ゴブリンスレイヤー改変物語   作:二つ目

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3話

洞窟で夜を明かし、最寄りの街へ剣の乙女を送り届けた。

 

服と装備はゴブリンによって引き裂かれた為、先行して俺が入り、男物であったが衣類を買い、少額の金と一緒に渡す。

 

別れ際に彼女は何度も礼を述べていた。

 

「暫くは苦労するでしょうね。」

 

「そうかもな。」

 

去っていく後ろ姿を見ながら呟く。

 

駆けだしの身でパーティーが壊滅してしまったのだから、落ちこぼれの烙印を周囲から押されてしまうだろう。

 

だが、彼女が金等級にも到達するとてつもない伸び白を持っていることを、俺達は知っている。

 

この失敗も糧にして彼女は成長するだろう。

 

「それで、次はどうする?」

 

黒兜に向き合って次の行動を尋ねる。

 

「次は彼らを育てます。」

 

「彼ら?」

 

黒兜が呪文を唱えると空間が歪み、甲冑姿の男が4人現れる。

 

鎧は黒兜とよく似ているが武器が各々違う。

 

鎧も黒一色ではなく、部位によって色が付いている。

 

「私を含めた彼らに、対ゴブリン戦のノウハウを仕込んでもらいたい。」

 

俺が稽古を付ける意味があるのだろうか?

 

現れた4人の立ち姿には隙は無い。

 

明らかに力量は俺よりも上に見えた。

 

「何故だ?そいつらは俺よりも強いはずだぞ?」

 

「そう、確かに強い。しかし、対ゴブリン戦についての知識は貴方の方が上です。私は彼らにゴブリン戦を学ばせ、それをさらに広めようと考えているのです。」

 

対ゴブリン戦の浸透ということか。

 

「ゴブリンというのは、単独ならば力自慢の大人でも撃退出来る。その為に侮られ被害者が後を絶えない。かといって群れの討伐は報酬も少ないから熟練でもあまり受注したくない。それで新人が受注し被害者が出る。悪循環ですね。」

 

確かに、駆けだしの冒険者がゴブリンの餌食になった姿を何度も見てきた。

 

彼らは受注時に決まって言うのだ、「ゴブリン程度楽勝だ。」と。

 

危険性を説いたこともあったが大半の冒険者は聞き流し、やつらの巣から帰って来なかった。

 

「彼らに戦術を教え、学んだ彼らがさらに別の者へ戦術を広める。そうすれば新人の生存率も少しずつ上がり、ゴブリン退治も捗ると思うのですよ。何しろ奴らは数が多い、手が足りません。」

 

「お前の狙いは分かった。手ほどきしてやろう。」

 

奴らを殺す方法ならば喜んで教えてやる。

 

「有難うございます。」

 

「彼らは何と呼べばいい?」

 

呼び出された男達に顔を向ける。

 

「色で名前を呼びましょうか?」

 

「そうだな、青肩(あおかた)、赤胴(せきどう)、緑腕(りょくわん)、灰盾(はいたて)と呼ぶか。」

 

「良いですね。」

 

名前も決まったので次はゴブリン退治だ。

 

「ではギルドでゴブリン討伐の依頼が無いか確認しよう。」

 

俺達も街の中に入ってゆく。

 

ギルドの場所はだいたいどこの街でも同じような所にある。

 

程なくして建物が見つかり中に入った。

 

両開きの扉を押して中に入る。

 

中には依頼を受けに来たか、飯や酒を飲んでいる冒険者達が居た。

 

値踏みの視線を向けてくるが無視する。

 

続いて5人が入ってくると囁きが聞こえる。

 

「なんだ、あいつ等?」

 

「重装の鎧にあの武器、金持ちの道楽か?」

 

「どこかから流れてきたか?」

 

まずは受付で登録を済ませる。

 

この時代の俺はまだ少年だ、当然冒険者の登録なんてしていない。

 

依頼を受ける為には新しく登録が必要だ。

 

受付にいる女性に声を掛ける。

 

「すまないが、ここに居る6人で冒険者登録をしたい。」

 

「はい、冒険者の登録ですね。」

 

受付で頼んだ瞬間、後方で笑い声が聞こえた。

 

「おいおい、そんな御立派な装備でお前ら初心者なのかよ?」

 

声の方に向くと、皮鎧を着た冒険者が酒の入った杯を傾けながら野次を飛ばしていた。

 

顔が赤いので酔っているのだろう。

 

「初心者はもっと動きやすい装備にすべきだ。そんな重装はやめておけ、何だったら俺の鎧と交換してやってもいいぞ?」

 

周囲から同調する様に笑い声が続く。

 

しかし、無視して俺達は登録書類に記入を行う。

 

名前は念の為に偽名だ。

 

この世界の幼少の俺が、数年後に冒険者登録をした際に、同じ名前があったら不審に思われるかもしれない。

 

「おい、無視するなよ?」

 

無視されたことがカンに障ったのか、先ほどの皮鎧の男が近くに居た青肩に絡む。

 

絡まれた青肩は男の頭を両手で鷲掴みにすると持ち上げた。

 

頭を万力の様な握力で締め付けられ、皮鎧の男が悲鳴を上げる。

 

「痛てて!放せ!止めろ!」

 

皮鎧の男は何とか逃げ出そうともがく。

 

しかし、青肩の手を振りほどく事は出来ない。

 

「それ以上ふざけたことを抜かしやがったら、頭を握り潰すぞ。」

 

底冷えのする声だった。

 

「わかった!俺が悪かった、止めてくれ!」

 

青肩は謝罪を聞くと手を離した。

 

皮鎧の男は両手から解放されて床に尻もちを着き、一緒に飲んでいた仲間に連れていかれた。

 

先ほどの光景を見て野次を飛ばす者は居なくなった。

 

記入を終え、受付から基本の説明を聞き、登録は終了した。

 

掲示板を見て、ゴブリンの討伐依頼を探す。

 

程なくして依頼は見つかった。

 

近隣の村からの依頼だ。

 

報奨金はやはり高くは無い。

 

依頼書を剥がして受付に持ち込む。

 

「この依頼を受けたい。」

 

「えーと、ゴブリン討伐ですね。」

 

受付の女性から村までの道を聞き、ゴブリンの群れの情報を聞く。

 

「あと、皆さんのパーティー名はお決まりですか?」

 

「そうだな。」

 

黒兜達を眺める。

 

重装、金属、鉄、ゴブリン退治、鬼。

 

頭の中に浮かんだワードを繋ぎ合わせる。

 

「鉄鬼隊だ。」

 

「鉄鬼隊ですね、登録しておきます。」

 

依頼の受注が済み、黒兜達と打ち合わせを行う。

 

「近隣の村で、ゴブリン討伐の依頼があった。準備を整えて出発する。」

 

「距離はどれくらいだ?」

 

青肩が質問してくる。

 

「道に沿って歩けば半日だろう。馬車ならもう少し早い。」

 

「必要な物は何っすか?」

 

緑腕が紙とペンを片手に尋ねてきた。

 

「色々だな、後で買い出しの時に教えてやる。」

 

「ポーションとかはあった方が良さそうだな~。」

 

赤胴が間延びした声で呟く。

 

「ロープ、必需品、色々、使える。」

 

灰盾が片言で喋る。

 

「いくぞ。」

 

必要物資を買いにギルドを後にする。

 

商店で物資を買い、街で野菜を卸し村まで帰るという馬車を見つけ、運賃を払い乗せてもらう。

 

馬車の中で各々何が出来るのか聞いておいた。

 

黒兜と赤胴は奇跡が使え、緑腕は弓の射手、青肩は怪力で灰盾は片手剣。

 

夕方に依頼のあった村へ到着した。

 

畑が広がる何処にでもありそうな村だった。

 

依頼を出した村長の家の場所を馬車の主に尋ねる。

 

すると案内を申し出でくれたので好意に甘えることにした。

 

少し歩くと他の家よりも大きめの家が見えてきた。

 

「こちらが村長の家です。」

 

「世話になった。」

 

礼を言うと馬車の主は頭を下げて帰って行った。

 

扉をノックして中から人が出てくるのを待つ。

 

少しすると扉の向こうから男の声が聞こえた。

 

「どなたで?」

 

「ゴブリン討伐の依頼を受けた者だ。」

 

「おぉ、お待ちしておりました!」

 

扉が勢いよく開き、中年の男性が出迎える。

 

「中へどうぞ。」

 

勧められたので家の中に入る。

 

「巣穴の場所は?」

 

単刀直入に聞く。

 

「近くの森の中です。先日、家畜を殺されて村の者が後を追い、巣穴を見つけました。どうやら大きい奴がいる様で。」

 

「どんな奴だ?」

 

「背の高い奴で身体はがっしりとしていました、動きは緩慢そうでしたが、力はかなり強そうだ、と見た村の者は言っていました。」

 

「ホブか。」

 

「住人に被害が出る前に来てもらえて良かった、それも貴方がたの様な腕ききが来てくれるとは。」

 

村長は黒兜達を見て言った。

 

そいつらは登録を済ませたばかりの初心者冒険者なのだが。

 

「巣穴までの案内を頼みたい。」

 

「夜ですが行くのですか?」

 

「そうだ、奴らは増えるのが早い。すぐに始末した方がいい。」

 

村長は少し躊躇ったが、理由を伝えると頷き、巣を見つけた村人を呼びに行ってくれた。

 

村から離れた森へ案内人に従って付いてゆく。

 

程なくしてゴブリンの巣である洞窟へ辿りついた。

 

案内人を村へと返す。

 

「入る前に言っておく、やつらは馬鹿だが間抜けでは無い、それを頭に入れておけ。待ち伏せや、挟み打ち、ロープトラップ等も使う。」

 

5人に対して基本的なことを説明する。

 

彼らは俺よりも強いが、将来的に他人へゴブリン戦を教えてゆく立場になるのだ。

 

しっかりと覚えてもらわなければならない。

 

「洞窟で使う武器は短い方がいいよな?」

 

青肩が腰に下げたメイスを撫でながら質問してきた。

 

「そうだ、天井も低いから小回りの効く武器が良い。無暗に振り回すと味方に当たる可能性があるから気をつけろ。」

 

「分かった。」

 

「緑腕は後衛で詰めてくれ、間違って矢を当てるなよ。」

 

「了解っす。」

 

緑腕が弓を持ち、サムズアップして返事をする。

 

「赤胴は前衛だ、馬車の中で火の奇跡が使えると言っていたな?」

 

「そうだ~、オイラは手から火炎を出せる。」

 

「通路の先からゴブリンが来たら焼き払え。免れた奴は俺と青肩が始末する。」

前衛はこれでいい。

 

「黒兜と灰盾は後衛だ、後ろの警戒と前衛の援護をしてくれ。」

 

「分かりました。」

 

「承知。」

 

フォーメーションを決め終わり、洞窟へ潜る。

 

天井から水が滴り足元を濡らす、狭い暗闇を進んでゆく。

 

普段なら暗闇を照らすのはたいまつの明かりが頼りだが、今回は違った。

 

柔らかい白い光を放つ玉が俺達の頭上で浮いている。

 

「便利だな。」

 

灯火という奇跡らしい、たいまつで片手が塞がれないのは良いことだ。

 

これなら両手が自由に使える。

 

「止まれ。」

 

光に照らされて鳴子が繋がったロープトラップが露わになっている。

 

「さっき言った罠だ、戦闘中だと見落としやすいから気をつけろ。」

 

皆が罠を見て頷く。

 

罠があるということはゴブリンがいることは確定だ。

 

鳴子を鳴らさない様に慎重に解除する。

 

今度は罠から少し歩いた所に杭でロープを張る。

 

「上手くいけば、近づいてきたゴブリンを転倒させられる。さっき解除した鳴子をつければ俺達への警報代わりにもなる。」

 

説明しながら設置を行う。

 

「ココ、脇道。」

 

灰盾が指さす。

 

「いい気づきだ、ゴブリン共はこんな脇道に潜んで冒険者をやり過ごし、挟み打ちをしかけることもある。どうやら今回は居ないようだ。」

 

脇道を覗き込みすぐに行き止まりになっていることを確認する。

 

「明かりの具合によっては見落とすこともある、注意しろ。」

 

ゴブリン戦や探索について基本的なことを教えてゆく。

 

歩き続けると広い空間にでた。

 

光に照らされ、奥の方にゴブリン達が見える。

 

身体の大きいホブも居た。

 

しかも数は2体。

 

村人は1体しか見ていなかったのだろうな、もしくは新しく合流したのか。

 

2体居ようがやることは変わらない。

 

「ガギャ!」

 

「ギャ!」

 

「グォグォー!」

 

光に照らされてゴブリン共が俺達に気づく。

 

2体のホブが先頭となって巨大な石斧を掲げながら突進し、その後ろをゴブリン達が追従する。

 

耳が木の板が擦れる音を拾う。

 

「鳴子が鳴った、後ろからも来るぞ。」

 

「じゃあ、とっととぶっ殺さねぇとな!」

 

青肩がメイスを構える。

 

「火炎いくぞ~!」

 

赤胴が手を掲げる。

 

次の瞬間、凄まじい火炎が噴出し、先頭にいたホフの身を焼いた。

 

「ゴォ!?」

 

火ダルマになったホブが火を消そうと転げまわり、近くにたゴブリンが煽りを食らって潰される。

 

もう一体のホブは青肩が相手をしていた。

 

勢いよく振り下ろされた石斧にカウンターでメイスを叩きつける。

 

常人なら吹き飛ぶホブの怪力に拮抗するどころか凌駕し、石斧を押し返してホブの体勢を崩す。

 

「グォ!?」

 

ホブの目が驚愕に開かれる。

 

今度はみぞおちに左拳がめり込む。

 

柔らかいものを叩いた様な鈍い音が洞窟に響く。

 

「死ね!」

 

身体が前のめりになり、下がったホブの頭に青肩がメイスを叩きつける。

 

頭蓋骨を砕かれ、噴水の様に血を流しながら巨体が崩れ落ちた。

 

火炎を浴びたホブは全身に火傷を負い複数のゴブリンを下敷きに死んでいた。

 

「1匹、2匹、3匹。」

 

緑腕が後方から正確な射撃でゴブリンの頭を撃ち抜く。

 

「おら~!」

 

赤胴は片手斧を振るい、ゴブリンの首を草刈りの様に刈っていた。

 

ゴブリンの頭が次々に飛んで首塚が出来ている。

 

俺も向かってきたゴブリンをいつもの要領で屠る。

 

黒兜と灰盾は後方を警戒していた。

 

広間の一団を殺しつくした頃に、鳴子に引っかかった集団が俺達の元にやって来た。

 

「グォー!」

 

こちらの集団にもホブが一匹居た。

 

群れにホブが3匹というのは中々の戦力だ。

 

「遅い。」

 

しかし、振り上げた石斧を簡単に灰盾にいなされ、首に長剣を突きたてられる。

 

刺さったまま剣を捻り引き抜くと、夥しい血を流してホブはその場に崩れ落ちた。

 

「アイスジャベリン。」

 

残りのゴブリン達は黒兜が始末した。

 

狭い洞窟を進んできた為、氷の槍を避けることは叶わず、串刺しになって骸を晒した。

 

「これで全部か。今回、幼生は居ないが見つけたら残らず殺せ。」

 

奴らは恨みを忘れず、報復を行う。

 

余計な芽は摘むに限る。

 

討伐証明としてゴブリンの耳を切り取りながら説明した。

 

 

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