名探偵キズナアイ   作:桂ヒナギク

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1.キズナアイ、殺人犯を暴く の巻

 どもども、バーチャルYouTuberの……じゃなくて、私の名はキズナ アイ。都内の公立高校に通う一年生である。

 私は今、学校へ行くため、電車に揺られている。

「うわ!」

 男性の呻き声。

 満員のため、その姿は確認できなかったが、次の停車駅で仰天の出来事が。

 なんと、背中を刺された男性が、人が降りていった瞬間に(あら)わになったのだ。

 その様子を見た女性が、悲鳴を上げる。

「きゃああああ!」

 何事かと思った乗務員が、駆け出してくる。

「どうしたんですか?」

「あ……あ……あれ……」

 女性が指を差した先を見ると、乗務員はびっくりしたが、すぐに警察に通報した。

 駆けつけた警察が、電車の発着を中断させ、捜査を始める。

 この車両に乗っていた人物は、そのほとんどが改札を出てしまっていた。

 私はこの中に犯人がいると考えた。

 容疑者は悲鳴をあげた女性、私の向かい側で座って新聞を読んでいた中年の男性。そして車両の端でこちらを見ている女性。

「君、名前は?」

 刑事が私に訊いた。

「キズナ アイですが何か?」

「ちょっと荷物見せて」

「いいですよ」

 と、足元のカバンを手に取ると、なぜかチャックが開いていた。

「いやー、まさかそんなわけないよー」

 刑事が私のカバンを調べると、血の付着したナイフが出てきた。

 あれ?

「キズナさん、署までご同行願えますか?」

「ちょっと待って! マジ待って! え? なんで私のカバンからナイフが?」

「君が刺したからじゃないのか?」

「待って。私は何もしてないですけど?」

「しかし、凶器は君のカバンから出てきた」

「いや、だから……」

 その時、ある人物が北叟笑(ほくそえ)み、電車を降りようとする。

 犯人と思しき人物が行ってしまわれるー!

「待って!」

 私は車両の端からドアに向かって歩いていく女性に声をかけた。

「真犯人はあなた、そうですね?」

「な!? 失礼なこと言わないで! 私はなにもしてないわよ! それに凶器はあなたのカバンから見つかってるじゃない! それが動かぬ証拠よ!」

「男性を刺した後、すぐに私のカバンに入れることだってできます!」

 そう言い放った後、私はその女性の胸に小さな赤い染みを見つけた。

「どうやら、悪いことはできないみたいですね」

 私は女性の胸元を指差した。

「いや、これは……」

 口を閉ざす女性。

 警察官が女性を連行し、署で調べたところ、胸元の染みは被害者の血液であることが判明。女性は殺人罪で逮捕されることになった。

「疑って申し訳ない」

 と、刑事が私に頭を下げる。

「私を逮捕してたら誤認逮捕になるところでしたね。ほんと、日本の警察は優秀ですこと」

 皮肉をたっぷり浴びせてやる。

 


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