これはマジで寒いある日の事。
世は現在クリスマス。
街はイルミネーションで飾られカップルはイチャつき、子供はプレゼントを欲しがりサンタを待つ。ある人は残業に嘆き、ある人は今年も独りとポツリと置いてあるケーキの前で涙を流す、ある人は男同志でこっちの方が気楽だと笑い、ある人はカップルを見て血涙を流す。
そんな様々な人々を眺めながらふらつく。
「……日菜〜、紗夜〜、お兄ちゃん寂しいな〜。」
時は数日前に戻る。
「妹達よ!今年のクリスマスどうする!?」
いつものよりもにっこにっとな笑顔を浮かべて聞く。昔は『おにーちゃんと一緒に居る〜。』とか『兄さんと過ごしたいわ。』なんて可愛い事を言ってくれていたから大丈夫だろうと思っていた。
ちなみに親父とお袋は旅行らしい。楽しんで来てね。
「兄さん、ごめんなさい。今年はクリスマスにイベントがあって……。」
「あたしも同じイベントに出るんだよね〜。」
「なん……だと……」
膝から崩れ落ちる。まさかクリスマスを一緒に過ごせないとは……。
スマホに着信が入る。
「あい……。」
『協会からクリスマスのカップルに対する怨嗟と嫉妬で霊が暴れています。数日の間に沈静、またはお祓いをしてください。各地域で一斉にお祓いが行われているので響也さんもお願いします。』
「はぁ〜い……じゃ、お兄ちゃんもお仕事行ってくるよ〜。」
足早に家を出る。はぁ〜、クリスマスどうしよう。
「オラァ!暴れる霊は鎮めてやるぞー!」
街を歩きながら様々な方法で沈静していく。でも目立ち過ぎるとダメだから紙を投げたり、虫を払うみたいにしてみたりでカモフラージュする。正直に言うと結構疲れるから普通にやりたいけど。
これがクリスマス当日まで続いた。
時間は戻って当日。
霊はもう鎮め終わって、後は楽しそうな霊とか嬉しそうにはしゃいでる霊くらいだ。
「いーなー、霊達も楽しそうだなー。
日菜も紗夜もイベントだしー、俺は行けないしー。」
ガールズバンドはみんながイベントに出ているらしい。
それに厳さんとこや、一心さんとこも行くらしい。良いなー、家族で応援出来るなんて羨ましいなぁ。
商店街もチェーン店以外はほとんど閉めてるみたいだし。
俺がやる事なんて特に無いし、公園で猫と遊ぶくらいだ。
「お前は可愛いな〜。」
撫でていると突然そっぽ向いて歩いていき、その先にはもう一匹猫がいた。
「なんだよー、お前もかよー。」
ちぇーっと不貞腐れながら公園を出る。もう何なら人が居ない所に行こうと歩く。
「……商店街もカップルか家族連ればっかだし、でかい施設も当然多い。遊べそうな所も同じく、ちょっと飲み屋とかホテルがある感じの所に行くとそこにも男女……どうせ飲んだ後にでもにゃんにゃんするんだろ〜。はぁ……」
一人で歩いてる人が居ねー!なんだよー!ぼっちは俺だけってかー!
男だけとか女だけでも友達同士みたいだし!?友達が多くていーいーなー!
「俺だって泣いちゃうぞ〜……くすん。」
時計を見るとまだ十時、イベントが終わるのが十八時。
「……飲んでやる。」
スマホで片っ端からバーを検索する。居酒屋みたいなうるさい所に居られるか!!
「ちょっと、兄さん飲み過ぎなんじゃねぇか?」
「……なんすか、俺が飲んじゃダメなんですかー?」
「いや、そうじゃないけどよ。」
今日は客が少ないと思ったら変な客が来た。
見た目はパッと見は女に見えるかもしれねぇが、よく見るととんでもないイケメンっつー面だし、長い髪も女みてぇに綺麗だ、足もすらっとしてて鍛えてるのも見て分かる。羨ましいもんだ。そんだけカッコイイなら彼女の一人や二人、簡単に作れそうだぜ。
「なぁ、兄さん。なんだってこんな客の少ない店に来たんだよ。もっとオシャレなバーに行けば女の子なら絶対に声をかけてくれるぜ?」
「はっ!そこらの女なんてどうでも良いんですよ〜。それよりも俺は妹達が大好きなんだー!」
チッ、この兄さんシスコンか。話題ミスっちまったな。
「じゃあ妹さん達と過ごせば良いじゃねぇか。そんなぐびくび酒飲んでたら酒臭いって嫌われちまうぞ。」
「んっんっんっ……ふぃ〜!
うちの妹達はイベントに行っちゃったんですよ〜。多分打ち上げでもするから帰って来ないだろうし。
だからお兄ちゃんは悲しくこんな所で酒飲んでんすよー!もう一杯!」
「こんな所って、ひでぇな。」
にしてもこの兄さん、酔ったら酔ったで変な色気出しやがる、質が悪いな。このまま外に出したらテキトーな女の子にお持ち帰りされそうだぞ。
地味に高い酒とか飲むからこのまま常連に出来りゃ最高だな、良い感じに恩を売っとかねぇと。
「かいけー、おねがいしまーす。」
「おいぃ!?今のもう飲んじまったのか!?」
「いーでしょ〜、おいしかったから、またきま〜す。おつりけっこーでーす。」
「お、おい、兄さん!?……行っちゃったよ。」
しーらね。俺はただのバーのマスターだし。また来てくれる事だけ願っとくか。
あ〜……あたまぐらぐらする〜。
「あの、すみません。」
「はぁい?」
っととと、うわぎがずれちった。まあ、あついからいいかぁ。
「お兄さん、凄くかっこいいですね。俳優さんですか?」
「ちがいますよ〜。」
「そうなんですか?イケメンだからそうかなって。わっ、思ったより鍛えてるんですね。触ってみても良いですか?」
「ど〜ぞ〜。」
ん〜、からだがむずむずする。
だれかがなんかへんなところさわってない?
「あ、肌も綺麗ですね〜。」
「んん……。」
ねむい、ひなとさよどこー?
「あの、良かったらこれからゆっくり出来る所に行きませんか?もっとお話してみたいんですけど……。」
「けっこーです。」
いえにかえろー。
「さん……に……ん……兄さん!」
「んぉ?お〜、おはよー、紗夜。」
ぎゅうっと紗夜を抱き締める。
あれ、今何時?
時計を見ると十九時を回っていた。
「ちょっ、ちょっと兄さん!?」
「なんだよー、今日お兄ちゃん寂しかったんだからこれくらい良いだろー?」
「……酒の臭いが凄いわよ。」
「たくさん飲んだからねぇ。
それよりも、打ち上げとか無かったの?」
「あったけど、お願いして後日にしてもらったわ。」
「クリスマスはおにーちゃんと過ごしたかったからねー!可哀想だったし!」
「食材は買ってきたから、休んでて。」
「いや、たまには俺も手伝うよ。みんなで一緒にやろう。」
それから三人でご飯を作って食べて、ケーキも食べて。日菜と紗夜がギターを弾きながら一緒にクリスマスソングを歌って。途中で日菜がアドリブ入れてちょっと怒られてたけど。
「二人とも寝ちゃったか。」
ライブがあって疲れてるだろうし仕方ないか。
「風邪引いたらいけないし、一人ずつ運ぶか。」
日菜を抱き上げる。もちろんお姫様抱っこだ、優しく運ばないとね。単純に仰向けで寝かせやすいし。
「さて、次は紗夜だな。」
そうだ。折角だし、昔とみたいに一緒に寝かせよっと。
紗夜を抱き上げたまま日菜の部屋のベッドに運ぶ。
ここからが大事。枕元にプレゼントを二つ置く。お兄ちゃんサンタからの贈り物だ。中身はマフラー色は悩んだけど結局同じ色にした。ペアルックだ。
最後に二人の額にキスをする。確か何かで良い夢が見れるおまじないって聞いた。霊媒師の観点からすれば本当かどうか怪しい所だけど、この子達の為ならね。
「メリークリスマス、良い夢を。」
後日、俺も同じマフラー買わされたよ。
皆さんはクリスマスどうでした?
俺は朝の3時から7時までバーで一人で飲んでました。
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