「コロッケうまー。」
サクサクと歩きながら肉屋で買ったコロッケを食べる。手が進む進む、止められない止められないとはこのことだ。
「にゃー」
「ん、悪いけどこれはあげないよ。」
黒い猫が寄ってきて鳴いた。
コロッケはあげないけどなんとなく持ち上げて頭に乗せてみる。ふぉぉ……なんとも言えないフィット感。
「よし、お前は名前はクロだ、よろしくなクロちゃん。」
「なぁ〜」
クロちゃん……アニメも漫画も良かったなぁ。
「サクサク……こんな所にサクサク……ライブハウスサクサク……あったのかゴクリ。」
面白そうだ入ってみよう。チケットとかって必要かな?
聞いてみよう。
「すみません、おねーさん。今ライブやってるの?」
「丁度始まる前だね。お兄さん運が良いよ、ロゼリアとハロハピだけど最後の当日券が残ってるよ。」
お、ラッキー、日頃の行いかな。
「んじゃ、くださいな。」
「はい、楽しんで来てね。」
「どうも。」
軽く礼をしてライブハウスに入る。人が多い所は得意じゃ無いけどたまには良いかな。あ、猫は放したよ。店だしね。
『ロゼリアです、今日もよろしくお願いします。』
おっ、さっき言ってたバンドかな。運が良いって言ってたし人気なんだろうな。
「……紗夜?」
メンバーは前にパスパレと一緒に居たもう一組の子達だった。なるほど、バンド同士の打ち合わせならウチは広いし姉妹で橋渡し出来る楽だよな。
俺の脳内にパスパレ(日菜メイン)の応援道具作成にロゼリア(紗夜メイン)の応援道具作成が組み込まれた。
これは大変だ、終わったら材料を買ってこなければ。いや、グッズとかあったりするかな?あったら買おう。
パチリと紗夜と目が合った気がする。いや、絶対に合った。だって顔が赤くなってるし、露骨に目を逸らされた。
日菜と違って見て欲しいってタイプでもないからねぇ。
まあ、ぐだぐだ考えずに聞きますか。
ドラムと共にギターの音が鳴り響いた。
「めっっっちゃ良い……。」
やばい、涙出てきた。ボーカルの子も良いけど、紗夜のギター凄く丁寧だし綺麗だし、何かもう良い……。つーか、あれ、あのボーカルの子昔公園に居た子じゃない?ずっと不審者扱いされたから印象に残ってる。
ライブが終わるとそそくさと紗夜がステージから降りてアプリに連絡が来た。
『どうして来ていたの!?』
『なんとなく入ったらやっててさー』
これで終わった。なんだか味気ないし、感想でも送っとこ。
『ギター、凄かったよ。月並みの感想でごめんね。』
『そう』
ふむ、これは多分凄い照れてるな。帰ったらべた褒めしよう。
『さあ!みんな盛り上がってるかしら?次はあたし達ハロー、ハッピーワールド!の番よ!』
……今度はこころだ。女の子の間でバンドが流行ってるのか?まあ、それは置いておいて、こころがいると言う事は美咲ちゃんが……なんだあのクマ!?
『やっほ〜、みんな大好きミッシェルだよ〜。』
『会場の子猫ちゃん達を魅了してみせよう!』
ミッシェル……ミシェル……みしる……みさき?あ、あれ美咲ちゃんか!?
なんかかっこいい女の子が居るし、随分異色のバンドだな。楽しみだ。
「元気が出るな。」
気分が楽しくなってくる。これがこころがみんなをハッピーにする方法なんだな。うん、素敵な方法だ。
みんなまだまだ子供だと思ってたのに、大きくなったなぁ。
『みんなありがとー!』
ぶんぶんと手を振るこころを見て嬉しくなる。あ、でも羨ましさもあるかも。
ぼんやりとしているとこころと目が合う。驚いてないみたいだから途中で気付いてたんだろう。すると楽しそうだった笑顔から一変して穏やかににこりと、嬉しそうに笑った。
ポンッと顔が赤くなる。何そのギャップ、俺にはちょっと心臓に悪いんだけど。お兄ちゃんそういうの良くないと思うな!
ライブはそのまま歓声に包まれて終わった。
「良かった……。」
もっと気の利いた言葉でも言えれば良かったのに、自分の語彙力が憎いね。
「ねぇ、あなた響也よね?あたし、ちゃんと覚えてるわよ。」
急に後ろから声をかけられて心臓が跳ねる。振り向くと案の定こころがいた。着替えてたんだろう。服が違う。
「……えー、あー、ライブ良かった。見蕩れたよ。」
「本当?響也にそう言ってもらえて嬉しいわ!」
う〜ん、やっぱりこんな言葉しか出ないなぁ、情けない。
「それよりも、戻ってきたなら連絡が欲しかったわ。ハロハピのライブだって早く見て欲しかったもの。」
珍しく拗ねたように言われる。悪い事したかな。
「帰って来たのも数日前だからね。荷物の片付けとかあったし、許してくれないか。」
「……仕方ないわね!その代わり、目を瞑っててちょうだい?」
「それくらいなら。」
目を閉じる。また何かする気だな?
首に抱き着かれる。うん、予想通りだな。甘えん坊め。
柔らかい感触が唇に当たる。これは予想外。
「やっぱりドキドキするわね。」
こころがふわりと微笑む。あ〜……そういうの本当に弱いからやめてほしいなーって。
「響也?どうしたの?」
「いや、何でもないよ。」
笑って誤魔化す。ううん、ダメな男のだな。とっとと誰かと付き合ってしまえば良いのだろうか?……他の子達には悪いけど。
「その笑い方、嫌いだわ。楽しそうじゃないもの。」
頬を引っ張られる。
「あ〜、ごめんごめん。」
それから何を話すでも無く、また顔を出すとだけ言って別れた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ……。」
「兄さん、うるさいわよ。」
「あ、ごめん。」
紗夜に怒られてしまった。ちなみに帰って来てすぐも褒めちぎったら怒られた。後悔はしてない。
はぁ〜、気を取り直して片付けしよ。明日くらいにでも事務所兼アパートに戻ろう。荷物はあんまり多く無いし。
あ、パスパレとロゼリアとハロハピの応援道具も作らなくては。今日は寝られないな。
「よし、霊と戦う時よりも気持ち気合を入れるか。」
まずはデザインからだな!……所で勝手に作るけど許可とか必要かな?パスパレとか厳しそう。また聞いておこう。
「で……き……た〜……。」
チチチ、と鳥の鳴き声が聞こえる。カーテンの隙間から日が差し込んでいるからもう朝か……。
「あ〜、事務所戻るかぁ。」
外行きの服と作った道具を持って部屋を出る。多分誰も起きてないはずだし。
「んじゃ、行きますか。」
「……着いた。」
思ってたよりも重かった……。
「ただいまぁ……。」
「おかえりなさ〜い。」
「あ、あれ?おかえりなさい。」
「お……俺の事務所がぁぁぁ!?」
なんてことだ。俺の事務所が内装もレイアウトも変更されて面影が無い。
「な、何で二人が居るんだ!?」
「え、えっと、それは……」
「蘭がね〜、お父さんと喧嘩しちゃった時や歌詞を考えるのに行き詰まった時にここに泊まり込みます〜、モカちゃんは付き添いで〜す。」
「かし?お菓子でも作ってるのか?」
「あ、あたし達、バンドやってるから……。」
あ、そういえば、鍵はあそこに置いたままだったな。
…………え?バンド?じゃあまた応援道具を作らないとな!
「あ〜……まあ、他の部屋を貸すから、そっちでやってくれると助かるかな。」
「あ、ありがとうございます。」
「とりあえず〜、きょーやさんもご飯食べます〜?蘭が作ったご飯美味しいですよ?」
確かに良い匂いがする。朝ご飯を食べてないから腹が減ってきた。
「うん、じゃあ貰おうかな。」
蘭ちゃんは何を作るんだろう。やっぱり和食かな?
「朝ご飯にするには重いと思うけど、どうぞ。」
コトリと置かれた皿の上にはオムライス。本当に?本当に朝がこれで良いのか。
じっと蘭ちゃんの顔を見る。
「め、召し上がれ。」
「いただきますっ!」
パンッと手を合わせると、早速スプーンを掴むと早速一口食べる。
「うっまい……。」
顔を見つめられた時はどうしたんだろうって思ったけど、オムライスが好きなんだ。何か、意外かも。勝手にだけど、もっとオシャレなのが好きなのかと思ってた。
頬に米粒が付いてる、好きな物を食べる時の子供みたい。こういうところもあるんだ、可愛いかも。
「む、もう食べてしまったか。」
ちらりとこっちを見てくる。
「おかわり、いりますか?」
「是非っ!」
キラキラとした目で見てくる。犬とか猫を見てる気分になる。
「ちょっと待っててください。」
「大盛りで!」
「分かりましたよ。」
ハンバーグとかも好きそう。今度作ってみようかな。
「は〜、満腹満腹!ご馳走様!」
「お粗末様でした。洗い物しますから、流しに置いておいてください。」
「いや、俺がやっとくよ。」
「あたし達が勝手に居座ってたんだから、その分です。」
「そうかい?悪いね。」
そう言ってソファに座る。うん、昔と変わらない良い座り心地。
鳥の鳴き声や木々が風で揺れる音。山よりのアパートだから自然も多くてこの部屋は日当たりも良い、蘭ちゃんとモカちゃんには悪いけど、このまま寝てしまおう。
「あれ?モカ、響也さんは?」
洗い物を終えると、さっきまでソファに座っているゆっくりしていた響也さんが居なかった。
「寝ちゃったよ〜。」
そう言われて上から覗くと確かに寝ていた。
疲れてたのかな。
「気持ち良さそうに寝てる……。」
夜更かしでもしてたんだろうか、目の下に隈が出来ている。
「多分〜、これじゃない?」
「これ、何だろう?」
パンパンに膨らんだ鞄が近くに置いてあった。多分持ってきた荷物だと思う。
「ちょっと見てみる〜?」
「……ちょっとだけ。」
ジッパーを開くと中から複数のパステルカラーと青と黄色が出てきた。
「えっと……何これ?」
「応援道具〜?これとか法被みたいだし〜。ハチマキもあるし〜。」
「あ、本当だ。」
他のバンドのは作ってるのにアフターグロウのは無い……。
「ね〜、蘭〜。きょーやさんってさっきあたし達がバンドしてるの知ったから作ってないだけだと思うよ〜?」
「あ、そ、そっか。」
早とちりだった。じゃあまた作ってるくれたりするのかな。
「そんな事よりも〜」
モカが耳元に近付いてくる。なんだろ。
「……ごにょごにょ。」
「えっ、そ、それって。」
「大丈夫大丈夫〜。やってみよ〜。」
「ちょ、ちょっとモカっ!?」
そのまま押し切られてしまった。で、出来れば起きないで……!
「ん、ううん?」
ああ、事務所に戻ったんだっけ?
日が傾いてるな、もう夕方か。三時間は寝たのか。
「おお?これは、どうしようかな。」
ぼけっとしてて気が付かなかったけどモカちゃんが俺の上で寝てて、蘭ちゃんが膝枕してくれたまま寝ていた。体が固くなっちゃうでしょうが。
「叩き起こすのも可哀想だし、晩御飯でも用意しようかな。」
少しズレてモカちゃんを蘭ちゃんの膝枕に乗せる。よし、後はスマホに連絡が来ている妹達の連絡を返さなくては……。
「よし、完成。」
残念ながら凝った物は作れそうになかったから定番のミートソーススパゲティとコンソメスープ。
「二人とも起きて。ご飯だよ。」
「は〜い……。」
意外にもモカちゃんの方が早起きだった。
「蘭ちゃ〜ん?困ったな……。」
「きょーやさんきょーやさん。耳元で囁くとすぐ起きてくれますよ〜。」
なるほど、それは良い事を聞いた。
「蘭ちゃん……起きて。」
「わひゃあ!?」
「うおっ、本当に起きた。」
「な、何するの!?」
ううん、女の子の耳元でやるべきではなかったかな?
でも、これは良い。日菜も中々起きない時があるからやってみよう。
「さあ、ご飯にしよう。手抜きだけどね。
それと、今日も泊まっていきなさい。親御さんに連絡を忘れないようにね。」
厳さんなら俺からしても良いだろうけど、二日連続だと思うし、やっぱり娘からのが安心するだろう。
「あ、はい。ありがとうございます。」
「は〜い。」
さてと、俺も食べたら風呂を入れるか。多分着替えもあるよな?
「あ〜……生き返るぅ。」
風呂は良いなぁ。でもちょっと狭いし、風呂は変えよっかなぁ……俺の部屋だけ銭湯みたいにしてみるとか!?悪くないんじゃあないかな?うん、採用。
「あ、モカちゃ〜ん。入って来ちゃダメだからね。女の子が軽々と男に肌を見せるもんじゃありません。蘭ちゃんも引っ張って来ないの。」
「あはは〜、バレてましたか〜。」
「バレます。冷凍庫にアイスがあるから大人しくそれ食べてなさい。」
「ほ、ほら、行くよモカ!」
よし、蘭ちゃんが引っ張ってったか。これで安心。
「……お兄ちゃんとしてはあの子達が心配ですな〜。」
彼氏とか出来たら泣いちゃいそうだわ。
はぁ〜、風呂から出たらすぐに寝よう。
「……何この状況。」
風呂から出て、歯も磨くと既にベッドでは蘭ちゃんとモカちゃんが寝息を立てていた。
そういえば、何度か寝泊まりしてたらしいし、その習慣みたいなもんかな?
「確か、来客用の布団があったはずだけど。」
う〜ん、ずっと干してないからあんまり出したくない。
「仕方ない。ソファだな。」
大きいの買っといて良かった。
「おやすみ〜。」
明日にでも業者に頼もう。ついでに見栄えも良くしてもらおうかな。
どうにも流れが気持ち悪かったんでここら辺で切らせてもらいました。
それと前半が気持ち悪い感じになっちゃいましたね。
次回はもっと良い感じに書きたいです。