問題を幾つか解決するのに協力した。

 

 

 先ずは、不意に声をかけてきた住民の一人、コルテス・イェーと言うアジア系女性の問題。

 怯えた様子で助けを求めてきた彼女は、話を聞くと、元奴隷だったらしく、一年前にレーズン・フォールズから奴隷商人達の隙をついて脱走し、命からがらメトロポリタン・シティまで逃れてきたという。

 しかし、いつ奴隷商人達が自分を連れ戻すべく追手を差し向けるかと、この一年、怯えながら生活していたという。

 

 そこで彼女は、追手が差し向けられても身を守れるように、護身用の銃を買うのに必要なキャップと、銃の扱い方を教えてほしいと頼んできた。

 

 銃の扱いは兎も角、護身用の銃の購入代金位、自身で用意してほしいと思わなくもなかったが。

 元奴隷という事で教養も低く、実入りの良い職になかなか就けられず、その日生きる分を稼ぐだけで精一杯という事で、銃の購入代金も代わりに支払う事にした。

 

 マーケットにある銃砲店で.38口径弾のハンドメイド・パイプリボルバーと.38口径弾を購入すると、射撃場に移動してイェーさんに銃の扱いを教えるのであった。

 こうして、実入りは全くなかったが、それでも人助け出来た事に満足し、イェーさんの問題を解決すると。

 

 

 続いては、メトロポリタン・シティの老練な水道技師であるボルダーと言う名の男性の問題。

 彼の話によれば、最近、地下に設けている供給用の水道パイプを点検する為に利用していた点検用の地下通路に、何処から侵入したのかラッドラットの群れが住み着き、水道パイプの点検などが出来ずに困っているとの事。

 この様な問題こそ、メトロポリタン・セキュリティの出番の様に思えるが。

 ボルダーさん曰く、セキュリティにラッドラットの群れの駆除を依頼して、実際に駆除に人を差し向けた様なのだが、何でも"ラッドラットの神様"なる群れのリーダーと思しき巨大な個体に返り討ちに遭って、駆除を断念したのだとか。

 

 PPA等、質の高い装備を有しているのに、変異したネズミ如きに返り討ちに遭うって……。

 と、メトロポリタン・セキュリティの先行きを不安に思いつつも、おそらく地下通路故にパワーアーマーであるPPA等を使用できなかったのだろうとフォローしつつ、依頼を受けると地下通路に足を運んだ。

 

 地下通路用の出入り口であるマンホールから地下通路に足を踏み入れると、そこは大人一人がやっと通れる程度の広さしかない狭い通路であった。

 成程、この広さではパワーアーマーやライフル等、取り回しが悪くなりラッドラット程度でも簡単に倒せるような状況ではないな。

 との感想を抱きつつ、フラッシュライトと攻撃型カスタムガバメントを手に、俺は通路を奥へと進んでいく。

 

 道中、子供を含めラッドラットを.45口径弾の餌食にし、その屍を踏み越えながら更に奥へと進むと。

 一般的なラッドラットよりも更に巨大な個体、おそらくラッドラットの神様と呼ばれている個体と遭遇した。

 

 確かに一般的なラッドラットよりも巨大で、その大きく鋭い歯から繰り出される噛みつきは威力がありそうではあったが。

 やはり所詮はラット、大きくなった分狙いやすくなった頭部に数発の.45口径弾をお見舞いして、神様の居場所である天国へと案内させてあげた。

 

 こうして、点検用の地下通路の安全を確保し、ボルダーさんの問題を解決すると。

 報酬として百キャップと感謝の言葉を受け取るのであった。

 

 

 その他にも、セザールさんに頼まれて指定された野生動物を狩って持ち帰ったり。

 ボルダーさんに集めてきた廃棄品を一個につき十キャップで引き取ってもらったり。

 Dr.コリーに薬品製造に必要な殺菌剤を収集して一個につき十五キャップで引き取ってもらう等。

 

 数日間にわたり、リハビリを兼ねて住民の方々の問題を幾つか解決するのに協力したのであった。

 

 

 

 

 そして、現在。

 リハビリの甲斐もあって、衰えた筋肉も殆ど元に戻ったと実感してきたので、そろそろインターセプターの教習を始めようと思い、特訓に適した場所の下調べを行っていた。

 

「ここなんていいじゃねぇか、広々としていて、特訓にはもってこいだ!」

 

 下調べに同行するディジーも太鼓判を押した候補地とは、メトロポリタン・シティの隣にある広大な土地である。

 詳しく解説すると、この広大な土地は、元々戦前の空港の敷地として使われていたもので、現在のメトロポリタン・シティは、本来の敷地の半分しか使われていないのである。

 その為、手つかずの残り半分が、バラック等も建てられることなく残っているのだが。

 そのまま使うにしても、今のままでは問題がある。

 

 それが、野生動物の対処だ。

 元空港という事で、一応戦前に設けられたフェンスはあるのだが。

 それは核戦争の影響や風化などにより破損が目立ち、もはやフェンスとしての機能は失われている部分が多い。

 その為、メトロポリタン・シティを囲う修理されたフェンスと異なり、手つかずの部分のフェンスは破損している部分から野生生物が簡単に侵入できてしまうのだ。

 

 そこで考えたのが、ワークショップver.GMを使って、手つかずの部分を囲う様に防壁を整備する、と言うものであったが。

 そこにも、問題が立ちはだかった。

 それは、防壁を整備する広さが広い為、残っている資材では全てを囲う分を作れないので、不足分の資材を調達しなければならないという問題だ。

 

「なら、デトロイトに調達しに行くってのはどうだ? あそこは資材の宝庫だぜ?」

 

 しかし、そんな問題に対するディジーの提言もあり、問題解決の目途は早々に立った。

 確かにデトロイト中心部やその近郊は、オーソリティのような連中が活動する程、様々な資材の宝庫だ。

 だがその分、フェラル・グールやスーパーミュータント等が闊歩する地獄だとも言われていたし、装備を整えてから向かった方がいいのかもしれない。

 

 とはいえ、マーケットにある銃砲店などを覗いてはいるのだが、なかなかいいものがないんだよな。

 よし、仕方ない、今の装備でも万全とは言い難いだけで問題はないので、資材を調達しに向かうとするか。

 

「すみません、そこのお兄さん」

 

「ん?」

 

 と資材の調達に向かう事を決めた矢先。

 不意に声をかけられて声の方へと振り向くと、そこには、一体のMr.ハンディの姿があった。

 ふわふわと俺の方へと近づいてくると、やがてMr.ハンディは自己紹介を始める。

 

「はじめまして、(わたくし)、サイーブと申します」

 

「ご丁寧にどうも、俺の名前はユウ・ナカジマです」

 

 自己紹介を終え、差し出されたマニュピレーターと握手を交わし終えると、サイーブは早速用件を切り出し始めた。

 

「それで、今回私がナカジマ様のもとを訪ねたのは、私の仕えている旦那様がナカジマ様とお会いしたいと申しており、私がこうして訪ねた次第です」

 

「サイーブのご主人様、ですか?」

 

 用件を聞き、俺は二つ返事を行う事はしなかった。

 素性も分からぬ人物が突然会いたいと言われて、二つ返事で会いに行くことは、俺には出来なかった。

 

 なので、仕えているサイーブに、会いたいと申している人物の素性を尋ねてから会うかどうかの判断をする事にした。

 

「サイーブのご主人様は、一体どんな人なんです?」

 

「旦那様はガンスミスとして働いており、とてもお忙しい方です。ですので、お忙しい旦那様に代わって、私がナカジマ様のもとを訪ねた訳です」

 

「その方は、どうやって俺の事を知ったんです?」

 

「モンスター・バッシュを拝見なされてです。おそらく、ナカジマ様のご活躍に心を打たれ、お会いしたくなったのでしょう」

 

 成程、サイーブのご主人様はガンスミスで、モンスター・バッシュを見て俺の事を知ったんだな。

 それにしても、ガンスミスが俺に会いたがっているか……。

 

 もしかしたら、その人物が作った銃も、ジョーニングが作ったものではないにしろ、いいものかもしれない。

 だとすれば、会って損はないかも。

 

「分かりました。会いましょう」

 

「おぉ、ありがとうございます! それでは、ご案内いたしますので、私の後を付いてきてください」

 

 こうして、その後他の皆と合流し事情を説明すると、サイーブの案内のもと、俺達はベディー(M54 5tトラック)に乗ってサイーブのご主人様のもとへと向かうのであった。

 

 

 

 

 メトロポリタン・シティを出発し、北北西へと進む事数分。

 とあるゴーストタウンと化した住宅街の一角に佇んでいる、戦前の教会。

 倒壊も屋根や壁も崩落する事無く、比較的状態の良い姿で今もなお残っている、そんな教会の前にベディー(M54 5tトラック)を駐めると。

 

 ディジーを見張り番に残して、俺達はサイーブに案内に従い、教会の中へと足を踏み入れる。

 

「こちらです」

 

 ステンドグラス等は割れていたものの、長椅子や祭壇などは比較的状態よく残っており、外観と同様に、内部も状態も悪いものではなかった。

 そんな教会内部の身廊を通り、祭壇へと足を運ぶと、サイーブは徐に祭壇の脇に置かれていたパイプオルガンに近づくと、マニュピレーターを器用に使い、鍵盤を弾き始めた。

 パイプオルガン自体は壊れているのか、鍵盤を弾いても全く音が聞こえない。

 

 それでも構わずサイーブは鍵盤を弾き続けていると。

 刹那、突然パイプオルガンが横にスライドし始めると、その奥から、下へと続く秘密の階段が現れた。

 どうやら、特定の順番で鍵盤を弾くと装置が作動し、秘密の階段が現れる仕掛けになっていた様だ。

 

「さぁどうぞ、付いてきてください」

 

 そして、現れた秘密の階段を下り始めるサイーブ。

 そんな彼の後に続き、俺達も階段を下っていく。

 

 それにしても、まさか教会にこんな隠し階段が設けられているなんて、驚きだ。

 

「サイーブ、質問してもいいかな? この隠し階段って、サイーブのご主人様が作ったものなの?」

 

「いえ。この秘密の階段と、この先にある地下の隠し部屋は、元々戦前にこの教会の所有者であった牧師が作ったものです。旦那様はこれを偶然にも発見し、再利用しているのです」

 

「牧師がこの隠し階段と隠し部屋を? それは一体どうして?」

 

「残されていた日記などを解析した結果、どうやらその牧師は戦前、数人の仲間と共に、ここから少し離れた場所にある州の食糧備蓄庫に侵入する為のトンネルを掘るために、この隠し階段と隠し部屋を作ったようなのです」

 

 まさに世も末とはこの事か。

 人々に教えを説き、見本となるべき筈の牧師が、あろうことか人の道を外れた行為を率先して行う。

 これもまた、豊かな戦前のイメージの裏に隠れたもう一つの戦前の姿、なのだろう。

 

 なんとも、やりきれない思いだ。

 

 

 そんな思いを抱きつつ、階段を下りて地下の隠し部屋へと足を踏み入れると、頑丈そうな鉄骨に鉄格子、それに頑丈そうな鉄の扉という厳重なセキュリティが姿を現した。

 すると、サイーブは鉄の扉の脇に備えられた制御用のパソコンに近づくと、マニュピレーターを器用に使い扉のロックを解除すると、鉄の扉を開け、俺達を招き入れるのであった。

 

 そして、鉄の扉を潜り足を踏み入れた先に広がっていたのは。

 機関部加工用や銃身内部の加工用の機械等が並び、仕上げの作業台や材料置き場など、まさに工房と呼ぶに相応しい光景であった。

 試射を行うスペースもあるのか、鉄や油の臭いに交じり、硝煙の臭いも微かに感じられる。

 

 おそらく、ここがサイーブのご主人様であるガンスミスの仕事場なのだろう。

 それにしても、こういう空間って、いいよな……。

 男なら誰しもが一度は憧れるような、そんな空間。

 

「ユウ、何にやけてるの?」

 

「ふぇ!? べべ、別になんでも!」

 

 と、そんな工房を目にして、気付かぬ内ににやけていた様で。

 不意にマーサに指摘され、特にやましい訳でもない筈なのに、何故か動揺してしまうのであった。

 

 そんな俺達を他所に、サイーブは工房の奥へとふわふわと移動していく。

 

「旦那様! 旦那様! お会いしたいと仰っていたナカジマ様とお連れの方々をお連れいたしましたよ!」

 

 奥が住居スペースとなっているのか。

 サイーブのご主人様を呼ぶ声が奥から響くと、程なく、奥から人影が歩いてくる。

 

「あぁ、よく来たな。待っとったよ」

 

 奥から現れたのは、戦前のシャツにズボン、そしてエプロンを装着した、グールの男性であった。

 

「はじめまして、ユウ・ナカジマと申します」

 

「ほぉ、モンスター・バッシュで見た通り、なかなかの好青年だな。"アイツ"とは大違いだ」

 

 グールの男性の口から零れたアイツが誰の事を指しているのか、気にはなったが、とりあえず今は自己紹介を進める。

 

「あたしはマーサ・ヒコックよ」

 

「ヒコック? という事は君のご両親は、あのサンクチュアリの代表のヒコック夫妻?」

 

「えぇ、そうよ。……もしかして、あたしの両親を知ってるの?」

 

「いや、直接の面識はないが、儂の作った銃を託したヒコック夫婦の話を、"奴"が嬉しそうに話してくれたものでね。……これも縁というものか」

 

 すると、マーサのご両親の事を知っているのか、懐かしそうに言葉を紡ぐ。

 グールの男性の口から零れた、奴が誰の事を指しているのかも気になったが、それよりも、確かに男性は自信が作った銃、と言った。

 確か、マーサの使用している自慢のリボルバーは、マーサのご両親からVaultジャンプスーツやピップボーイ共々譲り受けたものだった筈。

 そして、そんなリボルバーを作ったのは、確か伝説のガンスミス……。

 

 まさか、と俺が目の前のグールの男性の正体に感づき始めた刹那。

 他の皆の自己紹介も終えた所で、いよいよグールの男性が自らの自己紹介を行い始めた。

 

「先ずは、突然の申し出を受けてくれて感謝する。……儂の名は、ジョーニング。サミュエル・ジョーニングだ」

 

 グールの男性が告げた名を聞いて、俺は目を丸くした。

 目の前のガンスミスのグールの男性が、伝説のガンスミスと呼ばれている、ジョーニング本人だったのだから。

 

 そして、そんなジョーニング本人が俺と会いたがっていた。

 

 気が付けば、伝説のガンスミスとの対面に緊張してきたのか、ジョーニングさんの差し出した手を、俺は細かく震える手で握り、握手の最中も、震えは止まらなかった。




ご愛読いただき、そしてご意見・ご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。大変励みになります。
そして、次回もご愛読のほどよろしくお願いいたします。
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