Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第七十三話 デトロイトのお仕事 前編

 あの後、もう一杯コーヒーをご馳走になった所で、俺達はジョーニングさんの工房を後にした。

 

 因みに、二杯目のコーヒーを堪能している最中、傭兵時代のヴァルヒムさんを知るジョーニングさんならば、現在ノアさんが装備しているスペースマリーンパワーアーマーの前の使用者について何か知らないかどうか尋ねてみたのだが。

 ジョーニングさん曰く、ヴァルヒムさんが臨時で同業者と即席チームを組んでいる所を何度か見かけたことはあるものの、スペースマリーンパワーアーマーを装備した人物は見た事がないとの事。

 加えて、例え傭兵でなくとも、これ程までに目立つパワーアーマーを使用している者がいれば噂の一つでも広がる筈だが、そんな噂はとんと耳にした事がないというのだ。

 結局、ヴァルヒムさんが戦友(とも)と呼んでいた人物については、わからずじまいであった。

 

 付け加えて、気になった事と言えばジョーニングさんとマーサのご両親の出会った切っ掛けなども気になる所ではあった。

 しかし、知る機会は今でなくとも、マーサのご両親に挨拶に行った時にでも遅くはないだろうとの考えに至り、結局その事をジョーニングさんに尋ねる事はなかった。

 

 

「ハハハッ! 戻ってきたら一段と伊達男になったなユウ」

 

「ありがとうディジー」

 

「それで、この後はどうするんだ? 特訓場所の防壁の為の資材を調達しにデトロイトに行くか?」

 

「そうしたいのは山々だけど、もうだいぶ日も傾いてきたし、今日はもうメトロポリタン・シティに戻ろうと思う」

 

「分かった。それじゃ、明日は朝一番からデトロイトだな!」

 

「えっと……、実は明日は朝から病院に行かなくちゃならないんだ。退院後の経過観察でね」

 

 Mr.ハンディ故に表情こそ変化ないものの、先ほどまで高く上がっていたマニピュレーターが途端に垂れ下がった事から、ガッカリさせてしまったようだ。

 

「でも安心して、病院が終わったら必ずデトロイトに行くからさ!」

 

 刹那、ディジーのマニピュレーターが再び高く上がった。

 

「そうこなくっちゃな!」

 

 こうしてディジーの機嫌も直った所で、俺達はベディー(M54 5tトラック)に乗り込むと、メトロポリタン・シティに戻るのであった。

 

 

 

 

 翌日。

 昨日ディジーに話した通り、俺は朝一番にメトロポリタン・ホスピタルを訪れ、経過観察としてDr.コリーの診察を受けていた。

 

「心音も正常、傷口は開いていないし、食欲もしっかりとあるみたいだね。最近、倦怠感やだるさを感じた事は?」

 

「特にはありません」

 

「それは良かった!」

 

 その後、カルテにペンを走らせたDr.コリーは、程なく診察結果を口にする。

 

「順調に回復しているようだし問題はないだろう。ただし、病気や怪我は治りかけが肝心と言うから、気を抜かないようにね」

 

「分かりました」

 

「では、診察はこれで終わりだよ」

 

「ありがとうございますDr.コリー」

 

 特に問題もなく診察を終えた俺は、Dr.コリーにお礼を述べると診察室を後にしようとした。

 だがその時、不意に診察室の奥の方から、ガラス製品が割れる音や物が散乱する音が聞こえてくる。

 

「アーリーシーアーッ!!!」

 

「ひぃぃぃっ、せーんぱーい! ごめんなさーい!!」

 

 刹那、女性の怒号と共に悲壮感たっぷりの別の女性の声が響き渡る。

 

「えっと……、今のは?」

 

 事情を知っているであろうDr.コリーに尋ねてみると、彼は苦笑いを浮かべながら、先ほどの声の主について語り始めた。

 

「実は今、新人看護師の教育中でね。彼女、新人の子は頑張り屋なんだけど……、ちょっと空回りしていてね。さっきみたいに、指導係の先輩看護師によく怒鳴られてるんだよ」

 

「あはは、それは大変ですね」

 

 こうして事情が分かった所で、俺は改めて診察室を後にしようとした、……のだが。

 

「あ、ちょっといいかな?」

 

 不意にDr.コリーに呼び止められ、それは叶わなくなってしまう。

 

「何ですか?」

 

「実は、君に頼みたい事があるんだが、聞いてもらえるかな?」

 

「構いませんけど」

 

「よかった。……実は、頼みと言うのはさっき話した新人看護師に絡んだ事なんだが」

 

 そこで一拍置くと、Dr.コリーは続きを話し始める。

 

「彼女が頑張っているのは分かってはいるんだけどね。ただ……、病院の備品には限りがあるものでね」

 

 随分と遠回しな言い方だが、俺はDr.コリーが何を言わんとしているのかを理解した。

 新人さんのお陰で、折角病院に納品した医薬品や消耗品などが、想定以上の速さで消えてしまったようだ。

 

 そして同時に、Dr.コリーの頼みの内容も察しが付く。

 

「そこでお願いなのだが。暫く病院を離れられない僕の代わりに、医薬品や備品などを何処かで調達してきてほしいんだ」

 

 俺がやっぱりと納得の表情を浮かべているのを他所に、Dr.コリーは更に話を続けた。

 

「勿論、成功した暁には相応の報酬も支払うよ。……どうだい?」

 

 Dr.コリーは俺の命の恩人とも言うべき人だ、そんな人のお願いを無下になど出来る筈もない。

 それに、最近細かな稼ぎがあったとは言え、医療費に消えた分を取り戻せたわけではない。

 

「分かりました。そのご依頼、お引き受けします」

 

 と言う事で、俺は快くDr.コリーの頼みを快諾する。

 

「ありがとう、君ならそう言ってくれると信じてたよ!! それじゃ、調達してきてほしいもののリストを作るから、少し待っててくれ!」

 

 刹那、Dr.コリーは紙とペンを手に、診察室の奥へと姿を消した。

 それから数分後、再び診察室に戻ってきたDr.コリーは、その手に持っていた紙を俺に差し出した。

 受け取った紙には、スティムパックや抗生物質、更には包帯やピンセット等の名前と必要な個数がびっしりと書き込まれていた。

 

 うーむ、思っていたよりも数が多いな。これは方々を巡って何とかかき集めるしかないか? とは言え、あまり時間をかけすぎるのもなぁ……。

 等と、手にしたリストと睨めっこをしていると、不意にDr.コリーが話を始めた。

 

「一度で集めるのは大変だって顔してるね」

 

「えぇ」

 

「そんな君にとっておきの情報を教えてあげよう!」

 

 Dr.コリー曰く、デトロイト中心部付近にある"デトロイト記念病院"と言う名の病院内には、手つかずの医薬品や消耗品などが多数残っている。そんな噂を以前耳にしたという。

 

 デトロイト中心部ではオーソリティのような連中が活動しているのは以前も話した通り。その状況下で未だに手つかずと言う事は、相当強固なセキュリティシステムで守られている可能性が高い。

 加えて、デトロイト中心部はフェラル・グールやスーパーミュータント等が闊歩している。その場所に辿り着くだけでもかなり苦労するだろう。

 それでも、防壁の為の資材を調達しがてら、お目当ての物を調達する事が出来るのは中々に魅力的だ。

 何よりも、俺の新しい相棒となったM4カスタムの性能を試す絶好の機会でもあった。

 

 よし、決めた。そのデトロイト記念病院に行ってみよう!

 

「Dr.コリー、有益な情報、ありがとうございます!」

 

「吉報を待ってるよ」

 

 Dr.コリーに再びお礼を述べた俺は、リストを片手に、今度こそ診察室を後にするのであった。

 

 

 

 

 メトロポリタン・ホスピタルを後にした俺は、その足でベディー(M54 5tトラック)のもとへと向かった。

 そこで皆と合流した俺は、早速Dr.コリーから受けた依頼の話を皆と共有する。

 防壁の為の資材集めも同時に行えるとあって、皆の反応は概ね良好であった。

 

 皆の賛同も得られたので、早速目的のデトロイト中心部へと向かうべく、俺達はベディー(M54 5tトラック)に乗り込み車上の人となった。

 

 

 俺達を乗せたベディー(M54 5tトラック)は、デトロイト中心部へと続くインターステイトの94を軽快に走る。

 道中デビル・ロードの連中と遭遇する事もなく、快適な……。

 

「おっと、何か轢いちまったみたいだ。まぁ、どうせモールラットか何かだろ」

 

 前言撤回、道中運悪く進行方向上にいた野生動物やフェラル・グールを弾き飛ばしながら、デトロイト中心部への旅路は続いた。

 

 

 流れる風景を見続ける事数十分。

 ベディー(M54 5tトラック)は、インターステイトの94とミシガン州道10号線が交差する立体交差点で駐まった。

 ここから目的のデトロイト記念病院までは、直線距離にしてまだ1.5km程ある。

 にもかかわらずこの場所でベディー(M54 5tトラック)を駐めたのは、ここから先、ベディー(M54 5tトラック)が通れないからだ。

 

 デトロイト中心部付近と言う事もあり、この先の道には朽ち果てた自動車が大量に放置されている他。

 瓦礫や死体、更には核が落ちる寸前に離陸したか着陸を試みていたのか、墜落した旅客機の残骸も見える。

 多少の障害物ならベディー(M54 5tトラック)の巨体とパワーで突破できるが、流石にあの量は厳しいだろう。

 

 と言う事で、ここからは徒歩でデトロイト記念病院に向かう事となった。

 

「俺はいつも通り、ベディー(M54 5tトラック)の見張だ」

 

 いつもの様にディジーがベディー(M54 5tトラック)の見張り番として残る事が決まると、残りの面々でデトロイト記念病院に向かうかと思われた。

 

「ごめんなさい。私も今回は待たせてもらうわ」

 

 だが、意外にもナットさんが辞退を申し出てきたのだ。

 

「珍しいですね。てっきりナットさんも行くものとばっかり……」

 

「この間のジョーニングさんの取材の整理がまだ終わってなくて、いい機会だから、待ってる間に整理しておこうかなって」

 

 しかし、ナットさん本人の口から理由を聞き、俺は納得の表情を浮かべる。

 そして、ナットさんとディジーを残して出発しようとした、その矢先。

 

「あ、あの! 私も、お二人と一緒に残ってもいいでしょうか!」

 

 突如ニコラスさんまでもが辞退を申し出たのだ。

 

「ちょっと! ナットさんは兎も角、どうしておっさんまで行かない訳!?」

 

 これにはマーサも納得していない様で、眉間にしわを寄せて異議を唱える。

 

「まさか……、これから向かう場所はフェラル・グールやスーパーミュータントがうようよしてるから怖気づいた訳!?」

 

「ち、違います! 私はどんな悪にも敢然と立ち向かうキャプテン・パワーマン! 例え進む先が地獄であろうと恐れなどない! ……ただ」

 

「ただ、何よ?」

 

「外縁部とは言え、ここも危険なデトロイト中心部に変わりありません。そんな場所に、か弱い女性を一人待たせておくなんて危険すぎます! ですので、私もここに残り、お守りしたいと思います!」

 

 あら嬉しいとばかりの表情を浮かべるナットさん、そして自分とベディー(M54 5tトラック)も忘れるなよと言いたげなディジー。

 そんな二人を他所に、マーサはまだ納得がいっていないらしく、更にニコラスさんに詰め寄る。

 

「そんな事言って、行くのが怖いだけでしょ?」

 

「そそ、そんな事──」

 

 これ以上マーサに詰め寄られたらニコラスさんが本当に泣き出してしまいそうな気がしたため、俺は咄嗟に助け舟を出す事にした。

 

「マーサ、ニコラスさんの言う事にも一理あるよ。ここだって絶対に安全とは限らないし、幾らベディー(M54 5tトラック)の武装があるとは言っても、やっぱり二人よりも三人の方が戦術的な選択肢が多くなるからね」

 

 少々腑に落ちない様子ではあったが、「ユウがそう言うなら……」と、マーサもニコラスさんが残る事を承諾してくれた。

 こうして一件落着した所で、今度こそデトロイト記念病院に向けて出発──、と思ったのだが。

 

「ユウ、あのね……」

 

「え、まさかユリアまで?」

 

 不意にユリアが声をかけてきたので、二度ある事は三度あるのかと、俺は表情を強張らせる。

 

「違う、私は一緒に行く」

 

 しかし、次にユリアの口から飛び出した言葉を聞き、俺の表情は和らぐ。

 

「ビーちゃんとハニーをここに残しておきたいの」

 

「え、ビーちゃんとハニーを!?」

 

「うん。ビーちゃんがいれば、万が一モンスターの群れが近づいてきてもすぐに知らせてくれるし。迎撃する時も、ハニーがいた方が火力が上がって安心だと思うから」

 

 確かに、ユリアの言う通りかも知れない。

 ナットさん達の力量を不安視している訳ではないが、やはり安全性は高いに越したことはない。

 

「ちょっと待って! ユリアはビーちゃんとハニーが一緒じゃなくて大丈夫なの!?」

 

「ご心配なくマーサ。私だって自分の身くらい自分で守れます。それに……」

 

 刹那、何故かユリアが俺の顔を見つめてくる。

 

「いざとなったら、ユウが守ってくれる、よね?」

 

 そう言いながら顔を傾けたユリアの仕草はまるで小動物の様に愛らしく、胸が軽く締め付けられる。

 

「うん、勿論」

 

 そして、ユリアの質問に答えた直後、俺は気がつく。

 物凄い形相でこちらを見つめるマーサの存在に。

 

 え、どうしたんだろう? 俺、何かマーサの気に障る事したのかな?

 

「デカルチャ……。これがトライアングラーと言うものか」

 

 等と内心困惑していると、ノアさんがぽつりと呟く。

 だからノアさん、一体何処でそんな単語覚えてるんですか。

 

 

 

 と色々あったが、最終的にデトロイト記念病院には俺とマーサ、ユリアとノアさんの四人で向かう事となった。

 

「使い方は分かりますよね?」

 

「えぇ、前と同じように設置しておけばいいのよね」

 

「ま、任せてください!」

 

 因みに、待機組のナットさん達には、待っている間に資材の調達をしておいて欲しいとお願いした。

 出現させたワークショップver.GMをベディー(M54 5tトラック)の荷台に設置すると、ナットさんとニコラスさんに回収マーカーを手渡しておく。

 

「それじゃ、行って来ます!」

 

「気をつけてね」

 

「が、頑張ってください!」

 

「頼んだぜー!」

 

「ファイト―ッ!」

 

「ビッ! ビー!」

 

 そして、待機組の面々に見送られながら、俺達四人はデトロイト記念病院を目指して歩みを進めるのであった。




ご愛読いただき、そしてご意見やご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。感謝の念に堪えません。
次回もご愛読のほど、何卒よろしくお願いいたします。
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