「次の合同イベントどうする?」
「アタシはやっぱりみんなで盛り上がれる様なイベントにしたいな〜。」
「あこもそういうのが良い!」
他の皆さんがイベントの話を進めている中で日菜と私はぼうっとしていた。
理由は分かっている。私達の兄さんである氷川響也がずっと海外に行ってて帰って来ない事でしょう。
ふとした拍子に思い出してしまって昔の記憶を思い出す。
沢山遊んでもらったり、ご飯を作ってもらったり。兄さんが中学校を卒業して一人で家を出て行ってしまった時は私も日菜も行ってほしくなくて泣いてしまったのを覚えているわ。
それからしばらくして家を出た後の住所と職業を知り、皆さんから頼られて嬉しそうな顔をする兄さんが私達にはとって誇り。
遊びに行くと家に居た頃と違いずぼらな生活をしていた兄さんの為に母さんの手伝いを二人でして料理を覚えて、今度は私達が料理を振る舞うと美味しいと言いながら全部食べて私達も嬉しかったわ。
しかし、五年程前に兄さんは海外の仕事があると言って離れてしまった。
今は何をしているのだろう。いつもと同じ様に笑顔で人の為に頑張っているのでしょうか。
「紗夜、ヒナ、大丈夫?」
「っ、すみません、ぼうっとしてました。」
「おねーちゃん……おにーちゃんの事だよね?」
「日菜……その話はなるべくしないようにと言ったじゃない。」
「紗夜さんもひなちんもおにーちゃん居たの!?どんな人どんな人?」
宇田川さんが興味を持ってしまうなんて。
この話をすると兄さんに会いたくなって寂しくなってしまう。子供っぽいと笑われるかしら?
それよりも日菜が話すよりも早くどうにかはぐらかさないと。
「えーっとね……
「たっだいまー!!愛しのお兄ちゃんが帰って来たぜー!!」
……あの人。って嘘っ。」
声がした方には間違いなく、私達の兄さんが居た。
「たっだいまー!!愛しのお兄ちゃんが帰って来たぜー!!」
バーンッとドアを開けると妹達しか居ないと思っていた所には大勢の女の子達が居て俺を見ていた。
「……あっれー?お邪魔だったかな?ゆっくりしていってね〜……。」
無駄に高い運動神経を生かしてムーンウォークで戻って行く。
まあ、うん、あの子達にもそりゃあ友達とかいるだろうし?別に、お兄ちゃん寂しい訳じゃなし?俺だって友達くらいいるし?
「ちょちょちょ、ちょっと待ったー!」
反対側からドアが無理矢理開けられてひしゃげた。……後で必要な物買っとこう。
それよりもこの空気どうしよう。
「……おにーちゃん?」
「はいはい、髪と背が伸びて少し傷付いてるけど間違いなくお兄ちゃんだぜ?」
毛先を軽く束ねて日菜の鼻を擽ると『くしゅんっ』と可愛らしいくしゃみをする。
「ただいま、元気だったか?
ほら、紗夜もおいで。お兄ちゃんとハグしようぜハグ。」
両手を広げると紗夜と日菜が抱き着いて来る。うぇへへへ、久し振りの日菜成分と紗夜成分の補給だー!おっと涎が……いけないいけない。お友達が居るから自重しよう。
「二人共身長が伸びたし、美人さんになったねぇ。友達もこんなに出来ちゃって、お兄ちゃんもう感激で涙が出そう。」
日菜は単純に天才だから他の人との相性とかあったし、紗夜はあんまり人と積極的に関わるような子じゃないから心配だったんだぞ。
わしゃわしゃと頭を撫でる。やっと戻って来たんだなー。
すすり泣く声が聞こえる。やべぇ、泣かした。
「帰って来るなら、連絡の一つでも入れてよ……。」
「うん、ごめんな。」
紗夜が文句言うかと思ったんだけど、喋れる状態じゃなさそうだな。おおう、服がびちゃびちゃ。まあ、妹達の涙を拭けたんだから良しとしよう。
所で、お友達が見てるから凄く恥ずかしい。
「あははー、どうも兄の氷川響也です。よろしくね。」
両隣の妹様方に腕を掴まれながらの自己紹介。
家の中を改めて見ると少し内装や家具が変わったかな?
それにしても色とりどりの髪の色だな。目が痛くなりそう。俺も人の事言えないけどね。
「失礼ですが、響也さんの職業は?」
ええと、この子は白鷺千聖ちゃんだっけ?確か子役で見た覚えがある。
職業か、まあ聞かれるよね。
「信じ難いだろうけど、霊媒師をさせてもらってます。」
しまった。紗夜と日菜の友達なんだからもうちょっとあったろうに!!やばいやつだと思われたらどうしよう。
「れ、霊媒師、ですか?具体的にはどういった職業なんですか?」
「幽霊や都市伝説、怪奇現象を主にしてるかな。これでも霊能事務所をやっていてね。何かあれば電話を一本。」
そう言って全員に名刺を渡す。これで人伝に話が伝わって更に見せが繁盛するって寸法よ。
「はぁ……霊能事務所、ですか。」
やっぱりみんな胡散臭い人を見る目をしているな。仕方ない。
「よろしい、証拠をお見せしよう。」
改良版お札「見え〜るくん(仮名)」により札を張るだけで見えるんだが……。
「誰も霊に憑かれてないんだよねぇ。いっそ墓地から……は無しに決まってる。」
んー、と窓を開けて結界に穴を開けて待機。
「あの、何をしているんですか?その証拠は?」
「まあまあ、待っててよ。」
ほけーっと待っていると悪霊が飛んできた。やっぱ引き付けるのってダメだわ。
「来た来た。」
部屋の中に悪霊が入って来ると悲鳴が響いた。まあ、そうだろうね。
悪霊を掴み取る。
「どうよ?信じた?」
「は、はい……。」
ぐっと握って祓う。良い来世を。
「まあ、この関係で色々あって五年位海外行ってたからね。
んじゃ、何の話してたか分からないけど頑張ってねー。」
折角友達が居るんだから邪魔者は退散しないとね。
後は一度部屋の掃除をしないとな。多分埃っぽくなってるだろうし。
っと思ったら掃除してあった。誰かが定期的にやってくれてたのかな?
「疲れたし、寝るか。」
「うん……?」
ギシッとベッドが揺れる。もしかしてベッドの下か中に何か出てきたのか?仕方ない、相手をしてやるか。パッと目を開く。
「あ、おにーちゃん起きた?」
「え、日菜?」
日菜が俺の上に馬乗りになってにっこりと笑っていた。あら可愛い。
「友達は良かったのか?」
「もう夜だよ。ご飯の時に起こしたのに起きなかったし。」
「そっか。それよりも降りてくれないか?腹減ってさ、話なら食ってる時に聞くから。」
「えー、やだ。」
「おい、日菜……。」
少し困っていると日菜に両手を掴まれてベッドに押し付けられた。外そうとしたが何故か外せなかった。えぇ……何で俺より力強いのさ。
「いきなりどうした?起き上がれないんだけど……。」
「おにーちゃん、あたしもう16歳だよ。」
「?そうだな。」
「16歳になったら出直して来いって昔言ったの覚えてる?」
言ったかな……まずい、覚えてないぞ。
「えっとだな……。」
「覚えてないの……?」
「や、悪いな。」
落ち込んでるのなら実際に言ったんだろう。しまったな。
「いつっ」
どう謝ろうと考えていると日菜が首筋に噛み付いていた。普通に痛い……。
「日菜、おい日菜?」
身を捩るがガリッと噛み付いて離れない。それから喉を甘噛みされる。まるで生殺与奪権を握られてる気分だな。少し息苦しくなってくる。
それからも何度か噛む場所を変えて来る。すると途中から噛むのがキスに変わった。
「洒落にならないぞ……。」
ううむ、ずっと会えなかったのが原因だよなぁ。前に養うとか結婚とかそう言う話になったのは覚えてる。あっ、16歳ってこれかぁ!
「んっ。」
次に口にキスをされる。ご丁寧に舌も入れられた。この子こういうのどこで調べたんだろ。ネットだよなぁ。
「ふはっ……ふふっ、おにーちゃんがあたしの物になったみたい。るるるるんっ♪て感じっ。」
「俺も妹に襲われるって貴重な経験をしてるよ……。」
「昔と変わらない軽口だけど顔が赤いよ、あたしに興奮してくれたんだ?」
日菜が舌舐めずりをしながら妖艶に笑う。あーもー、ただでさえ美人に成長してるのがずるいよなー。
それから朝になるまでキスされたり噛まれたり舐められたりで一切体が休まらなかった。しかもどんどん上手くなってくんだから、天才って凄い、改めてそう思った。
体は必死で守ったよ!妹の初めてが俺になるとか恥ずか死ぬし、親父とお袋に顔向け出来ない。今の時点でおかしいけどな!
「ふわ〜……眠くなっちゃった。おにーちゃん、あたし部屋に戻るね。ごちそうさま〜。」
「ふーっ……ふーっ……」
最後に首を撫でられびくっと反応して、ドアが閉められた。やっと、終わったか……。
「兄さん?日菜が部屋から出てきたけど。ど、どうしたの……!?」
今度は紗夜が入って来た。
「兄さん、顔が赤いわ、大丈夫?」
「んんっ」
紗夜の髪が当たっただけでぴくりと過剰に反応してしまう。
首元に手を添えられる。たったそれだけでさっきまでの行為がフラッシュバックする。
……ダメなお兄ちゃんだなぁ。
「……少し、日菜とお話してきます。」
「ん、いや、良い。多分、甘えたかった……うん、きっと甘えたかっただけだろうし。」
「兄さんは、日菜に甘過ぎるわ。」
ふう、やっと息が整った。
「俺は紗夜にも甘いつもりだけどね。
ちょっとシャワー浴びてくる。」
汗やら唾液やらでベタベタだよ……噛んだ跡とかキスマークも見えない様にしないと。タートルネックと絆創膏かな。
兄さんは私と日菜の事ならほとんど許してくれる。きっとどんなにやり過ぎてもそれが他人に迷惑をかけずに自分にだけ関する事ならすぐに許してくれる確信がある。
「後で私が言っておかないと。」
日菜はやりすぎる所があるわ。
ふと、臭いが鼻につく。
「兄さんの、ベッド。」
さっきまで汗まみれになってその汗をたくさん吸ったシーツ。いけない事だと分かりながらも顔を近付けると兄さんの臭いとツンとした汗の臭いが混じっいて、気が付くと私はシーツを鼻に当てていた。
「スーッ……。」
ぶるり、と脳が震える様な感じがする。きっと日菜がさっきまでやっていた事もこんな風に感じていたのでしょうか。
「……ずるい。」
口に手を当てる、私は今何を言ったの?ずるい。これはきっと日菜に対しての言葉だ。
兄さんも、もう少し積極的な女の子の方が好きなのでしょうか?
「ふぃ〜、すっきりさっぱり……。」
跡がシャワー浴びてる間に見える所は消えたから良かった。親父とお袋にどう言い訳しようかと思っていたし。
「親父とお袋には悪いけど、今日は外で昼飯を食べるか。」
やっぱ羽沢珈琲店でしょ。
紗夜に一言言って外へ出る。一応反対されたが大丈夫だと言い切って外へ出た。
「ん……良い天気だ。」
商店街をふらふら歩いて羽沢珈琲店に向かう。昨日はあんな事があったけど今日は何があるんだろう。
昔と同じ様にドアを開けて入る。
「いらっしゃいませー!一名様ですか?」
昔は少し服に着られている印象を持った服がバッチリ似合っている。大きくなったなぁ。
「や、久し振り、つぐちゃん」
「?ええと……。」
「酷いなぁ、忘れちゃったかい?ほら、髪と背は伸びたけどさ。ほらほらお兄ちゃんお兄ちゃん。」
にこにこと目線を合わせて笑う。
俺はお兄ちゃんじゃないけどみんなのお兄ちゃん目指してるからセーフです。
「……響也さん?」
「正解っ!大きくなったねぇ。」
ぽんぽんと頭を撫でる。うむ、良きかな良きかな。日菜と紗夜は撫でれなかったからね。
「あの、恥ずかしいです……。」
んー、赤面してかーわーいーいー。じゃない、違う違う。
「ごめんごめん。帰ってきたばかりてちょっとテンション上がっててね。」
「無事に帰って来てくれて良かったです。
お父さ〜ん、響也さんが帰ってきたよー!」
「本当かい?やあ、響也くん。元気そうで良かった。前よりイケメンになったねぇ。」
「久し振りです、巧さん。早速ですけどコーヒーとトーストのセットで。」
「分かった、今日は俺の奢りだよ。おかえり記念にね。」
「マジですか?やった。」
「つぐみ、今はお客さん響也くんだけだし、話でもしてきなさい。」
「うん、ありがとう、お父さん。」
つぐちゃんの話し相手か、何を話そうか。
「そうだね、まずはアメリカで出会った足長おじさんかな。」
本当に足の長いおじさんの話しから始めようか。
談笑していると気が付けば二時間程経っていた。そろそら頃合かな。
「それじゃ、俺はそろそろ帰るよ。つぐちゃんまたね。」
「あ、はい!ありがとうございましたー!」
ふりふりと手を振る。さて、次はどこに行こうかな〜。
「おっ?何か人だかりが出来てるな。有名人でも来てるのかな?」
人だかりに近付いたけど人が多過ぎて見えないな。仕方が無いから体を横向きにして割って入ると昨日リビングで日菜と一緒に居た友達の一部が居て、撮影みたいな事をしていた。
「?なんだこれ。」
流石に今話しかけるのはまずいかと思って遠くから見ていると日菜と目が会った。
「おにーちゃん!ねー、みんな、おにーちゃん、おにーちゃんが良いー!おにーちゃーん!」
手を振られたから手を振り返すとカメラが俺に向けられる。何、これ?
「こっち来て、おにーちゃん!」
「あの、日菜?俺良く分かんないんだけど……。このカメラ何?有名人でも来てるの?」
そう言うと周りが少しざわつく。えっ、やめて、ちょっと疎外感感じて悲しくなっちゃう。あ、今イケメンって聞こえた、嬉しい。誰だろ、お友達になりたい。
「すみません、響也さん。これから説明しますね。」
「えーと、丸山彩ちゃんだったよね?」
「はい!実は、私達パステル*パレットって言うアイドルバンドをしているんです!」
「あいどる?あいどる……アイドル?君達が?」
「はい!」
「日菜も?」
「そうだよっ!るんっ♪て来るでしょ!」
日菜が、あの日菜がアイドルだって?
「くそぉぉぉぉ!!どうしてそんな大事な事を知らなかったんだ俺はぁ!!」
膝を着いてズガンッと地面を殴る。やべっ、ちょっと欠けちゃった。
「ど、どうしたんですか!?手を痛めちゃいますよ!?」
「既に知名度があると言うことは、もう日菜の晴れ舞台が終わったと言う事だろう……折角の晴れ舞台の写真がぁぁあああ!!」
む、しかし、親族でもライブ中とかに写真はダメか。
「えぇ……あ、あのー。これ生放送……」
「大丈夫だよ、おにーちゃん!ちゃんとおとーさんとおかーさんとおねーちゃんが来て撮ってくれたから!」
「あ、そう?でも生で見たかったなー……。うし、失礼、取り乱しました。
それで、これは何の撮影でしょうか?」
「は、はい、パステル*散歩と言って今日はこの街の変わった人を紹介する事になってます!」
ほーん、変わった人ねぇ。
「ひ〜な〜ちゃーん?」
「だってお兄ちゃん変わってるでしょ!」
言って良い事と悪い事があるでしょうが!
「えっと、じ、自己紹介をお願いします!」
遠くから『彩ちゃん頑張ってー!』や『アヤさん、ファイトです!』、『彩さん、ご愁傷様です。』と聞こえる。俺ってそんなにあれな人間だっけ?
「初めまして、氷川響也です。21歳で職業は霊媒師やってます、この前まで海外に五年程行ってました。オカルトの番組とあったら呼んでください。本物だったりしたら危ないですしね。
好きなものは羽沢珈琲店のコーヒーと山吹ベーカリーのパン、後は家族の料理と美咲ちゃんのカレーと、後、家族、日菜と紗夜が大好きです。それとまだ海外行く前に良く遊んでた子達です。
嫌いなものは人の想いを否定する人です。他は特に無いです。
趣味はゲームとか映画、この位でどうですか?」
「おにーちゃーん!あたしも大好きー!」
へらっと日菜に笑いかける。うんうん、家族って良いよねぇ。
「OKです!」
スタッフの方から指示みたいなのが出た。いつものか。
「職業の霊媒師とは?」
「霊を祓ったりとか都市伝説、怪異の問題解決したりしてまーす。細かく言うと長いですから。」
「最近まで海外に居たんですか?」
「ええ、仕事で海外の怪異とかぶっとば……祓ってました。」
「写真とかあったりしますか?」
「え〜と、心霊写真程度なら大丈夫でしょう。」
大量殺戮のあった墓場で閻魔様の所に向かう前の幽霊達と記念撮影した写真だ。ちゃんと霊達も笑顔でピースしている。
丸山彩ちゃん……面倒だ、彩ちゃんの目を手で隠してカメラに画面を向ける。画面を見せたらカメラを横に向けられた。
ちぇっ、なんだいこの位で、良いじゃないか。
「見えませんけど、何があったんですか?」
「う〜ん、テレビ的にはアウトなのかな。
まあ、大体は成仏したんで安心してくださいよ。」
ははは、とテキトーに笑って済ませる。
「大体……成仏してないのがいるんスか……。」
眼鏡の子が呟く。
「鋭いね、多分何人かは日本に来てるよ。日本の話とかしたし。」
周りから『嘘だ〜』とか、『胡散臭い』とか聞こえる。まあ、こんなもんだろ。この仕事。
あ、日菜が不機嫌になってる。今の聞こえてたかな。家族を嘘吐き扱いはされたくないもんな。
「それじゃ、日菜。頑張れよ、今日はお兄ちゃんが晩飯作ってやるから。」
「本当に?約束だよ!」
じゃーねー、と一言言ってふらっと離れる。紗夜ならこの放送を録画してたりするかな。後で聞いてみよう。
さてと、約束だし、買い物行こうか。今日はお兄ちゃん特製ハンバーグとフライドポテトだ。
ちなみに後日紗夜が録画した放送を見るとあの後は見た目のお陰でかなりヨイショされていた。やっぱ見た目の印象って大事だわ。
ついでにオカルト番組からの連絡が来た。臨時収入ゲットだ。
ベースを始めました。新しい事に手を出すのがすごく楽しいです。なのでこれから更新が少し遅れると思います。完全に気分が乗ったら書いてるので。
ランキング25位、ありがとうございます。