ゴブリンスレイヤー改変物語   作:二つ目

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8話

今日も私は杖を持ちながら、街の外周を仲間と一緒に走る。

 

少し前から始まった体力作りの一環だ。

 

以前は街を2周した所で力尽きていたが、少し体力が付いたのか3週まで走れるようになった。

 

それでも、前衛である剣士と女武闘家には敵わないが。

 

あの2人は5週くらい走っている。

 

どちらがより長く走り続けられるか勝負しているらしい。

 

負けた方が次の食事の時におかずを一品、相手に献上するのだとか。

 

今日も私は先に脱落した。

 

「今日も負けるか~!」

 

鎧と長剣をという名のハンデを装備している剣士が、自分を鼓舞しながら前を走る女武闘家を追いかけて行く。

 

「今日も私の勝ちよ!」

 

女武闘家が振り向き、剣士を煽る。

 

ちなみに勝負は女武闘家が勝ち越している。

 

2人を見送りながら、息を整え、杖を置き、私は用意しておいた水筒から水をゆっくりと飲む。

 

口から零れた水が衣服を濡らすが気にしない。

 

既に汗で衣服は濡れているのだ。

 

水分を補給し、杖と同じくらいの長さの棒を持ち、案山子の前に立つ。

 

棒の両端には布を巻いてある。

 

2人が戻ってくるまで私は案山子を棒で殴った。

 

速さは無いが、狙った場所へ正確に叩きつける。

 

私の主力は魔法だ。

 

命中すれば小物は消し炭にし、大物でも傷を負わせる自信がある。

 

しかし、ゴブリンの巣に潜って実感した。

 

たった2回しか使えない攻撃手段では多数の相手には不利だ。

 

あの洞窟でも一匹を焼き殺したが、次の詠唱が終わる前にゴブリンに組みつかれ、ナイフで刺されて死にかけた。

 

ゴブリンスレイヤーさんと黒兜さんが駆け付けるのが、もう少し遅ければ、私は今この場所に立ってはいないだろう。

 

私も魔法以外に戦う術を身に付けなければ

 

そう思って、杖を使った棒術を身につけようと思った。

 

黒兜さんの教えに従い、まずは打ち込みを繰り返す。

 

数十回は案山子を殴りつけた所で、一旦手を休める。

 

息を整え、再び案山子に棒を叩きつける。

 

休み、叩くことを繰り返していると、2人が戻って来た。

 

荒い息をついている2人にそれぞれの水筒を渡す。

 

「今度も私の勝ち!」

 

「ちくしょう。」

 

剣士の連敗が確定したらしい。

 

2人がゆっくりと水を飲む。

 

私は案山子を剣士と女武闘家に譲り、何もない空間で棒を振るった。

 

頭の中でそこにゴブリンがいることを想像して棒を振るう。

 

大抵は複数で襲ってくるのではずなので、次の手を考えながら攻撃パターンを組み立ててゆく。

 

「先頭の頭を叩く、身体を後ろに引いて横に薙ぎ払う、右上段から振り下ろす。」

 

呟きながら、想像上のゴブリンの波状攻撃を捌き続ける。

 

「そろそろ私と模擬戦いいかな?」

 

準備を終えた女武闘家が声を掛けてくる。

 

黒兜さん達が不在の際は、3人で模擬戦を行うのだ。

 

「いいわよ。」

 

私の返事を聞き、女武闘家が腰を落として身構えた。

 

女武闘家は右手に変な物を持っている。

 

見た目は角材の中程に握り手を取りつけただけのものだ。

 

何でも「トンファー」という武器らしい。

 

私と同じ様に布が巻いてある。

 

灰盾さんから勧められた武器で、街の大工の親方に頼み込み、使わなくなった木材の切れ端を貰い、作ってもらったそうだ。

 

「どうする?」

 

「じゃ、私がまず攻撃、10回捌いたら攻守交代、一発入ったら止める。」

 

「分かった。」

 

ルールを決めて、私は棒を振り下ろした。

 

まずは上段から一撃。

 

女武闘家がトンファーを掲げて防ぐ。

 

右上、左上と叩きつける。

 

次は横薙ぎに払う。

 

女武闘家が後ろに下がって避ける。

 

追撃で突きを見舞うが弾かれる。

 

今度は足元を狙って薙ぐが、避けられる。

 

もう一度、左上段から振り下ろし、今度は石突を跳ね上げる。

 

上体を反らして上手く逃げられた。

 

しかし、女武闘家は姿勢を崩した。

 

上段で棒を叩きつける。

 

再びトンファーでガードされた。

 

女武闘家がニヤリと笑うのが見える。

 

しかし、私も笑みを返し、右足で中断蹴りを放つ。

 

慌てて女武闘家が蹴りをガードした。

 

10回の攻撃が終わり、息を吹き出す。

 

「最後のは、ちょっと危なかったわね。」

 

「でも防がれちゃった。」

 

「あなたなら中段よりも、踏みつけで足先や膝を狙った方が良いかもよ?」

 

女武闘家がアドバイスをくれる。

 

次はそうしてみよう。

 

「じゃ、今度はこっちからね。」

 

攻守交代。

 

女武闘家が構えたので、私も棒を構える。

 

結果から言おう。

 

私は3回攻撃を凌いだ所で頭に一発貰い、負けた。

 

「最初の頃に比べたら成長してるわよ。」

 

負けた事に悔しさを感じていると、女武闘家が慰めてきた。

 

始めたばかりの頃は反応できずに負けていたのだから、確かに成長しているのだろう。

 

「今度は俺とも頼むぜ。」

 

剣士が布を巻いた木剣を肩に乗せて私達に近寄って来た。

 

「私は休憩するわ。」

 

疲労が溜まって来たので辞退する。

 

「じゃ、私とね。」

 

女武闘家が構えをとる。

 

「走り込みじゃ遅れを取ったけど、今度は負けない!」

 

剣士も木剣を構えながら意気込む。

 

「「ハァー!」」

 

私は2人の戦いを離れた所から見学した。

 

 

 

 

 

今日も掲示板でゴブリン討伐の依頼が無いか探す。

 

この西方辺境に来た当初は、私達の黒い鎧が珍しいのか探る様な視線を冒険者から向けられたが、今では時間が経ち皆慣れてしまった。

 

残念ながら依頼書は張り出されていなかった。

 

念の為に受付で確認する。

 

「ゴブリンの退治依頼は来ていませんか?」

 

台帳に目を通していた受付嬢が顔を上げる。

 

「少々お待ち下さい。」

 

別の書類の束を捲りながら確認することしばし。

 

「今は無いですね、先ほどまでは一件ありましたが別のパーティーが受注しました。」

 

「一足遅れましたか、残念。」

 

依頼が無いことが分かり、立ち去ろうとしてふと足を止める。

 

「そのパーティーは女性だけで構成されていませんでしたか?騎士、僧侶、野伏、魔術師の4人、リーダーは貴族の出身の方で?」

 

「そうですが?」

 

「その依頼場所は何処ですか?」

 

踵を返して受付に詰め寄る。

 

「重なったら問題になりますよ。」

 

詰め寄った私にたじろぎながらも受付嬢が反対する。

 

「報酬は要りません、教えてください。」

 

私が報酬を受け取らないと申し出ると、受付嬢は眉間に皺を寄せつつも場所を教えてくれた。

 

「まぁ貴方達、鉄鬼隊なら依頼の妨害なんてしないでしょうけれど。」

 

十数年積み重ねてきたギルドへの信頼が役に立った。

 

「有難うございます。」

 

人員の構成に依頼の場所から考えて、恐らく作中で全滅した貴族令嬢の率いるパーティーだろうと私は確信した。

 

彼女達は経験もありゴブリンの事を侮ることはしなかったが、予想以上の群れに圧倒されて敗北、全員が惨たらしい最期を遂げた。

 

依頼が出た場所を教えてもらい、足早にギルドを後にする。

 

「おや、ゴブリンスレイヤー。」

 

出てすぐにゴブリンスレイヤーと女神官に出会う。

 

「依頼か?」

 

「違います。一緒に行きますか?ゴブリンを殺しにですけど?」

 

「同行しよう。」

 

「え!?」

 

女神官が依頼外でゴブリンを殺しに行くことを聞いて、顔を引き攣らせる。

 

「心配なさらず、一様、ギルドには報告してありますので。貴方達への報酬も私の財布から出しましょう。」

 

女神官がギルドを通さずにゴブリン殺しを行うことへの不安を取り除く。

 

「許可が出ているなら・・・。」

 

それでも女神官は不安な表情を浮かべていたが。

 

「馬車で行くのか?」

 

「いえ、もっと早い手段を使います。」

 

「となると、またアイツに協力して貰うのか?」

 

「そうです、縄梯子が要ります。」

 

頭上で交わされる私とゴブリンスレイヤーの話を聞いて、女神官の頭に?マークが見えた気がする。

 

街の外、人気のない空き地で縄梯子を広げる。

 

こんな所で縄梯子を広げる私達を見て、女神官が不可解な物を見る様な表情を浮かべる。

 

「あの、一体何を?」

 

「今に分かる、ロープを身体に結ぶぞ。」

 

ゴブリンスレイヤーが女神官に命綱を結び、自分にも結ぶ。

 

行動の意味が分からず、女神官の困惑が更に強まる。

 

「できたぞ。」

 

ゴブリンスレイヤーが、準備ができたことを伝えてくる。

 

私は頷き、召喚を行った。

 

「ダー・ネ・ヴィール。」

 

空間が歪み、ダーネ・ヴィールが巨体を震わせ現れる。

 

「ドラゴン!?」

 

突然現れた巨大なドラゴンに女神官が絶句する。

 

「今度は何用だ?」

 

ダーネヴィールが首を曲げて顔を私達に向ける。

 

「また私達を運んで頂けますか?方向と場所は指示します。」

 

「我は運び屋では無いのだがな。」

 

ダーネヴィールはそう言いつつも縄梯子を口に咥える。

 

「まぁ良いだろう、空を飛ぶのは好きだ、しっかりと捕まっていろ。」

 

翼を力強く羽ばたかせ、ダーネヴィールが空に舞い上がり、私達も引っ張られて空を飛ぶ。

 

「~~~!」

 

下を見ると女神官がゴブリンスレイヤーに身体を支えられながら、声にならない叫びを上げていた。

 

これが普通の反応だろう。

 

誰しも突然、空を飛ぶことになったら悲鳴をあげるはずだ。

 

最初に乗せたゴブリンスレイヤーが一言も驚かなかった方が可笑しいのだ。

 

しかし、暫くすると女神官も慣れてきたのか、高空からの景色を堪能し始めた。

 

「私達の街があんなに遠くに!」

 

後ろを振り返り、自分達が拠点にしている辺境の街が小さくなってゆく光景に興奮し出す。

 

その興奮は目的地周辺に着くまで冷めなかった。

 

また人気のない所に私達を降ろしてもらい、ダーネヴィールに戻ってもらう。

 

依頼を出した村に入り、ゴブリンの巣食った山砦の場所を聞き出し、追跡を開始した。

 

彼女達が村を出て間もないという話を聞き、足早に山道を登る。

 

砦の入り口手前で段取りを決め、ゴブリンスレイヤー達に残ってもらい、私が単身潜ることにした。

 

別れる前にいくつか催涙玉を分けてもらう。

 

中からはゴブリン達の怒号が聞こえていた。

 

私は奥に向かって走り出した。

 

 

 

 

 

蟻の這い出る隙間も無いほどにゴブリン達に囲まれ、私達は窮地を迎えていた。

 

村娘を浚ったというゴブリンの話で義憤に駆られ依頼を受注し、準備をして砦へと足を踏み入れた。

 

ゴブリンの仕掛けた罠を掻い潜って奥へ進み、浚われた娘を見つけたが、それは罠だった。

 

娘は既に事切れ、動かした拍子で下に隠されていた仕掛けが起動。

 

仕掛けに連動して、警報を告げる大きな音が響き渡り、昼間で眠っていたゴブリン達が起き出してしまった。

 

侵入者である私達を見つけて襲ってくるゴブリン。

 

私達も奮戦し、多数を殺したが、予想よりも数が多すぎて包囲されてしまった。

 

絶体絶命。

 

リーダーである私は、どうやってこの場を切り抜けるか考えていた。

 

すると突然、通路を背にしたゴブリン達の後ろから何個もの白い玉が飛んできた。

 

それは包囲していたゴブリン達に命中、割れて中に入っていた粉末をぶちまける。

 

中身が舞い上がり、それを吸い込んだり、顔に被ったゴブリン達が悲鳴を上げた。

 

私も粉を吸い込み、喉に痛みを感じた。

 

「一体何よこれ!?」

 

仲間も私と同様に喉や目の痛みを訴え出す。

 

涙で視界がにじむなか、ゴブリンの包囲網の一角が突然崩れる。

 

「こちらに来なさい!」

 

そこには黒い鎧を着た男が、血に濡れた大剣を両手で構え叫んでいた。

 

足下には身体を両断されたゴブリン達が転がっている。

 

私達は男が開けた包囲の穴に走り込んだ。

 

「死の従徒。」

 

男が既に事切れていた村娘に手を向け呪文を唱える。

 

紫色の光が死体に吸い込まれてゆき、動かない筈の村娘が突然立ち上がる光景を私は見た。

 

あり得ないことに驚愕していると男が命令する。

 

「暴れなさい。」

 

「アァァー!」

 

村娘だったものは歯を剥き出しにして獣の様な叫び声を上げ、手近なゴブリンへ襲いかかった。

 

先程の粉末の影響からまだ立ち直れていないゴブリンの頭に、拳を叩きつけ頭蓋を陥没させる。

 

今度は隣にいた仲間を殴り殺され、茫然としていたゴブリンの首元に噛みつき、喉を食いちぎる。

 

首から血を吹き上げながら倒れる仲間を見て、ゴブリン達に動揺が走る。

 

死んだと思っていた人間が突然起き上がり、仲間を襲う光景に恐怖した。

 

ゴブリンの射手が矢を射かけ、胴体や首に鏃が突き刺さる。

 

しかし、村娘だったモノは怯みもせずに自分を撃った射手へと迫り、その醜悪な顔面に拳を叩きこんだ。

 

顔が潰れてゴブリンが崩れ落ちる。

 

なんとか動きを止めようとゴブリンが組みつくが、尋常ではない力で振り落とされ宙を舞う。

 

獣の様に暴れる村娘のせいで群れは恐慌を起こしていたが、私達が包囲を抜けると、気付いた十数匹が怒号を上げて追いかけてきた。

 

黒い鎧の男が殿となり、出口を目指す。

 

全員が砦から出た所で男が叫ぶ。

 

「今です!」

 

男の仲間なのか、神官の服を着た少女が呪文を詠唱、入口を白みがかった半透明の壁で塞ぐ。

 

ゴブリン達が突然現れた壁と激突し、鼻血を吹きながら倒れ悲鳴を上げた。

 

気が付くと砦は火に包まれていた。

 

少女の傍らで鉛色の鎧を着た男が、火矢を放っていた。

 

「これで奴らは蒸し焼きだ。」

 

男が、火から逃れようと入り口に殺到し、壁で阻まれているゴブリンを眺めて呟いた。

 

「火が収まったら生き残りがいないか確認しましょう。」

 

「そうだな。」

 

黒い鎧の男と鉛色の鎧の男が後始末の打ち合わせを行う。

 

茫然と燃えている砦を見つめていると、突然、上の階の壁が爆発し、人型の何かが飛び出してきた。

 

私達の近くに四つん這いになって着地する。

 

飛び出して来たのは村娘だったモノだ。

 

「中々の逸材でしたね。」

 

黒い鎧の男が呟く。

 

全身に切り傷や火傷を負い、矢を打ち込まれたまま、ソレは倒れた。

 

「危険な所を助けて頂いて感謝するが、貴方達は一体?」

 

混乱している頭を落ちつかせ、姿勢を正し、私が仲間の代表として礼を述べる。

 

「私は鉄鬼隊の黒兜。」

 

次に鉛色の鎧の男を指さす。

 

「彼はゴブリンスレイヤー、貴方と同じ冒険者です。」

 

男の首元から銀の等級票が覗いた。

 

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