魔法少女リリカルなのは 永遠に   作:dejitaru

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第19話

前回から引き継ぎました、名誉元帥のレンです。

この度スカリエティの言うがままにこの案件を軽い気持ちで実行してしまったことを深く、深く反省している次第であります。

これほどまでに後悔することになった時間まで、遡ることおよそ1時間あまり、唐突ながらお聞きください。

 

 

バリアジャケットに身を包み、晴天の空に浮かぶレンが憂いの表情で漂っていた。

「ミゼット……、ここはどこだ…………」

通信がうまく届かないのか、かろうじて音声だけが聞こえる。

「映像が映らないから皆目検討もつかないわね」

「そうか、それにしても眩しすぎるな」

太陽を睨めつけながレンは言う。

普段なら身につけている仮面も、バリアジャケットに身を包んでいる間は流石に着けてはいない。

日差しを遮ろうにも見渡す限り砂漠しか見当たらない。それどころか町も、人も、討伐対象のターゲットすら見あたらなかった。

それもその筈、転送先が違ったあげく今回の任務はとうの昔に完遂済みの案件だった。しかし悪いことと言うのは続くものだ、これは身を持って証明済みである。

 

…………

(思い出される脅迫と開けるのも躊躇う届け物たち)

 

だが今はそれより、いや、それよりという程でもないがこの状況は仕事に影響するため頭を振る。

 

「しかしどうしたものか、この状況だと仕事などできそうもないしな。……ミゼット、後どのくらいでこの場所を特定できそうだ」

「少なく見積もっても40分は掛かるみたいよ(シャリ」

「掛かりすぎだな、ところでミゼット」

「なにかしら(シャリシャリゴクリ」

「さっきから何か食べているような音が聞こえるんだが」

明らかに言葉の後ろから何か食べているような音が聞こえるため、まさかと思いつつも聞いてみる。

「そんな分けないでしょ! 多分うまく通信がいかないからノイズよ!!」

だが無情にも隠しきれない声が木霊する。

「(あっちょっとミゼット提督こぼさないでくださいね!)」

「……、いやその違うのよ? 朝食を食べてなくて代わりにアイスを食べただけなの」

その瞬間、言葉にできない殺意に襲われた。もしこの場にミゼットが居ようものなら飛んで逃げてしまったことであろう。

しかしその場に居ないどころか映像すらも届かないこの現状ではやれることは1つしかなかった。

 

声だけでも伝わるように、地から這うような声を捻りだしながら言葉を発する。

「貴様ァァ、よく俺がこのくそ暑い中やることもなく漂っているっていうのに何暢気にアイス食ってんだ……、殺すぞ!」

「ふっ、そんな事言ったところで出来ない事は学習済み……、殺れるものなら来てみなさい!! (足震えてますよ提督)」

「チィッ、まぁいい。何でもいいからやることをくれ」

「えっもういいの? 唐突すぎるでしょ? まぁでもちょうど良いことにスカリエッティから説明が届いてるわよ。多分そっちでも開けるはずだから読んで時間を潰すといいわ」

「ああ、もう読んでる。ところでミゼットはこれ読んだか?」

「まだだけどどうかしたの?」

 

…………、

 

深く考えた後、レンはゆっくりと答えた。

「こいつバカじゃねぇの」

余りに確信をついた一言にミゼットも絶句する……、事もなく話を続ける。

「ペアになった人と同居させる時点ですでにバカでしょ? なのに今更どうしったっていうのよ」

「なんだ、まだ読んでなかったのか。取り合えず見て見ろ、あいつの馬鹿さ加減と性格の悪さを垣間見る事の出来る内容になってるから」

しみじみと語るレンの言うとおりに内容を読み進めていく。

 

「え~どれどれ、ふむふむ、なるほどなるほど……、今30項目まで読んだのだけど……、もう読まなくて良いかしら?」

「続きをとっとと読め」

余りに関係があるとは思えないだけではなく、親バカっぷりを見事に発揮した内容となっていたためこれ以上の読み込みは不要と判断したが、レンが最後に言っていた性格の悪さは辛うじて確認できていないため渋々読み進め、笑いを堪えるミゼットがそこにはいた。

 

五十

レン名誉元帥ならび高町なのは一等空尉は日常時も一緒にいること。なお戦闘時、訓練時を除く以外は1メートル以内にいること。

 

PS.1メートル以上離れた場合、デバイスに組み込んだウイルスの引力で交互に相手に引っ張られます。

 

試験運用時間 2:00

運用開始時間 13:00

 

「あなた何かスカリエッティの気に障ることでもしたんじゃないの? そうでもなきゃこんな名指しなんておかしいでしょ」

「……そうだなぁ」

 

回想

 

指定された場所に用意された魔法陣に、レンは足を踏み入れる。

瞬く間に視界は移り変わり、立方体の真っ白な部屋にスカリエッティが不適な笑みを浮かべ座っていた。

「やぁ遥々来ていただいてすまないねぇ、何も用意は出来ないがくつろぎたまえ」

辺りを軽く見渡しながら用意された椅子へと腰をかける。

見たところ人が出入り出来るドアや窓は見あたらない。恐らくだが亜空間にこの部屋のみ存在していると考えていいだろう。

「とっとと本題を言ってもらおうか」

「では1つだけ、yesかnoか答えを聞かせてもらおうか」

「……」

実に腹立たしい、yesと答える事しかできないと分かっているからこその笑み、その面を殴ってやりたい気持ちに襲われる。

「yes」

「その答えを直接聞きたかったのだよ、これでこの話は終わりとして詳しいルールは後ほど遅らせていただくとしよう。お帰りはその陣から帰りたまえ」

 

話さえ終わればこんな場所に用はない。俺は手に持っていた荷物を置いてその場を後にした。

 

 

回想を聞き終わったミゼットは首を傾げる。

「今の話だと特にありそうはないわね。あえて言うのなら何を置いていったのかしら?」

「俺宛に届いた荷物。(手作りと思われるお菓子)」

「ちなみになんでそれを置いていったの……」

「毒々しい何かを放ってたから」

その答えを聞いたミゼットが嫌がらせの理由を導き出した。

「どう考えてもそれが原因でしょ!!!!」

「置いたけど食べろとは言ってない」

「そうゆう問題じゃないわよ!!」

子供じみた言い分を聞きながらミゼットは思った。あいつはバカだがこいつはアホだと。

よく天才はなんとやらという言葉を耳にするが、まさにぴったりの言葉ではないかと心底思う。

 

「はぁ、もうこの話はもうどうでもいい。とりあえず帰らせろ」

「それが出来たらこんなことになってないでしょうが」

とその時、レンの後方に魔法陣が展開していく。

「なんだ、出来てるじゃないか」

「出来たってもしかして転送の準備が? ちょっとまって!(転送準備どころか特定すらまだ出来ていません!!」

しかし完成した魔法陣からは誰かが転移してくる気配もなければ攻撃用の魔法陣というわけでもない。というか攻撃用だったらすぐに分かるはずだ。

だが念のため距離をとろおとしたその時、体がものすごい力でジリジリと吸い寄せられていく。

「まずいな」

この状況で冷静さを失わないレンにつっこみを入れる。

「いやもうちょっと焦って!!!」

「十分焦ってるって、ただあれだ、血が止まらない時やたら周りが焦ってると逆に冷静になるみたいな」

そんな事を言っている間にもレンの体は吸い込まれていく。

と、不意になぜか時間という言葉がよぎった。

「ミゼット、今何時?」

「こんな時になに言ってるのよ!」

「いいから」

「13時10分!」

その言葉を聞いた瞬間、レンは抵抗するのをやめ吸い込まれていった。

 

俺はこのときの自分に言ってやりたい。なぜ力を抜いたんだと、なぜ転送陣を破壊しなかったのだと。

 

PS.1メートル以上離れた場合、デバイスに組み込んだウイルスの引力で交互に相手に引っ張られます。

 

試験運用時間 2:00

運用開始時間 13:00

 

そして悲劇は起こってしまった。

あの時、あいつの用件を飲んでしまい、荷物を置いていったがための嫌がらせを受け、転送陣を前にして諦めさえしなければと後悔しかない。

なぜなら、こうして考えている間にも悲劇は起こっているからだ。

 

魔法陣に吸い込まれて目の前に映るなのはの顔……、勢いに任せて突撃してしまった体は方向を変えることも出来ず、そのままの勢いでなのはに向かっていった。

なのはに引き寄せられる引力、無情な重力。ここまでいけば分かるはず。

体を押し倒す格好になったのはもちろんだがその瞬間、唇に柔らかい何かが軽く触れるのがわかった。いや、表現が甘かっただろうか。勢いが余りすぎてがっつりと触れるのが分かった。

なにが? そんなのは決まっている。唇と唇がだ。

この事実に硬直した。俺ではない、なのはがである。

 

この現実を受け入れるための一拍置いた後、一瞬で真っ赤に染まるなのはを見て不覚にもかわいいと思ってしまった。

このまま見ていたい、もっといじめたい。そうしたらどんな顔をするのであろうか、だがそれと同時に周りの視線を感じた。その瞬間、一つの感情が俺を支配した。

 

誰にもこの顔を見せたくない。

 

そして気づいた時には、なのはを抱えて走っていた……。

顔が赤いまま、目が点になっているなのはを後目に自室を目指す。今日に限ってアイナさんはいない。

なのはに気がつかれないほどの小声で、レンは不適な笑みを浮かべながら言った。

「これからが楽しみだ」

 

 

 

ああ、忘れていた。

最後に一つだけ訂正させてもらおう。

俺にとって悲劇ではなく喜劇だったと……。

 

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