第10話
----------------------------------------------------
~機動六課隊員集合場所~
戦技場と本部の中心部、はやてが先程まで活動していた場所より少し先に進んだ所にある公園が、今回の集合場所である。
普通の公園よりかなり広く、自然が豊かなため、それなりに人気スポットとなっている。
特に見かけるのは家族連れやカップルであるが、もっぱらピンクオーラを放っているため、独り身の場合は精神的にかなりキツいと言えよう。
つまり何が言いたいかと言いますと、
「いつまで待たせるんや~~!!」
と、いうわけである。
「まぁまぁ落ち着いてください、はやてちゃん」
苛立ちがピークに達しているはやてをシャマルが宥める。
「そうですよはやてさん。辛いのはみんな同じです」
メカオタクのシャーリーですら嫌気がさしてしまうのだ、常人ならヒステリーを起こしても仕方がないだろう。
だがしかし一人この状態でも平然としている強者がいた。
「どうしたですか~?」
リイン曹長その人である。
くるくると飛び回って実に楽しそうだ。
3人と比べるとその差は一目瞭然、天と地ほどにその表情はかけ離れている。
「なんでや、なんでリインは平然としとるんや!!」
釈然としないはやては叫ぶ。
「やっぱりアレですかね」
「シャーリーもそう思う?」
そう、やはりリインはアレなのだ。
”ビバ・お・子・さ・ま”♪
だがしかしこれを本人に言うと怒るので決して口には出さない。
というか言う元気がもはや誰もいなかった。
それにしても遅い!遅すぎるんちゃうか!?
いくら寛容で慈悲の心を持ってると評判のわたしでも限度ちゅうもんがあるで!
「! こっちですよ~」
と、リインが誰かを見つけたようで手をちぎれんばかりに振っている。
リインが見ている一点を目を凝らしてみると、駆け足でなのはが来るのが見えた。
「お~なのはちゃんや、ちゅうかなんで向こうから来とるん?」
なのはが戦技場からではなく、本部がある方向から来たので疑問に思い隣にいる二人に聞いてみた。
「そう言われてみるとそうですね~?」
首を傾げながらシャマルも同意する。
「他の皆さんも居ないみたいですし、なのはさんに聞いてみた方がよさそうですね」
などと会話をしていたら息を切らせたなのはが目の前まで近づいて来た。
「はぁはぁ、ごめんっ! 待った?」
手を合わせ上目使いで謝ってきたなのはに対し、はやてはというと。
右手をなのはの左頬に、左手を右頬に添えるとはやてはすべてを許したかの様な慈悲の顔を浮かべ・・・・
左右におもいっきり引っ張りながら頬を捻った。
「ふぃ、ふぃっふぁぁ~~い!!!」
はやてに頬を引っ張られているためうまく喋れていないが、取り合えずかなり痛いというのだけはものすごく判った。
「ひっひどいよはやてちゃん!!」
目に涙を溜ながらはやてに抗議する。
「甘い、甘いでなのはちゃん! フェイトちゃんや有象無象の男どもならさっきの上目遣いでいちころやったかもしいへんがな、・・・この八神はやてを落とすには後3ヶ月早いで~!」
仁王立ちになり、親指で自分を指さすその姿はまさに!
「わ~♪ はやてちゃん、こち○めのりょうさんみたい!」
その無邪気な言葉を聞いた瞬間はやては膝から崩れ落ちた。
「ば、馬鹿な! わたしはまだ、まだ花の19歳やで!!」
こんなピチピチのわたしを捕まえてあのおっさんやて!?
確かに警官やし、個人的にあのおっさんは好きやで、だけどおっさんなんや!!
「あの~はやてちゃん?」
どうしよう・・いちお誉め言葉だったんだけど。
というよりはやてちゃん、心の声だだ漏れなんだけど
あれ気づいてないよね?
しかもピチピチってもはや死語だよ、それ使ってるのシャマルさん位だし。
「はやてちゃん立ち直ってください、リインあのおじさん好きですよ! はやてちゃんみたいで!!」
リインが励ましの言葉を言う。
だがしかし最後の言葉はいらなかったと思う。
結果的に一番のダメージをはやてに与えたのは、公園でいちゃつくカップルではなく、
悪気なく言ったなのはさんとリイン曹長の一言だったと言えるだろう。
「シャーリー、そのナレーションいらないから」
「すみません、なのはさん」
「ごめんね、はやてちゃん? 本当に悪気は無かったんだよ?」
「それは解っとる」
悪気があったらとっくに怒っとるちゅうねん!
なのはちゃんもリインも悪気が無いから質わるいんや。
「っく、このやり場のない怒りをどないすればいいんや!!」
すると冷ややかな声でなのはが言う。
「・・・・・また同人誌にぶつければいいんじゃないのかな?」
「おっそやな!さすがなのはちゃん! 考えることがちがうな~・・・・・はははっ」
嫌な汗が頬を伝う。
あかん、振り向きとうない! 痛い痛いで背中にチクチク刺さっとんねん。
なにが? そんなん来まっとるやろ!?
想像するんや! 今のこの状況を!
みんなが畏れるなのはさんが低い声で話しかけとるんで?
「どうかしたのかな? はやてちゃん・・・」
未だに振り返ろうとも、立ち上がろうともしないはやてに声を掛ける。
しかし、なおも動こうとしないはやてになのはは声をかけ続けた。
「新作出したみたいだね? 何だったかな、クロなのだっけ?」
”ビクッ”
「ミゼット提督常連さんなんだってね?」
”ブルブルブル”
「私すごい恥ずかしかったんだけど」
”ガクガクガク”
「ねぇはやてちゃん聞いてる? 私のもっとう何か覚えてる?」
もはや立ち上がれない程震えているはやてに問う。
あまりの恐怖に3人に助けを求める。
{ヘルプ!ヘルプミ~!!}
・・・・・・・・・
がしかし救援要請には誰も答えてはくれなかった。
{薄情者!! 何で助けてくれんのや! 聞こえとるはずやろ!}
だが現実は無情だった。
3人はまるで聞こえていないかのように、トークに花を咲かせていた。
ごめんなさいはやてちゃん! リインはリインは!
はやてちゃん許して成仏して!
死にたくない、死にたくない、死にたくない!!
3人の思いは一つ
”私たちのために犠牲になってください!”
実に薄情であった。
だがそれだけ今のなのはが怖いと言うことだ。
あの3人はもう助けてくれへんやろ。
くそっここまでなんか!
すると後ろから魔王、もといなのはの声がかかった。
「はやてちゃん忘れちゃったの?」
「も、もちろん覚えとるで~」
だめや! ここで言ってしもうたら完全に死亡フラグ確定や!
ちゅうか何でもうレイジングハートスタンバイしとんねん!?
すでに撃つき満々やで!
せめて矛先はわたしに向けないでほしんやけど!
もう覚悟を決めるしかないんか・・・
とはやてがすべてを諦めかけたその時!
希望の光が舞い込んできた。
”緊急回線”
「八神部・・! しきゅ・・えんご・・」
「え、ちょ何事や!」
ティアからの救難要請のようだったが、ノイズがひどくうまく聞き取れなかった。
するとなのはが一言呟いた。
「あっ忘れてた・・・」
「忘れてたって何をや?」
「うんとね、シグナムさんが暴走してた事だよ」
・・・・・
「そな大事なこと今の今まで忘れとったんか?」
「うん!」
忘れてもいいんかそれは!
はっ、いやしかしあの回線のおかげでなのはちゃんの取り巻く空気が和らぎおったで!
チャンスや!
「なのはちゃん、緊急事態やこの話はまた次の時でええな」
このままシリアスを保んやわたし!
「うん、仕方ないね。急いで戦技場行こうか」
先程とは打って変わって真剣な面もちで言う。
「3人とも急いでみなの所に行くで!」
「後で覚悟しとき~」
恨みがかた表情で後ろから無言で着いてくる3人に言った。
~戦技場地下入り口~
「はやてちゃん先に入ってくれる?」
「いいけど、なんでや?」
「部隊長優先にするのは当たり前だよ」
だがなのはの考えていることは言っている事と全く違った。
別にはやてちゃんに認証機の事を言わないのは根に持ってるからとかじゃないよ?
やっぱりここは平等じゃないとね♪
[マスターそろそろ入るみたいですが]
「あっうん!」
危ない危ない、聞き逃す所だった。
”ピーー、ID確認しました。さすが第2のタヌキと言われるだけありますね。六課就任前と比べて少々大きくなったんではないですか?”
”ぷっ”
わ~今誰か笑ったよね。
はやてちゃんなんか震えてるし、ちょっと気の毒な様な気もするけど自業自得だしね?
それにシグナムさんに比べれば大したことないと思うし全然優しいレベルだよね♪
「どないなっとんねん!第一タヌキって食えない奴って意味であって、太ったゆうことやないんや!」
「うん、そうだね♪」
でも私たちは知ってるんだよ?
はやてちゃん殆ど座りっぱなしだから、ちょっと出たお腹を気にしてダイエットを始めたことをね。
それにしても笑われた事はいいのかな?
すると何処からともなく出したはやての腰ほどまであるハリセンを掲げ、宣言をしだした。
「わたし八神はやてはここに誓います。」
急に宣言をしだしたはやてに驚きつつもなのはは別の事が気になってしょうがなかった。
えっ何あのハリセン! 何処から出したのはやてちゃん! 大きすぎるよ!?
ていうより何でハリセン掲げるの!
その理由は次の言葉を聞いて明らかになった。
「このハリセンで今笑った者どもを、無き者にする事を!」
そう言うとはやては全力で周りにいた人達をハリセンで叩きまくっていった。
・・・・・・・・
「まぁ、結果オーライって言うことで」
[そうですねマスター]
今なら周りに誰もいないので心起きなく入る事ができる。
”ピーー、ID確認しました。なのはさんのタイプってああ言う人なんですか。顔真っ赤にしちゃって! レアモノなのはさんゲット!”
と目の前に1枚の写真が映し出された。
なのははそれを見て戦慄した。
なぜなら、そこに映し出されていた姿はついさっきの自分自身だったからだ。
そんな馬鹿な!
写真なんて撮られた覚えはないし、これついさっきの事だよ!?
私にプライバシーはないのかな!
などと考えていたら背後から急に声を掛けられ、驚いたなのははとっさに振り返ると同時にレイジングハートを起動し、振りあげた愛機が相手の脳天にクリティカルヒットした。