Fallout THE ORIGIN   作:ダルマ

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第七十四話 デトロイトのお仕事 中編

 半壊した建物の瓦礫、放置された自動車に散乱した破片、更にはデトロイトの熾烈な生存競争から落伍した人間やモンスターの死骸を横目に、俺達四人は目的地目指して歩き続ける。

 とは言え、中心部と思われる方角からは銃声が風に乗って聞こえてくる為、各々の手には得物が握られ、万が一の場合は即座に応戦が可能だ。

 

 そうそう得物と言えば、ユリアが使用している武器については少し驚く事があった。

 ユリアの機械に対する造詣が深い事や彼女の体格等を加味して、使用する武器は実弾系よりも光学系であろう事は容易に想像できた。

 加えて、弾薬となるフュージョン・セルの入手の容易さや、精度の高さ、更には弾速の速さ等から、レーザーピストル或いはレーザーライフルを使用しているのではと、俺は勝手に思い込んでいた。

 

 所が、今ユリアがその手に持っている武器は、同じ光学系武器ではあるが、原作ゲームにおいては玄人向けとして知られる武器。

 本体の加熱用チャンバー内で超高温になった凝縮プラズマを超電導バレルで発射するハイテク銃器。その名を、プラズマピストル。

 座学の際に得た情報によれば、戦前ロブコ社の子会社であったレプコン社が米軍用に開発・生産していた物が、戦後ウェイストランドに広がったのだとか。

 因みにその性能は、原作ゲーム同様、高い威力に精度、更には射程も長くその見た目に反して軽量と言う、一見すると素晴らしい性能だ。

 しかし、光学系武器ながらレーザー系と比較すると遅い弾速、独特な弾道。加えて最たる欠点として、弾薬となるプラズマ・カートリッジの入手が容易ではない等。原作ゲーム同様に使い手を選ぶ武器と言えた。

 

 因みに、ユリアの使用するプラズマピストルは、バレルをスナイパーバレルに交換しリフレックスサイトを備えている他、本人曰く自身の手で細かな独自改良が施されているとの事。

 まさに専用プラズマピストルとも呼べる逸品だ。

 

 

 

 

 等と誰に向けた訳でもない説明を脳内で繰り広げつつ、ピップボーイに表示された地図を頼りに、俺達四人は目的地に向けて移動を続けていた。

 

「し、静かに!」

 

 刹那、先頭を歩いていた俺は足を止めると、後方の三人に静止を促す。

 そして物陰から、角を曲がった先の道路の様子を伺い見る。

 

「アァ、タイクツダ……」

 

「マッタクダ」

 

「オイ、キョウダイ。ナニカオモシロイハナシハナイカ?」

 

 そこで目にしたのは、完全武装した数体のスーパーミュータントが、道路の真ん中で退屈そうにしている光景であった。

 

「アルゾ。オレ、マエニ"グルルル……"ッテウナルヤツニデアッタ」

 

「ソイツハナニモノダ!?」

 

「ニンゲンダ!」

 

「ドノニンゲンダ!?」

 

「ニンゲン、ミナゴロシ!!」

 

「アーッハハハッ!!」

 

「ハッハッハッ!」

 

「ギャーッハッハッハッ! ハーッハッハッハッ!」

 

「ハー、ハー。ハラガヨジレル」

 

 何やら抱腹絶倒のジョークが炸裂したらしく、大声を上げて笑い出すスーパーミュータント達。

 その様子を目にした俺は、この隙にこの場から離れるべく、気付かれない様にゆっくりと、三人を引き連れて移動を開始した。

 

 それから暫くして、周囲の安全を確認した俺は、安堵のため息を漏らした。

 

「ちょっとユウ、わざわざ逃げなくてもよかったんじゃないの? あれ位の数ならさくっと()れるわよ」

 

「うむ。私も、ヒコックと同じ意見だ。倒して進んでもよかったのではないか?」

 

 刹那、好戦的な所で気が合うマーサとノアさんの口からそんな意見が飛び出す。

 

「確かに強行突破してもよかったんですけど……。別のモンスターが銃声等に引き寄せられて戦闘が拡大する可能性もありますし、下手をすればデトロイト中のモンスターと戦う羽目になるかもしれません。ノアさんだって覚えてるでしょう、シカゴでフェラル・グールの大群と戦った時のことを」

 

「あぁ、覚えている。……確かに、強行突破して、あの時の二の舞になる可能性はないとは言えんな」

 

「それに、デトロイト記念病院内にどんな危険があるのか分からない以上、極力道中の消耗は抑えておきたいんです」

 

「そうか、分かった」

 

「マーサも、分ってくれた?」

 

「え、えぇ……」

 

「あ、もし暴れ足りないなら、今度一緒にモンスター退治にでも行こうか。勿論、ゲッコー以外で」

 

「っ! 本当! や、約束だからね!! 破ったら承知しないわよ!」

 

「分かってるよ」

 

 こうして二人が納得した所で、再び移動を再開する。

 そう言えば、先ほどマーサとやり取りしている最中、ノアさんから生暖かい視線の様なものを感じたのだが、あれは気のせいだったのだろうか。

 

 

 

 

 スーパーミュータントがミュータントハウンドと戯れていたり、Mr.ガッツィーとブロートフライが空戦を繰り広げていた他。

 デトロイト川から上陸してきたのだろうか、巨大なヤドカリのモンスターことハーミット・クラブが、お宝探しの最中であろうスカベンジャーの一団と熾烈な戦闘を繰り広げていた。その様はまるで、お尋ね者との戦いの様であった。

 

 その様な光景を遠目に眺めつつ、無駄な戦闘を極力回避しながら移動を続ける事数十分。

 漸く俺達四人は、目的のデトロイト記念病院の姿を拝められる距離まで到着する事が出来た。

 

 広々とした敷地の中央に建てられた、本館と思われる鉄筋コンクリート造と思われる8階建ての巨大な建築物。

 更にその左右後方には、別館と思われる建物や研究棟などの関連施設と思われる建物が広がっている。

 

「あれがデトロイト記念病院」

 

「思っていたよりも大きいわね」

 

「うむ、これは目的のものを探し出すのも骨が折れそうだ」

 

「でも、やるしかない。でしょユウ?」

 

「うん。それじゃ、行こう!」

 

 気合を入れ直し、俺達四人はデトロイト記念病院の本館の正面出入り口へと向かう。

 出入り口前のロータリーには、戦争直後の混乱を残すかのように、救急車や自動車などが多数放置されている。

 そんな、今や障害物と化した車輛の合間を縫って、正面出入り口の前まで辿り着く。

 

 見た所出入り口周辺にはミートバッグ等の悪趣味な装飾は見られない為、少なくともスーパーミュータントが拠点にしている可能性は低そうだ。

 

「行くよ……」

 

 息を合わせ、正面出入り口を潜る。

 そして、ドットサイト越しに俺が目にしたのは、静寂に包まれたエントランスホールであった。

 

「一応、ここは安全の様だな」

 

 ノアさんの言葉に同意する様に銃を下ろすと、俺はホール内をまじまじと観察する。

 待合用の椅子や観葉植物用の鉢が散乱している他、受付カウンターにはMr.ハンディの残骸、更に床には宝探しにやって来たと思しきスカベンジャー達の死体。極めつけは、真っ白な壁に飛び散った血の数々。

 

 この光景を目にし、俺は一筋縄ではいかなそうだと思わずにはいられなかった。

 

「先ずは、目的の物が院内の何処に保管されているのかを突き止めないと」

 

「なら、私に任せて」

 

 しかし、後ろ向きになっても仕方がないと気持ちを切り替えると、早速次の行動に移る。

 だが、そこは俺よりも先にユリアが動いた。

 

「す、凄い速さ……」

 

 受付カウンター内にあった稼働状態のパソコンを操作し、情報を探るユリア。

 その際俺が驚いたのが、ユリアのタイピングの速さだ。目にもとまらぬ速さとは、この事を言うのだろう。

 

 そして暫くした後、高速でキーを打っていたユリアの手が止まった。

 

「ユウ、目的の物が何処にあるのか分かった」

 

「本当!?」

 

「災害備蓄用倉庫にある。倉庫の場所は、臨床研究棟の地下」

 

「臨床研究棟……」

 

「ユウ! ここに病院の案内図があるわ!」

 

 マーサの声に反応し、俺は壁に設置されていたデトロイト記念病院の案内図の前に足を運ぶ。

 

「えっと、臨床研究棟は……」

 

「案内図を見る限り、私達のいる場所から最短で向かうには北の別館を抜けて向かうしかなさそうだな」

 

 ノアさんの言う通り、最短ルートはそれしかなさそうだ。

 こうしてルートを確認し終えた所で、先ずは北の別館を目指すべく移動を再開する。

 

 

 エントランスホールを後に、警戒しながら通路を進む。

 通路に放置された治療台車や、白骨体の乗ったストレッチャーや車椅子を横目に、俺達四人は奥へと進む。

 

 そして、次のフロアを抜ければ北の別館に到着できるという所で、不意にピップボーイのレーダーが反応を示す。

 

「何だ?」

 

 同時に、通路の奥から足音が聞こえてくる。

 ただし、その足音は生身の人間とは思えない程甲高いものであった。

 

「皆、構えて!」

 

 俺の声と共に、各々の得物が謎の足音の発生源方向へと向けられる。

 程なく、通路の奥から、なまめかしい足取りと共に、それは姿を現した。

 

 女性的な鋼鉄の体を白を基調とした塗装に塗り替え、病院らしくナース服、否、ナース風の扇情的な衣装を身に纏い。頭にナースキャップを被っている。

 だが、それ以上に目を引くのが、まるで医療用メスの如く両腕に装備されたブレードユニット。

 

 足音の主の正体は、ナース・アサルトロンとでも呼ぶべきアサルトロンであった。

 

「アサルトロン!?」

 

 何故軍用ロボットであるアサルトロンが病院に!?

 いや、ウェストバージニアではショーガールやスパの店員を務めているアサルトロンだっていたのだから、おかしくはないのか?

 

 等と脳内で自問自答していると、ナース・アサルトロンのカメラが俺達を捉えた。

 

「院内への危険物持ち込みを検知、速やかに危険物を廃棄してください! 繰り返します、速やかに危険物を廃棄してください!」

 

 そして、ナース・アサルトロンが警告を発した、次の瞬間。

 

「対象を"敵"と認定。排除サブルーチンを起動します。……見せてもらいましょう、人間(みじめな存在)が、アサルトロンロボット戦闘クラスにどこまで立ち向かえるのか」

 

 ナース・アサルトロンが俺達四人に対して牙を剥いた。

 

「撃て!!」

 

 直後、俺は声を張り上げると共に、構えていたM4カスタムのトリガーを引いた。

 僅かに遅れて、マーサの二挺のリボルバーと、ユリアの専用プラズマピストルが火を噴く。

 

 しかし、放たれた弾丸やプラズマ弾は、ナース・アサルトロンの素早い動きを前に虚しく空を切る。

 

「っ! 消えた!?」

 

 次の瞬間、ドットサイト越しに視認していた筈のナース・アサルトロンが忽然と姿を消した。

 まさかステルス迷彩かと、そんな考えが脳裏を過った刹那。

 

「上です!」

 

 ユリアの声に反応し、俺は通路の天井に視線を向ける。

 そこには、ブレードユニットを器用に使い、ホラー映画よろしく天井を這いながらこちらに近づいてくるナース・アサルトロンの姿があった。

 

「このっ!!」

 

 俺は素早く天井にM4カスタムの銃口を向けると、再びトリガーを引く。

 通路と異なり天井では満足な回避行動が出来ないのだろう、被弾したナース・アサルトロンはバランスを崩すと、そのまま落下し通路に叩きつけられる。

 

 その隙を見て、俺は素早くマガジンを交換すると、新しいマガジンの中身を全て叩き込むかのようにトリガーを引き続けた。

 

 程なく、マガジンに装填されていた5.56mm弾を全て撃ち終えた所で、通路に再び静寂が訪れた。

 

「倒したのか?」

 

 戦闘の様子を見守っていたノアさんの疑問を確かめるように、俺は再びマガジンを交換しつつ、動かなくなったナース・アサルトロンのもとへとゆっくり近づいていく。

 プラズマ弾のお陰で一部が融解し、銃火を浴びて全身蜂の巣状態のナース・アサルトロン。

 再び起き上がる事はなさそうだが、念の為、足でつついて反応があるかを確かめる。

 

 足でつついても何の反応もない事から、そこで漸く、俺はナース・アサルトロンが機能を停止したと判断した。

 

「ふぅ……、二人とも、ご苦労様」

 

 見た目からして原作ゲームに登場する最強格の一種、アサルトロン・ドミネーターと同等の性能を有しているのかと思っていたが、どうやらそれ程ではないらしい。

 頭部のレーザーも使用してこなかったし、ステルス迷彩機能も搭載していない様だ。病院で使用する為に性能が落とされていたのだろうか。

 何れにせよ無事にナース・アサルトロンを倒し、安堵のため息と共にマーサとユリアに労いの言葉を贈った、その直後だった。

 

「ユウ! 後ろ!!」

 

「え?」

 

 マーサの声に反応し背後を確かめると、そこには、猛スピードで近づいてくる新たなナース・アサルトロンの姿があった。

 

「KILL!!」

 

(不味い、間に合わない!)

 

 あの速さでは正面を向ける間に懐に飛び込まれる。ではどうする?

 この危機を乗り切る一手を模索する中、不意にマーサの声が耳に届いた。

 

「伏せて!」

 

 俺はその言葉に従う様に、すぐに身をかがめる。

 刹那、迫りくるナース・アサルトロン目掛け、俺の頭上をマグナム弾と、やや遅れてプラズマ弾が通過する。

 

 そのまま飛来した二種の弾丸は、吸い寄せられるようにナース・アサルトロンの右脚に命中。突如右脚の機能が停止させられたナース・アサルトロンは、勢い余って転倒する。

 しかしすぐに起き上がると、片脚を失ってもなお、俺達への殺意を消そうとはしないナース・アサルトロン。

 そんな彼女に向けて、再びプラズマ弾が飛来する。

 

 刹那、プラズマ弾を追いかけるかのように、通路の壁をマーサが走っている事に気がつく。

 ユリアの射線を切らない為か、等と暢気に考えている俺を他所に、プラズマ弾がナース・アサルトロンの両腕に命中し、両腕を消し飛ばす。

 

「はぁぁっ!!」

 

 次の瞬間、壁走りの勢いそのままに、マーサの強力な飛び蹴りが炸裂した。

 あ、角度的に見え──。等と俺の邪な心はさておき。マーサの飛び蹴りを食らったナース・アサルトロンは頭部を蹴り飛ばされ、程なく無残な姿で機能を停止させた。

 

「大丈夫、ユウ?」

 

「うん、ありがとう、二人とも助かったよ」

 

 二体目のナース・アサルトロンを倒し、再び通路に静寂の戻った所で、俺はマーサとユリアの二人に感謝の言葉を述べる。

 

「ユリア、ナイスアシスト!」

 

「マーサこそ、見事な飛び蹴りでした」

 

「えへへ、ありがとう」

 

 マーサとユリアのやり取りを横目に、俺は空マガジンに弾を込めると、それをマガジンポーチに収納していく。

 こうして他の三人も準備を終え、全員の準備が整え終えた所で、俺達四人は、北の別館を目指して移動を再開するのであった。

 

 

 

 

 因みに余談ながら、その後。

 二人がやられたようだな、奴らはアサルトロン四天王の中でも最弱、人間(みじめな存在)ごときに負けるとはアサルトロンロボット戦闘クラスの面汚しよ。

 と言わんばかりに、三体のナース・アサルトロンが行く手を塞いでいたのだが。

 

「おぉぉぉぉっ!!」

 

「「「グワァァァッ!!!」」」

 

 対峙したノアさんにまとめて一突きにされて、呆気なく退場するのであった。




ユウの勇気がリーアを救うと信じて!

ご愛読いただき、そしてご意見やご感想、皆様の温かな応援、本当にありがとうございます。感謝の念に堪えません。
勿論次回も続きますので、ご愛読のほど、何卒よろしくお願いいたします。
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