バンド姉妹の兄ちゃんは霊媒師(物理)   作:黒色エンピツ

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別に何でもは出来ない

「おにーちゃんは楽器出来ないの?」

 

そう言ったのは蘭ちゃんとモカちゃんの朝ご飯を作ってる間に入って来た日菜である。珍しく早起きだね。

 

「ん〜……あー……旅してる途中だったかな。ちょっとある事を試してみたんだ。

霊を俺に憑依させて生前にやりたかった事をさせて未練を無くすって方法を取ったんだが……。」

 

はい、憑依〇体です。

 

「どうだったの?」

 

「……急にやりたかった事とは別にナンパとか風俗に行こうとした霊が何人も居たから弾き出したりしたな。

って、そうじゃない。その中にギタリストの霊が居てだな。未練は『もう一度だけ、もう一度だけ思いっ切り誰にも邪魔されずにギターが弾きたい』だったんだ。」

 

「へー!じゃあ弾かせてあげたんだ!」

 

「そうだな。確かに出来て成仏はした。」

 

「うん、それで結局ギターは?」

 

「あー、憑依は未練を無くす時に行った行動を自分の経験に出来るって考えだったんだけどな。

サビで手がどうしても動かなくなったんだ。やっぱりインチキはダメだなぁ、地道に練習しないと。」

 

ははは、と笑う。でも、やっぱりちょっと残念だな。もっと出来る事の幅が増えるかと思ったのに。

 

「じゃああたしがギュギューン!てくるギターを教えてあげるよ!!」

 

「ははは、紗夜に教えてもらった方が良いんじゃないか?丁寧だし。」

 

「えー!?あたしだって出来るよ!?」

 

「日菜は擬音が多いからな〜、大丈夫か?」

 

「もっちろん!任せて!」

 

「それじゃあお願いしようかな。

まあ、その前にギター買わないと。」

 

「え?あそこにギターケースあるんだからギターもあるんじゃないの?」

 

あ、それは。

日菜が壁に掛けてあるギターケースを開けるとバットや日本刀、釘に銃が流れ出てきた。あ、一応特例で持たせて貰ってるから内緒ね。テンション上がって持ってるけど、使う機会が無いんだよね。正直いる?バットで良くない?

 

「……うわぁ、なにこれ?」

 

「あー……祓う用の武器。」

 

だって結構入るから便利だったんだからしょうがないだろ!?長物も入るし。

 

「じゃあ、今度ギター見に行こうね?」

 

「はい……。」

 

よし、朝ご飯完成。シンプルに目玉焼きにお吸い物とお米。

 

「そう言えば、お洒落してるけどどこかに出掛けるのか?」

 

パスパレの子達とかな?

 

「あ、そーだったそーだった。

おにーちゃん、一緒に行こ?」

 

ぱっと出された手には遊園地のチケットがあった。

 

「んげっ……マジで?紗夜は?」

 

「もちろん一緒だよ?あたしが誘うって決めたんだ〜。」

 

出来れば二人で行ってほしいなぁって。でも、俺は一緒に行った事無かったしな。

 

「本当に俺も行かないとダメか……?」

 

「お願いっ!」

 

パチンっと日菜が手を合わせる。あ〜……ううん……。

 

「……分かった、行くよ。」

 

「やったー!おにーちゃん大好き!!」

 

「はいはい、俺も大好きだよ〜。」

 

思い出作りと考えておこうか。

 

「さて、それよりも先にご飯だな。日菜は食べて来たのか?」

 

「食べたけどおにーちゃんのは別腹!」

 

「じゃあ、目玉焼き追加だな。

あの子ら起こして先に食べてなさい。」

 

「はーいっ。」

 

……出来れば絶叫マシンは乗りたくないなぁ。

 

 

 

 

「とーちゃーく!」

 

「日菜、もう少し落ち着きなさい。」

 

「……来てしまった。」

 

割と近くにある遊園地だが、何でもジェットコースターがヤバいらしい。ヤバいってなんだよ、どうヤバいんだよ。

 

「じゃあ、早速ジェットコースター乗ろうよ!」

 

チラッとジェットコースターの列を見る。かなり待つみたいだな。あんなのを待つのは好きじゃないんだよなぁ。

 

「日菜、最初は軽くコーヒーカップとかで良いんじゃないか?ほら、やっぱりジェットコースターは並んでて時間かかるし。」

 

「じゃじゃーん!優先権もあるんだ!」

 

あ、そうですか。

そのまま日菜が走って係員の人の所に行った。

 

「兄さん、日菜を見失うから早く行きましょう。」

 

「そ、そうだな。」

 

「兄さん?……具合でも悪いのかしら?」

 

ささっと通されてシートに座る。

 

「楽しみだね〜。」

 

「そうね。」

 

「……………………。」

 

ガタンッと動き始める。

あ、やばい、怖い。ちょっと、待って。タイム。一回止まろ?

 

「おにーちゃん?」

 

「兄さん?」

 

「ごめん、ちょっと今は話かけないで。」

 

上に登って行く。大丈夫大丈夫、ジェットコースター、怖くない。ある程度安全。霊よりマシ。

 

「畜生、マジで無理、無理無理。やばいって、勘弁して。幽体離脱しちゃうって。」

 

ふわりと一瞬浮き上がる感覚。来る、そして来た。急降下。

 

「イェーーーイ!!」

 

「きゃーーーー!!」

 

「うおぉあああああああ!?」

 

正直言って記憶がない。

 

「はーっ!はーっ!」

 

カタンカタン……とジェットコースターが止まりかける。

手元では手持ちのバーがギリギリと悲鳴を上げて破裂しかけていた。

 

「ギュンッていってグンッとしてて楽しかったー!」

 

「に、兄さん、大丈夫?」

 

紗夜が背中を撫でてくれる。正直他に気が回らなくて返事が出来ない。

 

「お、お客様。大丈夫ですか?」

 

スタッフの女性が声を掛けてくれる。流石にこれには答えなければ失礼だ。

 

「ええ、凄い迫力だったもので。驚いてしまいました。」

 

「わぁ、おにーちゃんの足が凄い踊ってる!」

 

「兄さん、無理しないで……。」

 

ミリミリッとバーから音がした。流石にやばいと思うが手が離れない。

 

「……すみません、もう少し待ってもらっても大丈夫ですか?」

 

「は、はい……。」

 

情けないなぁ……。

 

 

 

 

「兄さん、水を買ってきたから飲んで。」

 

「ありがとう、紗夜。

日菜も楽しみにしてたのにごめんな?」

 

「大丈夫だよ?後はゆっくり楽しもうよ。」

 

「次はどれに行くつもりなんだ?」

 

「お化け屋敷!ここって他にもお化け屋敷が凄いんだって!」

 

「ははは、そうかそうか。」

 

紗夜の方を見る。あ、やっぱり青ざめてる。ホラー苦手だったもんね。

 

「ぞわぞわぁって来て、ドカーンッで出てくるんだよね!?」

 

「ははは、それはどこの爆破現場だ?」

 

流石に日菜の擬音を全部理解するのは無理だ。

 

「紗夜、大丈夫か?」

 

「え、ええ、大丈夫です。でも、入る時は兄さんの手を握っても良いかしら?」

 

おお、珍しい。お化け屋敷ありがとう!

 

「もちろん。」

 

紗夜がほっと息を吐く。そんなに怖いか。

いや、ジェットコースターに置き換えたら分かるか。

 

「えー、おねーちゃんずるい!あたしも〜!」

 

「分かった分かった。ほら、目立ってるから、俺らの髪とか単純に目立つんだから騒いだらもっと目立つでしょ。」

 

パスパレだって有名になってるんだから。ここで変にファンとかと出会うと面倒でしょ。

 

「わっ、大丈夫だよね?」

 

「多分な。

一応ここからはさっさと離れよう。」

 

さて、ここのお化け屋敷はどうかな?

 

 

 

 

「ここ!廃病院を使ってて本当に出るって噂があるんだってー。」

 

「それって俺が来ても大丈夫なのか……?」

 

ほら、雰囲気とか。霊特有の空気とかあるし。

 

「大丈夫でしょ。危なかったらおにーちゃんが助けてくれるんでしょ?」

 

「そりゃもちろん。」

 

当然である。

 

「…………紗夜。」

 

「私は大丈夫よ。」

 

「おねーちゃんも足が踊ってるー。さっきのおにーちゃんみたい!」

 

うん、入る前から膝がガックガクで腕に抱き着いてるな。

 

「無理せずに外で待ってても良いんだよ?」

 

「いえ、大丈夫よ。」

 

ううん……心配だな。

 

「じゃあ、とりあえずは入ってみようか。」

 

まあ、害のある霊が居たら祓えば良いだけだし。イタズラ好き程度は放っておこう。折角売りなんだし。

 

「レッツゴー!!」

 

 

 

 

「オォォ……。」

 

「きゃああぁ!!」

 

「わっ、思ったよりもリアル!!」

 

「そうだな。良く出来てる。特徴を捉えてるよな。」

 

お化け役のスタッフが何とも言えない顔をする。まあ、悲鳴を上げてるの紗夜だけだしねぇ。俺の腕も悲鳴を上げてるけどな!

 

「にしても、結構居るな。」

 

周りを見れば居るわ居るわ。木っ端妖怪や霊の数々。俺が居るせいで近寄って来ないけど。

ぴちゃっと水音が聞こえる。またお化け役?

ああ、いや、これは違うかもしれない。血と焦げ臭い臭い、それに生ぬるい空気だ。

 

「二人は俺の後ろに隠れてなさい。紗夜は……怖いだろうから目を瞑ってな。

そこのスタッフさん、こっちに来てください。危ないから。」

 

さっきのスタッフに声を掛けると不思議そうな顔でスタッフが来る。

さてさて、何が来るかな?

 

『ドォ……シテ?ワたシシにたくナイ。』

 

……子供だが、まるでゾンビだな。

腐った体に虫が集って、腸が飛び出ている。手術ミス?それとも事故か?病院に取り憑いてしまったんだな。これで今まで噂程度だったんだから運が良い。

 

『ワタしもミんナとあソびタカったのニィィィィィ!!!』

 

これは、一発で祓うのが正解だろう。早く楽にしてあげないと。

走って来た霊の顔を掴む。……場所が悪かったな。

 

「……何も出来なくてごめんな。

次の人生が幸せである事を願ってるよ。

良い来世を。」

 

そのまま顔を握ると煙のように消えていった。

 

「さっ、みんなとっとと逃げるぞ。イタズラ好きが動き出すからな。

スタッフさんも他の方に連絡お願いします。」

 

「は、はい!」

 

動けなさそうな紗夜を抱き上げて走る。後ろではポルターガイストでも居たのかと言うくらいガシャンガシャンと物が飛び交っている。

 

「後始末しないとなぁ。」

 

祓わない程度に良い感じにしないとってのが難しいな。

 

 

 

 

「よしっ、みんな離れてくださーい!」

 

お化け屋敷の廃病院を囲う様に杭を刺して正面に立つ。一度取りに帰ったから時間が掛かった。

両手を合わせて囲いの中の地面に手を着く。

 

「ん、よし。これで人への被害は無いはずですよ。

何かあれば、ここへ連絡をしてください。」

 

「どうも、ありがとうございます。」

 

「いえいえ、こちらこそ閉園してないのに唐突にお願いして申し訳ないです。」

 

「折角ですから、この遊園地の一番の売りであるジェットコースターに乗ってください。妹さん達もご一緒に。」

 

「えっ!?いやっ、俺は……」

 

「本当ですか!やったー、ありがとーございまーす!

おにーちゃん、おねーちゃん、行こうよ!」

 

「あ、ちょ、日菜ぁぁぁ……!!」

 

「待ちなさい、日菜!」

 

もう一度乗ったジェットコースターはお祓いよりも辛かった事をここに残す。

 

 

 

 

「え?俺が番組に?」

 

アフターグロウの応援道具を作り終わって休憩していると日菜から電話がきた。

 

『そーなんだよねー。心霊番組の生放送でパスパレがゲストで呼ばれててね。あたしも結構るんって来てるから良いんだけど、彩ちゃんが一人で心霊スポットに行く企画に着いていく霊に詳しい人が収録当日に来れなくなっちゃってさー。

詳しい人と言えばおにーちゃんでしょ?それに心霊スポットは夜に行くらしいし、顔を知ってる人の方が安心出来ると思うんだよね。』

 

あれ?年齢で出れる時間とか違わなかったっけ?ううん、久し振りに前世とは違う所なのかな?あ、ここ転生者要素ね。

 

「俺は別に良いけど。着いて行って解説とかするだけで良いのか?」

 

『後はスタジオで心霊写真とか映像を見てもらうって言ってたよ。』

 

「生放送か……宣伝とかは?」

 

『登場した時にちょこっとだけなら大丈夫だと思うよ?』

 

「よし、行く。」

 

へへへ、番組に出るって仕事ついでに全国に宣伝出来るんだからツイてるね。前はそこまで大々的なやつじゃなかったし。

 

「今度ハンバーグ作りに行くよ。」

 

『ほんとっ!?ポテトは!?』

 

「しょうがないなぁ……いいよ。」

 

『やったー!!るるるんっ♪て感じ!楽しみにしてるね!』

 

プッと切られる。多分その勢いで紗夜に突撃してるんだろうな。

 

「さて、服を決めないと。」

 

スーツでビシッと決めるか?それとも和装にしてみる?髪紐もいつもよりも良い物を使おう。……ちょっと楽しみになってきたかも。変な事しない様に気を付けよ。

 

「ヘアワックスでも付けるか?……そういえば、紗夜と日菜に止めてって言われてた。」

 

まずいぞぅ、凄い浮かれてる!

 

「いっその事印象に残る為に特攻服とか!?……無いな。」

 

 

 

 

遂に収録当日になった。結局服はスーツにして良い髪紐でポニーテールにした。ふふふ、高かったんだぞ。

しかし、スーツだと生真面目過ぎたか?ネクタイを少し緩めるかな。

 

「本日同行してくれるのはこの人でーす!」

 

よし、良い笑顔で行かねば。

 

「こんばんは、今日はよろしくお願いします。」

 

いかん、右手と右足が一緒に動いた。

 

「あはは、緊張しなくても大丈夫ですよ。

知ってる人は知ってるかもしれませんが、なんと!この人は凄腕の霊媒師であり、私達パステルパレットの日菜ちゃんのお兄さんなんですよ!」

 

「ははは、氷川響也です。」

 

やばい、緊張する。

ふぅ、それよりも心霊スポットってどこに行くんだろ?

 

「えっと、今日私が向かうのは正式な名前は言えませんが、Tトンネルと呼ばれる所です。」

 

うん?Tトンネルって言った?聞いた事あるんだけど。

 

「そこは歩けば出口は見えるのにトンネルから出られなくなったり、様々な幽霊が見えるそうです。車で行けばエンジンが止まって動かなくなると、ってこれ本当に大丈夫なんですか!?」

 

ううん、どこでだっけ?

 

「響也さんはTトンネルは知ってますか?」

 

「どこかで聞いたか見た事があるはずなんだけどねぇ……とりあえずかなり危険な場所のはずだよ。」

 

収録中で悪いけどこっそりとオペレーターにTトンネルについて教えて欲しいとラインを送る。最近教えてくれたんだよね。距離が近くなった気がして嬉しい。

 

「れ、霊媒師からしても危険なんですか!?これ、私戻って来れます……?」

 

「……もしもの事があったら助けに行くから。」

 

「目を逸らさないでくださーい!?」

 

さて、とりあえず現地に着いた。

オペレーターからの返信が来ない。出来るだけ早く知りたいんだけど、そこは仕方ない。

彩ちゃんがハンドカムとカメラ付きのヘルメットを被る。

準備だけはしておこう。欲を言えば武器が欲しいけどね。

 

「そ、そそそれでは行ってきます!」

 

彩ちゃんがブルブル震えながらゆっくりとトンネルへ進む。

やだ、何あの子。凄く可愛い!!こう連れ帰ってご飯作ってあげたい感じ。そう、妹力があるんだ!つぐちゃんとはまた違った良さがある。

あ、オペレーターから返信が来た。

 

『そのトンネルは人によっては別位相、または異次元に連れ込まれる為、協会においても基本的には立ち入り禁止区域となっています。』

 

「丸山さんが消えたぞ!?」

 

「どうなってる、カメラチェックしろ!」

 

「うわ……やっべぇ。」

 

とんでもなくまずい状況になってしまった。

解決策は?次元とか世界間とか訳の分からないのを超える必要があるよな……なんだ、チュミミーンって言えばいいのか。ふざけてる場合じゃないな。

 

「すみません、俺が行きます。もし一時間で帰って来なければここへ連絡してください。」

 

協会への連絡先を渡す。さて、正念場だ。

 

「丸山さんを、お願いします!」

 

「任せといて。」

 

 

 

 

「ここ、どこなの……?」

 

入るまで奥の出口が見えてたトンネルの奥は暗くて見えなくなっちゃったし、周りは暗かったのが赤くなってる。どうなってるの!?

 

「あ、そうだ、戻れば……え?」

 

振り返るとほとんど進んで無いはずなのに出口が無くて、後ろにもトンネルが続いていた。

 

「な、なんで……さっきまであったのに……あ、スマホなら!」

 

置く所が無いからってポケットに入れてて良かったー!

 

「圏外だー!?」

 

どうしよう。本当にどうすれば良いんだろ……。

 

『イキテル?』

 

『イキテルイキテル。』

 

「え……?」

 

声が聞こえてきた方を向く。二頭身くらいの何かが何体?何人?が居た。

 

「ひぁっ!?」

 

『ヒトダ。』

 

『ゴチソウダ。』

 

「きゃぁぁあああ!!」

 

気付けば私は走り出していた。

どうしようどうしよう!?このままじゃ、私がどうなっちゃうか分からないよ!

 

「はぁっ!はぁっ!だ、誰か!助けて!響也さん!!」

 

「よ……んだ…………かっ!?」

 

「ええっ……?」

 

走っていると目の前の空間が裂けて響也さんが入って来た。

 

 

 

 

「ううん、つまり俺と彩ちゃんの間には今同じ場所だけど違う場所に居るって事だろ?

異空間とかでもちゃっちゃと壁を裂くと俺が変な場所に行くしなぁ。」

 

こうなるならお守りでも渡していれば間に繋がりが出来るんだけど……。

 

「ん〜……縁がもっと強ければいけそうだけど、存在感を出してくれたり、名前を呼んでくれればそれを頼りにいけるんだけど……。」

 

『きゃぁぁあああ!!』

 

ん、声が聞こえた。もう少し、後ちょっと!

 

『助けて、響也さん!!』

 

よっしゃ!繋がった!!

多分ここって所に指を突っ込んでこじ開ける。

 

「よ……んだ…………かっ!?」

 

「ええっ……?」

 

いや、そんな困惑した顔しないでよ。

 

「頑張ったな、彩ちゃん。後はお兄ちゃんに任せなさいっ!」

 

この鬱陶しい空間を叩き潰して綺麗に祓ってやる!

 

「あ、危ないから背中に乗ってね。走るし。」

 

「え?え?」

 

よーい……スタート!!

ダンッと飛び出す。この現象を引き起こしてる怪異を探さないとな。

 

「きゃっ!?」

 

あれ、速すぎたかな?まあ、いいか。急ぎだし。

 

「彩ちゃん、ここに来て変なの見なかったか?」

 

「え、ええ!?えっと、小人?みたいなのがいました!」

 

「よぉし!良くやった!後はそいつを捕まえるだけだな。」

 

全力で走り続けていると前に逃げている小人を見つけた。ホビットみたいだな。

 

「まぁちやがれぇ!!」

 

『アイツ、ヤバイ!!』

 

『コワイニンゲン!!』

 

「捕まえたァァ……。」

 

後頭部と鷲掴みして小人同士の頭をぶつけ合わせる。

あんまり使いたくなかったけど仕方なくネクタイで一緒に縛る。

 

「さあ、戻ろう……あらら?」

 

彩ちゃんが気絶してしまった。あっちゃあ、やっちまったなぁ。つーかこれどうやって背中に引っ付いてるの?

来た時と同じ様に壁を裂いて元の場所に戻って来た。こんな方法滅多に出来ないからね、貴重な体験だよ。ここに入れたのも運が良かった。

 

「氷川さん!」

 

「すいませんが、彩ちゃんの事お願いします。

俺はまだやる事があるんで。」

 

そこら辺から板を拾ってそれに文字を書き、小人二体を地面に埋めて、その上から板を刺す。お手頃な板があって良かった。看板かな?

 

「これでTトンネルの怪異解決っと……。」

 

空を見るとあの空間で亡くなったであろう人達の魂が解放されて空に登っていった。

 

「みんな、良い来世を。……解放出来て良かったぁ。」

 

「きょ、響也さん!」

 

「んぉ?やあ、彩ちゃん。無事で良かった。」

 

体に傷も無さそうだ、女の子だからそんなの出来たらこっちが申し訳無い。

 

「さ、収録も終わりだろ?一応、あの空間の映像がVTRで流しても大丈夫かは俺が確認しておくから、締めて来なさい。」

 

「わ、分かりました。」

 

あー……後このトンネルの怪異の報告書作らないと……。こっちの方が面倒だな。

頭を抱えていると彩ちゃんが戻って来た。まだ終わってないでしょ?

何か顔を赤くしてもじもじしている。可愛いなぁ。流石の妹力。あ、忘れてたけど力はちからだからね。オー〇ちからみたいな。

 

「あの、ありがとうございました。……お兄さん。」

 

お兄さん……お兄さん…………お兄さん………………と頭の中に響き渡る。

 

「……うん、どういたしまして!また困ったらお兄ちゃんに頼みなさい!あ、お腹空いてない?さっき叫んでたし喉乾いたりとかは?のど飴いる?」

 

「ま、まだ収録終わってませんから!あ、後で貰いますっ。」

 

「あ、あはは、そうだったね。ごめんごめん。」

 

ううむ、珍しくお兄さんなんて呼ばれたもんだからテンションが上がってしまった。

さて、気を取り直して、カメラの確認しますか。

 

「これなら問題無さそうかな?」

 

あの空間自体には呪いとかは無く、本当に別の空間ってだけだったし。

どうやら小人も最低限程度しか映ってないみたいだし、このままで流せるだろう。ちょっとショッキングだが。

 

「よし、チェック完了っと。次は報告書か……。」

 

えー、怪異の場所と詳細、暫定的な名称の決定、解決した方法etcetc……

 

「長丁場じゃなかったから思ったよりは楽に書けたか。」

 

「「「お疲れ様でしたー!」」」

 

おっ、丁度収録も終わったか。

 

「お兄さん!」

 

「や、無事に終わったみたいだね。」

 

「今日はありがとうございました!!」

 

「どういたしまして。これからの予定はどう?」

 

「えっと、みんなで戻ってそこから解散だそうです。」

 

「ん、じゃあ帰りは送ろう。夜道は危ないからね。」

 

そして車に乗り込むと案の定彩ちゃんが寝てしまった。非日常だったからね、お疲れ様。

でも、座ったまま寝ると体が固まるから横になってなさい。

俺は彩ちゃんを横に寝かせて膝枕をする。座席が広くて助かる。

 

「次は生放送か……」

 

やばい、今から緊張してきた。……噛まないように気を付けよう。

 

 

 

 

時間が飛んで生放送当日。あ、番組の方でもあのVTRで大丈夫だったらしい。

 

「おにーちゃん、大丈夫?」

 

「だ、大丈夫大丈夫。いつも通りだ。」

 

ジェットコースターよりはマシだから。

 

「本日のゲストはパステルパレットの皆さんです!」

 

「先に行くね。」

 

パスパレのみんなが入って行く。流石アイドルだ、良い笑顔してる。

 

「そして本日は霊媒師である氷川響也さんにもお越しいただきました!お願いします!」

 

行くぞォ!

 

「ひきゃっ……氷川響也です、怪奇現象や霊にお困りでしたら氷川霊能事務所まで。

今日はよろしくお願いします。」

 

よし、笑顔と宣伝だけは完璧だな!

 

「それでは早速いってみましょう!」

 

俺の戦いが始まる。

最初は軽く心霊映像。

鍋パをしている映像から始まった。

 

「「「きぁああああ!!!」」」

 

「???」

 

みんな叫んでるけど何かいたの?別に映像には何も無いけど。

 

「響也さん、こちらは?」

 

あ、日菜も居るから名前なんだね。

 

「え?あー、今日の晩ご飯は鍋ですかね。美味しそう。」

 

「は、はぁ……霊は?」

 

「その映像には何も無いですよ。」

 

「これは加工っすよね?」

 

それからも俺と麻弥ちゃんで全部偽物と言った。番組的には大丈夫なんだろうか……。

次は写真だそうだ。

 

「違います。」

 

「映ってないです。」

 

「感じないですね。」

 

写真が映るととりあえず心霊写真かどうかを言っていく。ちょっと不安になってきたんだけど。

 

「ストップ!これは、本当ですね。」

 

湖の傍でピースしながら立っている女性の写真だ。

 

「これは……どこに霊がいるんですか?」

 

「霊感がある人や勘が鋭い人なら分かるんでしょうけどね。」

 

ちらっと観客席を見ると数人が顔を青くしていた。

 

「そちらの方達はこの写真を見ないようにしてください。」

 

そう言うと顔を伏せてくれた。

 

「あ、分かった!」

 

「わ、私も。」

 

お、日菜は分かるだろうなって思ったけど彩ちゃんも気付いたか。前の体験で鋭くなったかな。

 

「チサトさん、どこか分かりますか?」

 

「ごめんなさい、私もちょっと分からないわ。」

 

「う〜ん?」

 

「この写真で見るべき所は後ろの湖だ。

奥の方にほんの少しだけ水が盛り上がっている所があるだろう。そこから少しだけだが頭の様なものが見える。男性か女性かは分からないけどね。

死因は不明だが、この写真は最近撮られた写真だろう。時間が経てば後ろの霊がどんどん写真の女性に近付いて来て呪われるか取り憑かれるだろう。どちらにしても良い結果にならない。

写真に写っている女性はなるべく水のある所に近付かないように。それと手遅れにならないうちに除霊を行う事をおすすめしますよ。もちろん、俺に連絡をしてもらえればすぐに向かいます。」

 

長々と喋ってしまったが大丈夫だろうか……。

 

「……ありがとうございました!写っていた方は本当にお気を付けください。

次は丸山さんが心霊スポットへ行った時の映像を流します!」

 

そう言うとTトンネルで撮った映像が流れた。最初の自己紹介とかはカットされていたが、変わりは無さそうだな。

最後の板を刺す場面が映った瞬間だった。

 

「むっ!?」

 

急に吹き飛ばされて奥のセットに激突した。あの野郎……最後の最後にやりやがった……。

 

「おにーちゃん!?」

 

「お兄さん!?」

 

「は、ははは、大丈夫大丈夫。映像の小人野郎が最後の力でやっただけだから。

すみません、お騒がせしました。」

 

一度頭を下げて戻る。さて、これで終わりだろう。

 

「ねぇ、彩ちゃん。何でさっきお兄さんって言ってたの?」

 

「え!?えっと、ほら、私って上がいないから、お兄さんってこんな感じなのかなぁって。」

 

「そっか〜。おにーちゃん、また後でね?」

 

「あっ、はい。」

 

そして生放送が終わった。

 

「おにーちゃんの妹はあたしとおねーちゃんなんだよ?」

 

「分かってる分かってる。」

 

むーっと膨れた顔で怒られる。うーん、可愛い。

おっと、電話だ。

 

「はい、氷川霊能事務所。

ああ、さっきの写真の。ええ、もちろん、すぐに伺います。」

 

「え〜!また仕事?」

 

「仕方ないだろ?気を付けて帰りなさい。パスパレのみんなもね。」

 

日菜の頭を撫でて外へ出る。さてと、お仕事頑張りますか。

 

 

 






久し振りの本編なんで長くしてみました。
やっぱりほのぼのしたのがほんわかしますね。
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