ゴブリンスレイヤー改変物語   作:二つ目

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ゴブリンの鳴き声を変更してみました。


10話

「つまり、ゴブリンの大規模な巣穴がエルフの領域で見つかったが、魔神王が復活し各国も緊張状態、独自に軍を動かすと他の王達が難癖を付けるかもしれない、なので冒険者を派遣して討伐を計画、専門家である彼の協力を得ようとし、依頼を持ってきたということですね。」

 

俺の背後に立っている黒兜が3人の持ってきた依頼と経緯をまとめる。

 

「まぁ、そういうことですな」

 

蜥蜴僧侶が腕を組みながら頷く。

 

都でデーモンが増えようが、魔神王が復活しようが俺には関係ない話だ。

 

魔神王なら俺の後ろにいる黒い奴をけしかければ、簡単にけりが着く様な気がしないでも無いが。

 

「場所は何処だ?連中の数と上位種は確認しているのか?」

 

戦術を考える為に、ゴブリン達について詳細を聞く。

 

「拙僧らの依頼を受けてくれる、ということでよろしいのか?」

 

「そうだ。」

 

受諾の可否を問う蜥蜴僧侶に顔を向けて頷く。

 

「魔神が復活して、大きな混乱が来るってのに、人ごとみたいね。」

 

妖精弓手が俺の態度が気になったらしく、突っかかって来る。

 

「俺はゴブリン以外に用は無い、魔神を倒せるほどの力がある訳でもない。そんな奴の相手は勇者に任せる。」

 

「仕事熱心な事ね、期待しているわ。」

 

「あぁ。」

 

俺の言葉に満足したのか、妖精弓手が頷きイスに腰掛ける。

 

「これが巣穴の場所になります。」

 

蜥蜴僧侶が机に地図を広げ、指さす。

 

「連中は遺跡を根城にしとる様でな。」

 

「数や種類は分からないわ、でも足跡の数からして、30匹じゃきかない数が潜んでいると思う。」

 

現地に赴かなければ詳細は分からなそうだな。

 

「おや、この場所でしたか。」

 

俺の後ろから地図を覗きこんでいた黒兜が声を上げる。

 

「知っている場所か?」

 

「最近、緑腕が活動している地域ですね。」

 

「お前と灰盾しか見かけないと思ったが、他の奴らは散っているのか。」

 

「そうです、各地で教導を行っています。」

 

地図を見ながら頷いている。

 

「多分、間違いないでしょう。緑腕と現地で合流できればもう少し情報が分かるかもしれません。」

 

「なら、好都合だ。」

 

俺は装備を持って席を立ち、部屋の扉へ向かった。

 

「黒兜、先の一件の報酬を出せ、支度する。」

 

「分かりました、緑腕にも連絡を取っておきますね。」

 

黒兜が自分の腰に提げてある雑嚢を探り、報酬の硬貨が入った布袋を投げてきた。

 

飛んできた袋を片手でしっかりと掴む。

 

「俺達の報酬は好きに決めろ。」

 

扉を開けて部屋から出る。

 

「ちょっと、貴方達2人で行くつもりなの?」

 

「そうだが・・・、いや、もう1人増えるかもな。」

 

下で待っている少女の事を思い出し、発言を訂正する。

 

階段を下り、室内を見回して女神官の姿を探す。

 

錫杖は目立つのですぐに見つかった。

 

イスに座って紅茶を飲んでいた様だが、向こうもこちらに気づき、カップを置いて駆け寄って来る。

 

「ゴブリンスレイヤーさん、依頼ですか?」

 

「そうだ、ゴブリン退治だ。」

 

女神官を見つめて頷く。

 

「休んでもいいんだぞ?」

 

先ほど空の旅から帰って来たばかりである。

 

「いえ、大丈夫ですよ。夜もしっかり村で休めましたし。」

 

二の腕を上げて力瘤を作るポーズをする。

 

残念ながら、彼女の細腕には盛り上がるほどの筋肉は無いのだが。

 

「では、付いてくるのだな?」

 

「はい、準備しますね。」

 

満面の笑みを浮かべて肯定する。

 

「黒兜から報酬を受け取っておけ。」

 

「分かりました。」

 

そう言うと彼女は、俺に続いて階段を降り、受付でやり取りをしていた黒兜に話しかけ、報酬を催促していた。

 

その姿は傍から見ると、まるでお小遣いを親に強請っている子供の様に見えた。

 

兜の中で口の端を僅かに歪める。

 

「連絡には伝書鳩を使います。」

 

気が付くと黒兜が右手に鳩を抱えていた。

 

鳩の足には小さな緑色の筒が括りつけられていた。

 

「鳩は遠隔地で放り出されても、自分の巣を忘れず帰って来るのですよ。」

 

鳩を見つめていた俺に黒兜が説明する。

 

「つまり、この鳩は緑腕の活動している地域で飼われていた個体で、放つと向こうの巣に帰り、連絡が出来るのだな?」

 

「そうですね、途中でモンスターに襲われたりしなければ。」

 

頷くと、黒兜が窓を開けて鳩を外に放った。

 

 

 

 

 

「しくじった。」

 

薄暗い遺跡の通路を私は傷口を押さえつつ、出口を目指して走っていた。

 

右肩にはゴブリンの放った矢が刺ささり、激しい痛みを伝えてくる。

 

持ち込んだ武器は短剣しか残っていない、矢を受けた時に弓を落としたのは痛手だった。

 

失敗した、トーテムが見当たらず、シャーマンが居なければ凝った罠は無いと慢心していた。

 

まさか、地面に鳴子が仕掛けられていたとは。

 

僅かに浮いた石畳を踏み、遠くで侵入者を知らせる大きな音が鳴った。

 

しまったと思った時にはもう遅かった。

 

遺跡の奥から追跡を命じる怒声が響き、通路を走る大勢のゴブリンの足音が聞こえてくる。

 

この巣にはゴブリンとは別の者が居ることを察して私は撤退を決めた。

 

しかし、遺跡の奥まで入ったことが災いし、簡単にはいかなかった。

 

先回りをしていたか、別の所にいたのか、目の前にゴブリン達が立ち塞がる。

 

連中は女のエルフである私の顔を見て、顔を邪悪に歪めた。

 

背後からも大勢のゴブリンが迫っている。

 

生き残る為には、目の前で撤退路を塞いでいる奴らを倒すしかなかった。

 

私は死の物狂いで戦い、なんとか突破することができたが、連中が逃げる私に向かって放った矢が最後に命中、その際に弓を落としてしまった。

 

今頃、あの弓はゴブリンの戦利品になってしまっただろう。

 

悔しさを感じるが、仕方がないと諦める。

 

なんとか出口へ行かなければ。

 

その思いでまた一歩足を踏み出した瞬間、視界がぶれる。

 

「あっ!?」

 

足を縺れさせて派手に石畳の上を転がる。

 

すぐに立ち上がろうとするが足が言うことを聞かず、2歩目でまた転んでしまう。

 

身体が重く、全身から汗が吹き出し、寒さを感じる。

 

手足ががくがくと生まれた小鹿の様に震えていた。

 

混乱している頭で何が起きているのかと原因を探り、右肩の違和感に思い至った。

 

壁に寄りかかり、刺さっている矢を左手で握り引っ張る。

 

「ァア!」

 

肉を引きちぎる嫌な音が聞こえ、激痛が走るが歯を食いしばり耐える。

 

なんとか矢を引き抜き、荒い息を吐きながら鏃を観察する。

 

自分の血以外に、黒くべた付く何かが塗られていた。

 

「毒矢。」

 

確か解毒薬があったはずだと思い、腰のポーチに手を伸ばし、瓶を取り出す。

 

口で栓を抜き、中身を一息に煽った。

 

これで毒の症状は治まる筈だが、私は安堵できなかった。

 

私を追いかけてきたゴブリン達の足音がすぐ傍まで迫ってきていたのだ。

 

「毒で死んだ方がマシだったかな。」

 

諦めからそんな言葉が出る。

 

通路の奥から十数匹あまりのゴブリン達が見えたのだ。

 

こちらを指さし、叫びながら武器を掲げて走って来る。

 

「でも、何匹かは道連れになってもらう。」

 

もちろん死にたくは無いが、生還は絶望的だろう。

 

私は腹をくくり、座って壁にもたれ掛りながら左手にナイフを構えた。

 

「見つけたっす。」

 

覚悟を決めていると、後ろから声が聞こえた。

 

瞬間、顔の脇を矢が掠めた。

 

「GI!?」

 

先頭にいたゴブリンの眉間に矢が突き刺さる。

 

射抜かれたゴブリンは何が起きたか分からず、驚愕の表情のまま倒れた。

 

仲間が突然死んだことでゴブリン達が足を止める。

 

矢が飛んできた方向を振り向くと、黒い鎧を纏い、緑色の籠手を身に付けた男が弓を引き

絞り、第2矢を放った。

 

「GAUBO!?」

 

今度はゴブリンの喉に命中し、口から血の泡を吹きながら死んでいった。

 

仲間を2人やられ、ゴブリン達がやっと正気に戻り新手に向けて殺到して行く。

 

手負いで動けない私よりも、黒い鎧の男が危険と判断したのだろう。

 

男は3匹目を射殺した所で距離が近すぎると判断したのか、弓をしまい腰から2振りの黒

い短剣を抜き放つと、群れの中へ飛び込み縦横無尽に剣を振るった。

 

棍棒を振り下ろしてくるゴブリンを、身体を反らして避け、カウンターで短剣を胸に突き刺す。

 

続いてで飛び込んできたゴブリンを今度は短剣の柄頭で叩き落とし、頭を蹴り砕いた。

 

横薙ぎに振るい、ゴブリンの両目を切り裂く。

 

顔を押さえ、悲鳴を上げるゴブリンの腹に短剣を突き入れ捻る。

 

そのまま身体を回転させ回し蹴りを放ち、突き殺した奴を質量弾にして、後ろにいたゴブリンを薙ぎ倒す。

 

茫然と私は男の戦い方を見ていた。

 

それは荒々しくも舞う様な戦い方だった。

 

気が付くと床にはゴブリン達の骸が転がり、残り一匹だけだった。

 

最後の一匹は背中を向けて逃げ出した。

 

「逃がさないっす。」

 

男が逃げたゴブリンに向けて矢を放つ。

 

ゴブリンは背中に矢を受けてふらふらと数歩進んで倒れた。

 

最後の一匹を殺すと、男が弓を背中に回しながら近寄り、膝をついた。

 

「怪我を見せて貰うっすよ。」

 

「あ!?ありが、とう。」

 

まだ頭が現実に追いついていないが、お礼を言う。

 

男は私の服を捲り、矢傷を診ながら自分の雑嚢を探る。

 

「少し染みるかもしれないけど、我慢して下さいっす。」

 

水筒を取り出し矢傷に綺麗な水を掛け、血と汚れを流してゆく。

 

言葉通り少し染みたが我慢する。

 

流し終えた後、傷口に軟膏を塗り、包帯を巻いてもらった。

 

「これで良しっす。」

 

傷口の処置が終わり頷く。

 

私は改めてお礼をしようと思い立ち上がる。

 

「危ない所をっ痛!?」

 

しかし、左足首に痛みを感じ再び座り込んでしまった。

 

「失礼、足も診るっすよ。」

 

男が私の靴を脱がすと、足首の周辺が赤く腫れ熱を持っていた。

 

恐らく転んだときに捻ったのだろう。

 

折れていないといいのだが。

 

「ちゃんと処置をしたい所っすけど。」

 

男が通路の奥に視線を向ける。

 

まだ姿は見えていないが、ゴブリン達の声と走る足音が聞こえる。

 

ここに長く留まるのは危険だろう。

 

「失礼するっす。」

 

「うわ!?」

 

男は私の足と肩に手を回して身体を持ち上げた。

 

落ちない様に反射的に首に手を回す。

 

「急ぐのでしっかり掴まって下さいっす!」

 

「は、はい!」

 

その言葉を受けて手に力を込める。

 

男は全速力で通路を走り始めた。

 

「あの!貴方は一体?」

 

揺られながら男の正体を尋ねる。

 

「鉄鬼隊、緑腕って言う者っす。貴方と同じ冒険者っす。」

 

緑腕と名乗った冒険者に助けられたお陰で、私は九死に一生を得た。

 

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